相場のミスはゼロにできる!
春高が実現すると、5月が売り場になる? 急落もある?
この発想は実践的に正しいのですが、単なる恐怖心として“正解探し”をするか、自らの意思で「対応」「対処」の具体策を準備するか──ちょっとした方向性のちがいが明暗を分けます。
5月8日の放送では、誰もが嫌がる「急落」という言葉から、中源線の特徴を説明するとともに、トレードの根本的な問題を取り上げて解説しました。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第108回 Sell in May? 中源線は急落にどう対応するのか)

トレードの最大の経費は?
フォローアップ(1)にも掲載した、急落時の対応一覧をあらためて示します。

買いポジションを持っている場合の対応で、「A 切って何もしない」と「C 切ってドテン売り」は、どちらも決済(手仕舞い)を伴います。なので、利食いかもしれませんが、損切りの可能性もあります。
あるいは「B 買い増し」でも、ポジションを増やして利益が増加する可能性がある一方、損の金額が膨らむ可能性も秘めています。
とにかく、損益という生々しい結果が生じるのがトレードです。
相場のミスは「見込み違いによる損切り」という考え方に結びついてしまうのです。
しかし、多数の投資家がマーケットという場に集まって競争しているので、個々のトレードが“勝ったり負けたり”になるのは必然。誰がやっても大きな差は生じません。負け続ける人はいるのですが、勝ち続ける人は存在しないのです。
トレードの損失は避けられないもの、「経費」と考えるしかない。
こんな結論が実践的だと言わざるを得ないのです。
プレーヤーとしての務めは、その経費を低く抑えることであって、損失ゼロを目指すなんて非現実的。絶対に損をしたくない──そんなイメージが頭にあると、道を誤るわけです。
トレードの経費は、売買手数料でもなければ各種の情報料でもなく、トレードの損失なのです。

相場の“ミス”とは?
では、相場のミスとはなにか──。
経費(売買損)の抑制がうまくできないこと、損失が必要以上に拡大する状況を放置してしまうこと、などです。
一定の頻度で仕掛けを行った場合、損切りの回数を減らすよりも、損失の額を抑えるのが“務め”です。損失の額を抑えると、見込み違いのときに要する時間(ポジションを持つ期間)も短くできます。当然、精神的負担も軽減できます。
儲けをガンガンと拡大するのではなく、損失を抑えるのですから、とても地味な作業です。でも、その地味な作業を静かに継続するよう努めるべきです。
見込み違いだと察した場合、「切ってしまうべきだよな……」と思うのですが、しっかりとした基準がなくて切ることができない、そのままズルズルと先送りしてしまうのが相場“あるある”です。
「負けを確定したくない」という感情をつい優先させてしまう結果、資金を長々と寝かせたあと、最後の最後に大幅な損切りをするという悲劇につながってしまいます。こんなことだけは避けたいのです。
しかし、少しくらい評価損が生じただけで切りまくっていたら、相場を張る行為が成立しません。最安値を拾ったり最高値で売りを仕掛けることは不可能なので、買い始めた時点、あるいは売りを仕掛け始めた時点で評価損が発生するのは当たり前です。
やはり、確固たる基準をもつべきですが、トレードは自分ひとりの作業なので、一定の緊張感を保ちにくい、必要な“意識”を維持しにくいものです。
常に“次の一手”を考えるクセをつけるべきです。
次項で、ちょっとしたヒントを示しましょう。

「なにもしない」も行動のひとつ
現時点でのポジションに不安を感じながらも、切らない、減らすこともしない……魔法の言葉「様子見だ」を武器に自分を悪い方向に誘導するのが、前項で述べた“先送り”です。
でも、ちょっとした値のブレ、相場の“あや”で反応していたら、ドッテンバッタンとダメな売買を繰り返すだけです。
なにもしない、つまり「ポジションそのまま」という状況は多いと思います。かなり短期売買でない限り、毎日のように売ったり買ったりはしないでしょう。
では、実際に「ポジションを維持」というとき、単に「なにもしない」と軽く流すのではなく、「“なにもしない”と決断した」「ポジションを動かさないという“一手”を自ら選んだ」と定義してください。誰にも強制されない、自分の自由意思です。だからこそ、「なにもしないんだ」とハッキリ、心の中で言ってください。
中源線を利用する利点は、こんなところにあります。
日々、終値をチェックして場帳を記入し、それからチャートに1本の線を描き足す。このとき、たとえ翌日の売買がなくても、「法示(シグナル)はない」とハッキリ確認する作業があります。
実践家としての理想的な対応を、いやでもなぞることになるのです。
ペン字を習う人が、教科書に薄く印刷されたお手本の字をペンでなぞるのと同じで、正しいやり方を効率よくインプットする効果があるのです。
今回も、実例を見ながら確認しましょう。

テイクアンドギヴ・ニーズは、2016年11月9日の急落で陰転しませんでした(1)。9月に陽転してモタモタしていたところ、11月に入ってから上げが加速し始め、12月と2017年1月の保合でも陰転せず1,000円超まで上伸しました。
これについて「ほら、当たった」というハナシではありません。
2016年11月9日の急落場面では、中源線で陰転した個別銘柄がたくさんあります。その中でテイクアンドギヴ・ニーズは、「陰転しなかった」「ガクンと下げたことを受けても“持続”と判断した」ということで、重要なのは「なにもしない」という明確な答えを出し、その通りに行動する理由もハッキリしていたということです。
もし11月9日の下げで陰転していたら……おそらく、その後の上昇で再び陽転していたでしょう。余分な転換が起こり、陰転で仕掛けた売り玉が損、そのあとの買いはタイミングが遅れるということになるのですが、そんな結果論を持ち出すとキリがありません。
ちなみに、感覚的に納得できるかは別として・・・
2017年2月に、高値からズルッと下げたところで陰転した(2)
翌3月に高値を更新しても陰線が続いた(3)
これらも、中源線による確固たる判断、事前に決めていた通りの対応です。

