連載「相場のこころ トレードの本質」その12 | 中源線研究会

正しい再投資
 
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若い世代ほど知識や情報が豊富で、ものごとを合理的に考えているようなのですが、「計算」に偏りすぎることも多いみたいで、調べものはネット検索して終わりとか、やたらと「コスパ」(コストパフォーマンス、費用対効果)なんて言葉を口にしたりします。彼女をつくるなんてコスパがよくない……これだけは、絶対に理解できない感覚です。本能と感情で「彼女がほしい!」「イチャイチャしたい」と突進するのが、若いオスの正しいあり方だと思うのです。
 
トレードに関する情報は数字が多いため、とかく「計算」に偏るのですが、感情の影響を考えて生身の「人間」を意識することが不可欠だと私は考えます。実際、きちんと計算しているつもりで、実は「人間」丸出しのケースもあり、このあたりの情報整理が重要ではないでしょうか。
 
資金稼働率が高いほうが効率が良い──。
利益になるであろう戦略を使うのですから、当然の考え方です。
ですが、例えば「資金が10%増加した。ポジションサイズも即10%増し」といった計算は、緻密というよりも“せせこましい”気がします。
 
トレードは、勝ったり負けたりが必然です。
一定期間、勝ったり負けたりした結果として資金が10%増加したのならば、その段階でポジションサイズを10%増加しても理論上は間違っていないのでしょうが、勝ったり負けたりの「勝ったり」の波の中で10%利益が出たのならば、次に「負けたり」の波が来ることを考慮しなければなりません。
 
仮に、「10%勝つ」「10%負ける」の繰り返しとして、10%勝った時点でトレードサイズを10%増しにすると、どうなるか……。
 
100万円の資金で10%勝ると、資金は110万円になります。そこでトレードサイズを10%増しにして10%負けると、2回目の負けは11万円。つまり資金は、次のように変化し、やればやるほど資金が減少していくサイクルが生まれます。
 
  100万円 → 110万円 → 99万円
 
「資金10%増加でトレードサイズも10%増」という発想が“へ理屈”だと考えての反論ですが、この説明自体が“へ理屈”みたいなものです。
 
最後まで「計算」に徹底できない生身の人間に焦点を当てた、もっと実践的な考え方が求められるのではないでしょうか。
 
10%あるいは20%の増減を、完全な「実績」として評価できるのかが問題です。
手がける銘柄数などによりますが、株価の短期的な変動が大きいので、10%や20%は誤差みたいなものといった発想もあるでしょう。
 
だから、チマチマとした再投資など考えず、もっと1回ごとのトレードに集中すべきだという考え方が成立するのです。大きく負けることなく市場にしがみついていること、勝てるチャンスはものにすること、そして、大きな目で資産増加を考えることこそが大切ではないかということです。
 
『新版 中源線建玉法』第二部 本文には、資金量と建玉量についての規定が明記されています。以下に引用します。
 
総資金量は、2倍を用意する ※資金稼働率の限界は50%と余裕をもつ
(中略)
総資金量が最初の1.5倍以上になるまでは、従来の建玉単位を守り、1.5倍になってから、それに準じて建玉単位を1.5倍に増加させる。
このとき、建玉単位に端数ができたら切り捨てる。 ※少ないほうに寄せる
そして、次回の建玉単位の引き上げは、2倍になってからである。
以後も、この比率を踏襲する。
 
中源線の原著(古い断片的資料)には「2倍になるまで建玉量を変えるな」とあったそうです。それくらい、おっとりとした姿勢で臨むことが、トレードの悩み、混乱、苦しみを適正に処理する絶対の条件だという、実践家のこだわりでしょう。ちょっと立ち止まって、耳を傾けてみてください。
 
(林 知之)

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