英国はEU残留か離脱か

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自宅近くの商店街で、艶っぽい笑みを浮かべながら私をじっと見る女性が……。
オレに気があるのか?
彼女が見ていたのは、私が抱いていた犬でした。

英国がEUに残留するか離脱するか──いわゆる“ブリグジット”について今日、国民投票が行われます。
英国、EU全体、そして世界経済への影響が懸念され、金融マーケットにも動きが出ているようです。

しかし、例えば「離脱ならば混乱が起きて円高、日本株安」といったカンタンな話なのでしょうか。
一部には「弱々しい日経平均が3日連騰して700円超も戻した。マーケットは残留に賭けている!」なんて解説もあるようですが、突然に降って湧いた話ではないのですから、「3日連騰で……」と結びつけられても、そもそもの前提に疑問を抱かざるを得ません。

では、そもそもの話を掘り下げようとすると、的を絞りきれないほど多くの観点が生まれるようで、EU全体の経済を考えるだけでも、第二次大戦後のドイツ経済や旧ソ連の脅威といった問題も浮上してくるので、私には全く理解できません。
そして当然、「マーケットの動向」という話から遠ざかるわけです。

冷ややかな目で観察すると、ブリグジットの問題を見つめる多くの人、それに応えるメディアの姿勢は、なんだかスポーツ観戦のような様相といえます。

「マーケットは残留に賭けている」という発想も、金融マーケット参加者の視点が抜け落ちているように思います。マーケット全体に確固たる見通しがあるわけではなく、参加者それぞれが何かに賭けている、という理解が正しいはず。
ちなみに、「ブリグジットの結果予想? そんなのどうでもいい」というのも、参加者として、ひとつの姿勢です。

仮に、こういった材料と今後の動向が密接に関係していたとしても、例えば「残留が決定した。しかし織り込み済みで価格は逆行」というシナリオだってあるのですから、ある意味、考えるだけムダという結論もあるわけです。

こんな結論、一定レベル以上の知識人にすれば“野蛮”ともいえる態度こそが、林投資研究所が提唱している「相場技術論」の考え方です。

「材料を集めて考えても予測は当たらない。ならば、そんなことを考えずに、自分自身の見通しと値運びを照らし合わせて“次の一手”を決めることに集中しよう」「そのために、対応方法を事前に考えておこう」ということです。

別な言い方をすれば、「自分で状況判断などせずに、他人にやってもらおう」という態度です。

ファンダメンタル分析には、情報を収集する能力、情報を整理する能力、そして情報を分析して答えを出す能力が必要です。これらを兼ね備えるのは難しいから、大勢の人が考えた結果が反映された「マーケット価格」だけを見ていればいい、という論理です。

極めてシンプルで実践的、実用的な考え方で、具体的なトレード戦略を明確にするうえでは相当な近道です。

ただ、考えればわかりそうな懸念材料を見過ごす可能性もあるのですから、完ぺきな態度だと言い切るつもりはありません。
しかし、いずれにしても、日々の売り買いをどう展開するか、自分の態度を決めて“投票”し続けるしかないのです。


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6月13日放送のフォローアップ(1)
林 知之

ツナギは賢い二股だ

トレードをコントロールするために最も大切なものは何か──。予測の当たり外れを容認し、当たったときの対処と外れたときの対処を用意しておくことです。
マーケット・スクランブル6月13日の放送では、裁量における「ツナギ」など、人間の能力を活用した技法の意味を解きほぐし、中源線建玉法における3分割の価値を考えてみました。
そのフォローアップ(1)です。

映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第86回 中源線は“建玉法”だ! ~ポジション操作がトレードのキモ~

迷いを激減させる方法

ひとつ、トレード「あるある」事例を挙げます。

安値圏で保合(もちあい)をみせている銘柄を1万株仕込んだところ、思惑通りに上がった。でも、もっと伸びるのではないか……「上がるなら、ねばるべきだ」。何を基準に判断したらいいのだろう……?

