【雑感】最近思うこと色々… | しがないディーラー

標題の通り、何を書こうとか、何かを伝えたいという感じでもなく、このところあまりにも何も書いてないなぁということと、手が空いたので最近思うこと、感じていることをなんとなく書こうと思って画面を開いてみました。
アフィリエイトで稼ぎたいとか、著名ブロガーになりたいというわけでもなく、思うところがあった時にしか更新しないブログではありますが、あまりにもサボり過ぎてるなとちょっと感じたのでw


【最近のシンガポール情勢】
 家賃がアホみたいに上がる局面はようやく落ち着いてきました。一年そこそこで50%も家賃が上昇していく様は、正直日本人には想像もできない世界でした。シンガポールの賃貸契約はオーナーの権限が強く、賃借人の立場は弱いです。次の契約更新(概ね2年契約)で50%家賃引き上げるよと言われても拒否は出来ず、交渉の余地についてもオーナー次第。気に食わなければ出て行ってもらっていいよ…となってしまいます。10万円の家賃が15万とかならまだしも、シンガポールのコンドミニアムは元々が高い。60万→90万とか、80万→120万という世界でした。ウチのオーナーはまだ理解があったので25%Upで済みましたけど、それで周囲からは「よかったですね。」と言われる始末。ようやく上昇は一段落し、住宅供給も増えてきたのもあってか、しばらくはこの辺で落ち着いてくれそうではありますが…。

 で、ここにきて上昇著しいと感じているのは「ビジネスコスト」です。オフィス賃料は3年契約とかが多かったせいか、住宅に比べればそこまで上昇している印象はありませんでしたが、ここにきてオフィス賃料も結構上がってきている印象です。契約更新時に30%前後の上昇は当たり前という感じになってきています。

 そして決定的に大きいのが人件費。「Compass」という新しいビザ取得制度が稼働し、C1月給、C2資格、C3多様性、C4ローカル人材の採用の4カテゴリーをベースにポイントが定められて、合計40ポイント以上取得できないとビザ(EP)が取得できないことになりました。ここ数年、ビザ取得要件は厳しくなる一方でしたが、今回の変更で大幅にそのハードルが上がった印象です。資格などでは、出身大学がカテゴライズされており、Top-tierの大学となると日本では5校(東大、京大など)ぐらいしか入っていません。つまりこのカテゴリーでポイントが稼げない人は月給でポイントを稼がなければならず、外国人がEP(就労ビザ)を取得して、シンガポールで働くためにはそれだけの高月給を払わなければならないということになります。

月給を抑えられるS-Passという制度もあるのですが、これはローカルおよびPR(永住権保有者)を何人雇用していれば企業としては1枠もらえるよ、というような制度ですので、ある程度ローカル人材を雇用している企業じゃなければ活用は難しい。

日本株運用をやっていて円で収入を得ている状態だと、この円安も響きます。円ベースの収入に対して、シンガポールドルでオフィスや人件費などのコストを払っていると結構厳しい。USDベースで収入がある企業などでは問題ないでしょうが。体感では、円安で収入とコストのバランスが20~30%悪化し、国の制度変更やコスト上昇でさらに20~30%悪化しているという感じです。

個人の負担増がようやく落ち着いてきたと思ったら、今度はビジネス面でのコスト増に直面するという、”一難去ってまた一難”状態ですね…。
ここ数年、我々はあくまでも外国人としてこの国で仕事をさせてもらっているのだということを痛感する場面が増えましたし、必ずしも外国人にとって優しい国ではなくなりつつあるのが現在のシンガポールだと感じています。

中国語が日常的に通じて、中国共産党の支配下にない国シンガポール。
英語を話せない中国系の方もずいぶん見かける場面が増えました。

大量に人や企業が流れ込んできた反動なのでしょう。
運用会社のライセンス申請も非常に大変になっています。
8月だったかな、RFMCというステータス(登録・届出で運用業を営むことができる)が廃止されて、LFMCに一本化されます。
つまりRFMCで運用業を営んでいた運用会社は、シンガポールで運用業を継続していきたければライセンスを強制的にアップグレードしないといけないという状況です。
そのため申請も殺到しており、金融当局も対応が追いついていない印象を受けています。

国家としては、自国民の雇用や生活を守る意味でもしかたのない防衛策なのかもしれませんね。
税金は確かに安い、けれどここまでコストが上がるとシンガポールに来て幸せ感じられる人の年収は以前より相当ハードルが上がっている気がします。企業も同様です。最近ではマレーシアやインドネシアにリソースが必要な業務は移していたりするところも増えています。

日本に出張すると痛感します。
日々のニュースではインフレ、価格高騰という報道が連日されていますが、海外から見るとそれでも日本は安い。
だからこれだけインバウンドで外国人観光客が殺到するのでしょう。
自分も日本にいるとAmazonでのポチポチが止まりません。。。

日本人を雇用する前提でビジネスをするならば、ビザ取得などの制約・ハードルのない日本で業務をしていた方が、柔軟さや機動性はあったかな、と痛感することが少なくありません。
色々と考えさせられることが増えてきた昨今です。



