機械的判断の限界と裁量の余地
誰もが何かしらの決め事をもってトレードに臨みますが、スキのないルールを決めておくのがシステムトレード、その場の判断を活用していくのが裁量トレードと分けて考えることができます。それぞれに、どんな特徴があるか、私たちにどんな盲点があるか──マーケット・スクランブル5月16日の放送では、中源線建玉法の特徴(長所と短所)を紹介しながら、トレードルールのあり方を考えました。
そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第84回 システムトレードの強みと弱み ~中源線の場合は~)
値動きを機械的に判断する、つまり事前に用意した数式によって強弱を判断し、やはり数式によって具体的なポジション操作まで決定するやり方が、システムトレードと分類されています。
その数式、つまりトレードルールが極めてシンプルならば、「システムの答えを参考に自分自身で出処進退を決める」という取り組み方が可能です。これは、“システムと裁量の融合”と呼ぶことができるでしょう。
中源線建玉法はシンプルなルールで構成されているので、こうした使い方が可能です。
ただし、融合といっても、「システムが強気の答えなのに売り玉を持つ」というように、根底の判断を真逆にしてしまったら、そのあとの対応で混乱するなど、カンタンに実行できるものではありません。融合させる場合にも、限界というものがありますし、きちんとした決め事を作っておかないと自分で何をやっているのかがわからなくなります。原則といえる融合の指針、「やってはいけない」という御法度など、教科書となるべき注意事項があるわけです。
複雑なルールのシステムは、どうでしょうか。
複雑すぎてブラックボックス化しているものは論外としても、例えば自動執行を前提とした頻度の高いトレードシステムを組むために、数多くの細かい条件を重ね合わせたものなどは、個々の条件は感覚的に納得できても、システム全体としては人間の感覚が追いつかないものになりがちです。
この種のシステムでも、そのシステムを動かす、止める、金額を設定するなど、重要な部分を決定する人間の仕事があります。
例えば、A、B、Cと3種類のシステムを使っているとします。
トレード資金を、A、B、Cそれぞれにどう配分するかは人間が決めることです。状況によっては、「Aを止めて、その資金をBとCに回す」といった対応もあるでしょう。あるいは、「Aを止めるだけで、BとCの資金は変えない」という対応もあります。
これらの対応も、ある意味、システムと裁量の融合と呼べるはずです。
ただし、A、B、Cそれぞれのシステムの特性を熟知している必要があります。
特性がわかっていない、あるいは特性について理解が浅い場合、例えば直近の結果だけで判断して成績の悪いものを“当たり始める直前”で止め、資金を増やしたシステムが“曲がり始める”(注)といったサイアクな展開も考えられるからです。
(注)曲がる=相場の見通しが外れること。
話を広げすぎたので、最初に示した「シンプルなシステムを利用して自らの判断を加える」取り組み方に絞って考えます。
どんなシステムでも、どんな判断基準でも、合う銘柄と合わない銘柄、あるいは、合う時期と合わない時期が生じます。どんな銘柄でも、どんな相場つきでも取れるなんて、あり得ません。
そこで、固定的な数式では判断できない部分を、創造力ある人間が補おうという発想が生まれるわけです。わかりやすい例としては、「値動きが荒いから、トレードを中止して様子を見よう」といった対応です。単純な裁量トレードにおいても、実際に行われる対応です。値動きが荒いがゆえに利益のチャンスもあるのですが、それを捨てることで「やっぱりね」と後悔するような損失を回避しようということです。
でも、人間が手を加えることで、本当にパフォーマンスが上がるのか、安定した成績を出すことになるのか、といった議論があるのです。
人間は、持ち前の創造性によって、器用に立ち回ることができます。しかし、その器用さが仇(あだ)になるケースだってあります。それに、数式を集合させたトレードシステムに得意不得意があるように、生身の人間にも得手不得手があります。
そもそも、人間の判断ではブレが大きいからシステムを利用する、機械的な判断を基にするというのが当初の発想だったのに、あらためて人間の判断を追加してもいいのでしょうか。どんどんと泥沼にはまっていく行為にも思えます。
それでも、最後は自分自身で決めてポジションを動かしたい……こう考えるのが人間です。
そんな創造のエネルギーがあるから、システムを構築したり、既存のシステムを吟味して選んだりしているのです。「見込み違いの損失は必要経費だ」と理解しながらも、無用の損失を減らしたい、平たく言えば「当てたい」という気持ちが消えたら、トレードそのものから退いてしまうかもしれません。
これが、人間の性(さが)です。
「よし、あきらめた。このシステムの通りにトレードし続けよう」と心を決めるのも、生身の人間による、創造性ある決断にほかなりません。しかし、しばらくすると、「やっぱり、少し変えようか……」とウズウズし始めたりします。
こうして、悩みを抱えながら終わりのない旅を続けるのがトレード、相場を行うということなのでしょう。
哲学しすぎて迷走してしまう前に、現実に戻りたいと思います。
私は中源線を信頼していますし、その信頼を深めるために、ひたすらシグナル通りの売買を継続しています。しかし実は、裁量を加えていくための準備でもあるのです。