ツナギ活用の例

仕込みは安値圏だったので、もしそこで下抜けしても損切りを決断する基準がありました。
でも、人気がついて上昇してくると、これから先のトレンドを判断する基準も定まりにくくなります。一瞬ガクンと下げる場面が、下げの始まりではなく短期の押しで、買い増しの大チャンスだったりするからです。

「利が乗っている」と満足して興奮しながらも、「下げてしまったら絵に描いたモチ……」と不安に思う気持ちが入り交じるのですから、冷静で常識的なはずの実践者が、サイアクの対応をしてしまうことも少なくありません。

  • さらなる暴騰の期待で玉を維持し、下げ始めても意地になって動けない
  • 「自分が売るんだから天井だ」と決めつけてドテン、カラ売りに転じて勝負に出る
  • 思いつきで買い乗せし、引くに引けなくなる

そもそも、ちょっと上がったところで小幅利食いして終わっている、なんてこともありますね。

さて、上昇が続くかどうかと判断に迷う状況では、ツナギ売りのテクニックが有効です。例えば、下値で仕込んだ1万株を維持したまま、千株でもいいからカラ売りをしてみるのです。「千株だけ両建て、差し引き9千株買い」の状態にするということです。

現物1万株を維持、カラ売りが千株──単純に現物千株を手仕舞い売りして9千株に減らすのと実質的には同じことですが、「根の玉」(現物1万株)を動かさないままでカラ売りというアクションを起こし、それが“新たな基準”になるのです。

単純に考えてみてください。
千株のカラ売りについて「上にもっていかれる。。。くるしい」と感じたら、相場は強いようだと判断できますし、「いいところを売った」と感じる値運びなら、すでに下落トレンドに入ったのかもしれないと判断することが可能です。

千株のカラ売りを行うだけで未来をズバリ当てられるということではありませんが、確固たる基準を新たに設けることで、“次の一手”を判断する大きな手がかりが生まれるわけです。

「相場は強い」と確信したら、値段に関係なくツナギ売りの千株を踏んで(注)、再び「1万株買い」のポジションに戻せばいいのです。その際の損失は、ポジションを自分なりにコントロールするための、いわば“必要経費”です。

(注)踏む
カラ売りを損して買い戻すこと。

逆に「上げ止まったのかな」と感じたら、カラ売りを増やしながら値動きを観察し、「やっぱり天井だ」と確信が強まった段階で現物を手放し始めて売り長(買いよりも売りのほうが多い状態)のポジションに変化させていけばいいのです。

止まらないこと

こういった教科書的な説明の通りカンタンに実行できるものでもありませんが、売り買いのアクションがないままジッと値動きを見つめるだけで、なんとなく“フリーズ”するのが、トレードにおいて最もコワいことです。

何かを感じたら、まずは動く。しかし「決め打ち」はしないで、常にユルユルッと動きながら、価格変動の波を泳いでいく──こういうイメージは非常に大切です。

「おやっ」と思ったら反対のポジションを建ててみる、「いやいや、まだまだ」と思ったら攻勢を強めていく、といった臨機応変な対応です。

ただし、ポジション操作が複雑だと、「動かす」ことだけに夢中になってしまうかもしれません。特に意味のない「やっている感」に満足するのではなく、「値動きを見ながら悔いのない行動を連続させる」ことが重要なのです。

創造性を生かすのが王道

なんとなく結果を期待するのではなく、全く期待外れの展開も想像しながら事前に対応策を決めておくのが、トレードの正しいあり方です。しかし、「取れるときは取る」というイメージも欠かせませんから、期待を大きく上回るウハウハな展開も想像しておきます。要は「何が起こるかわからない」のですから、その場になって緊張と混乱から“フリーズ”することのないように備えておこうというわけです。

この「事前の対策」を徹底させて数式化したものが、トレードシステムと呼ばれるものです。

林投資研究所の中源線建玉法(ちゅうげんせんたてぎょくほう)は、強弱(トレンド)の判断とともに売買のタイミングも規定してあるので、トレードシステムに分類されます。

ただし、一部のトレードシステムに見られるような、「儲かる数式を探そう」というアプローチでつくられたものではありません。先ほど示したツナギの一例と同じように、実践者の生身の感覚を残したトレードルールが系統だってまとめられています。終値の折れ線チャートを使ってシンプルな分析を行い、その分析と整合性のあるポジション操作を行うために、3分割の売買が規定されているのです。