個人投資家のワザ“トレードの分業”
個人投資家は自由です。
社会的なしがらみはなく、行動はいっさい制約されません。
そのかわり、ひとり数役をこなす、ちょっと器用な対応を求められます。
取れるときは取るべきです。小幅の利食いに徹するのが手堅いわけではありません。だから、攻めていくべき場面もあります。
ところが、そんな気持ちを抑えたりコントロールする“別の自分”も必要です。
ファンド運用で分業化されている各種の業務、例えば、アセットアロケーション(資金配分の計画)、銘柄選別、調査といったことを、すべて単独で行うのが個人投資家のシゴトです。
感覚を駆使して自由闊達(かったつ)に行動できるといっても、意外と緻密な行動計画や見直し作業が必要だと考えるべきなのです。
このあたりの機微を考えてほしいと思い、新刊『ブレない投資手法 曲げない投資哲学』には、次のようなリアリティあふれる事例を掲載しました。
1項目をそのまま引用します。
買う理由を明確にしよう
ポジションを取るときの「決め手」について考えてみます。トレードなので下げを取るカラ売りだって特別なものではないのですが、わかりやすくするため、「買う理由」という表現を使いました。「なぜ、その銘柄を、そのタイミングで買ったのですか?」と具体的な質問をすると、見事といえるほど何も答えられない人が多いからです。
そこで、「買う理由を明確にしよう」と題し、コントロールされたトレードとはどんな状態なのかというテーマを思いつきました。
買う理由、つまり想定は、自分自身の価値観による独自のものでOK、いや、独自のものであることにこそ意味があるという提言です。
架空のトレーダー2人を登場させ、「買う理由」の意味を考えてみましょう。
個人トレーダーのAさんとBさん2人が、同じ銘柄を同じタイミングで買ったとします。しかし、買った理由はそれぞれちがいます。
Aさんは、尊敬する評論家の講演会を聞いて買ったのですが、話の途中で寝てしまい、最後に紹介された銘柄をメモしただけで買いを決断しました。
Bさんは、独自の予測法を使って同じ銘柄を買うことにしたのですが、誰にも認めてもらえないようなヘンクツ理論を基にしています。
2人が同じタイミングで買った銘柄は当初、順調に上がりかけたのですが、トレンドが変わったのかズルズルと値を下げ、買い値よりも2割ほど下で動かなくなってしまいました。
さて、2人は今後について、どのように考えていくでしょうか?
ヘンなお話を展開してスミマセン……でも、「トレードあるある」として想像してほしいのです。私が注目するのは、2人の「買った理由」が、どこから生まれたものかという点です。
Aさんの行動は、評論家の意見が基です。尊敬している人物とはいえ、講演の最後の銘柄情報だけをゲットして買った、完全な他力本願の行動です。
予測不能なマーケットでの出来事を想定したり、時間切れによる撤退を選択肢に入れていたかと考えると、この部分が弱いと感じます。
Bさんにだって同じことがいえますが、ヘンクツ理論とはいえ、完全にオリジナルの予測法を使っているので、予測が外れたときの処理、当たって見事に上昇したときの勝ち逃げポイントなどを、やはり独自の価値観で考えやすいはずです。
3年後、2人そろって資金をゼロにしてしまっているかもしれませんが、少なくともAさんは、買った理由があまりにも不明確です。
もし評論家の論理をきちんと聞いていたとしても、それをどこまで“自分のもの”にしているかと考えると、疑問が残るのです。
ほとんどの講演会で話の中心となるファンダメンタル分析を否定するつもりはありませんが、値動きへの対応という面では足りない部分があり、独りよがりの予測に固執しやすいともいえます。
想定外の動き、荒い動きをすることも多々あるのがマーケットです。自分自身とポジションの両方をコントロールしていくためには、芯となる考え方が必要です。いろいろなパターンに対応できる「型」が求められるのです。
(『ブレない投資手法 曲げない投資哲学』 「買う理由を明確にしよう」)
マーケットでは日々、さまざまな変動が起こっています。
だから、すべての変化に合致する方程式はありません。
「あと少し精度を上げたい」「もう少し詰めたい」という切なる思いを少し抑え、最大公約数的な行動スタイルを確立しないと、常に右往左往することになります。
急落する可能性はあるか、急落したらどう対処するか……こう考えてデンと構えていたいのですが、わずかにラインを超えて“恐怖”の状態に陥るのが人間の弱さです。
「急落したらどうしよう・・・」
「急落しないでくれ~」
徹底して計画通りにトレードする、そのための一歩として「自分を型にはめて行動する」のが、制約を受けない立場の個人投資家が行うべきタスクなのです。
これで、5月8日放送のフォローアップは終了です。
次の放送は、6月12日(月)夜8時からです。あらためて、トレードにおける「分割売買」の意味と具体的な使い方を説明します。
お楽しみに!

書籍『中源線建玉法』の「第一部 解説」には、無料配布版があります。印刷版(無料郵送)のほか、PDF版またはeBook版(ダウンロード)もあります。
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