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☆年金と税収。事実と大きな誤解
高齢者の勤労意欲が高まっている。物価高で年金だけでは暮らしていけなくなったことも後押ししていると言われている。4月にハローワークに申し込んだ65歳以上の新規求職者は前年比5.6%増の12万3179人と、過去最多だった24年4月から大幅に伸びた。厚労省は「物価高騰を背景に、生活費を補填するため仕事探しを始める動きがみられる」と説明している。
厚労省は全国の主要なハローワーク300カ所に、60歳以上の求職者を対象とする窓口を設けるなど、就労を後押ししている。担当者は「働く時間帯や健康面など、高齢者特有のニーズに沿った支援をしたい」と話しているようだ。
年金額は賃金や物価の伸びを考慮して毎年度改定されるのが原則だが、現役世代の負担能力に応じて伸びを抑える「マクロ経済スライド」が適用されている。年金額は25年6月に1.9%の引き上げが予定されているが、4月の物価上昇率は3.6%と年金の引き上げ額を上回っており、実質の年金額は減額されている。
高齢者が生活費を補填するために働いても、24年度は厚生年金と賃金の合計が月50万円を超えると受け取る厚生年金が減った。5月30日に衆院で可決された年金制度改革法案では、65歳以上の収入が一定の水準を超えると、受け取る厚生年金の額を減らす在職老齢年金を改める。法案が成立すれば26年度から月62万円までは満額支給になることで、高齢者の就労を後押しする。
厚労省は24年7月の財政検証で、経済成長が実質ゼロ%程度で推移する場合、モデル世帯では基礎年金の「所得代替率」がおよそ30年後に3割低下するとの見通しを示した。代替率は現役世代の平均手取り収入と比べた給付水準だ。
基礎年金だけを受給する自営業者や、就職難で厚生年金の加入期間が短い氷河期世代らは給付水準が低下する影響を大きく受ける。このため厚労省は、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の底上げを図る案を提起した。実施すれば、基礎年金のマイナス幅は1割減に抑えられる。
底上げ策を実施した場合、男性は1963年度生まれ(2025年度時点で62歳)、女性は59年度生まれ(同66歳)以降の受給総額はプラスになる。受取額は厚生年金の受給割合が少ない低年金の人ほど恩恵は大きい。とはいえ、基礎年金の受給額が増えれば、追加の国庫負担も必要となる。修正法案が成立しても、底上げを実施するかは29年の財政検証を踏まえた判断になる。確実に実施されるわけではない。
29年以降に年率3%前後の賃金上昇が毎年続く成長型経済に移行できるなら、現行制度のままでも基礎年金の目減りはかなり抑えられる。判断先送りはこの可能性を見極めるためだという。
厚生年金の対象者を広げる改革案では、従業員50人以下の企業で働くパートタイム労働者にも適用する規定を盛ったものの、完全施行は35年10月とかなり先になる。
飲食店や宿泊業、農漁業などの個人事業所(5人以上)に厚生年金の適用を広げる案も、対象が新設事業所に限定される。既存事業所については期限を定めずに適用を先送りする内容のままだ。
これが今の国会で行われている年金改革に関する審議のあらましだ。「修正法案が成立しても、底上げを実施するかは29年の財政検証を踏まえた判断になる。確実に実施されるわけではない」と、単に先延ばしされている状態だ。
ほとんどの人は死ぬまで働き続けることが出来ないので、年金や税金は我々の老後の生活を左右する。富裕層であったとしても、第二次世界大戦後の日本であったような預金封鎖やデノミ(新円への切り替え)、農地解放のような資産没収に会えば、その老後は政府の意向に左右される。これが杞憂だとばかり言えないのは、現政府の債務は、大戦時の政府債務よりもGDP比で大きいからだ。
参照:日本の財政関係資料(P56)
そこで、我々の命にも関わる「年金と税金についての事実と誤解」とを、整理しておきたい。
上記資料のP8をご覧頂きたい。ここでは「平成2(1990)年度と令和7(2025)年度における国の一般会計歳入歳出の比較」が、「一般会計税収の推移」と共に紹介されている。