別な言い方をすれば、相場を実践する者が納得できる、感覚的にすんなりと受け入れられるルールが、多くの銘柄に利用できるよう定められているということです。

中源線の規定を、そのまま継続的に利用している人もたくさんいますが、深く理解した段階で自分なりのアレンジを加えて活用している人もいます。中源線は、相場の先行きをムリに当てようとせず、シンプルな判断と分割売買で相場の波を泳いでいこうとする姿勢を守った「建玉法」です。その体系が実に自然であると同時に、実践者の創造性を心地よく刺激してくれます。そして、創造性を発揮して積極的に行動するプレーヤーを満足させてくれるのです。

こういった部分が実に面白いため、林投資研究所では現在、中源線の説明と付随する情報発信に力を入れて取り組んでいます。

ルールはすべて公開していますから、ブラックボックスの部分はゼロ。誰にでも実行できるトレード手法です。その全内容は、書籍『中源線建玉法』に示していますが、四部構成のうちの第一部は無料配布版があります。ポジション操作と同様、じっくりと吟味して採用を決めることが不可欠だと考えて情報を整えています。

一定の要件を備えた手法ならば、良い悪いを一概に語ることはできませんが、個人の好みという問題は歴然とあるのです。

印刷版(無料で郵送)
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次回のフォローアップ(2)では、中源線の強弱判断と3分割の売買について、値動き図とともにわかりやすく説明し、分割売買の効用を解説します。
お楽しみに!

chg-1_cover_frame150四部構成の書籍『中源線建玉法』

その「第一部 解説」のみ、無料配布版があります。
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マジメに遊ぼう!

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「真剣にやれよ! 仕事じゃねぇんだぞ!」
タモリさんの名言だそうです。
詳しい状況はわからないのですが、私は次のようなことを思いました。
「確固たる基準をつくりにくい分野、他人の手助けが当たり前に用意されていないものでは、気を抜いたらすべてが崩れてしまう」

人間の脳は、「楽しい」と感じているときに真の能力を発揮するそうです。
笑う、ワクワクする、楽しむ──これらは、遊びにも仕事にも共通する不可欠な要素なのでしょう。

そういえば、古い世代の人からは、「ゴルフがうまいヤツは仕事をしていない」なんて言われましたが、今では「ゴルフがうまいのなら、仕事もデキるだろう」という意見が市民権を得ていると思います。
最近は、働き手の創造性を刺激するために、オフィス内に遊び場を設ける企業もあるようです。

トレードでは、自分が決めたことなのに実行できないケースが多々あります。

「これが自分のルールなんだ」という認識が甘い場合は、真剣味が足りないと評することができます。

でも、マジメにやろうとしてガチガチになっていることもあるでしょう。
例えば、パーティーの席でスピーチのために中央のマイクまで歩くとき、「きちんと、きれいな姿勢で歩いてみせよう」と考えただけで固くなり、右手と右足、左手と左足を同時に前に出してしまう……これが人間です。

トレードにも、“遊ぶ気持ち”や、リラックスした状態で、いつも通り心地よいイメージで臨む姿勢が大切だと思うのです。

とはいえ、使っているシステムのシグナルが「買い」なのに売りを建てたりしたら、単なる混乱が起こり、自分に対してウソの上塗りをし続けることになりそうです。
「買ったら下がり、下がりすぎて投げるに投げられないからナンピン買い増し」なんていうのも、正しい遊びになっていないといえます。

確固たる行動規範をもち、それをかたくなに守り、そのなかで遊ぶようにしないと、遊びとしてもシゴトとしても成立しないのでしょう。

トレードにおいて自分が何を楽しんでいるか──あえて考えてみるべきです。
というわけで、これが次のフリートーク交流会の“お題”です。

林投資研究所フリートーク交流会

林投資研究所フリートーク交流会

海の日がからむ三連休の初日ですが、都合のつくかたは、ぜひお運びください。

7月16日(土)午後
「投資を楽しんでますか? ~トレードを“苦行”にしないための工夫~」
詳しくは、こちらのページでご確認ください

研究部会報会員:無料  一般:3,000円(税別)


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ポジション操作しかない

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ある国でトイレに入ったら個室がものすごく広くて、座ったままでは手が届かない場所にトイレットペーパーが……どうしたものかと考えた私は、ズボンを下ろした状態で腰とヒザの角度を維持したままジワジワと前進、無事にたどり着いたのです。
めでたしめでたし。

