3月9日放送のフォローアップ(2)
林 知之

地味なアレンジはトレードの本質

マーケット・スクランブル、3月9日の放送は「システムのアレンジ」というテーマでお送りしました。そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第56回 システムのアレンジ ~中源線の活用でトレードルールのあり方を考える~

前回のフォローアップ(1)では、「パラメータの最適化」について簡単に説明しました。システムトレードでは、この最適化を積極的に行うでしょう。ところが、前回も述べたように、やり過ぎるとダメなので注意が必要です。

自分で最適化を行う場合、「単に“直近の過去に合う数字を見つける”」といった誤りに注意する必要があります。

既存の判断基準や自動売買システムなどを検討する場合は、上記のような方法で直近の過去におけるパフォーマンスを上げただけなのに「ほら当たってるでしょ」なんて説明に警戒しなければいけません。

こういった誤りを避けるためには、地味なアレンジ、裁量によるカンタンなアレンジを考えてみるべきです。まずは単純に、「シグナルを採用してポジションを取るか、そのシグナルを見逃すか」という観点で考えてみるのが基本でしょう。

中源線はルールがシンプルなので、転換の判断が常に感覚とつながります。
そこで、「この転換は不自然だ。シグナルを見送って休もう」といった判断も、実践的に許されることになります。例えば、「下げの日柄が足りないのに陽転した」といったケースが考えられます。

前回でも示したコマツ(下図)では、パラメータを変えずに臨みながら、青い線で囲んだような余分な転換で「アクションを起こさないようにしよう」と試みることです。

コマツ中源線

もちろん、「そんなふうにアレンジするなら、それもルールに追加するべきじゃないか」という反論があるでしょう。
その通りなのですが、次々と条件を加えていくと、どこの部分がどう作用するのかが、わかりにくくなります。感覚とのリンクが弱くなってしまうのです。行き過ぎれば、システム全体が“ブラックボックス”化してしまいます。

だから、適当に見送って休むという対応が、「感覚の判断も尊重したい」という気持ちを満たすとともに、生身の人間に必要な休息を実現する、と考えてください。

本格的なシステムトレーダーには否定されてしまいそうですが、このような地味で泥くさい思考が、トレードの本質を浮かび上がらせてくれると私は考えます。

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

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3月9日放送のフォローアップ(1)
林 知之

パラメータの調整でパフォーマンスは変わる

マーケット・スクランブル、3月9日の放送は「システムのアレンジ」というテーマでお送りしました。そのフォローアップ(1)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第56回 システムのアレンジ ~中源線の活用でトレードルールのあり方を考える~

「パラメータ」という言葉があります。
「変数」と訳されますが、要するにトレードルール(数式)の“調節つまみ”です。

中源線のパラメータ(変数)は1つだけ、「キザミ」と呼ばれる数値です。
中源線のルールでは、値幅を「分(ぶ)」という単位に置き換えて判断します。
そして、「1分の値」をいくらに設定するかが、キザミ設定なのです。

1,000円未満の個別株では1分を1円にするのが標準と示していますが、これを例えば「1分=2円」に変えると、転換が鈍くなります。そのかわり、ダマシが減ることが期待できます。逆にキザミを小さくする、例えば「1分=1円」を「1分=0.5円」に変更すると、転換は敏感になりますが、ダマシが増える心配があります。

実例を見てみましょう。
2つの中源線チャートは、同じ銘柄の同じ期間で、キザミ設定だけが異なります。
赤い線が陽線(買い線)で、黒い線が陰線(売り線)です。
(銘柄は6301コマツ、期間は2014年10月1日~2015年3月10日)

チャートAでは、10月の安値からの立ち上がりを的確に捉えています。
気になるのは、1月と2月の陽線。わずかながらプラスかな、というところですが、最後に再び陰転しているので(3月9日)、「この2つの陽転がなくなると、いいかもしれない」といった発想が生まれるでしょう。

コマツ中源線A

そこで、キザミ設定を変えてみます。「1分(ぶ)」の値を大きくしてみるのです。それが、次に示すチャートBです。
12月に陰転するタイミングは同じで、その後もずっと陰線が続くという、わかりやすいチャートに変化しました。そのかわり、10月からの上げでは陽転のタイミングが遅れています。全体に“鈍く”なったことが、よくわかりますね。