【日本出張】
 で、春に一度日本に出張していたのですが、そこで資産運用業界で働く若い人材数名と出会う機会を得ました。面白いことしているなぁと感じる人たちや、大手資産運用会社だったり、外資系だったり、個人投資家だったり…。色々な人のご紹介や、Twitterなどを通じての出会いでもあったのですが、一度ウチで頑張ってくれている若手達にも会わせたいな、と漠然と感じたりもしていました。「人との出会い」ってとても大事なことですから。

 自分も若い頃に色々と苦労して、自分なりにネットワークと作り、人との繋がりを作っていかないといけないと痛感したときがありました。すっごい昔の話ですが、「山一ショック」の時ですね。

 山一證券の破綻。その余波を自分も受けました。当時、駆け出しの若手ディーラーだった自分は山一系列の地場証券で働いており、チームの中でも下っ端でした。その会社も持ちこたえられるかどうか分からない、という時期が数週間あり、その時に”まだ何者でもない自分、業界の誰にも知られておらず、誰かの後輩、誰かの部下、ぐらいでしか知ってもらえていない自分”の小ささを思い知らされるような不安と向き合わなければいけませんでした。まだ若手でポジション枠も小さく、稼いでいるといってもたかが知れていた時期です。なんとかその時は会社が持ちこたえてくれはしたものの、会社に依存した生き方をしていてはダメだと痛感した出来事でした。

 そんな経験から、自分自身で人との繋がりをもっていかないといけないということ。そして地場証券という小さな世界にしがみついていると、自分自身の視野が狭くなってしまうという危機感、多少社内での実績が上がったところで所詮は井の中の蛙になってしまうというということを痛感し、ディーラーを中心とした業界の集まりを主催したりするようになりました。それがいずれある程度大きな規模になり、外資系やヘッジファンド、取引所やメディア、当局の方など業界を取り巻く方々も参加してくれるようになりました。有志の友人達とともにそれを積極的に広げていった時期もありました。

 そこで得た友人・知人は今も大切な財産です。自分が2007年の頃に「このままいくと地場証券ディーリングはなくなる」と感じたのは、外資系の友人達から、その時期に欧米市場で起きていることを学ぶ機会を得たからでした。会話の中で「アルゴ」「HFT」などという当時聞いたこともない単語が出てくるようになり、欧米市場を席捲している実情を外資の友人達から教えてもらいました。片っ端から外資の友人に頼んで、その専門知識を持った方を紹介してもらって勉強した時期もありました。そしてそれがなぜ日本でそれが起きないのか?その原因は一目瞭然でした。その変化が起きた時、日計りに依存している地場は消える…その危機感から、2007年当時に”ディーリング部改革案”をまとめたこともありました。残念ながら、その会社でそれが上まで届くことはありませんでしたが…。


 落ちこぼれだった自分が雲の糸を掴むような形で運用の世界でチャンスをもらい、必死にそれにしがみついて、自分では想像もしなかったような未来を掴むことが出来もしました。それを与えてくれたのも人の縁。様々な時代の変化、ヒントを与えてくれたり、ビジネスを創ってこれたのも人の縁。自分も自分の出来る範囲で、後輩たちにバトンを渡していってやりたいと思っています。後輩たちから、自分と出会えてよかったと思ってもらえたら、そこにいた甲斐があるというものですから。

 最近出会った若手達が交流できる場を作って、その世代でネットワーク広げて欲しいな、なんて思いもしたんですけど、Twitterでオフ会募集するってのもシンガポールからだとなかなか難しいですね。幹事、場所の確保や段取り…5月末~6月中旬ぐらいまで日本に行くので考えてみたりはしたんですが、ちょっと今回は難しいかもしれません。
 自分とは異なる立場や組織、場所にいる知人や友人がいることは、自分の世界を広げ、可能性を広げてくれます。ぜひ若い世代でどんどん繋がりを広げていって欲しいと思います。


【人材募集】
 自分はシンガポールのYamawa Asset Managementという運用会社(日本株ロングショートのヘッジファンド)の経営を担っていますが、親会社でもある山和証券ディーリング部では、運用者(ディーラー、ポートフォリオマネージャー)の採用を行っています。運用会社での勤務経験などは問いません。株が大好きで運用者としての未来を志す若い人材に道を拓いていきたいと思っています。淘汰の厳しい世界ですし、未経験者の育成からやっていたりもするので好条件はあまり期待しないで欲しいですが、覚悟があり、熱意や意欲のある方に出会えたらと願っています。
 実際に現在のトップディーラー、ヘッジファンド側のポートフォリオマネージャーには、運用未経験から実績を積み上げてその立場にいるメンバーもいます。
 日本において、職業として自身の裁量で運用ができる場所は限られています。さらに”はじめの一歩”を踏み出せる場所がなかなかない日本の資産運用業界。それを創っていかなければ、未来の資産運用人材のすそ野を広げていくことはできない。その役割を少しでも担っていければと思っています。

山和証券ディーリング部ディーラー採用

ブログ一覧に戻る