株価の先行きをズバズバと当てる──。
これはトレーダー全員の理想です。捨ててはいけない希望です。
追い求める気持ちこそが、トレードの質を保つためのエネルギーなのです。

ところが、日々のトレードでは、「こんなはずでは……」ということばかり。
トイレットペーパーに手が届かないくらいなら軽いもので、「紙がない!」「水が流れない」「ドアが開かない」くらいの状況が日常茶飯事です。

買ったら下がる売ったら上がるのが当たり前です。
そんな値運びに対して、「き~っ」とか「わぁー」とか言いながらも、まずは適切な対応をしなければなりません。その対応の仕方が、「技術」と呼ばれるわけです。

分割売買は技法のはじまり(『相場技法抜粋』抜粋12、林輝太郎著)といいます。
安値の一点狙いで買うとか、高値を狙って上手に売るなんて非現実的なので、売りも買いも分割することで、平均値を“ボチボチにしよう”という考え方です。

「難」を平らにならすから、「難平」と書いてナンピンと読みます。
買ったけど大きく下げた、仕方がないから買い増しして……これは、計画外の増し玉で「やられナンピン」と呼ばれる悪手。技術とは縁遠いものです。

さて、超短期のトレードだけは単発的なポジション操作になりがちですが、それ以外は分割という発想が欠かせません。

買おうかなぁ、どうしようかなぁ……こう迷い始めたら、キリがありません。
もう少し安い場面があるかも……いや、上げ直前かもしれない……やっぱり、買ったあと下げトレンドになったらイヤだ…………

正解は、「とりあえず買う。でも分割の最初の1回のみにする」ことです。

売買を分割することによって、一点狙いから離れて慎重に値動きを観察し、株数が少ないうちに「出直そう」と被害最小の損切りを決断したり、「いけるぞ!」と感じて積極的に増し玉することができます。“自分の都合”を持ち込まない判断と行動が可能になるのです。

とはいっても、分割の具体的なタイミングや、ポジションを積み増す途中で緩急をつける判断基準などを自分自身で決めていく必要があるので、単純な2分割で練習するなど、“慣熟”のための努力も必要です。

分割を活用して値動きの波を泳いでいく──そんな売り買いを、ひとつの体系だったカタチにしたのが「中源線建玉法」です。

規格化された強弱判断と3分割のポジション操作は、多くの実践家が納得するロジックです。シンプルなだけに、そのまま利用して“自分流”に結びつけるのもひとつ、「乗って降りて損益をコントロール」という基本を刷り込むためのガイド役として利用するのもひとつ。いずれにしても、十人十色、いろいろなタイプの個人投資家にオススメできると確信しています。

6月13日の放送では、あらためて中源線の基本的な考え方を紹介しました。
「中源線は“建玉法”だ! ~ポジション操作がトレードのキモ~」
30分の動画は、こちらのページでご覧ください。
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5月16日放送のフォローアップ(4)
林 知之

“相場を張る”面白さ

誰もが何かしらの決め事をもってトレードに臨みますが、スキのないルールを決めておくのがシステムトレード、その場の判断を活用していくのが裁量トレードと分けて考えることができます。それぞれに、どんな特徴があるか、私たちにどんな盲点があるか──マーケット・スクランブル5月16日の放送では、中源線建玉法の特徴(長所と短所)を紹介しながら、トレードルールのあり方を考えました。
そのフォローアップ(4)です。

映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第84回 システムトレードの強みと弱み ~中源線の場合は~

どんな分野でも、実践する人をプロとアマに分けることができます。
でも、いわゆる「技術」では、上位のアマとプロに差がなかったり、それどころか、アマチュアのほうが上ということだってあるように思います。

プロとアマの違い……実にたくさんの事例があるでしょうし、比べる観点も多岐にわたりますから、トレードについて考えるにあたり、「継続性」や「安定性」の2つに絞りたいと思います。

大げさに聞こえるかもしれませんが、プロが最優先するのは「生き残る」ことです。
マーケットから退場させられずに生き残る、つまり「最悪でも大負けだけは回避して資金を残す」ということですが、多くの人はそんな言葉でワクワクしたりしません。だから、単行本のタイトルや雑誌が取り上げるテーマになることは極めてまれで、軽いノリで「儲かりまっせ」というイメージを放つ情報ばかりが目立つのです。