コマツ中源線B

こんなふうに調整することを「最適化」といいますが、やり過ぎてしまうとダメです。単に「直近の過去に合う数字を見つける」だけで、これから先の未知の株価に対応するという視点が欠落してしまうからです。

とはいえ、こういう作業によって、中源線に合う銘柄(合いそうな銘柄)と合わない銘柄(合いそうもない銘柄)に分類することもできます。

中源線シグナル配信では、この分類を示します。
苦労ゼロで儲かる“打ち出の小槌”は存在しませんが、ムダな苦労を省くことは大切ですからね。

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2月9日放送のフォローアップ(4)
林 知之

システムのアレンジ
~確信ある自分流をつくり上げる~

マーケット・スクランブル、2月9日の放送は「値動きルールに基づく売買の実際と注意事項」というテーマでお送りしました。そのフォローアップ(4)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第54回 値動きルールに基づく売買の実際と注意事項 ~中源線の特長と現実の難しさを考える~

前回、パラメータ(変数)の調整について、簡単に説明しました。
中源線におけるパラメータは、「キザミ」と呼ばれる数値ひとつだけです。
とてもシンプルです。

だから、キザミの設定を考えるのが中源線の実際の利用なのですが、実はさまざまなアレンジがあり得るのです。

まずは、シグナルが出ても裁量の判断で見送る、という選択肢があります。
つまり、「今回は休んで静観する」という決断ですね。
「ここはダマシが出やすい場面だ」という判断もあるでしょうが、「仕事が忙しいから休む」という個人トレーダーならではの理由や、「大きく儲けたから頭を冷やすために休む」という生身の人間ゆえの理由などが考えられます。

しかし、システムトレードとして考えれば、「適切な設定で張り続けるべきだ」という考えが成立するので、実際の利用には多くの観点とさまざまなアレンジがあるのです。

いずれにしても、複雑なロジック(数式)だと応用も難しいでしょう。中身のわからない“ブラックボックス”のシステムなど、アレンジどころか実用にも疑問が生じます。
しかし中源線は、ロジックがシンプルですし、すべて公開しています。だから、アレンジを考えることで、トレードを考える視点が定まったり、新しい発見につながります。

次回、3月の放送(本日夜)では、トレードのロジック、つまり値動きに対応する“アイデア”をどうアレンジするか、どんな応用があるかについて、中源線を取り上げて説明する予定です。
お楽しみに!

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

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2月9日放送のフォローアップ(3)
林 知之

最適な基準とは何か
~実用的な設定が求められる~

マーケット・スクランブル、2月9日の放送は「値動きルールに基づく売買の実際と注意事項」というテーマでお送りしました。そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第54回 値動きルールに基づく売買の実際と注意事項 ~中源線の特長と現実の難しさを考える~

中源線建玉法は名前の通り、「建て玉するための方法」です。
売り買いを決める「予測法」にとどまらず、ポジション操作を司る「建玉法」、そして前回述べた「資金管理」の要素まで盛り込まれ、実用的で実践的な“やり方”にまとめられているのです。

この中源線建玉法を、もっと知ってもらおう、まずは体感してもらおう、実践しているトレーダーのみなさんに研究材料を提供しようというのが、番組でも繰り返し紹介している「シグナル配信」なのです。

さて中源線で売り買いを決めるロジック(数式)は、細かく規定されています。でも、“キザミ”と呼ばれるパラメータ(変数)を変化させれば、陰陽転換が少しずつ変わってきます。“キザミ”をわかりやすくいえば、「調節つまみ」ですね。中源線の規定通りに長く売買したとき、この少しの変化が大きな差となるので、とても重要です。

キザミの設定は中源線研究会の主なテーマのひとつなので、シグナル配信で林投資研究所が選定する「ユニバース銘柄」のキザミについて、しっかりと考えた結論を示したいと思っています。

