株価指数の動きと個別銘柄の動きには、常にズレが生じます。
例えば数年単位で株価指数が上昇していた場合、「株式市場に資金が流入している」「株価は上げ基調だ」と考えて間違いありませんが、個別銘柄については、その数年間ほぼ動きがない、あるいは、逆に下げトレンドを形成しているケースも数多くあるものです。
バブル相場の最終局面の1989年、株価指数は上値を追いましたが、個別銘柄の伸びはみられませんでした。その状況に至る底上げは前例のないものでしたが、上昇のタイミングは個々に大きくズレていたのです。
ITバブルのあとの2003年春、日経平均は下落して7千円台の安値をつける一方、値の安い個別銘柄は完全に真逆のトレンドで力強い上昇をスタートさせていました。
2020年は11月と12月に日経平均はグイッと上昇し、「30年ぶりの高値」と報じられました。
しかし、個別銘柄で上伸しているものは、ほんの一部分……。
適度に上げてきた銘柄も、多くは頭打ちという状況でした。
最終的な判断は人によって分かれますが、少なくとも、「株価指数が高いのだから」と焦って銘柄を探すことだけは避けたいところです。
見ている範囲や値動きの狙い方がちがえば、相場の評価も大きく異なるのです。
ところで、みなさんは、株価について「強い」とか「弱い」とか、なにを基準に評価していますか?
いろいろな観点がありますが、よくあるのは“直近で上げているか、下げているか”というものでしょう。でも、それは過去の出来事。
現時点で将来を考える場合には、別の観点や基準を持ち出すでしょう。
もちろん、直近のトレンドがつづく、というのも判断要素のひとつですが、実際にはいろいろな条件で判断しているはずです。
落ち着いて考えると、「現時点から上がるか下がるか」は、誰にとっても五分五分のはずです。現時点で値段がついているということは、自信をもって「買いだ」と判断している参加者と、「売りだ」と確信している参加者が等しく存在している状況、といえるからです。
身もフタもない理論のようですが、実はこれが最も科学的な説明なのです。
では、「強いから買い」とか「弱いから売り」という判断は、いったいなんなのでしょう……それぞれの参加者が、独自の基準で考えた結果の、いわば偏った“価値判断”です。
相場の強弱について談義する際は、こういったプレーンな理論をベースに意見交換する場合もあれば、一定の判断基準が一致していることを前提に「強いよね」などと会話する場合があります。私たちは、けっこう難しい会話をサラッとこなしているということです。
半面、そんな優秀な感性が盲点を生み、当初の観測に固執して失敗することもあります。
だから、例えば強気のときに、「あえて“売り目線”で観察してみる」なんてアプローチも有効だったりするのです。
「買いだと思う」「買ってよさそうだ」「ガマンできないから買う!」と突っ込んでいくのではなく、「待て待て。カラ売りできるかどうかを考えてみよう。ムリだと結論づけることができたら、本当に買いだと自信がもてる」という発想です。