「生き残ることの大切さ」を、少し乱暴に表現すれば、「負けないでいれば、勝つときはカンタンに勝てる」ということです。絵に描いたように「取って取って取りまくる」ウハウハな状態など思い描かず、「勝ったり負けたり、取ったり取られたりでいいんだ」と考えます。実際の損益もプラスになったりマイナスになったりでいいんだ、ということです。

トレードは、スポーツなどほかの分野のこととは大きく異なり、「値動きが勝手に利益を伸ばしてくれる」のです。だから、そのチャンスを逃さないようにする、少なくとも、チャンス到来に気づかないとか、チャンスだと確信したのに資金が不足している、といった悲しい事態だけは避けなければなりません。

もちろん、その値動きによって、損失が勝手にどんどん膨らむこともあるわけです。
だからこそ、チャンスをものにするためにも、利益を出すことの前に「大損しない」ことが重要だということです。

例えば、資金1,000万円でスタートしたとします。
トレードですから“たまたま”の不運が重なることはあるので、あっという間に半分の500万円に減ってしまうことだってあり得ます。しかし、5割減はさすがに厳しく、再起の道が非常に長くなることは間違いありません。資金を半減させるほど失敗したあとなのに、見事に利益を重ねて資金を倍化させても、ようやく原点復帰というのですから、物理的に苦しいだけでなく精神的にも重たい状況に決まっています。

2割減って800万円になった、最悪でも3割減って700万円になった……これくらいならば、ニコニコと笑っているのは難しくても、ため息しか出ないというほど厳しい状況とは考えずにすむでしょう。

プロは、「資金が減って相場を張れなくなってしまう」という最悪の状況を恐れ、そこに近づかないように注意を払っているのです。

余談ですが、プロの世界にも例外があります。
高い率の成功報酬で契約したヘッジファンドのファンドマネージャーが、「10億円もらうか職を失うだけか」とイチかバチかのトレードを仕掛けるケースです。

実際は、ファンドマネージャーや証券ディーラーのように、他人の資金でトレードする立場にいる人でも、ほとんどがシビアなルールの下、大きなヤラレを生まずに前に進み、チャンスを着実にものにするという姿勢で臨んでいますけどね。

ここで、実に面白いことに気づきます。
プロとかアマという表面的な区別よりも、「誰が資金を用意するか」の区別が重要ではないかと。

プロの独立トレーダーは自己資金でトレードします。
アマチュアに分類される個人投資家も、同じく自己資金でトレードします。
この点で、「個人トレーダー」に関してはプロもアマもないといえます。

一部のファンドマネージャーが「10億円もらうか職を失うだけか」と考えることが可能なのに対して、個人トレーダーは「1億円取るか、1億円取られるか」のシゴトを強いられるということです。

プロとアマの違いは「ほかに収入源があるかどうか」だと考える人もいるでしょうが、プロと独立トレーダーだって、時間限定でほかの仕事をしていたりします。やはり、“トレード資金”に焦点を当てるのが合理的でしょう。

こんなふうに考えていくと、アマチュアこそ、「負けないトレード」「死なないトレード」(注)を目指し、「生き残るための工夫」をガッツリと考えるべきだという結論に達します。これでもかというくらい、ストイックな姿勢でトレードするべきだといえるのです。いかがでしょうか。

(注)死ぬ
古くからの相場用語で、「損失で資金が激減して張れなくなってしまう」こと。
林が比喩的に使ったものではありません。

とはいえ、常に苦虫をかみつぶしたような顔でクソ真面目に考えていたって、良いアイデアなんて浮かばないばかりか、ストレスがたまって健康を害してしまうでしょう。

良いシゴトをするためには、笑いも必要です。楽しみの要素が不可欠です。
脳科学でも、「人間のマインドは、楽しんでいる状態で最も力を発揮する」といわれています。

笑顔の女性

テレビでバレーボールの試合を見ながら、「1点取っただけでワーワーキャーキャー、プロらしく静かにしていられないのか!」と文句をつけているオッサンがいましたが、とんだ的外れの指摘です。日々、驚くようなつらい練習を重ねて試合に臨んでいるのです。その実力を十分に発揮するために、チームプレーの質を高めるために、「よしっ、やったぞ!」と笑顔でハイタッチしているのです。

