・守りを固める国と、攻めてくる国、どちらが困る? | 矢口新

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☆守りを固める国と、攻めてくる国、どちらが困る?

高関税がトランプ政権の一時的な措置ではなく、今後の米政権の基本政策になってしまう可能性が出てきた。そうだとすれば、日本も構造改革を迫られることになる。


トランプ関税による収入は導入後の4月から急増し、6月は266億ドルと例年の4倍となった。1-6月では計872億ドル(1ドル149円で約13兆円)と、法人税につぐ規模になる見込みだ。高関税が安定財源としての位置づけとなれば、今後政権が交代しても撤廃や引き下げが困難になる懸念がでてきた。分野別の自動車関税では107億ドル超の税収が生じたとみられている。

8月1日からは新たな関税率を発動させる予定で、実効税率はさらに上がる可能性がある。トランプ氏は7月14日、ロシアが50日以内にウクライナと停戦しなければ、ロシア制裁として、(インドやトルコ、欧州各国を含む)ロシアとの貿易国にも100%の追加関税を課すると述べた。トルコや欧州各国が参加するNATOのルッテ事務総長は、ブラジル、中国、インドを名指ししてその案に賛同した。

米議会予算局は、現状の追加関税でも2035年度までに財政赤字を計2.8兆ドル削減するとの試算を公表した。税収総額である計67.5兆ドルの4%にあたる。


周知のように、米国の財政は事実上の破綻状態だ。米財務省は、いわゆる「特別措置」を継続的に延長し続けることによって、年金基金など特定資金からの資金流出を一時的に止め、政府債務上限超過による即時のデフォルトを逃れ続けている。今回の特別措置の期限切れは、この7月24日に迫っている。

財務省や多くのエコノミストらは、特別措置の延長だけでは8月から9月初旬に政府の現金が枯渇しまうことになると予測している。そのため、米議会は夏休みに入る前、8月の休会前までに、債務上限を引き上げるか、政府機能を一部停止させるかの選択に迫られている。

政府は債務上限の引き上げを求めているが、そのためには財政赤字削減の見通し、財源やコストカットの方策を示す必要がある。つまり、このままトランプ関税が財源として固定化し、撤廃や引き下げが難しくなる可能性が高まっている。世界各国の政府や産業は、そうした事態に備える必要が出てきているのだ。


ところで、トランプ関税のような高関税は、外国による輸出攻勢から自国の産業を守る保護主義的な政策だと言われている。つまり、トランプ政権は関税という城壁の壁を高めて自国を守ろうとしている。それでも攻勢を緩めない国々に対しては、その代償を払わせるとしているのだ。

一方、世界にはトランプ関税の引き金となったような、中国のように自国製品の価格をダンピングしてまで輸出攻勢を強め、それによって発展してきた国が存在する。

では、日本の消費者や産業にとって、トランプ米国のような高関税と、中国のような安売り攻勢の、どちらが困るのだろか?


そこで、AIと会話しながら、日本にとっての「外国の高関税」と「外国の安売り攻勢(ダンピング的な低価格輸出)」の弊害について整理してみた。まずは、AIのまとめだ。


1、消費者の立場から見ると

高関税が困る:輸入品が高くなり、生活コストが上がる。選択肢も減る。

安売りはありがたい:安くて種類も多い商品が手に入る。物価上昇の抑制にもつながる。

2、国内生産者・産業の立場から見ると

安売りが困る:超低価格で市場に入られると、国内企業が価格競争に負けてしまい、倒産や雇用喪失につながる。特に製造業や中小企業にとっては深刻。

高関税は助かる:外国製品に対して価格的に有利になり、国内産業を保護できる。

3、政府・国家戦略の視点から見ると

外国の安売りが続くと、戦略的産業(半導体、鉄鋼など)で依存度が高まり、安全保障上のリスクとなる。安価に頼りすぎると、いざという時に供給が止まる危険性。

また、高関税をかけると、報復関税を招き、国際関係が悪化する可能性がある。たとえばトランプ政権の米中貿易戦争のように、関税合戦が経済全体に悪影響を及ぼす。

4、長期的には?

外国の安売りによる過剰依存が怖い。:一時的に安くて便利でも、国内の技術・産業が衰退すると、将来的には選択肢が減り、価格も結局上がる可能性がある。


それなりにまとまっているのではないか。そこでAIに、「国内企業が価格競争に負けてしまい、倒産や雇用喪失につながる。特に製造業や中小企業にとっては深刻」なのに、消費者にとっては「安売りのメリット」だと言えるのかと聞いてみた。


なぜ安売り(ダンピング)が長期的に消費者にもマイナスになるのか?

1、国内企業の淘汰 → 雇用の喪失

国内の製造業やサービス業が中国などの超低価格商品に押されて倒産・撤退。雇用が失われ、地域経済が衰退。

消費者=労働者でもあるので、失業すれば購買力も落ちる。

2、産業の空洞化 → 技術・供給力の喪失

一度国内産業が崩壊すると、簡単には戻せない。たとえば半導体や繊維、鉄鋼など、日本が強かった産業でも同じことが起きた。

安売りに頼りきると、将来的に国内で代替できない危機的状況に。

3、価格支配のリスク

ライバルを価格競争で潰した後、安売りをやめて価格を吊り上げることがある。市場支配力を得た後の値上げや品質低下は、消費者にとって不利益。

いわゆる「安物買いの銭失い」の構造だ。

4、選択肢の減少

安売りにより、品質志向や多様な商品を提供する企業が撤退。市場が安価な製品一色になり、消費者の選択肢が極端に狭くなる。一見「消費者の味方」のようでも、安売りが過ぎると全体が貧しくなる。

