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☆黒田日銀のインフレ政策で、日本は何を得たか?
私が米国債のディーラーになった頃、インフレは期待するものではなく、懸念するものだった。そのため当時の債券ディーラーやエコノミストたちは、インフレ懸念という言葉を使い、インフレ期待とは言わなかった。私などは今でもインフレ期待という言葉を使うことに抵抗感がある。
その理由の1つは、債券価格はインフレに弱く、物価の上昇は債券売りに繋がるからだ。もう1つは当時の主要国はインフレに苦しんだために、米連銀のボルカー議長やドイツ連銀は「インフレの番人」と呼ばれ、インフレは決して繰り返してはならないものだとされていたからだ。
インフレの弊害はあえて述べるまでもなく、今なら誰もが実感できるだろう。食料品や住居費、その他ほぼすべての物やサービスの値上がりが、多くの家計を圧迫している。
こうした物価の上昇は多くの場合、政策によって作られたものだ。だからこそ米国ではアフォーダビリティー(物やサービスの入手可能な価格)が選挙の焦点となり、昨年のトランプ大統領の当選や、最近の知事、大都市市長選などでの民主党候補当選の大きな原動力ともなった。
家計を苦しめ、選挙戦を左右するほど多くの弊害があるにも関わらず、政権がインフレを望むのには理由がある。それは政策による物価高が、別名インフレ税と呼ばれていることからも察せられるのだ。以下に、iFinanceのウェブページからインフレ税の解説を引用する。
(引用ここから、URLまで)
インフレ税
読み方:いんふれぜい
英語:Inflation Tax
分類:概念
インフレ税は、実際に税金が課税されるわけではないものの、インフレの進行によって貨幣価値が下落する一方で、実質的に民間部門から政府部門への所得移転が起ることをいいます。
政府が持つ「貨幣発行特権(シニョリッジ)」を活用したもので、意図的にインフレを起こし(もしくは放置し)、民間部門の貨幣価値を下落させることによって、政府部門の債務負担を減らす仕組みになっており、時として巨額の財政赤字の縮小策として密かに行われることがあります。
一般にインフレ税は、誰一人として逃れることができない「見えない税金」であり、またインフレになると、政府の債務負担が軽くなるだけでなく、物価上昇に伴って、資産価格や給与収入にも上昇圧力がかかることから、実際の税収も増加し、政府にとっては結構都合のよいものです。
その一方で、金融政策だけでインフレを起すことは容易ではなく、仮にインフレを起すことに成功したとしても、今度はインフレの制御が難しく、万一失敗した場合、インフレに歯止めがかからなくなって「ハイパーインフレ」となり、経済を崩壊させるリスクがあります。
◎不動産価格や株価などが暴騰した日本のバブル期では、資産インフレで実質的にインフレ税が徴収されたと言え、その恩恵を受けて、1988年からの5年間、政府の財政収支は黒字となった。
◎インフレを制御できなくなった結果として、インフレ税になることもあり、実際に第二次世界大戦後の日本において、貨幣の大量増発による激しいインフレで国債価格が暴落し、民間部門から政府部門への巨額の所得移転が起った。
※インフレ:インフレーションの略で、物価水準が継続的に上昇し続ける現象。
参照:インフレ税
現状のインフレは、バブル崩壊後(=消費税導入後)、金融危機後(=消費税率5%に引き上げ後)からデフレが続いていたため、黒田日銀が国民の「マインドに訴えかける」として、インフレ政策を採ったところから来ている。
マインドに訴えかけるとは言っても、言葉による説得といったものではなく、資金供給量を数倍に増やし、マイナス金利を導入するなどして、「意図的に民間部門の貨幣価値を下落させた」のだ。
通常、増税はデフレに繋がり易い。民間部門の資金が吸収され、購買力が減退するからだ。実際にバブル崩壊後の利下げ局面では、金融政策による物価上昇の兆しがあったものの、消費税導入や税率引き上げでデフレに逆戻りしていた。
黒田日銀は自らが異次元緩和と呼ぶ、前代未聞の大掛かりなインフレ政策を採ったものの、インフレ実現には貿易赤字が誘因となった円安を待つ必要があった。なぜなら、ここでも消費税率の引き上げという増税が、民間部門の資金を吸収し、購買力を減退させたからだ。
