相場の世界には、さまざまな人がいます。
売買で生活している「相場師」(トレーダー)から、コツコツと資料を作るアナリスト、現場で日々、投資家と接している営業マンなど。
総称して、「業界人」としましょう。
業界人が口をそろえて言うのは、「一般投資家は売買をやりすぎる」という言葉です。
株数が多い、資金稼働率が高い、そもそも資金の額が多い、情報に敏感すぎる等々。
「今日はこれが上がった。次はなんだ」
「買っておけばよかった。こんどは取り損なわずに儲けたい」
機会損失を嫌うあまり、やりすぎてしまうのです。
ポジションが増えることに違和感を覚えても、「ほぐすのが難しい」ので、ポジションは積み上がりやすいのです。
意外とカンタンに限界を超え、動けなくなります。
ぜひとも、「ポジションゼロ」という状態を、アイデアとして頭にキープしておいてください。
機関投資家とちがい、私たち個人投資家には、「こうしなければならない」といった課題がないのです。気分が乗らなかったら、仕事が忙しかったら、自分の好みの相場つきでなかったら、手を出さずに見ていていいのです。
機関投資家は、決められた資金を最大限効率よくまわすため、ギリギリの線までポジションをつくります。そして毎日、その管理に大きなエネルギーを費やします。でも、個人投資家がそのマネをする必要などありません。
いや、マネするべきではないのです。
まずは大きく負けないこと。
そのためには、「機会損失」なんて言葉を気にせずに余分なことをしない習慣を身につけるのが第一です。そして、「ここだ!」と思える場面でスルスルッと出動し、サクサクッと撤退して利益を残す。
個人投資家の資金は、数十万円、あるいは数百万円か数千万円、かなり多くても数億円でしょう。緻密に計算したり、難しい技を使う必要はなく、上手にメリハリをつけることで高効率の運用が可能だと考えてください。
個人投資家にとって、全くポジションのない状態である「ポジションゼロ」(「マル」とも呼ぶ)が、実はニュートラルポジション、ホームポジションなのです。
この発想を大切にして、常にスムーズに押したり引いたり、攻めたり守ったり、自らを完全にコントロールしている状態を維持してほしいのです。