トレードの「勝率」について考える
どんな優秀な方法でも、取れる時期と取れない時期が生まれます。そこで、システム(数式)を使いながらも臨機応変に裁量を入れようということになるのですが、この際に誤りが起こりやすいものです。
マーケット・スクランブル4月11日の放送では、生身の人間ならではのミスを認識し、より合理的にトレードするための工夫について考えました。
そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第82回 システムと裁量の融合~投資家は“売買マシン”になれるのか?)
勝率の落とし穴
特定の予測法、あるいはトレードシステムを目の前にすると、多くの人はまず「勝率」を気にします。しかし、こうして注目される分だけ、実は盲点が生まれやすい部分なのです。
トレードする期間、つまりポジションを持っている日数が一定の範囲ならば、「勝率」として割り出した数字を単純に見ることで、ある程度の評価が可能だと考えられます。
しかし、幅広い手法を考える場合、勝率という数字の捉え方にも相当な幅が生じます。そこで、思い切って別のアプローチをしてみます。
相場の予測は、波動の変化を捉えようとするものです。
実際、緩やかな上昇を想像する場合もあれば、「全く動かないかもしれないが、急騰もあり得る」といった予測をする場合もあるでしょう。ここには、「値幅」という要素が入るわけです。
300円で買った、301円で売った、これは「勝ち」である、というのが勝率の計算による答えでしょうが、そういった捉え方を否定しようという発想です。
もうひとつ提唱したい要素は、「期間」です。
500円で買った銘柄が600円になった場合は2割の利食いですが、期間が1カ月だったら素晴らしく、10年も経過していたら「たいしたことはない」と評価されます。ポジションを持つ期間が短期間で、必然的に損益の値幅も一定範囲内ならば関係ないことですが、幅広い手法、あるいは、手法という確固たるものをもたない人まで対象にしたら、こういった考え方からスタートするのが現実です。
しかし「トレードシステム」とくくったときは一定の範囲に限定されるので「何も落とし穴がない」という前提が生まれやすい。その部分にこそ、誤った思い込みが生まれる可能性があると思うのです。
真実の勝率は33.3%?
上がると予測して株を買ったと仮定します。
この場合の予測には、前項で述べたように、「値幅」と「期間」があるはずです。「半年後に最低2割は上昇しているだろう」といった波動の予測です。
実際に半年後を迎えたとき、予測通りに2割以上の上昇があれば「当たり」です。下げていた場合は、もちろん「外れ」ですが、買い値を1円しか上回っていなかった、それなりに上がったが1割の上昇にとどまった、といった場合も、“値幅と期間の2つを考えたものこそが運用の結果”だとすれば「外れ」に分類しなければなりません。
こう考えていくと、当たる確率は相当低くなってしまいます。
でも、半年後に5割上昇している可能性もありますし、期待した2割を1カ月で実現することだってあります。
いっそ簡潔に整理して、上がった(当たり)、動かなかった(外れ)、下げた(外れ)としてみます。この場合、予測が当たる確率は3分の1、つまり「33.3%」です。
話を難しくしたあとで突然、安易な数式にしてしまいましたが、多くの実践者が口にする「実際にちゃんと当たるのは3~4割が限界」という言葉と、ほぼ一致しますし、私は、このあたりが本当の現実だと考えています。
最も心地よいのは勝率50%
さて、今度は的を絞り、システムトレードの勝率を考えます。
同じジャンルにある異なるシステムを比較する場合、あるいは同じシステムにおいて異なるパラメータで結果を検証する場合、トレード期間、取る値幅、ヤラレる値幅に大きな差がないと考えられます。
ここではじめて、「勝率」という数字を単純に見比べることが有効になります。100円幅取っても「1勝」、たった1円幅でも「1勝」と数えられるわけです。
この前提において、多くの実践家が、「勝率は50%前後が理想」と考えます。
その理由は、ムリに勝率を高めようとすると、勝ったときの値幅が小さくなると同時に、負けたときの値幅が大きくなるからです。
以前の放送で紹介した、極めて単純な例をあらためて示します。
「寄付で必ず買う、買ったら買い値の2円上で売り指し値を出す」というルールでのトレードを想像してください。イメージしやすいように、「500円の個別株」としましょう。かなりの確率で勝てる、つまり「買い値の2円上で利食いできそう」です。検証したわけではありませんが、おそらくそうなるでしょう。