実用的で実践的な“やり方”である中源線において、実用的で実践的な取り組み方を考えていくのが、中源線研究会の活動です。
具体的には、過去の株価データを使ったバックテストで、銘柄ごとのパフォーマンスや最適なキザミを考えていくのですが、計算して利益が出ていればOKということではありません。

例えば過去10年で高い利益率を示した銘柄、あるいはキザミ設定があったとしても、その利益のほとんどが1年か2年に集中しているようでは、これから先、実際に資金を投じるには不安です。

また、“ドローダウン”という発想も重要です。
「最後に勝てばいい」のですが、負けが続いて資金が大きく減ってしまったら、トレードを継続できません。例えば資金が半分になる場面があるようでは、物理的にも取り返すのが難しくなりますし、精神的にももちません。
最大のへこみ、つまりマキシマム・ドロー・ダウン(MDD)が小さく抑えられた設定でないと、実用に耐えないわけです。

まとまった金額を動かすのが運用です。
長く続けることが前提です。
「短期の大儲けに意味はない」「ゆるく長く効く数式が望ましい」と考えるべきです。

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2月9日放送のフォローアップ(2)
林 知之

資金管理って何?
~実はシンプルなバランス感覚~

マーケット・スクランブル、2月9日の放送は「値動きルールに基づく売買の実際と注意事項」というテーマでお送りしました。そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第54回 値動きルールに基づく売買の実際と注意事項 ~中源線の特長と現実の難しさを考える~

運用の業界いる人間の多くは、「資金管理が大切」「多くの人は資金管理をおろそかにしている」といいます。でも、ちょっと取っつきにくい、どこからスタートすればわからない、と感じる人が大半ではないかと思うのです。

難しいことを考えるときこそ、当たり前の日常生活を当てはめてみましょう。

トレードの資金には限界があるので、資金管理とは「バランスの良い配分」です。
月の小遣いが5万円なのに3万円以上も払うような店で飲んだら、一晩にしては使い過ぎです。年収が1,000万円あるのに家族4人で4畳半一間のアパートに住んだら、ちょっと節約し過ぎです。

このような、自然と身についたバランス感覚を当てはめてみるのが第一です。

トレード資金は、取引口座に固定しておくべきです。出したり入れたりせずに金額を固定しておけば、例えば「自分は500万円を運用している」と意識できます。そして、「現在、6割を使って買いポジションを取っている」といった具合に、現状を数字で認識できます。

そして、適切な稼働率を考えます。
値動きの荒い個別株のトレードで、信用取引枠いっぱいにトレードしたらやり過ぎ? 変動率の小さいドル/円のトレードで、レバレッジをかけなかったら抑え過ぎ? 地味な低位株を現物で買うだけなのに、資金の半分も使わないようではこわがり過ぎ?
こんなふうに想像しやすい範囲で考えるだけで、資金管理の土台が出来上がります。

実際には、事前に利益の可能性と損失の可能性を考えてポジションサイズを決めるなど、細かい計算があるのですが、大枠を把握するところがスタートですね。

誰でも、自分の収入、資産額、目指す利益などを基に、トレードに充てる金額を決めるでしょう。預金から手元の現金まで、すべてをトレード口座に入れてしまう人などいないはずです。手仕舞いが予定より遅くなっただけで、ガスや電気が止められたり、晩ごはんの材料を買えなくなってしまいますから。

最後に、常識的なバランス感覚につながる考え方をひとつ、ご紹介します。
「運用」とは何かということです。

利益を取るための「攻め」だけを想像してしまいがちですが、本来は「守り」です。
現金で持っていると、自然なインフレで目減りします。だから、金利を稼ごうと考えてみたり、モノに換えておこうという発想が生まれたりするのです。モノとは、株、不動産、貴金属、外貨、などですね。

こうして、現金の価値低下を抑える「守り」を固めたうえで、もう一歩積極的に行動しようというのがトレードです。逸脱すると、バクチと呼ばれる危険な行為となってしまうのです。
状況によっては攻めるのですが、難しい局面で「やらない」という選択肢も大切です。