黒田前総裁は、インフレ税だけでなく、「消費税再増税が先送りされ、財政の信認が失われると、対応が極めて困難になるとの従来の見解をあらためて表明し、財政再建の重要性を指摘した」ことで、消費増税も積極的に支持してきた。つまり、財務省出身の日銀総裁が行ったインフレ政策も、消費増税支持も、一貫して「財政再建」が主要な目的だった可能性が高い。
参照:消費増税先送りなら対応困難、マイナス金利は政策効果=日銀総裁
しかしながら、こうした大増税は財政を改善したどころか、民間部門の資金繰りを悪化させたことで景気後退を生み、同時に行われた企業や富裕層への減税と相まって税収減となり、財政収支は更に悪化した。
参照:日本の財政関係資料
この日本の財政関係資料からも分かるように、日本の財政が目に見えて悪化し始めたのは消費税導入の頃からだ。当時の財政収支は今から見ればそれほど悪くなかったにもかかわらず、そうした増税策が「裏目に出た」ことになる。そして、その後の財政再建策もことごとく裏目に出た。
1997年度から経済は事実上停滞し、その後は貿易赤字で通貨も弱くなり、企業の国際競争力も、教育も、福祉も、生活の質も低下した。少子化の根本原因が経済問題だとすれば、日本衰退の根本要因がその当時からの税制に起因していると言ってもいい。
一般にインフレ税は、誰一人として逃れることができない「見えない税金」だとされるが、強者は逃れることができる。強者にとっての物価高は家計に響かないどころか、強者の富はインフレで増える傾向があるからだ。超高級品と安価なものしか売れない、消費の二極化はインフレ税の結果でもあるのだ。
それでも政府の対策は、インフレに追いつく賃上げを要請といったようなものだが、それに応えられる企業ばかりではない。これはそのまま応えられない企業は人員確保さえ難しくなることを意味している。
連合の集計によると25年春の賃上げ率は5162組合の加重平均で5.25%。経団連が従業員500人以上の主要139社を集計した25年春の賃上げ率は5.39%(加重平均)と、いずれも2年連続で5%台に乗せた。
一方、自営業者らを含めると、インフレに追いつく賃上げどころか、2024年の就労所得が前年を超えなかった人の割合が5割を超えているのだ。
そうした所得停滞率は、会社・団体や官公庁に雇用されている人で50.0%、賃上げ交渉のような報酬改定システムが基本的にない就業者では、役員が58.0%、フリーランスなど雇い人のいない自営業主が64.7%と、強い組織がないほどインフレ税に苦しんでいる。
在籍する企業の規模別では、従業員数が1000人以上の企業は48.7%、100~999人は49.5%、10~99人は51.4%と、規模が小さくなるにつれ所得停滞率が高まっている。9人以下の小規模企業となると59.8%に跳ね上がる。
また、55~59歳が59.4%、45~54歳も56.0%と、中高年層で賃金が抑制される傾向が表れている。一方で、25~34歳は46.1%、35~44歳は48.7%と、働き盛りでも半数近くの賃金は据え置きか、低下なのだ。
参照:働く人の半数が収入増えず 個人の賃金交渉力底上げが課題
これで分かるのは、インフレは中間層を没落させ、貧富格差を拡大し、それを固定化するということだ。また、インフレ税の怖さはそれだけではない。社会インフラもぐらつき始めている。
参照:都市部で病院「突然なくなる」 統合・再編遅れ、物価高で拍車
・Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi)
・Quiz Book:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?: 57 questions to reveal the problems of the Japanese economy (Arata Yaguchi)
・著書案内:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新)
・著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新)
・Music: Tears of the Sky (R&B, hip hop, blues, metal, soul)
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