ボルカー・ルール | 植村和久

米国には「ドット・フランク法」という金融規制法があります。

契機となったのがリーマン・ショックです。

1929年の世界大恐慌の際に導入された「グラス・スティーガル法」を復活させたもの、などと説明されます。


このドット・フランク法の中に通称「ボルカー・ルール」という項目があります。
提唱したボルカー元FRB議長の名に因みます。

ボルカー・ルールの骨子は、銀行の自己勘定による投機的取引、そしてヘッジファンドへの融資の規制ないし禁止です。


バーナンキFRB議長が呼ぶ「大きくて潰せない銀行」 

日本でも小泉政権時代に一部銀行への公的資金注入は議論を呼びましたが、米国も同様です。

米国納税者にとっては、銀行が高リスク取引で被った損失を公的資金で救済するのは不愉快です。
その世論を受けた政治的動きがボルカー・ルールの成立を促したと思えます。


ただしそのような政治的思惑は別として、銀行という公共性の高い金融機関による高リスク取引を野放しにするのは、社会としても危険性があります。


マネーというのもは、経済を生命体として例えれば血液に相当します。
そして銀行は、その血液を送り込むポンプ、心臓に例えることができます。

どんな健康体でも、豊富な血液があろうとも、心臓が止まれば死に至ります。


ですので、安易に銀行を潰すことは生死に関わる問題となりますので、結果として「大きく潰せない銀行」を産みだしてしまいますが、量産は避けることが、公共的利益となります。


さて、仮にですが、そのような公共的視点を無視することを許していただけるとしたら、あまりにも厳しい規制というのも弊害を生じると思えるのです。

マーケットから大口投機玉が消えれば、ヘッジニーズに相対するだけの投機玉を確保できるか懸念が生じます。
全部とは言いませんが、一部マーケットでは著しく流動性が低下する恐れがあります。

また、年金などの資金運用にも弊害を生じるかもしれません。


12月10日、ボルカー・ルール最終案は米国の複数の金融当局で採択されました。
ルール順守は2015年7月以降とのことです。

その影響が本格的に出るのは先になりますが、その内容は甘すぎず、厳しすぎずというところでしょうか。

米国は賢明な選択をしたと思えますが、いかがでしょう。


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