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2月9日放送のフォローアップ(1)
林 知之

順行か逆行か
~トレードに必要なのは「希望」ではなく「仮説」~

マーケット・スクランブル、2月9日の放送は「値動きルールに基づく売買の実際と注意事項」というテーマでお送りしました。そのフォローアップ(1)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第54回 値動きルールに基づく売買の実際と注意事項 ~中源線の特長と現実の難しさを考える~

株式市場では下げを警戒する向きも多いようですが、日経平均をはじめとする指数は強い動きといっていいでしょう。ただし、個別銘柄の動きがさえません。循環する動きがないのです。だから盛り上がりに欠け、それほど悪くないにもかかわらず不安心理が強まってしまうのではないでしょうか。

さて、「利益を得るためにリスクを取る」というトレードの原則を承知していても、逆に動いてしまう不安は常にあります。当然のことだと思います。

ですが、やるからには、「上がる」と信じて買うか、「下がる」と確信して売るか、どちらかを選択する必要があります。
でも、そこにこそ不安があるのです。本当にいいのかなぁ……と。

トータルで利益を得るためにリスクを取り、個々のトレードでは損をすることも辞さないのですから、見込み違いや小さな損失を受け入れるべきです。

だから、トレードの基となる予測は、とりあえずの想定であり、仮説であり、ポジションを閉じるタイミングを決めるための“基準”でしかないのです。
買ったあと「上がってくれ~」、売り建てしたあと「下げてくれないとタイヘン!」と個人の都合を前面に出すのではなく、自分の仮説が正しかったかどうかを第三者的に判断して次の一手を決める姿勢が正しいのです。

中源線は、常に買い線(陽線)か売り線(陰線)に色分けされます。
つまり、現在のトレンドを明確に想定するところから始まります。

日々の動きで変動する評価損益を見て一喜一憂するのではなく、買っているときなら、「上がれば順行」「下がれば逆行」と落ち着いて現実を受け入れる姿勢が生まれるだけで、トレードの質は全くちがったものになると思います。

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

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相場師インタビュー
“プロギャンブラー”のぶき 6/6(最終回)

「トビラを開ける前に勝負を決めろ」

プロギャンブラーのぶき

プロギャンブラー

新井乃武喜(あらいのぶき)

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2013年11月号掲載


第5回からの続き……

6.決め手は「本気度」

 

──マーケットでは「売りだ」と確信する人と「買いだ」と確信する人がいて値段がつくので、売りと買いとどちらが正しいかという議論が成立しない部分があります。判定があるとしたら、その人の手法や好みによるものです。ギャンブルでは、どうなのでしょうか?

 「売りか買いか」にピッタリとくるものをすぐに思いつきませんが、プレースタイルの違いはありますよね。例えばポーカーのプレースタイルで、タイトかルースか、という分け方があります。タイトは比較的強い手のときしか勝負しませんが、ルースはそういう絞り込みをしません。あるいは賭け金の出し方で、アグレッシブ(積極的)なのかパッシブ(消極的)なのか、という違いもあります。
 どちらが優れているとか、どちらが正解なのか、ではありません。どっちも正解なのです。要するに自分の好みで手法を決め、その手法でゲームを実行するだけです。
 僕は、「波を抑えるのがプロ」だと考えています。個々の勝ち負けによって、波が生まれます。タテ方向のブレですね。これを自分の想定内でコントロールするためにテクニックが必要なのですが、それを支えるのがメンタル的な本気度です。

──本気度とは、先ほどの「どうしたいのか」ということですか?

 そうです。ギャンブルやトレードで勝とうというのなら、本気で勝ちにいく気持ちが何よりも大切だと思うのです。1週間何も食べなかったら、食べ物が出てきたとたんにがっつきます。3日間水を飲まずにいたら、目の前に水が出てきた瞬間に飲み干します。こういった気持ちがあるかどうかだと思うのです。
 「絶対に勝つんだ!」と本気ならば、セオリーの勉強に取り組むことができます。セオリーを学んで結果が出れば、そこで自信がつきます。でも、自分を追い詰めることではありません。勝つために100の努力が必要だとして、10では意味がないとまでは言い切れません。たとえわずか1の努力でも、ゼロの状態とは全く違います。
 ちなみに僕が株で負けたときは、努力も本気度もありませんでした。簡単に儲かるのなら、誰だってやりますよね。もちろん割と簡単に儲かる場が生じることってありますけど、そこにはすぐに人が群がってきて勝ちにくい場になってしまいます。

──そういったメンタルも技術も、自分でつくっていくものだと思います。

 他人の手によって完成されたマニュアルでは、安心できません。そのまま使っても勝てるかもしれませんが、それが続くことはないでしょう。だから自分の手で、さらに上のマニュアルを作っていくしかない。トレードもギャンブルも、偏差値社会とは一線を画した世界ですから。

──ところで、のぶきさんにとって「自信」とは、自分を高めに評価することですか?

