【ビジネス】飽和状態のシンガポール | しがないディーラー

今日Bloombergで見た二つの記事。
シンガポールの金融の実情をよく示しています。

シンガポール、ファミリーオフィスとヘッジファンドの精査を強化
※記事の中に2億5000万ドル(390億円)とあるのはUSDで計算されているようなので間違い。SGDなので280億円程度。


RFMCという届出ベースで上記のような上限金額などの制限付きではあるものの、投資運用業を営むことができる仕組みが8月に廃止されることが決定されており、RFMCで投資運用業を営んでいるところは、そのままではそれ以降に投資運用業を営むことができなくなるため、現在MAS(日本でいうところの金融庁)に慌てふためいてライセンスのアップグレード手続きをしている状態です。おそらく当局側も審査も精査している余裕は全くないでしょう。

ビザの取得要件が厳格化されたのは以前のブログでも書いた通りですが、中国化が進み、米中対立や様々な問題から、アジアの金融センターとしての魅力が後退してきた香港。いまだに中国本土マネーの出口としての基盤は強いですが、香港から多くの運用会社や人がシンガポールに流れ込んできました。日本もアジアの金融センターとしての地位を復活させるべく、積極的な取り組みはされてきましたが、英語・中国語が日常的に使えて税金も安く、香港により近い環境にあるシンガポールがその中心的な受け皿になってきたのは確かでしょう。

ただそれによってシンガポールも飽和状態になり、家賃のとんでもない高騰(コロナ禍でコンドミニアムの建設などが遅れ、住宅供給が十分ではないところに大量の人が流れ込んできた)、当局の手が十分に回らないようなレベルでのライセンス申請の混雑、その結果記事のような巨額マネーロンダリング事件の発生など、様々な問題が生じてきています。

そのしわ寄せは、シンガポールで投資運用業を営んでいる日系の我々にも多くの負担や影を落としています。
若い人材を育成し、次世代の資産運用の担い手に…という取り組みをしている中で、ビザ取得要件が著しく厳しくなったために容易には日本人の運用者をシンガポールに連れてくることができなくなった。

ここ数年は、「自分たちはここでは外国人でしかない」ことを痛感させられることが増えています。
当たり前のことですけどね。
ビザの取得を求められることのない母国でビジネスをすることの有難さ。
これは本当に大きいです。
ここ1~2年、色々と考えさせられることが増えました。

積極的に外国人を誘致しようとしている日本。観光は円安もあってうまく行き過ぎている反動も少し出てきてはいますが(オーバー・ツーリズム)、将来大量の外国人や外資系企業の誘致に成功したときに起こりえる問題をシンガポールは示しているかもしれません。

シンガポールも大きな転換点を迎えつつあるような気がします。

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