長続きするのが“良い”やり方
トレードは、大切なカネにかかわる継続的な行為なので、誰もがマジメに取り組みます。でも、ラクな気分で楽しんでいるほうが自然体で、より良い結果が出るはずです。とはいえ、その場だけラクになる逃避行動は、のちに大きな苦しみを招くでしょう。
マーケット・スクランブル7月11日の放送は、トレードの楽しみと苦しみ、こんな観点でお送りしました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第88回 トレードの楽しみと苦しみ ~具体的なルールを決めるコツ~)
範囲を決めて“遊ぶ”
前回のフォローアップ(1)で、「プロには、方向性を定めてくれる適切な制約がある」と述べました。これについて、もう少し説明します。
床に30センチ幅で2本の線を引き、そこからはみ出さずに歩くのは造作もないことでしょうが、地面から10メートルの高さにある30センチ幅の足場板だったら、難易度はかなり高くなります。

十分な能力があったとしても、状況によって“できる”“できない”の大きな差が生じるのです。トレードにおいて、例えば引けあとに翌日の売買を考えるならば時間はたっぷりとありますが、結果を想像して緊張し、時間がある分だけ迷いも大きくなりがちです。失敗を恐れるあまり、「10メートルの高さに足場板」と同じ状態になると認識しておくべきでしょう。
緊張した状態で勝つのは難しいので、緊張を軽減する工夫が必要です。
それが、事前に決めておく「制約」のルールです。
制約があれば選択肢が減って「不便になる」と感じるかもしれませんが、実は逆に、極めて自由になろうという発想なのです。
例えば、駅のホームを歩く際に「どこでもいい」と制約を設けなかった場合、線路に近い端を歩き、足場板と同じように緊張してしまうかもしれません。シラフでも、完全に自然な歩き方はできません。
でも「ホームの端は歩かない」と制約を設け、常に中央寄りだけを歩けば安心です。さらに、「人がたくさんいたらムリに移動しない」といった制約も加えれば、歩き方そのものは終始ラクで自然になるし、少なくとも線路に落ちてしまう危険性はゼロに近づきます。
もうひとつ、日常生活の例を考えてみます。
子どもを遊ばせるとしたら、どんな場所が適していますか?
危険のある場所で遊ばせ、細かい禁止事項を示し、さらに一挙手一投足に目を光らせる……そんなのは非現実的です。
そうではなく、安全な遊び場を与えて「好きに走り回りなさい」と言えば、子どもはのびのびと遊び、しかもケガをする可能性が少ない状況をつくれます。

トレードでも、これと同じ設定をするべきです。
ユルユルのルールでポジションをつくり、「ちょっとマズイ……」なんて状況になってから必死に考えたって、良いアイデアは浮かばないでしょう。
それよりも、最初から一定の制約の中に身を置き、その中で、まるで子どものように自由に売り買いを決めていくほうが、ナチュラルな行動で良い結果が期待できるはずです。
ちょっと低めの限度を設定しておけば、感じたまま売ったり買ったりしても、雑な売買、乱暴な決断に近づくことはなく、きちんと管理された中での「適正な“遊び”」が実現するでしょう。
つらさを感じないための心の調整
「一定の制約を設けておけばいい」とはいっても、その設定が重要です。
多くの個人投資家を見てきた経験から自信をもって言えるのは、「常識的な人が、そこそこ慎重に考えた設定でも、ほとんどの場合は“やりすぎ”になっている」ということです。
6月下旬、英国のEU離脱を受けて世界の市場が大きく動きました。
この例を見てわかるのは、誰もが「えっ!」と驚くような変動が、常に起こり得るという事実です。
しかし人間は、心理的に、そういった危機的な状況を想像しない傾向があります。
2003年に起きた韓国の地下鉄火災では192人もの死亡者が出たのですが、煙が充満する車両内で、なぜか落ち着き払って座っている乗客たちの写真が話題となりました。
2011年3月の東日本大震災では、津波の危険性を伝え続けてきたはずの地域で、悲しいことに、「大丈夫だろう」と逃げずに犠牲となった人が大勢いました。
危険が迫っているのに「自分は大丈夫」と考えるのが、人間に共通の傾向だといわれています。文明社会の中で私たちは、さまざまな心的偏り(バイアス)を抱えており、「自分は大丈夫」と考えてしまう心理を「正常性バイアス」と呼ぶそうです。