 いえ、先ほどのポジティブとネガティブの件と同じで、ニュートラルに考えます。努力によって高めていくことが前提ですしポジティブ思考も重要ですが、現在の自分の実力を正確に知ることが基本だと思っています。

 例えば「去年よりも勝っている」という状況は、実力が上がったのかもしれないけど、タテ方向のブレが一時的にプラスに傾いているだけかもしれない。実力が上がったのなら、それに応じた自信を持つべきです。でも実力が上がっていないのなら自信はそのまま、現在の自分を正しく評価したレベルに置いておくべきです。そして時間がたち、昨年と同じくらいの結果に収束して「やっぱり」となっても、それはそれでいいと思うんです。
 それとは別の部分に本気度があり、努力して、相手に勝とう、先月の自分に勝とう、去年の自分に勝とうというエネルギーが生まれたら、それはステキなことだと思います。

 インタビューのあと一緒に食事をしながら延長線のような談議をし、その中で「ギャンブルとは何か」という話題が出た。「ギャンブルは株に似ている」がインタビューのきっかけだったが、そうではなく「株のトレードがギャンブルに似ている」のではないかということになった。株を買って持つのはれっきとした経済行為だが、ある線を越えたら危なっかしい行動になってしまう。働きながらローンを組んで家を買うのはごくふつうの行為だが、代金の8割が30年のローンというのは、考えようによっては非常に危険な行為といえなくもない。
 以上の説明は、「ギャンブル=アブナイ行動」ということが前提である。だが新井氏はギャンブルを仕事と位置づけ、その通りの行動で結果を出している。いろいろな言葉遊びが可能だが、15年間ギャンブラーとして生きてきた彼は、ギャンブルに関しては極めて数学的に考え、情緒的な思考を持ち込まない。それに、ゲンをかつぐようなこともしないという。
 彼と証券業界の人間を比べてみると、証券界の人間のほうが泥くさいし、「金融」の2文字とはそぐわない不合理さが目立つような気がする。相場の世界にいる者は、もしかしたら人恋しさのために情緒的になり過ぎるのかもしれない。それに対して新しい理論でトレードに臨む人たちは、計算できない部分まで計算で片づけようと極端になっていることもありそうだ。
 新井氏のギャンブル哲学を基に、トレードや資産運用についての自分の答えを見直すことも面白いと思う。

<新井乃武喜氏のインタビュー、終わり>

このインタビューは2013年12月11日に林知之が行い、林投資研究所が発行する『研究部会報』2013年11月号に掲載したものです。


プロギャンブラーのぶき(新井乃武喜)
15年間カジノに勝ち続けたお金で、世界82カ国を旅し続ける。震災後、被災地のボランティアのために一時帰国したところ、「ギャンブルの勝ち方が金融トレードに通じる」と評判になり、投資関係者からのトーク依頼や執筆の依頼が激増、現在も日本にステイ中。

1月5日放送のフォローアップ(4)
林 知之

大橋さんに叱られる!
~自分の都合でトレードするな~

マーケット・スクランブル、1月5日の放送は「中源線建玉法の特長」について説明しました。そのフォローアップ(4)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第52回 中源線建玉法の醍醐味 ~使いやすいシンプルなルール~

