大阪トランプ | 林知之


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先日から、ポケモンGOのプレーヤーが街中にいます。
「歩きスマホはダメ」って、スマホを片手に歩きながらプレーするゲームです。
知らずに歩いている人にとって、急に立ち止まったりクルッと向きを変える人をよけるのがゲームとなっていますが、得点はありません……。

株式市場では任天堂などポケモン関連がにぎわっているようですが、材料張りはしないので特に興味はなく、ふと80年代の証券会社店頭の風景を思い出しました。

任天堂は、明治時代の初期から花札を作っていた会社で、日本で初めてプラスチック製のトランプを作ったそうですが、社名の由来が「運を天に任せる」というのですから、テキトーというか自由奔放というか、昔の社内はどんなだったかと想像を巡らせてしまいます。

70年代からはゲーム機の製造に取り組み、紆余曲折を経て大当たりしたのが、1983年に発売されたファミリーコンピュータ、通称「ファミコン」です。
株価はうなぎ登り、多くの個人投資家が相場に参加していました。

同じ1983年に東証第一部に上場との記録がありますが、もっぱら大阪市場の商いが中心で、店頭のお客さんが「任天堂の板を見てくれ」と言うと、株式部を経由して電話で板の状況を聞くのです。
インターネットどころかケータイもなく、私が証券会社で働き始めた1986年は、漬け物石のように重たいショルダーフォンが発売されて間もないころでした。

支店の片隅には、「場電」と呼ぶ真っ黒い無骨な電話機がありました。
ダイヤルもボタンもなく、重たい受話器を手に取って電話機の横のダイヤルをグルグルっと回すと相手方(株式部)の場電がリリリーンと鳴る仕組みです。

証券会社が使う任天堂のニックネーム(符丁)は「トランプ」。
東証ではなく大証の板状況を聞くので、ダイヤルをグルグルッと回して相手が出たら「大阪トランプ、バイカイ」と告げます。

数分すると情報が届くので、紙に書いて依頼したお客さんのところへ行くと、周囲の常連客ものぞき込み、やいのやいのと意見を言い出すのです。
おもしろい時代でしたね。

相場の世界は、昔も今も情報戦の毎日です。
電話加入者が200に満たなかった時代、東証に2台の電話があったそうです。
そしてインターネットが普及する前は、月々の料金がバカ高い専用線でつないでいる情報端末のニュースや、立会場、あるいは営業マン経由で最新の情報が伝わっていました。アナログ時代とは思えないスピードで。

で、その内容はというと、実にいいかげんな情報もたくさんありました。
スピードが命とばかり、話の半分も聞かずに顧客や他社の営業マンに電話するので、全くのデマに尾ひれがついてホンモノっぽくなっちゃう。
ピンピン元気な有名人が死んだという話で薬品関連の銘柄が物色されたり、世間と隔離された閉鎖的な世界で、とんでもない話が飛び交っていました。

「終値だけを見て判断しよう」と言うと、「今どき、そんなモタモタしてて儲かるのかよ!」と突っ込まれるのですが、情報の量もスピードも段違いの現代でこそ、一線を画した姿勢に価値があると考えています。


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