1990年度とは、P56で見られるように、政府債務がGDP比で50%内外と、まだ健全であった時期だ。また、P8の一般会計税収に見られるように、税収実績が60.1兆円と、その後約30年間のピークであった年だ。
1990年度の国家予算の社会保障費(年金・医療・福祉など)は11.6兆円で、歳出の17.5%だった。それが2025年度の予算では38.3兆円と、33.2%に急増している。その煽りを最も受けているのが公共事業投資で、歳出に占める割合どころか、実額でも減少している。このところのインフレ率を加味すれば、インフラの劣化は免れないところだろう。
また、実額で見れば社会保障費を除き2倍以上になったのは国防費だけ。それに迫るのが国債費だ。国債費は税収不足とアベノミクス、コロナ対策などで積み上げた借金の借り換えと利払い費なので、今後の金利上昇では急増が見込まれている。一方、国防費の急増は、食料やエネルギーがなくても、インフラが劣化しても、戦争をしてでも、国民の命を守りたいとする政府の考え方だろう。
とはいえ、P56の政府債務の異次元な膨張が示しているのは、少なくとも1990年度以降の政府運営は年金を含めて全く機能していないということだ。私はその理由をP8の「一般会計税収の推移」のグラフに見ている。
ここで見られるのは、財源に消費税が加わった頃から、逆に総税収が減ったことだ。これは偶然ではなく、3%の消費税導入時、5%への引き上げ時、8%への引き上げ時、10%への引き上げ時、そのどれもの時期に景気が落ち込み、それが税収減に繋がったからだ。また、消費税導入時に行われた法人減税や所得税の累進性の後退も税収減に繋がった。
つまり、消費税導入に伴う税制改革がその後の景気低迷、税収減に繋がり、ひいては年金制度を追い詰めていることを示唆している。
とはいえ、23~25日に日本経済新聞社とテレビ東京が行った世論調査では、55%が「社会保障の財源を確保するために消費税率を維持するべきだ」と答えたようだ。
識者の中には、「年金を拡充するには税財源が必要になるという”不都合な真実”をわかっていながら、見ないふりをしているかのように、一方で消費税減税を主張するという政治の劣化が起きている」と考える人もいるようだ。石破首相も「日本の消費税は欧州諸国に比べて低い」と述べている。
ところで、皆さんが支払っている社会保険料は、OECDの基準では税金扱いなのをご存じだろうか?
社会福祉が世界で最も充実している国の1つデンマークの場合、社会保険料はゼロで、2019年時点の消費税収は全体の20%、最も大きな財源は所得税収の52%だ。一方の日本は所得税収が19%で、社会保険料と消費税収を合わせると54%にもなる。
社会保険料ゼロのデンマークの福祉が世界で最も充実していて、世界で最も高い社会保険料(+消費税)の日本の福祉が崩壊しつつあるのはどうしてだろうか?
私見では、消費税率を5%に引き上げて以降、日本経済の最大のエンジンである個人消費が社会保険料と消費税という事実上の天引きで伸びず、経済成長そのものが止まったからだ。それに伴い、世界的な競争力も5年連続の1位から38位にまで急落した。
日本政府は、国民が消費や投資という経済競争を行う前に54%を徴収している。そのため活力が削がれ、競争後に徴収できる所得税は19%に落ちてしまう。
一方で、デンマーク政府は競争前には20%しか徴収しない。国民は消費や投資に励むことができるので、競争後に徴収できる所得税が52%にもなるのだ。それで高成長も高福祉も達成できている。
石破首相の「日本の消費税は欧州諸国に比べて低い」と言うのは、社会保険料がOECDの基準では税金扱いなのを知らないための誤解、あるいは曲解だ。
今後も社会保険料引き上げという増税が続くと見込まれる中、国民の消費や投資が死滅してしまう前に、少なくとも消費税率を下げる、あわよくば撤廃することで国民に活力を与え、日本の経済構造を1990年以前の形に戻せないものだろうか。
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