番組の中で不定期にお送りしているコーナー、「一刀両断 投資相談。大橋さん叱って~」の内容について、あらためて説明します。

まずは今回の相談者、T・Iさん(東京都、男性)の相談内容を確認してみましょう。

アベノミクスのおかげで2013年は、日経平均が50%上昇するなか、わたしの持ち株は2倍以上になった銘柄も多く、投資資金を2倍近くまで殖やすことに成功しました。

2014年、資金がちょうど2倍になったら一度仕切ろうと思っていたのですが、年初の急落に見舞われました。年の後半の上昇トレンドに乗って2倍になった銘柄を利食ってみたのですが結局、1年を通じて資金の倍化を達成することができませんでした。

黒田バズーカ第二弾のあとも、手持ち銘柄の伸びは思わしくなく、利食った銘柄ばかりが新値をとっているようです。

一度ポジションをマルにするか、手持ちの銘柄で辛抱強く待ち続けるか迷っています。

2013年の成績は、素晴らしいの一語に尽きます。リスクの取り方にもよりますが、かなり優秀な結果であることにかわりはありません。
でも今後のことを考えると、ツッコミどころがあります。

1つめは、「2倍」という数字、言い換えれば“自分だけの都合”にとらわれている点です。
「ほぼ2倍」になったので、キリよく「ちょうど2倍」にしたいという気持ちは、とてもよくわかります。それに、目標を持つことは重要です。でも、マーケットには存在しない個人の都合を前面に出し過ぎてはいけません。

2つめは、2014年の対応です。
日経平均の上昇率は10%程度、個別銘柄の動きはまちまちだったので、弱いもの(出遅れた銘柄)を残した人は報われなかったのではないでしょうか。でも、絵に描いたような全面高にならない限り、常にそうだと思います。弱い銘柄に計画外のナンピンを入れて数を増やし、順調な流れの銘柄を「下がらないうちに……」と手仕舞っていると、パフォーマンスを下げたうえに“手の内はダメ玉ばかり”となってしまうケースが多いはずです。

勉強を頑張り、真剣に値動きに対応するためには、自分自身の都合でガッツリと考えることが不可欠です。

でも具体的な行動については、マーケットの動きを素直に捉えて“流れについていく”姿勢が求められるのです。

大橋さんに叱られたい人は、ご相談をお寄せください。
「講師への質問」で私、林知之をご指定ください。
ちなみに私は、番組前の打ち合わせでいつも叱られています(^_^;)

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相場師インタビュー
“プロギャンブラー”のぶき 5/6

「トビラを開ける前に勝負を決めろ」

プロギャンブラーのぶき

プロギャンブラー

新井乃武喜(あらいのぶき)

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2013年11月号掲載


第4回からの続き……

5.「どうしたいんだ」という自分の答え

 

──卒業旅行の時、「ゴール(目標)設定が必要だと考えた」とのことでした。でも日常では、あいまいになってしまうケースが多いと思います。

 トレードもギャンブルも“もろにカネ”のことなので、なんとなく「勝ちたい」みたいになりがちです。でも「たくさん勝つほうがいい」とか「あればあるほどいい」では、具体的な成功の映像になりません。ですから、まずは「どうしたいのか」という自分の望みを明確にすることだと思います。
 かなり派手な例ですが、「勝ち続けて100万円を3年で1億円にする」といった明確なゴールがないと始まりません。その成功している映像があれば具体的な方法、つまりプランが生まれます。100万円を1億円というのは、元手を100倍にするということです。同じ期間で100万円を200万円、つまり2倍にするのに対して50倍高いゴールなので、難易度は50の2乗で2,500倍になると僕は考えます。すると、それだけリスクの高いゴールを実現するためには、いったいどんなプランがあり得るのか、となるわけです。
 ただ「勝ちたい」「儲けたい」だと、最初から自分の答えがないわけですから、誰かが何かを教えようとしても物理的にムリだと思います。林さんのところにも「どれを買えばいいですか?」って人が来るのでしょうが、たぶん返事を工夫することになりますよね。

──まずは、「体感する」ことを提案します。マーケットの価格が時間の経過の中でどう動いていくのかを、チャートにして眺めてみるということです。

 おお、「見」(けん)ですね!