必要な損切りができなかったと後悔しながら、心理学の理論を持ち出しても後の祭り。でも、事前に理論的な考察をして、「よし、自分で大丈夫だと感じるラインの70%にとどめておこう」と控えめな設定をすれば、真に安全な環境をつくることになります。
すべて肯定形がいい
「制約を設けろ」と説明しましたが、禁止事項を守るのは心理的につらい、というか抵抗を感じるものです。これはダメ、あれもダメでは、息が詰まります。それに、ダメだと言われると逆にやりたくなるのが人間の心理です。
毎日飲みに出かける人が「よし週に3日は飲まずに帰ろう」と決心しても、なかなか実行できません。「行かない」という否定形だからです。そうではなく、飲まずに帰って何をするか、どんな楽しい時間を過ごすことができるかを想像し、そこに目を向けるとエネルギーが湧きます。
例えば、「早く帰って犬の散歩をすると、同じく犬を連れたきれいな奥さんに出会える」とか(笑)。「散歩のあとはビールがうまいし、家飲みでこづかい節約」でもいいでしょうね。

自分でトレードルールを決める場合でも、肯定形がオススメです。
「~しない」という否定形の発想がスタートでも、それを肯定形に置き換えればいいのです。
例えば、ポジションをダラダラと長引かせてしまうのが問題だと考えている、としましょう。とりあえずは、「ダラダラと長引かせない」という否定形の表現が浮かぶかもしれません。それでOKです。でも、次に肯定形に変更し、ワクワクする結果を盛り込むのです。
「自分のトレードは、調子の良いときに約1カ月だから、ちょうど1カ月で必ず手仕舞いすることにしよう。すると、悪いポジションが残らず、ムダがなくなり、スムーズなトレードに変わるだろう」
制約を設ける目的は、制約なしでトレードして悪い状況に陥るのを防ぐことです。
つまり、制約があることで、より心地よい状況が生まれるわけです。
その心地よい状況をリアルに想像すれば、いざその場になっても迷わずに自分のルール通りに行動できます。
自分を殺すな
トレードの制約は、自分を助けるルールです。
しかし、冷静な頭で考えてつくるもの、いわば“第三者の視点”で生み出す規則です。ですから、プレーヤーとして決断の場に臨んだとき「ジャマだ」と感じてしまうことがあります。自分で「やらない」と決めたことなのに、「この状況こそ、やるべきだ」なんて考えが浮かぶことが多々あるわけです。
これが、トレードの非常にデリケートな部分です。
自分で決めたルールを破ってしまったらダメなのですが、細かく規定した中で裁量を入れることもアリ、というのが現実でしょう。少なくとも、ルールを大切にするのと同様、個人的な相場観や感性も尊重するべきです。もちろん、その裁量の範囲も事前に決めておく必要があるので、それ自体がルールと呼べます。ここが深くて難しい部分ですね。
継続的に紹介している「中源線建玉法」は、ロジック(トレードルール)をすべて公開しています。また、そのルールに基づいた利用方法をどう構築していくかという深い部分も、書籍『中源線建玉法』(林投資研究所オリジナル)で説明しています。
その中から、規格化されたルールと相場観の関係についての記述を引用します。
「中源線のルール通りでも一定の利益が期待できる」といった説明について、利用者の心理を考察している部分です。
「誰でも簡単に儲かるじゃないか」と言われるかもしれない。しかし、人間には自己主張があり自分の意思を通そうという気持ちがある。だから、法則どおりに売買することは、一見すると簡単なようで容易ではない。実行に際しては、さまざまな心理的抵抗があるのだ。
実際に私も、およそ20年の間で、中源線を捨てようかと思ったことが何度もあり、そのたびに思い直して統計を取り始める──そんなことを繰り返してきたのだ。
(新版 中源線建玉法「第一部 解説」より)
「規定どおりにやる」というのは「自分の意思を殺す」ことだ。自分を殺す努力は、創造の努力と違って、まことにむごたらしいくらい苦しい。なかなかできることではない。
だから、多くの人が中源線による売買の成果を十分に認めながら、また現実に利益が出ているのに、途中で放棄してしまう。
中源線の骨子さえ守れば、部分的には自分の意思を通してもよい。また、そうしなければ長続きしない。