現在手がけている8銘柄のうちで直近、「こういう場面で裁量を入れたいんだよなぁ」と感じた事例を紹介します。
コンスタントに値動きのある、5911横河ブリッジHDです。

この銘柄は、「中源線シグナル配信」サービスで、研究対象銘柄に選んだ99銘柄(ユニバース)に入っています。最長31年間の検証によって、パフォーマンスが良好かつ安定している、将来も安心して取り組めると期待できる、ということです。
しかし、陰陽転換の判断やポジション操作(増し玉、トレンド途中の手仕舞い)に対して「もっと精度を上げたい!」と思う気持ちから、実にいろいろなことを考えるものです。
横河ブリッジは、チャートの中央あたり、2015年10月に陽転しています。
でも、この手前の安値往来、8月から10月初めにかけての保合は、徐々に小動きになりながら下値を切り上げています。相場に「絶対」なんてないものの、誰が見ても「買い」といえるような値運びです。そして、その通りに上昇に転じたのです。しかし、たまたまですが、中源線が陽転と判断する値動きパターンが生まれず、少し上がったところで遅れて陽転しました。
上記の10月の陽転は遅いタイミングでしたが、そのあと大きく上伸したのでバッチリ利益になりました。なおかつ、2015年12月の陰転は、トレンドフォロー型の中源線にしては素早く、見事なタイミングでした。こういうときは、手のひらを返したように「さすが中源線!」なんて言葉が頭に浮かぶものです(笑)。
2016年2月にかけて大きく下げて評価益も膨らみましたが、そのあとの陽転はまたもや遅いタイミングでした。2016年3月、安値から100円以上も上げたところで陽転し、それまでの売りポジションの利益が確定したのですが、タイミングが遅れた陽転は結果としてダマシになったのです。
ダマシの陽転のあと陰転してからはスルスルッと下げましたが、4月上旬からグイグイと逆行しました。しかも、たまたま中源線の判断に引っかかる値動きパターンがなかったことから、陽転しないまま大幅な逆行をみせたのです。
これは、たまりません。「おいおい……」と、返事がないのを知りながら文句を言いたくなる場面です。
裁量による「手仕舞い、休み」を行うと決めていたならば、直前の保合を上回った時点で踏んで(注)、今でもポジションのないままでいたのではないかと想像します。
(注)踏む=カラ売りを損して手仕舞うこと。買いの損切りは「投げ」。
とにかく、今は「シグナル通り」に売り買いすると決めているので、「なんだ、この逆行は?」と思いながら売りポジションを維持していたところ、この会社がかかわっている現場での事故をきっかけに暴落したのです。すんなり受け入れにくい状況で評価損という状況から一転、評価益が生まれたわけです。
結果的には妙にドラマチックな展開となったのですが、極端な状況だけに、またもや裁量を入れたくなりました。1,000円を割り込んで、いったん止まった場面で、裁量で利食い手仕舞いして休みたいと感じたのです。
「荒い動きが続いているから、この先はダマシが出やすい」
「突発的な悪材料で下げたのだから、ひとまず手仕舞いだろう」
「精神的に疲れたので、休みたい」
上のチャートは、放送(5月16日)に使った時点よりも2週間以上たった、6月1日までの動きです。6月1日の大引は1,088円なので、1,000円割れを見て「利食いして休みたい」と感じた私が「ほらね」と言いたくなるように、100円超も戻している状態です。
さて、ここで直近の損益を確認してみます。
「素早く陰転した」と評した、2015年12月の陰転以降の成績は、以下の通りです。
(日付は、シグナル翌日の実際の売買日。大引で判断→翌日寄付で売買)
2015年12月28日 1単位売り新規 1,311円 → 3月15日買い返済 1,185円
2016年1月14日 1単位売り新規 1,231円 → 3月15日買い返済 1,185円
2016年1月25日 1単位売り新規 1,202円 → 3月15日買い返済 1,185円
+189円幅(3単位合計)
2016年3月15日 1単位買い現物 1,185円 → 4月4日売り 1,132円
1単位のみ -53円幅
2016年4月4日 1単位売り新規 1,132円
2016年4月12日 1単位売り新規 1,096円
2016年4月13日 1単位売り新規 1,139円
以上3単位を継続中 評価損益 +103円幅(3単位合計)
現在は3単位売りポジションを持続しているわけですが、この売り建ての評価益103円は、1,000円割れの段階では最大で500円幅もあったのです。だから、「ほらね」となるのですが、何が起こるかわからないのが相場で、さらに大きく下げていたかもしれないわけですし、その下げに対してドテン買っていたら評価益が縮まったどころの騒ぎではなかったはずです。すべては“タラレバ”なのです。
いやあ、相場って面白いですね!
次回のフォローアップ(4)は、「“相場を張る”面白さ」と題して、またまた生身の人間の特性に焦点を当てます。カチッとしたストイックな行動の中に遊び心を入れること、つまり、適正ながらも楽しさを捨てない、生身の人間らしい行動というものを考えてみましょう。
お楽しみに!
四部構成の書籍『中源線建玉法』
その「第一部 解説」のみ、無料配布版があります。
1.印刷版(無料にて郵送)
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