──それから、一定の準備をしたあとは実践です。実際に資金を動かしてみないとわからないことがたくさんあります。シミュレーションを繰り返しても、臨場感がゼロですから。

 同感です。僕も、「1円でもいいから賭けろ」と言います。おカネがかかっていないと、人間は真剣になりません。机の上で理論を考えて「勝った、負けた、ほほお」なんてやっていても、時間のムダでしかありません。
 いま住んでいる都内のシェアハウスで、「ダイエット部」というのを作ったんです。みんなで目標を決めてダイエットに励むのですが、負けたら10時間労働とか、住人が出し合っている運営費の負担が増えるとか、そういう罰則を設けています。勝ち負けに対して、本当に真剣になりますよね。

──でも実際には、“おカネ”をどの程度まで意識するのかが問題だと思います。真剣になることは必要ですが、決断の際に1万円札を思い浮かべていたら萎縮しちゃいますから。

 トップギャンブラーの言葉で、「おカネだと思ったら負ける」というのがあります。「ベンツ1台分負けた」なんて言葉を頭の中に浮かべてしまったら、残りのギャンブラー人生はずっと負け組だよって。
 ほかにも、「ギャンブルとしてではなく、ビジネスとしてやれ。そうでないなら、オレがつぶすぞ」なんていうのもありました。マインドセット、心の持ちようですね。

──トレードでもギャンブルでも、行動し始めたあとはおカネを意識したらバランスが悪くなるんでしょうね。

 僕も、ふだん使うおカネとギャンブルの際に賭けるおカネを、完全に分離して考えます。日常は1万円の買い物なんてあまりしませんし、ベガスにいるときも1カ月で8万円くらいしか使いません。でもギャンブルの場では、確率と自分の戦略に応じて100ドル(約1万円)単位のチップをポンッと出すことができます。ビジネスの場での“数字”の問題として処理できるわけです。

──ギャンブルの場合は目の前の相手との駆け引きもあるので、難しいように感じます。

 ポーカーで手がない、つまり手持ちの札に何の役(やく)もない、いわゆる“ブタ”の状態で勝ったことがあります。相手にワンペアでもあれば僕の負けなのですが、相手もブタだと読んで勝負に出たんです。
 ブタ同士だった場合、最も強いエースが手札にあるほうが勝つのですが、その時はエースを1枚持っていたんです。だから相手もブタならば勝てるという状況だったわけですが、まずは自分の手がブタなんですから根本的に分の悪い勝負ですよね。でも少し前に、その相手がハッタリをしようとしてやめた時があったんです。その流れから、「今あらためて、ハッタリをやりたいんだ」と読んだので、すでに場に出した賭け金をあきらめて勝負を降りるのではなく、相手の要求に応じて上乗せしたのです。
 観察によって確率的に勝てるという計算があり、それがうまく当たったということなのですが、そういうときにも数字で割り切って行動します。ビジネスですから。

──トレードも他人との競争ですが、ふだんの作業としては「買うか買わないか」みたいな選択の問題として片づけます。それが勘違いを生むところでもあり、トレードをシンプルにしている特徴でもあると思うのです。

 ギャンブルにも、そういうとらえ方というか、同じ要素があると思いますよ。先日、「インターネットのギャンブルに挑戦してほしい」というオファーがあったんです。インターネットを通じてポーカーをやるので、相手の顔が全く見えないわけです。同じとはいえないかもしれませんが、ふつうのポーカーよりはトレードに近いんじゃないでしょうか。
 その時も、いつも通りにゲームを進めました。「結局は自分との戦い」だと認識して、自分のやり方の中で“勝ち方”を見つけるしかないと思ったのです。
 常に、どういう流れでどう行動するのかとシンプルにまとめておかないといけません。でも、時間軸は外せません。どれくらいのヨコ幅(時間)でいくら勝つのかと時間軸で考えることで、自分の行動をコントロールできるようになるはずです。

──トレードでは事前に考えますし、ひとつのトレードが終わったら次のトレードまでじっくりと考えたりすることも重要です。でもそれは、いざというときに一瞬で適切な判断をしたいからです。

 僕も、わずか2分の勝負について、あとで3、4時間も考えることがあります。勝負の場ではポンッと行動してしまうしかないのですが、分析する時間は大切です。あのプレーは正しかったのか間違っていたのか、あのプロだったらどうしただろうと、いろいろな角度から考えるんです。

──ギャンブルもトレードも自分との戦い、なんてまとめ方は乱暴ですかね?

