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☆米中対立は必然か?
先日、「世界経済における米中の覇権争い、そのことからもたらされる必然的ともいえる米中対立に関する話題のために、政治体制の歴史から述べようと、AIの助けを借りようとした。長くなり過ぎたので、この話題は後日に回す」とした。
今回はそのことについて触れる。基本的な考え方を中心に、政治体制の歴史は割愛する。
そもそも大企業は、どのようにして大企業となったのだろうか? そのビジネスが的を射たことはもとよりだが、シェアを拡大し、他社を吸収することで大きくなった。つまり、攻めることで大きくなった。
繁盛しながらも、分を知る、身の丈を知るとばかり、小企業のままでいると、大企業から攻勢をかけられた時に守り切れなくなる。魅力のある小企業であればあるほど、大企業から狙われてしまうのだ。
どの時代も、どの地域でも、こうした基本的な構造は変わらない。そしてそれはビジネスだけに限らず、水争い、食糧争い、領地争いなどにも当てはまる。
またそれは人類だけでなく、微生物や植物を含む生物界にも当てはまる。生存のために絶えず縄張りを拡大しようとするのだ。そして、その拡大が行き過ぎると、自分たちの食糧を食いつくしてしまい、自滅に向かう。
人類は多様性を否定することで自分たちの縄張りを拡大してきた。食に適した小品種の植物や動物を大量生産し、他を雑草や害獣として処理してきた。他生物で人類を脅かすライバルは、もはやウイルスや細菌しか残っていない。
多様性こそが、人類が生き残る鍵だとすれば、自らの手で選択肢を狭め、生存の可能性を小さくしてきた。そして、人類同士でも、水争い、食糧争い、領地争い、資源争いを繰り返している。
大企業が安売りなどで競争相手を淘汰し市場を独占すると、消費者の選択肢が縮小する。競争相手がいなくなると、自由に価格を設定できる。消費者は「選択肢がない」ので、高い価格でも商品を買わざるを得なくなる。社会保険料、電気ガス水道など公共料金、タバコ、ガソリンなどが値上げしても、消費者は逃げ場がない。
また、独占下ではライバルがいないため「改良しなくても売れる」状態になり、技術進歩やサービス向上が鈍ることになる。また、組織内部の無駄(コスト高、非効率)が改善されにくい。結果として社会全体での資源配分が最適にならず、経済全体の活力を損なう。
加えて、独占企業は圧倒的な資金力や販売網を利用して、新しい企業の参入を妨害する(排他的取引、ダンピングなど)。これにより、健全な競争の芽が摘まれ、市場の硬直化が進む。
そして、巨大な独占企業は政治に強い影響力を持ち、公正な政策決定を歪める危険性が高まることになる。
そこで、政府は財閥解体やカルテル規制、反トラスト法などで企業の独占支配を防いできたのだが、拡大欲求は生存欲と密接なつながりがあるので、根絶は難しい。根絶どころか、「巨大な独占企業は政治に強い影響力を持つ」ので、いたちごっこでもあるのだ。
現在、世界の独占的企業は主に米企業だ。マイクロソフト、グーグル、アマゾン、そしてエヌビディアなどだ。個別セクターではもっと独占的企業は数多い。
しかし、世界市場にはもっと大きな独占的組織がある。中国だ。例えば、二酸化炭素排出量を製造業のシェアに置き換えるとすれば、より経済規模の大きな米国の2.65倍、より人口の多いインドの3.88倍も排出している。
参照:Ranked: Top 15 Countries by Carbon Emissions
また、資本を通じた持ち株比率と出資先売上高から企業の支配力を示した指数、NPF(ネットワーク・パワー・フロー)では、中国政府が圧倒的な1位なのだ。
同指数の1位は中国政府で29.5兆ドルを用いて各国の企業に影響を与えている。2位は中国の政府機関の11.4兆ドルで、両者を合わせると40兆ドルを超える。3位はブラックロックの4.2兆ドルだ。とはいえ、ブラックロックは出資者たちの資金を運用するファンドなので、自由に支配力を行使できるわけではない。4位以下では3.5兆ドル以下の支配力でしかない。
参照:中国政府が世界の企業「支配」 出資データ2億件分析、日本では車に
このことは、独占支配的な米企業でも、株主や出資先からの影響を受ける公開企業であるが故に、中国に何らかの支配を受けてきたことを示唆している。獅子身中の虫ではないが、ライバル資本を体内に抱える企業は、恩恵を受けながらも内部から組織を破壊しかねない虫を飼っているのだ。
獅子身中の虫は、資本主義である限り、お互い様だとも言える。基本的に誰でも株式を購入でき、株主は企業に情報開示を要求できる。政策に意見も出せる。
民主主義も同様で、一般国民が政治に関与することができるように、判断の基準となる情報を公開することが原則だ。政治家やロビイストに資金を提供することで、政策も左右できる。
現在の資本主義と民主主義の問題点は、ここに中国という異質の参加者がいることなのだ。中国は情報を国家機密として扱い、むしろ公開しないことが原則だ。自分は虫となって他の獅子たちを食い潰すことができるが、自分の中の虫は完璧に制御され獅子の自分の餌ともなっている。
一昔前、資本主義社会が中国を組み入れれば、豊かさに惹かれた中国の民間人が資本主義を選択し、中国経済は米経済などに似てくるという考えが一般的だった。ところが、それが体制の変換を意味することを知る中国政府は、資本主義社会への参入を政府主導で、民間を制御しながら行った。
のみならず、上記に見られるように、基本的に開かれた丸腰の資本主義、民主主義社会に、自らは国家機密という防具まとい、国家資本という武器を携えて参入した。
中国政府は圧倒的な資金力や販売網を利用して、新しい企業の参入を妨害(排他的取引、ダンピングなど)することで、他国の産業を潰してきた。
しかし、こうした国家資本主義は民間市場ほど効率的に資本を配分することができない。国家による独占支配の下では、偏向、無駄、縁故主義が広がり、成長ペースが伸び悩むのだ。
中国の成長の原動力は不動産と輸出だった。不動産は数十年分、人口の何倍もの住居を建ててしまい、行き詰った。輸出は農民工や異民族という安価な労働力が支えているが、こうした無理はいずれ行き詰る。
グローバル市場とは、大国、小国、大企業、小企業、我々民間の一般個人までを巻き込んだバトルロワイアル市場だ。ルールはあっても、強者たちが決めるので、常に強者有利になるように誘導されている。個々の分野では、勝者総取りの市場も多い。
ここではサイズが格闘技以上にものを言う。一企業では中国政府に叶う者はなく、中国は多くの分野で独占支配的となってきた。このままでは、すべては中国の独占支配となり、他国の企業は中国の自滅を待つしかなくなってしまう。
そこで、トランプ政権は中国に倣い、経済の政治的支配を強めている。貿易相手国に約束させた巨額の対米投資、インテルの最高経営責任者への辞任要求、エヌビディアとAMDの中国向け売上高の一部を米政府に提供するという合意、日本製鉄のUSスチール買収認可の条件となった米政府によるUSスチールの「黄金株」取得などだ。
また、司法や教育、言論への支配も強め、中央銀行の支配も狙っている。これらのすべては中国が制度的にもっと効率的に行っていることだ。
米中は市場の独占支配で争っている。こうしてみると、米中対立は必然だったと言えるのだ。そして、その対立は全面的なものとなる可能性が高い。
参照:China Hardens Military Stance Against U.S. With Nuclear Weapons and Tough Talk
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