12月10日のブログ ↑ のつづきです。
●ロングショート戦略
サヤ取りと似ているようで、全く異なる方法です。
上がると思う銘柄を買うのですが、同時に、下がると読んだ銘柄をカラ売りするのです。
「上げ思惑」と「下げ思惑」を、同時に仕掛けるということです。
どちらも「上げ」「下げ」を予測して“相場を張る”のですが、手の内に買いポジションと売りポジションがあることで、マーケット全体の大きな騰落に振り回されにくいという計算があります。
ただ、買っている銘柄が下がり、売っている銘柄が上がる、という恐怖の「股裂き」もあり得ます。リスクが少ないという計算で複雑なポジションを抱えた状態は、こうした不測の事態に弱いので、安易に取り組むことは避けるべきです。
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このように、いろいろな方法がありますが、個人投資家が第一に考えるべきは「資金管理」です。
といっても、小難しい計算は必要ありません。
不測の損失が発生しないよう、「資金稼働率を抑える」という、実におもしろくない姿勢が重要だと、納得するだけです。
売買・トレードは、マーケット参加者同士の競争です。
したがって、どんな立場でも、予測は当たったり当たらなかったり……。
当然、当たれば利益、見込み違いならば損失という結果です。
資金稼働率が高い積極姿勢だと、当たったときの利益は大きい半面、思惑と異なる動きだったときの損失が大きくなります。ここが問題です。
「資金100万円」で考えてみます。
稼働率10%(10万円)ならば、値下がりをとことん放置して、買った株が半値になっても損失は5万円。資金に対して5%です。
逆に、レバレッジを効かせて200万円分のポジションを持っていた場合(稼働率200%)、10%の値下がりで資金の20%、20%の値下がりで資金の40%を失ってしまいます。
資金の40%を失う……取り戻して原点回帰するだけでも、たいへんなことです。
大きなマイナスは、取り返しのつかないケガになります。
だから、なにがなんでも避けなければなりません。
利益を出すために売買するので、「最大の効率化を図る」イメージが先行しますが、第一に考えるのは「損失の抑制」なのです。
マーケットから退場させられたら、将来の可能性が消えてしまうからです。
私たちが提唱する適正な資金稼働率は──手がける銘柄や手法によって差はあるものの──基本は最大50%です。平均ではなく、最もポジションを膨らませたときの上限が「資金の50%」です。レバレッジを効かせるなんて、言語道断だと考えます。
組織に属するプロの場合は、もっと積極的に動かすことを求められます。
また、休むことなく“やりつづける”ことも要求されます。
でも、個人の兼業投資家は、「休むことができる」というのが大きな武器です。
仕事が忙しかったり、体調がすぐれなかったり、悩み事があったりしたら、ポジションをすべて閉じて休んでいることが可能なのです。
1年間、利益がなくても大丈夫です。
「来年取ろう」と考えることができます。
ただ、資金を大きく失ったとき、補充してくれる人はいません。すべて、自分の大切な資産です。
さて、大きなマイナスが問題だと解説してきましたが、実は大きなプラスも問題を引き起こすと考えてください。大きく取ったときは、「もっともっと!」と考えてムチャをしがちです。調子のいいときは積極的に取りにいくべきといっても、少しの背伸びが“売買を荒らす”ことになり、ふと手が合わなくなったときには、止めることのできない逆回転がスタートしてしまいます。
取った人間は「もっともっと!」、損した人間は「取り返そう!」。
いずれにしてもムリをして、おかしくなっていくのが相場の世界です。
株を売買しているだけで十分に積極的──ぜひとも、「やらない」「張らない」「近づかない」という驚くほど消極的な姿勢をベースに、「これくらいはやらないと……」と思えるものを、仕方がなく足していくようなイメージを大切にしてください。
とにかく生き残ること!
決して、大げさな表現ではないのです。