 そうでもないと思います。多くの人が口では「儲けたい」「勝ちたい」って言いますが、意外と努力していません。だから、他人に勝つのって割と楽なのかもしれないんです。
 それよりも、自分自身のことを考えて自分の答えを持つというイメージが重要ではないかと。僕はいつも、「先月の自分に勝つ」という考えを軸に行動するよう努めています。

──先月の自分に勝つ、ですか?

 そうです。例えば今、学生が集まるイベントの講演を頼まれる機会が月に1回くらいあるのですが、「今回は、前回を上回るトークをしないとダメだ」って考えます。ボランティアで来てほしいという申し出でも、全く同じように考えています。
 もちろんギャンブルでも何でもすべて、同じように考えていきます。

第6回(最終回)につづく>

このインタビューは2013年12月11日に林知之が行い、林投資研究所が発行する『研究部会報』2013年11月号に掲載したものです。


プロギャンブラーのぶき(新井乃武喜)
15年間カジノに勝ち続けたお金で、世界82カ国を旅し続ける。震災後、被災地のボランティアのために一時帰国したところ、「ギャンブルの勝ち方が金融トレードに通じる」と評判になり、投資関係者からのトーク依頼や執筆の依頼が激増、現在も日本にステイ中。

1月5日放送のフォローアップ(3)
林 知之

「中源線研究」とは
~「道具」を“使える”のが実践者~

マーケット・スクランブル、1月5日の放送は「中源線建玉法の特長」について説明しました。そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第52回 中源線建玉法の醍醐味~使いやすいシンプルなルール~

前回、フォローアップ(2)の終わりで次のように述べました。

利用する人の「実践力」「実行力」「有効な経験」になるものとして、「中源線研究」におけるシグナル配信を実施します。

「私たちの情報を買えば、カンタンに儲かります」「このロジック(数式)を使えば負けなしです」──こう言わんばかりの宣伝文句を目にすることもありますが、そんなものがあったら世界中のカネがたった1人のところに集まる、いや、そもそも金融マーケットが成立しないことになります。

個別企業の材料でも、その時々で反応が異なります。円高と円安、どちらが好材料かというと、時代でプラスマイナスが逆です。ファイナンス(資金調達)の発表で値上がりしたのは80年代、最近までは驚くほど売られるケースばかりでした。

数式で値動きを分析して将来を予測する場合も、同じです。ある小さな法則が見つかっても、しばらくすると機能しなくなるでしょう。同じことを多くの人が発見した段階で、それは儲かる法則ではなくなるのです。

うまく当ててやろうとばかり、あまりに細かく考えてしまうと、「先月まで通用した法則」で今月も来月も勝負することになりかねません。

“ユルい”ところもあるけど、ぼちぼち効く、長期間ゆる~く機能する、といったシンプルなロジックを基に、ポジション操作や資金管理でバランスを取って結果を出していくのが現実です。これが、最も実用的かつ実践的な考え方なのです。

中源線も当然、こんな考え方で構築されています。
どこかもの足りないようだけど必要十分で、ブラックボックス化せず常に自分の感覚とつながっている。だからファンが多いのです。

とはいえ、「あと1つ何かを足したい」と考えるのが人情。そんな余分なことをしない場合でも、合う銘柄と合わない銘柄、機能する相場つきと機能しない状況、等々、悩ましいことばかりです。

そこで、中源線をどう認識するか、中源線のどの部分を生かすか、といった議論になってくるわけです。

中源線に限らず、裁量でもトレードシステムでも、百発百中の“打ち出の小槌”なんてあり得ません。統計や数式に強く依存するのではなく、実践者として自立した姿勢を持ち、数式を道具として使いこなすことが求められます。

みなさん、ぜひ中源線研究会に参加してください。プレーヤー同士でアイデアを共有しながら実践的な研究を行い、実行力を高めていきましょう。

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

中源線研究会
 登録(無料)だけで、中源線シグナル配信(近日サービス開始)で一定の情報を閲覧できます。