四十八手できますか? | 林知之


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連載「相場のこころ トレードの本質」その4

「四十八手」(しじゅうはって)は、もともとは相撲の決め技を指す言葉で、室町時代(14~16世紀)から使われていたそうですが、正確な数が「48」あったわけではなく、48は縁起の良い数として使われることが多く、「決め技がたくさんある」という意味で四十八手と呼んだそうです。

相場の世界にも「酒田の四十八手」というものがあります。日足ローソクの線組み、つまり複数の足を集合形として捉えて相場の変化点や勢いを計ろうとする試みで、いつのころからかは不明ですが、意味深かつ独特の名称を持つ48の型が、相場の予測に使われてきました。

この四十八手について林輝太郎は、いくつかの著書で真っ向から否定していました。
書籍『中源線建玉法』から引用します。

中源線建玉法(ちゅうげんせんたてぎょくほう)――名前は古くさいが、変更する必要などない。日本の本間宗久の三昧伝(さんまいでん)が相場の聖書といわれながら、何ら具体的な売買法の記述もなく、後人の偽書の疑いも濃いのに対し、中源線は簡略ながら売買の一から十までを具体的に規定している。

中源線は、あとで述べるように、長い歴史をもち、多くの人の実践に使用されてきたにもかかわらず、流布本に見られる酒田罫線法の四十八手における売り線、買い線のような、いわゆる「ザル碁」「ヘボ将棋の手法」の次元に堕落していない。興味本位の視点を許さない真剣な実践者が、売買の基礎技術習得のためにのみ用いてきたことが理由ではないだろうか。

(『新版 中源線建玉法』第一部 解説より)

歴史的な考察には反論もあるでしょうが、やはり、語呂合わせのような48という数の型を並べているあたりが怪しいといえるでしょう。

世間にはセックスの四十八手というのもあり、その全貌をつかんでいる人は少ないと思うのですが、昔はヘンな本を手に入れて、今ならインターネットで図解入りの一覧を見ることできます。順に眺めながら、3つ、4つと進むころ、「こんな格好できるかい!」と、少しばかり真剣になっていた自分がイヤになってしまいます……。

酒田の四十八手に話を戻します。
値動き観測の原則通りと思える型もあるのですが、中には「どう捉えればいいの?」と考え込んでしまうものもあり、全体としては、現実の値動きに当てはめて実際のポジション操作に使うには抵抗を感じてしまいます。

そもそも、「この形が出現したら上がる」とか「こうきたら下げに転じる」といった予測は、一定の有効性はあっても絶対ではありませんし、仕掛け(エントリー)から手仕舞い(エグジット)までを一貫して考えたり、予測が当たったときの対処、外れたときの対処を具体的に用意しておくのが現実です。

林投資研究所では現在、中源線建玉法の伝達に力を入れていますが、予測法とポジション操作、そして資金管理と3つの要素がバランス良くまとめられている、完成度の高い「手法」と説明できるからです。

中源線における予測法は、実にシンプル。終値の折れ線チャートを使ったパターン分析です。「こうだったら」「ああだったら」とさまざまなケースを未整理に並べているのではなく、単純明快な強弱判断の基準だけを示して堂々としています。そこに、3分割のポジション操作、つまり建玉を増減する規定を加え、手法、建玉法として完成させているのです。結果として、個々の答えを納得できる、自らの感覚と一致させることができる──こういった点を高く評価しています。

相場の強弱、つまり「上に行くか下に行くか」は実際、予測不能です。
上り電車だと思って乗ったら下りだった……こういうことが日常茶飯事です。

キップを買って電車に近づき、「これは逆向きだ」と判断したら、キップに払ったカネをムダにして改札に戻る……これと同じ初期の対応がないと、トレード手法としての実用性はありません。当てようとする「予測法」の部分は、極端に言えば単なるキッカケで、ポジションを抱えながら連続して求められる判断こそが根幹なのです。

さて、電車に乗ったところ望み通りの方向に進んだ(見込みが当たった)としても、うっかりしていると突然、逆向きに走り出す……これが相場における現実です。だから、その瞬間その瞬間で予測を立て直しながら“次の一手”を決めようというのが正しい考え方です。

トレードは、例えば3カ月後に上か下かを「今当てましょう」というゲームではありません。予測法に偏った思考のすべてがダメということではないのですが、具体的な行動指針とセットになっていないと実用性のある方法論にはならないということです。


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中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

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