過去、現在、未来と3つの時制がありますが、マーケット参加者(プレーヤー)は、シンプルな行動指針を決めるために思考もシンプル、「過去」と「未来」の2つに分けるべきでしょう。
「現在」は、すでに過去だと考えるのが、現実的だからです。
週末に株価を見て「金曜日の大引値=現在値」と表現しますが、金曜日の日中に戻って売買することなどできないので、月曜日の朝まで変化しない「現在値」(金曜日の引け)は、はっきり過去のことです。
さて、売買の狙いが長期でも短期でも、あるいは、ウォーレン・バフェット氏のような真の意味の投資でも、「2割上がればサイコー」といった投機に分類される売買・トレードでも、実践者は例外なく『過去を見ながら未来を当てよう』としています。
トレンドは継続する──「テクニカル分析の三原則」のひとつです。
ある傾向が確認できたら、それがつづくと考えます。いつまでつづくかはわかりませんが、あと少しはつづくという前提でポジションを取ります。
歴史は繰り返す──これも「テクニカル分析の三原則」のひとつで、過去と同じパターンが再現される可能性があると考えます。
こうした前提をもとに、最後は自分の感覚でゴーサインを出してポジションを取ります。
でも結果は……当たったり、曲がったり。
当たったときはうれしいのですが、賞金が自動的に入ってくるわけではありません。手仕舞いというシゴトが残っています。
「乗れた」と判断したあとにポジションを積み増す選択肢もありますし、途中でツナギを入れるなど無限の選択肢を抱えながら値動きを追います。
曲がったときは悔しいのですが、決して自分にダメ出しせず「相場だから仕方がない」と考えます。あるいは、自分を否定しないために、「相場が間違っている」と言いきります。一方で、反射的に、淡々と、損切り敗戦処理を進めます。
そして、自分を否定せずにおわらせた結果、次に同じ状況があれば、迷わずにポジションを取りにいきます。戦略の見直しを行わないかぎり、負けの記憶で行動をブレさせることなく出動するのです。
私たちマーケット参加者は、なかなか器用なことをやってのけているのです。
ここでポイントとなるのは、「情報」です。
情報といっても、誰かがささやく“秘密情報”でもなければ、都市伝説と区別のつかないような経験則でもありません。
変動する株価、それに対する自分の評価、自分のポジション、そのポジションの評価損益、等々、自分自身が生み出す情報が最も重要です。
こうした「内面にある情報」をどう扱うか──どう認識するか、どれを捨ててどれを残すか、どう評価して次の行動につなげるか、といったことが大きな課題です。
秘密情報的なものは数多く飛び交いますが、誰も未来を知らないのに「知っている人がいるような気がする」と期待する心理で成り立っているだけです。「幽霊がいたらコワい」という思いがあるから幽霊話が成立するのと同じく、幻想なのです。
なかには、まるで未来を見てきたかのように語る輩もいますね。
こうした情報を気にする姿勢とは一線を画した、いや、全く次元の異なる「実践者の思考」に目を向けましょう。
「過去は未来を映す鏡ではない!」と強く言いましたが、私たちには過去の情報しかありません。でも、それを評価することで、オリジナルの情報が生まれます。そこに次の株価情報(どんどん過去のものになっていくのですが)が追加され、情報は自分の操作した方向に膨らみながら進んでいきます。
そんな情報を利用して予測を立て、ポジションを取ります。
その結果を見ながら、対応を考えます。
そして、すぐに次の対応を迫られます。
こうした流れが絶え間なく、ずっとつづきます。
予測に当たり外れがあり、対応にも上手下手がありますが、個々の対応で損の金額と利益の金額が決定します。そして、これがずっとつづきます。
プレーヤー兼監督、兼コーチ……ひとり数役をこなす相場・トレードでは、こうした情報処理がとても重要なのです。連続して発生する小さな結果で、よろこんだり落ち込んだりしている余裕なんてないのです。
