売買には、「ナンピン」と呼ばれる技法があります。
でも、ナンピンについては多くの投資家が誤解しています。
投資家が、最も大きな勘違いをしているひとつでしょう。
この勘違いを説明したあと、正しいナンピンを紹介します。
そして、勘違いの要因をゼロにするためのポイントについて述べます。
「このあたりが安値で、これから上がる」と読んで買ったのに下がった……仕方がないので、大きく下がったところで同じ株数の買い増しをして平均値を下げた。
これが、多くの人が考えて実行しているナンピンで、私が“大きな勘違い”と考える売買です。あえて厳しい目で、ツッコミを入れてみます。
- 大きく下がる前に損切りすべきだったのでは?
- 見込み違いをした売買なのに、どうして株数を増やすのか?
(不良在庫をさらに仕入れるの?) - 「もう下がらない」という見込みどおりになる根拠は?
(すでに大きな見込み違いをして現在の状況なのですよ) - さらに下がったら大損……致命的なケガになる!
- 買い増しした時点で平均値は下がったけど、株数は2倍で依然として含み損……
こうして冷静に分析すると、突っ込みどころ満載なのです。
そもそも、資金には限りがあるので、避けようのない見込み違いで「計画外」の買い増しをしていたら、資金がいくらあっても足りません。
最初の株数をグッと減らせば、こうした買い増しも可能ですが、最初の買いで見込みどおりに上昇したときは利益が少ないということです。やはり、成立しないのです。
想定外に下がったので、追加で思いついて買い増し──これは、「やられナンピン」と呼ばれるわるい手です。実践家が「ご法度」と考える対応、あり得ない売買の進め方なのです。
では、「正しいナンピン」はどんな売買でしょうか。
まず、株数の計画を立てます。
どれくらいの数量を買うのか、ということです。
そして、何回にも分ける「分割」で仕込みます。
見込み違いなんていくらでも起きるので、自分の読みが合っているかどうかをさぐりながら進むのです。例えば合計5千株仕込むとしても、1回目は「まず100株」といった具合に、少しだけ買います。「ためし玉」と呼ばれる少ない株数を、偵察隊として出動させるのです。
株価の推移を観察して「いける」と踏んだわけですが、その銘柄にかかわっていない状況での判断なので、実際にポジションを持った状態で値動きを慎重に確認するのです。
この「ためし玉」の段階では、「あっ、ちがったか」と損切り撤退するくらい当たり前です。また、もう少し買い進んだあとでも、株数が少ないうちはラクな気持ちで損切りが可能です。
もし、同じ銘柄をあらためて買うにしても、損切りしてゼロの状態なら、落ち着いて観察して判断することができます。こうして、値動きを確認しながら、押したり引いたり臨機応変に動くことで、つかみどころのない株価変動に“ついていく”売買が実現するのです。
ご法度の「やられナンピン」をしてしまうのは、多くの場合、こうした丁寧な分割をせずに「よし、ここだ!」と一点狙いをしたことが原因だと思います。最初の読みがズバリ当たることを前提にいきなり決め打ちし、見込み違いを認めずに損切りしないで放置した結果、最後にイチかバチかの手を打ってしまう……とてもキケンです。
人間はミスをします。
ましてや株価の予測なんて、まじめに、丁寧に、慎重に行っても、カンタンには当たりません。
だから、「ミスもあり得る」ではなく「半分はミス」という前提で臨むのです。
その発想が、分割のテクニックにつながります。
分割売買において、「そろそろ底ではないか」という確固たる読みをもとに、コツコツと買い進みながら平均値を下げるべく努力する──これがナンピン、きちんとした売買テクニックとしての「ナンピン」です。