安さは魅力だ、それが「持続可能で公正な競争」に基づいたものかどうかが重要だ。

中国のような国家補助を背景にしたダンピング的な安売りは、市場の健全性を壊し、結局消費者も損をする場合が多い。


会話の内容が大分深まってきたように思える。そこで、こうした一般論だけでなく、「トランプ関税(米国の高関税政策)」と「中国の安売り(ダンピング)」のうち、日本にとってどちらがより深刻かを考えるために、影響する対象・分野・時間軸を分けて整理して貰った。


1、【米国の保護主義的な関税政策】の影響は主に対米輸出産業(自動車・鉄鋼など)

例:日本から米国向けの自動車、鉄鋼、アルミ製品などに高関税がかけられた(2018年頃)。

日本企業の輸出競争力が落ちる → 利益減少。

日本企業は米国内に工場を建てることで回避策を取ったが、コストは増大。
一時的に輸出額減少や、海外生産のコスト上昇。

ただし、トヨタなどはすでに米国に多くの生産拠点があり、致命的な打撃ではなかった。

まとめ:一時的・政策的(変化の余地あり)。産業へのダメージは限定的・特定業種で、現地生産などで対応可能。


2、【中国の安売り・ダンピング】の影響はあらゆる産業(製造業・素材・電機・繊維)

圧倒的なスケールと国家補助により、鉄鋼、繊維、太陽光パネル、半導体などで超低価格攻勢。

日本企業が価格競争で敗退 → 撤退・倒産・雇用喪失。

技術の流出・産業の空洞化が進行。

繊維産業:1990年代以降、東アジアからの低価格品で大打撃。→ 地場産業が崩壊。

太陽光発電:日本製パネルは中国製に駆逐され、市場からほぼ撤退。

半導体:安価な製造代行の影響で、国内工場が閉鎖 → 技術も失う。

以下に、鉄鋼・半導体・造船という日本の主要産業が中国の「安売り」(過剰生産と国家主導の低価格輸出)によりどのような影響を受けたか、そして日本企業がどう対応したかをまとめて紹介する。

鉄鋼業界:中国は2000年代以降、国策で巨大製鉄所を次々建設。生産能力が需要を大きく上回る → 過剰在庫を海外に投げ売り(ダンピング)。2010年代半ばには、世界の粗鋼生産の50%以上を中国が占めるように。

日本への影響:日本製鉄やJFEなどが価格競争にさらされ利益圧迫。

高品質な自動車用鋼板などで優位性を保つ一方、建設用鋼材など汎用品では中国製に押され気味。世界市場でも、韓国・東南アジア向け輸出で競争力低下。

日本企業の対応:高付加価値製品へ特化(自動車・橋梁・原子炉用など)。統合・再編:日本製鉄(旧・新日鐵住金)は国内設備を統廃合。


半導体業界:中国は、国家戦略「中国製造2025」で半導体国産化を最重要分野に指定。国家資本が巨額投資してファウンドリ(製造受託)やDRAMなどを強化。台湾・韓国・中国連合が価格競争を主導。

日本への影響:1990年代は、世界トップシェア(NEC、東芝、日立など)だったが、2000年代以降に急落。DRAMからの撤退(エルピーダ→倒産→マイクロンに吸収)。

日本企業の対応:製造より素材・装置分野に強みを残す構造へシフト。半導体製造装置・素材に特化(東京エレクトロン、JSR、信越化学など)。ラピダスのような国主導の再建プロジェクトも2020年代から始動。


造船業界:中国は、国有造船企業が政府補助金と銀行融資で超大型化。船価を下げて世界中の発注を獲得(特にバラ積み船やタンカー)。韓国(サムスン重工、現代重工)とも激しい低価格競争を展開。

日本への影響:三菱重工、今治造船などが収益性悪化・受注減少。かつて世界トップだったシェアが中国・韓国に抜かれる。川崎重工は民間船から事実上撤退(防衛・鉄道に集中)。

日本企業の対応:高付加価値船(LNG船、フェリー、環境対応船)へのシフト。統合・提携:ジャパンマリンユナイテッド、名村造船などが連携。国交省などの支援で国内拠点の再編と設備更新が進む。


まとめ:構造的・長期的(継続する脅威)。産業へのダメージは広範囲・根本的で、国内産業そのものが競争力を失う。


結論:短期的・外交的な「痛み」はトランプ関税のほうが強く感じられるが、日本の基盤産業を弱体化させる構造的な脅威としては、「中国の安売り」のほうが、はるかに深刻だ。


AIを誘導尋問してしまったのだろうか? 私が漠然と期待していた通りの結論となった。世界のグローバル化に取り残された日本の地方が辿ってきた衰退の理由が見えてきた。私が感じていた「トランプが世界経済を破壊するという一般論に対する疑問」の正体をAIが解き明かしてくれた。

中国のような国家補助を背景にしたダンピング的な安売りは、市場の健全性を壊し、結局消費者も損をする場合が多い。

「製造業やサービス業が超低価格商品に押されて倒産・撤退。雇用が失われ、地域経済が衰退」というのは、大手スーパーなどに押された地方経済にも当てはまる。グローバル化がもたらした利益は、インバウンドを含めて薄っぺらいもので、地方にとっては雇用や富だけでなく文化やプライドまで奪われて、本質的に貧しくなったのではないだろうか?

米国が前門の虎なら、中国は後門の狼だ。日本はどちらとも向き合う必要がある。とはいえ、守りを固める国と、攻めてくる国、どの国にとっても、どちらが困るのかは明らかだ。守りを固める国の関心は本質的に国内だが、攻めてくる国の関心は他国支配だからだ。

 

 


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