RFS | 植村和久

米国にはRFS(再生可能燃料基準)というものがあります。

自動車用のガソリンに再生可能燃料、いわゆるバイオエタノールを一定量混合すること義務付けたものです。


トウモロコシなどから精製されるバイオエタノールは、空気中のCO2を植物の光合成によって固定、燃焼させてもそのCO2を空気中に還元させるだけですので「カーボンニュートラル」と呼ばれ、CO2排出削減に効果的なクリーンエネルギーです。


これの使用を義務付けるとは、米国も環境先進国なのだなという感がありますが、原料となるコーンは元々は家畜飼料用の穀物、一種の食べ物です。

食べ物をガソリン代わりに燃やしてしまえば、食べ物が不足します。
不足しないにせよ、値上がりは必至です。


2000年代中盤には、米国ではITバブルに端を発した好景気の時代でしたが、同時にバイオエタノールブームも呼び込み、折からダブついたマネーが精製工場への投資や、穀物そのものの投機へ殺到しました。


リーマンショックの前には、コーンのみならず大豆や小麦も高騰、日本の豆腐屋さんや納豆屋さんが悲鳴を上げていたことを覚えている方もいらっしゃると思います。


この現象は日本に限らず世界中でも見られ、とくに中東・北アフリカエリアでは、この食料インフレによる生活苦が、元々醸成されていた政治的不満と組み合わされ、後に「アラブの春」と呼ばれる一連の革命や内戦を誘発しました。


このような大きな影響を及ぼしたバイオエタノール。


なにしろ食べ物が絡みますので、食糧危機を連想させる話は根源的恐怖すら抱かせます。
ですので、本来ならば「環境に優しい」話であるにも関わらず、この政策に強く反対する人も数多い。


この夏から、米国下院議会の委員会で、このRFSの変更が検討されていました。


賛成派は農業経済が強化されると主張し、反対派はこの政策が根本的に間違っていると主張しましたが、両派ともに米国バイオ燃料産業の振興、農業経済の振興、コーンの生産促進という点では一致していたのです。


ただし、製油会社は完全撤廃を求めていました。
理由は混合率を遵守するとなるとコストが膨大になるからです。


この意見はさすがに支持されていないと見られていたのですが、先週15日、EPA(米国環境保護局)は2014年のガソリンへの混合率の引き下げを提案するに至りました。


製油会社のロビー活動の勝利でしょうか?


RFSは、エタノールの使用総量が定められます。
このため、このまま続けば混合可能な比率の10%を超える可能性があった、というのが今回の理由のようです。


年々拡大していたRFSがついに縮小へ。


CXでは、エネルギー(石油)のみならずトウモロコシも上場されていますが、この問題は両者へ影響を及ぼしそうです。


なおEPAの提案は決定事項ではなく、今後60日間にわたり意見を公募するとのことです。




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