トレードでも同じです。思惑通りの方向にちょっと動いただけで興奮してはしゃいでいたら、盲点だらけのスキだらけになるでしょう。しかし、何があっても表情すら変えないなんて、やはり不自然なことです。例えば、信頼できる仲間と飲みながら、「うまく取れたよ」などと笑顔で語るのは自然なことです。

人間の創造性を発揮すべき裁量トレードなら、事前に決めた原理原則をストイックに守りながらも、最後に「えいやっ」と決断して行動に移す場面では、「ここで買わないで、どうするの?」くらい熱いセリフがあっても当然だと思います。

「カネを殖やしたい」という強い気持ちがあるから、トレードをしているのです。
取られたら悔しい、取ったらうれしい……当たり前のことです。

もちろん、感情や感覚を表面的に利用するのはダメです。
例えば、「これはマズイ……切るべきだな」と思いながらズルズルと持続させるなんて、楽しんでいるのではなく自分にウソをついて「楽しめない状況」をつくっているだけです。その場かぎりの現実逃避です。

“売った買った”の行動を正しい方向に傾けようと工夫するのが、トレードを楽しむことです。現在の相場に自分が参加しているか否か、利益が出ているか否かは別にして、大きな上げ下げを見て条件反射的に「オォ~」と言ってみたり、ちょっとした気づきを新しい手法のアイデアに結びつけようと考えたり──生身の人間にとって、感情で反応したり、その反応から何かを創り出したりするのはナチュラルなことです。

ちなみに中源線建玉法は、実践者が冷静に考える理論をシンプルな状態でルール化しているので、人間の喜怒哀楽を持ち出しても納得できる内容です。そして、規定通りにポジションを動かしてみると、まさに「相場を張っている」感覚、感情を否定せずに上手にコントロールしようとしている構造が、とてもよく理解できます。

5月16日放送のフォローアップは、これで終わりです。

そして今夜は生放送です。
ここ数回は、生身の人間のマインドに注目してトレードの深い部分を語ってきましたが、今回はトレードルールの「ポジション操作」について考えます。
タイトルは、「中源線は“建玉法”だ! ~ポジション操作がトレードのキモ~」。
お楽しみに!

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5月16日放送のフォローアップ(3)
林 知之

機械的判断の限界と裁量の余地


誰もが何かしらの決め事をもってトレードに臨みますが、スキのないルールを決めておくのがシステムトレード、その場の判断を活用していくのが裁量トレードと分けて考えることができます。それぞれに、どんな特徴があるか、私たちにどんな盲点があるか──マーケット・スクランブル5月16日の放送では、中源線建玉法の特徴(長所と短所)を紹介しながら、トレードルールのあり方を考えました。
そのフォローアップ(3)です。

映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第84回 システムトレードの強みと弱み ~中源線の場合は~
値動きを機械的に判断する、つまり事前に用意した数式によって強弱を判断し、やはり数式によって具体的なポジション操作まで決定するやり方が、システムトレードと分類されています。

その数式、つまりトレードルールが極めてシンプルならば、「システムの答えを参考に自分自身で出処進退を決める」という取り組み方が可能です。これは、“システムと裁量の融合”と呼ぶことができるでしょう。

中源線建玉法はシンプルなルールで構成されているので、こうした使い方が可能です。

ただし、融合といっても、「システムが強気の答えなのに売り玉を持つ」というように、根底の判断を真逆にしてしまったら、そのあとの対応で混乱するなど、カンタンに実行できるものではありません。融合させる場合にも、限界というものがありますし、きちんとした決め事を作っておかないと自分で何をやっているのかがわからなくなります。原則といえる融合の指針、「やってはいけない」という御法度など、教科書となるべき注意事項があるわけです。

複雑なルールのシステムは、どうでしょうか。
複雑すぎてブラックボックス化しているものは論外としても、例えば自動執行を前提とした頻度の高いトレードシステムを組むために、数多くの細かい条件を重ね合わせたものなどは、個々の条件は感覚的に納得できても、システム全体としては人間の感覚が追いつかないものになりがちです。