長続きすればこそ、大きな利を得られるのだ。中源線を知り、これをもとにして、相場で利益を得ようと志した目的を達成することができる。
しかし、自己を殺すことの難しさは、私自身、身にしみてわかっている。相場をする者として、自分の意思を通さなければ、相場の苦しみも喜びもないことも、よく承知している。
(新版 中源線建玉法「第四部 実践と実験」より)
「むごたらしいくらい苦しい」などと大げさな表現と感じるかもしれませんが、カネの増減という切実な問題をよそに、相場が好きなほど、中源線を評価すればするほど、こういう心境に陥るはずです。
もし中源線を利用しようと決めたなら、ポジションサイズを抑えた実験売買を行う間は、余計なことをせずに規定通りに売買するべきです。しかし、本格的なトレードを開始するにあたっては、「中源線をどう利用するか」を自分で決めて臨まなければなりません。
「規定通りに売買する」というのも、選択肢のひとつです。
一定の状況下で休む(シグナルが出てもポジションを取らない)という自分ルールもアリです。
あるいは、条件がそろった場合のみ株数を増やす、という裁量もアリです。
ルールを必ず変更しろ、ということではありません。
自分を信じ、自己を尊重した決断によって、資産運用を行うことが大切なのです。
既成の手法を利用するにしろ、それを改良して使うにしろ、他人の価値観を拾う姿勢ではなく、自分の価値観で進むようにすれば、長続きするやり方が構築できます。そして、経験を積むごとに進化して強化されていく「確信ある自分流」が固まるのです。
派手な動きに刺激される事例
さて、中源線のシグナル通りだとどうなるか──。
中源線のルールを理解したうえで、多くの事例を経験して確認するしかありませんが、少しでも助けになるように、番組やこのフォローアップで情報を提供しています。
今回紹介するのは、直近でド派手に急騰している、7717ブイ・テクノロジーです。

7月11日の放送で紹介したあとも上伸しているので、この原稿を書いている7月20日現在のチャート(7月19日大引まで)を用意しました。
もともと、コンスタントに変動し、中源線との相性が良い銘柄です。
しかし、2016年1月後半の陽転から連続して8回、取れない転換が起きています。
そのあと、5月の陽転以降は驚くほどの上昇で、中段にあるダマシの陰転2回を挟んでも利益が積み上がっている様子がわかります。
「ちゃぶつきで小さな損が重なり、その後のトレンド発生でしっかり利益が出た」と説明すれば、そのまま中源線の特性を言い表しているだけです。しかし、今回の暴騰を予見していたわけではありません。中源線は、「暴騰する銘柄を見つける」システムではないのです。
こういった派手な値動きがあっても、ポジションをしつこく維持するので値幅が取れる──これは中源線の大きな特長のひとつですが、こういった派手な動きを見て興奮することは控えてほしいのです。
中源線シグナル配信のサービスでは毎日、上場全銘柄について中源線のシグナルを確認してWEBページに表示しています。このシステムを利用すれば、例えば「今日の引けで陽転した銘柄」を拾ったあと何らかの条件で絞れば、「明日のオススメ買い銘柄」みたいなものを並べることだって可能です。実際に行えば多くの投資家が興味を持ち、ビジネス的には伸びるのでしょう。でも、トレードの正しい姿勢を示すことにはなりません。それどころか、全く方向違いの情報提供になるでしょう。
中源線は、強弱の判断に加えて3分割の売り買いが規定されている手法です。だから、「当たった」「外れた」の観点に注目して興奮状態を維持することも可能ですが、適切なトレードの基礎である「確固たる基準による判断」「当たり外れを容認したポジション操作」「成績に波があることを承知した資金管理」をバランスよく盛り込んだ“建玉法”だと理解してほしいのです。
次回のフォローアップ(3)では、「自分を高めるためのプロセス」について考えます。お楽しみに!
四部構成の書籍『中源線建玉法』
その「第一部 解説」のみ、無料配布版があります。
1.印刷版(無料にて郵送)
2.電子版(PDF、eBookを無料ダウンロード)
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