しかし、負けたときの値幅が大きくなりそうです。
寄付で買ったあとで、値動きをウォッチしている状況を想像します。
「5円下がったが問題ない」「10円下がった……キモチわるいけど、ザラ場のうちに買い値の2円上はあるかも」といっている間に20円下げて損切りする羽目になる……こんな結末も、回数は少ないものの、ありそうですね。
すると、9勝して合計18円幅の利益(2円×9回)に対して、たった1回の負けで20円幅の損、10回のトレードで差し引き2円マイナス、なんて結末もありそうです。
勝率を高めようとした結果、「勝った場合の値幅が制限されてしまう」一例です。
勝率は50%前後、しかし負けの値幅は小さい、または負けたときは数量が少ない(分割の回数が少ない、本玉を入れていない)、そして勝ったときは値幅が大きく数量も増えている──こういった「損小利大」を目指すのが現実なのです。
正しいトレードでは損が先行する
前項で説明した「損小利大」が実現すれば、ストレスなく儲かるだろうと安易に想像してはいけません。
「上がりそうな銘柄を10銘柄、同時に買った」場合を考えてください。
裁量でもシステムでも、どちらでもいいのですが、現実の「損小利大」をリアルに想像してほしいのです。
損を小さく抑えるためには、ダメなポジションの損切り手仕舞いを早めに実行するよう努めます。値動きが弱々しくなった段階でチェックし、大きく下げてしまう前に切る、ということです。これに対して、“良いポジション”だと判断したものは、値幅を取るために一定期間ねばります。
すると、下の図のように、損切りが先行し、利食い手仕舞いは時間的にあとになるのが必然なのです。

この図は、10銘柄のうち3割にあたる3銘柄がダメだったという結果で、2銘柄は早めに値幅を取って利食い手仕舞い、半分の5銘柄は評価益のまま持続、という素晴らしい結果を示しています。
「素晴らしい結果」なのに、仕掛けたあとに損切りが連発するのです。
これが、現実です。
資金稼働率の設定にムリがあると、適正なトレードが進行しているにもかかわらず、初期に起こる損切りの連続で物理的に厳しくなります。資金管理に問題がなくても、心が折れてしまう可能性があります。
良いシステムが、いい感じで機能しているのに、「この手法はダメだ」と判断して別の方法を探し始めるなんて悲劇が起こり得るのです。
トレードは、大切なカネが絡む行為なので、切実な部分が大きく、同時にとてもデリケートです。したがって、ちょっとした勘違いが大切な判断を誤らせ、良い手法に出会ったことが正しく認識できず、手法をやみくもに探し続ける「相場難民」になってしまうのです。
「もっともっと」をやってしまう
次は、買った10銘柄の80%が上昇するという、絵に描いたような結果を考えてみます。
とはいっても、買ったとたんに8銘柄すべてが満足できるほど値上がりするなんていうのは絵空事なので、現実に近づけるために「上昇に時間差が生まれた」とします。また、上がり続ける相場もあり得ませんから、上がったあとは天井を打って下向きの波動が発生すると仮定します。
ある程度の期間が経過したところでは、8割が見事に上昇している、2割が評価損、といった状態になるでしょう。
このとき、10銘柄すべてを売る、つまり8銘柄の利益のほんの一部で2銘柄の損失を埋め、「ポジションゼロに戻して見事にひと区切り」とすれば大成功ですが、人間は欲張りで、つい「もっともっと」と考えてしまいがちです。8割当たるなんて珍しいと考えていた人でも、評価益の数字から1万円札を思い浮かべるうちに、「残りの2銘柄が動くまで持続だ。上がっている8銘柄は、さらに上伸するかもしれない」と期待します。
そうして時間がたつうちに、ダメな2銘柄が期待通りに上昇したとしても、上昇した8銘柄が徐々に下落し、結局は、待った分だけ利益が減ってしまう、経過時間が長くてエネルギーをたくさん消費する、そして、もしかしたら10銘柄全体でマイナスになるか利益がカスカスになるまでフリーズした状態になる──こんなさびしい結果が、意外と現実に近いのではないでしょうか。
計算と現実にはギャップがあります。“計算づく”で臨むとの認識が生まれやすいシステムトレードでも、それは同じです。逆に、システムトレードゆえの大きな誤解もあるでしょう。
次回のフォローアップ(4)では、システムに加える裁量のあり方について考えます。
お楽しみに!
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