この種のシステムでも、そのシステムを動かす、止める、金額を設定するなど、重要な部分を決定する人間の仕事があります。

例えば、A、B、Cと3種類のシステムを使っているとします。
トレード資金を、A、B、Cそれぞれにどう配分するかは人間が決めることです。状況によっては、「Aを止めて、その資金をBとCに回す」といった対応もあるでしょう。あるいは、「Aを止めるだけで、BとCの資金は変えない」という対応もあります。
これらの対応も、ある意味、システムと裁量の融合と呼べるはずです。

ただし、A、B、Cそれぞれのシステムの特性を熟知している必要があります。
特性がわかっていない、あるいは特性について理解が浅い場合、例えば直近の結果だけで判断して成績の悪いものを“当たり始める直前”で止め、資金を増やしたシステムが“曲がり始める”(注)といったサイアクな展開も考えられるからです。

(注)曲がる=相場の見通しが外れること。

話を広げすぎたので、最初に示した「シンプルなシステムを利用して自らの判断を加える」取り組み方に絞って考えます。

どんなシステムでも、どんな判断基準でも、合う銘柄と合わない銘柄、あるいは、合う時期と合わない時期が生じます。どんな銘柄でも、どんな相場つきでも取れるなんて、あり得ません。

そこで、固定的な数式では判断できない部分を、創造力ある人間が補おうという発想が生まれるわけです。わかりやすい例としては、「値動きが荒いから、トレードを中止して様子を見よう」といった対応です。単純な裁量トレードにおいても、実際に行われる対応です。値動きが荒いがゆえに利益のチャンスもあるのですが、それを捨てることで「やっぱりね」と後悔するような損失を回避しようということです。

でも、人間が手を加えることで、本当にパフォーマンスが上がるのか、安定した成績を出すことになるのか、といった議論があるのです。

人間は、持ち前の創造性によって、器用に立ち回ることができます。しかし、その器用さが仇(あだ)になるケースだってあります。それに、数式を集合させたトレードシステムに得意不得意があるように、生身の人間にも得手不得手があります。

そもそも、人間の判断ではブレが大きいからシステムを利用する、機械的な判断を基にするというのが当初の発想だったのに、あらためて人間の判断を追加してもいいのでしょうか。どんどんと泥沼にはまっていく行為にも思えます。

それでも、最後は自分自身で決めてポジションを動かしたい……こう考えるのが人間です。

そんな創造のエネルギーがあるから、システムを構築したり、既存のシステムを吟味して選んだりしているのです。「見込み違いの損失は必要経費だ」と理解しながらも、無用の損失を減らしたい、平たく言えば「当てたい」という気持ちが消えたら、トレードそのものから退いてしまうかもしれません。

これが、人間の性(さが)です。

「よし、あきらめた。このシステムの通りにトレードし続けよう」と心を決めるのも、生身の人間による、創造性ある決断にほかなりません。しかし、しばらくすると、「やっぱり、少し変えようか……」とウズウズし始めたりします。
こうして、悩みを抱えながら終わりのない旅を続けるのがトレード、相場を行うということなのでしょう。

哲学しすぎて迷走してしまう前に、現実に戻りたいと思います。

私は中源線を信頼していますし、その信頼を深めるために、ひたすらシグナル通りの売買を継続しています。しかし実は、裁量を加えていくための準備でもあるのです。

現在手がけている8銘柄のうちで直近、「こういう場面で裁量を入れたいんだよなぁ」と感じた事例を紹介します。
コンスタントに値動きのある、5911横河ブリッジHDです。

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この銘柄は、「中源線シグナル配信」サービスで、研究対象銘柄に選んだ99銘柄(ユニバース)に入っています。最長31年間の検証によって、パフォーマンスが良好かつ安定している、将来も安心して取り組めると期待できる、ということです。

しかし、陰陽転換の判断やポジション操作(増し玉、トレンド途中の手仕舞い)に対して「もっと精度を上げたい!」と思う気持ちから、実にいろいろなことを考えるものです。

横河ブリッジは、チャートの中央あたり、2015年10月に陽転しています。
でも、この手前の安値往来、8月から10月初めにかけての保合は、徐々に小動きになりながら下値を切り上げています。相場に「絶対」なんてないものの、誰が見ても「買い」といえるような値運びです。そして、その通りに上昇に転じたのです。しかし、たまたまですが、中源線が陽転と判断する値動きパターンが生まれず、少し上がったところで遅れて陽転しました。

