三菱自動車の不正なんて目じゃない | 林知之


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最近の世の中は、やたらと他人に厳しく、何かすればすぐに〇〇〇ハラスメントと責められ、とうとう「モラルハラスメント」なる言葉まで登場してしまい、昭和の男には居場所がない……そんな嘆きも聞こえてくるのですが、三菱自動車が燃費のデータを改ざんした不正は企業の社会的責任などから大問題、ぜひともメーカーとしてのあり方を見直してほしいと思います。

突然に“社会派”を気取るつもりはありません。
燃費データの不正から、トレードシステムのパフォーマンス計算のプロセスについて、ふと考えたのです。

システムは、根幹のルール(ロジック)がそのままでも、パラメータという値を変えることで損益が変化します。パラメータとは、いわゆる“調節つまみ”で、値動きを判断する際の“効き具合”を調整する部分です。

日常生活ならば何でしょう……例えば、モラルハラスメントの判定にしましょう。
ダンナの言動がモラルハラスメントになるか否か──その基準が緩いか厳しいかというようなことです。
「オンナ子どもはすっこんでろ!」は、標準的な基準でアウトです。たぶん……。でも「女性は後ろに下がっていて」ならば標準ではOK、というか「守ってくれるのね、頼もしい~」と高評価かもしれませんが、厳しい基準を持ち出せば「そんなのは性差別だ!」とアウトの判定、みたいなことでしょう。

上記の例えは、ぜひ優しい基準で判定してもらうことにして本題に戻ります。

トレードシステムのパフォーマンスを数字で示す場合、過去の値動きで検証する以外に方法はありません。では、例えば過去1年間のパフォーマンスを検証する場合、「ちょうど、その1年でパフォーマンスが最高になるようにパラメータを調整」したくなります。でも、その設定が、これからの1年、これからの3年、5年で通用するかどうかは未知数で、往々にして通用しない、あるいは、通用するけどドローダウン(途中経過での累積損)が大きすぎて実用に耐えない、といったことになります。

こういう過度な最適化を、「カーブフィッティング」と呼びます。
要するに、現実を無視した設定ということですね。
前日に寒かったという事実から、今日も明日もセーターを着る、みたいなことでしょうか。おっ、この例えはいいですね!

今回は「三菱自動車の不正なんて目じゃない」というタイトルですが、トレードシステムの多くがこういったムチャな数値で宣伝をしているということではなく、純粋な気持ちで“未知の未来”に使おうとして、やってしまう落とし穴、“システムトレードあるある”だということが言いたいのです。

手前ミソですが、中源線シグナル配信のシステムを仕上げる際、この落とし穴に自らはまらないよう細心の注意を払いました。

単純なカーブフィッティングはもちろん、例えばパフォーマンスの高い銘柄を「ユニバース」として選定する時にも、“実用性”を重視する観点をしっかりと盛り込みました。単に過去の成績が良いものを選んでしまうと、「バブル期の上げ相場で莫大な儲け、でもその後はションボリ」なんて銘柄をリストに載せることになりますし、「大きな利益と大きな損失を年ごとに繰り返す」ような銘柄をおすすめすることも絶対に避けたいと考えたのです。

まとめます。
トレードの設定は、それが裁量でもシステムでも、自分の利益のための工夫のはずが「不正」となり、自分の不利益になってしまうことがあります。計算よりも現実に目を向けて、“確信ある自分流”を構築してください。


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