【ビジネス】資産運用立国を目指す日本へ | しがないディーラー

「資産運用立国」

素晴らしいテーマだと思います。
日本の個人金融資産は今でも世界トップレベルです。
これは日本という国にとっては「資源」だと自分はかねてから言ってきました。
この資源が本当に活用されたとき、日本はまだまだ世界トップレベルで戦えるだけの潜在力を持っている。
そのためにはその資産運用の担い手となる次世代の運用者を一人でも多く育て、世に送り出す必要がある。
自分に出来るのはその土台作りぐらいだと思ってこの十年間仕事をしてきました。
「絶滅危惧種」とすら揶揄される状況からのスタートでしたから、ここに至るまでですら、気が遠くなるほど遠い道のりではありましたが…。

今、「資産運用立国を目指す」という方針の下、様々な取り組みが行われており、変化の兆しを感じることも少なくありません。
まだまだ日本の環境は偏りが強いし、外国籍投信と国内籍投信の文化や制度、仕組みの違いなども痛感することが多いのが現実です。海外でファンドを作り、運用を行ってみると、外から見た日本の特殊性などは認識せざるをえません。

それでも国や地方自治体、業界などの取り組みのおかげで「投資への興味・関心」が高まり、新NISAを契機に裾野が大きく広がりつつあるのはとてもいいことだと思います。

ただ「資産運用立国」というテーマを掲げられた時に感じた一抹の不安。
金融リテラシーの低さと法規制が十分ではないまま、投資詐欺や悪質な勧誘・広告などの多い日本という国で、「投資・資産運用をしなければ」という雰囲気だけを先行させてしまった場合に何が起こるか。

このブログでも投資詐欺や無登録業者に資産を預けてはいけないという注意喚起はしていましたが、案の定…という状態になりつつあります。
自分もディープフェイクまで使ってここまで投資詐欺が当たり前のようになってしまうとまでは想像していませんでしたが…。
「投資話は危険、詐欺ばっかり」
と何年後かに言われることがないように、国や当局、業界が一丸となって取り組まなければいけない事態だと感じています。

他人からお金を預かって運用する行為…投資運用業
他人にアドバイスを行って運用させる行為…投資助言業

こういった行為は全て登録・届出・承認が必要な行為です。
金融庁のホームページには金融業のライセンスを受けている業者の一覧などが掲載されています。
以前は、無登録業者がパーティ開いたり、派手なイベントやセミナーをやったりして投資家からお金を集めて…なんてこともありました。とんでもない高いリターンをうたって、運用の実態はほとんどない。「ポンジスキーム」ってやつです(金融庁のホームページには無登録業者の一覧も載っています)。
最近では、そんなフィジカルな行動すら伴わない、SNSだけで投資詐欺を行う輩が好き放題広告・宣伝をやっている連中が増えています。


日本(金融商品取引法)のみではなく、シンガポールや他の国でもそうですが、「個人投資家保護」の観点から、個人投資家への勧誘については非常に強い制約や規制がかけられています。
情報弱者であり、経験が少ない個人はリスクのある投資の世界においては守るべき存在として、どの国でもそのお金を預かるためにはこれだけのハードルをクリアしなさい、という運用会社側に課された法律があるんです。そのハードルはかなり厳しいものであることが多く、ある程度の規模・人員を擁する会社じゃないとその要件をクリアすることは容易ではありません。

自分だってたまに思うことがあります。
「制限なく勧誘できたらどんなに楽か…。」
でもそれをやったらダメなんです。

ルールを守り、その範囲内でできることをする。
だから公募要件を満たしていない自分たちが運用するファンドの宣伝をしたり、広告出したり、勧誘したりなんてことは出来ないんです。
それぞれの国や地域のルールに従って、弁護士にも相談しながらきちんと手続きを経て、出来ることを少しずつ広げていく。ものすごく地道なプロセスで時間もかかるし、コストもかかります。幅広く知ってもらうことすらままならない。でもその困難さこそ、他人のお金をお預かりすることの責任の重さだと受け止めています。

その一方で、投資詐欺や無登録業者は平気で派手な勧誘や広告をうつ。SNSで安易で目を引く言葉を使う。
そして何百億というお金がそこに集まってしまう。
そのお金がちゃんとした金融業・投資運用業を営んでいる人たちに預けられれば、それがどれだけ業界にとってプラスだったか。そして預けた個人の方々にとってもです。詐欺に引っかかってお金を失い、投資や運用に疑心暗鬼になり、恐怖感を覚えてしまう。それが資産運用立国を目指す日本という国にとっても、どれだけの損失になるでしょうか。

今すぐにでも行動を起こさなければいけない事態だと思います。

我々のように(ウチはシンガポール金融当局のMAS管轄になりますが)、登録・届出・承認を受けている業者であれば、日本なら金融庁の管轄となり、定期的な検査、監督が行われます。そこできちんと法令を遵守して業を営んでいるか監視の目が行き届きます。

でも投資詐欺を行う輩や、無登録業者は本来金融庁の管轄ではない。
では誰が?となると警察になるのでしょうが、そういった行為を行う者は海外に拠点を置いている場合も少なくない。
しかも、あまりにも数が多いので疑わしいもの見つけ出してしらみつぶしに…なんてことも現実的には困難なのかもしれません。
実際には被害額がそれなりに大きくなり、被害届がある程度出て初めて摘発され、ニュースになる。その頃には被害額は平気で100億円とか超えてしまっている場合も少なくない。

詐欺広告の温床となっているプラットフォーマー側のコメントは、自分もちょっとありえんだろうと思いましたが、プラットフォーマー側がそういった広告を出させない対応を出来たとしても、おそらくはまた異なる方法を見つけ出して詐欺の勧誘広告を出してくるでしょう。

ちなみに以前、自分はアメブロでこのブログをやっていましたが、無料でやっているとどうにも気に入らない広告が沢山表示されるようになったので、こちらに引っ越しました。アフィリエイトで1円でも稼ごうという気もないのに勝手に色々と広告載っけられて非常に迷惑でした。ホントいらん広告載せるのやめて欲しいんですよね…。まぁプラットフォームをお借りしている立場ですからしゃあないのかもしれませんけど。。。

一般の方々にもご理解いただきたいのは、投資や運用というのはリスクを伴う行為です。
だから最低限の知識をつけ、身を守る術を身に着けてください。
せめて悪質な投資詐欺や無登録業者に騙されるようなことにならないように。
相場で損した、失敗したというのはまだ自己責任ですけど、そんな詐欺でお金を失うなんていうのはあってはいけないことだと思いますから。

「絶対もうかる」とか、ムチャクチャ美味しそうな儲け話はまず疑ってかかってください。
ちゃんと業として運用を行っている会社は、広告を出す際には必ず監査を行い、内容を確認したうえでしか商品概要すら提示できません。派手な文言が書かれていたら、まず「怪しんでください」。

金融業界としても、それに関わるメディアの皆さんも、この事態を看過することなく、ルールを守ってやっている自分たちの機会損失にも繋がり、将来の投資家たちが傷つけられている事態を重く受け止め、自分たちに何が出来るかを考えていただけたらと思います。

そして国や当局の皆さんにも、日本の大切な資源でもある個人金融資産を詐欺などの犯罪の温床にさせないように取り組んでいただきたいと願っています。



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