上記の10月の陽転は遅いタイミングでしたが、そのあと大きく上伸したのでバッチリ利益になりました。なおかつ、2015年12月の陰転は、トレンドフォロー型の中源線にしては素早く、見事なタイミングでした。こういうときは、手のひらを返したように「さすが中源線!」なんて言葉が頭に浮かぶものです(笑)。

2016年2月にかけて大きく下げて評価益も膨らみましたが、そのあとの陽転はまたもや遅いタイミングでした。2016年3月、安値から100円以上も上げたところで陽転し、それまでの売りポジションの利益が確定したのですが、タイミングが遅れた陽転は結果としてダマシになったのです。

ダマシの陽転のあと陰転してからはスルスルッと下げましたが、4月上旬からグイグイと逆行しました。しかも、たまたま中源線の判断に引っかかる値動きパターンがなかったことから、陽転しないまま大幅な逆行をみせたのです。
これは、たまりません。「おいおい……」と、返事がないのを知りながら文句を言いたくなる場面です。

裁量による「手仕舞い、休み」を行うと決めていたならば、直前の保合を上回った時点で踏んで(注)、今でもポジションのないままでいたのではないかと想像します。

(注)踏む=カラ売りを損して手仕舞うこと。買いの損切りは「投げ」。

とにかく、今は「シグナル通り」に売り買いすると決めているので、「なんだ、この逆行は?」と思いながら売りポジションを維持していたところ、この会社がかかわっている現場での事故をきっかけに暴落したのです。すんなり受け入れにくい状況で評価損という状況から一転、評価益が生まれたわけです。

結果的には妙にドラマチックな展開となったのですが、極端な状況だけに、またもや裁量を入れたくなりました。1,000円を割り込んで、いったん止まった場面で、裁量で利食い手仕舞いして休みたいと感じたのです。

「荒い動きが続いているから、この先はダマシが出やすい」
「突発的な悪材料で下げたのだから、ひとまず手仕舞いだろう」
「精神的に疲れたので、休みたい」

上のチャートは、放送(5月16日)に使った時点よりも2週間以上たった、6月1日までの動きです。6月1日の大引は1,088円なので、1,000円割れを見て「利食いして休みたい」と感じた私が「ほらね」と言いたくなるように、100円超も戻している状態です。

さて、ここで直近の損益を確認してみます。

「素早く陰転した」と評した、2015年12月の陰転以降の成績は、以下の通りです。
(日付は、シグナル翌日の実際の売買日。大引で判断→翌日寄付で売買)

2015年12月28日 1単位売り新規 1,311円 → 3月15日買い返済 1,185円
2016年1月14日 1単位売り新規 1,231円 → 3月15日買い返済 1,185円
2016年1月25日 1単位売り新規 1,202円 → 3月15日買い返済 1,185円
+189円幅(3単位合計)

2016年3月15日 1単位買い現物 1,185円 → 4月4日売り 1,132円
1単位のみ -53円幅

2016年4月4日 1単位売り新規 1,132円
2016年4月12日 1単位売り新規 1,096円
2016年4月13日 1単位売り新規 1,139円
以上3単位を継続中 評価損益 +103円幅(3単位合計)

現在は3単位売りポジションを持続しているわけですが、この売り建ての評価益103円は、1,000円割れの段階では最大で500円幅もあったのです。だから、「ほらね」となるのですが、何が起こるかわからないのが相場で、さらに大きく下げていたかもしれないわけですし、その下げに対してドテン買っていたら評価益が縮まったどころの騒ぎではなかったはずです。すべては“タラレバ”なのです。

いやあ、相場って面白いですね!

次回のフォローアップ(4)は、「“相場を張る”面白さ」と題して、またまた生身の人間の特性に焦点を当てます。カチッとしたストイックな行動の中に遊び心を入れること、つまり、適正ながらも楽しさを捨てない、生身の人間らしい行動というものを考えてみましょう。
お楽しみに!

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