妄想と現実
非現実的な利益を求める姿勢は“破滅型”に分類されますが、小幅利食いを意識することが手堅いとはいいきれません。
マーケット・スクランブル8月8日の放送は、“値幅取り”は単なる夢追いではなく、「避けようのない損失をカバーしてトータルでプラスにする」ための大切な発想だという観点でお送りしました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第90回 トレードの醍醐味“値幅取り”こそ損小利大の実現)
必要な妄想もある
「できない」と思ったら100%実現しない、「できる」と信じれば大いなる可能性が生まれる──リオ五輪で活躍する日本人選手たちを見ながら、つくづく感じることです。
トレードにおいても、同じことがいえるのではないでしょうか。次のトレードでの成功を目指しながらも、大きなミスを避けようとするあまり、負けた記憶を繰り返しなぞってしまうのが常識的な社会人の傾向ですが、「また失敗する」というイメージが強まることで現実の成功率も低下しているはずです。
とはいえ、価格変動を自らの努力で変えることはできません。
ちまたの投資情報では、個別株について「目標株価」という言葉で上昇後の予測が示されているのを目にします。しかし、個人の努力が及ばない部分で「目標」というのは明らかに誤りです。予測情報の発信者の「希望」が「目標」という言葉で表現され、それが情報受信者の「目標」になる……結果として、単なる希望的観測を抱きながら“目標株価”に達するまで思考停止で保有し続けるだけになってしまうのです。
まとめると、トレーダーとして「できる」という強い気持ちは大切な半面、現実を無視した思考に陥りやすいので注意が必要、ということです。
ものごとに取り組むとき、創造性を刺激する「妄想」は必要です。例えば、ロボットの二足歩行について、一部の科学者が「絶対にムリだ」と言っていたのですが、「できる」と信じた人たちの手によって実現し、歩行するだけでなく、自転車をこいだりダンスしているではありませんか。
ところがマーケットには、理論的に800円と認識されているのに実際は300円台に低迷している銘柄がある一方、実力は500円程度といわれながら1,000円以上の株価をつけている銘柄が存在するのです。
こうしたマーケットの現実を素直に受け止めること、そして「自分にできる努力は何か」を考えることが大切です。
誤った現実主義
以前にも示した、「小幅利食い」を追究した悪い事例を再掲します。
「寄付で必ず買う」「買った直後、買い値の2円上で売り指し値を出しておく」というトレードルールを考えてください。「よほど特殊な状況でない限り、寄付値の2円上ならば売れるだろう」と感じます。おそらくその通り、かなりの確率で成功すると思います。しかし、1回の利益の上限がたったの2円に限定されます。そして、発生確率が低いとはいえ、その「たった2円上」で売れなかったときの損失が問題です。
このトレードが「9勝1敗」の結果を生むとすると、9回の利益合計は、9×2=18円です。たった1回の負けが18円に達しただけで、トータルの損益がトントン、つまり手数料分だけ確実にマイナスになるということです。 (引用終わり)
単純に「小幅利食い」を意識しただけでは“儲かるルール”にはならず、手法として仕上げるには、出動を限定する工夫、あるいは損失幅を抑える知恵などを追加する必要があるということです。
「ムリせずに小幅利食いが手堅い」という説明を耳にすることもあるのですが、短絡的に捉えると盲点が生まれてしまうと認識しておくべきです。
「小幅利食い」や「損失幅を抑える」とった発想は、消極的な思考に分類されます。
これに対して、今回のテーマである「値幅取り」は積極的な行動を促す思考です。
やみくもに値幅を欲するのはダメな妄想ですが、うまく乗れたときの良いポジションを早めに利食いして大きな変動を逃すというのが、“相場あるある”でしょう。相場の先行きを読みきることはできませんが、取れる動きは取りたいので、そのための工夫を正しく考えてみることが大切です。
予測の当たり外れは五分と五分だから、損を抑えて利を伸ばす「損小利大」を考えることが求められるのです。
損小利大の最たる事例
前回のフォローアップ(1)では、7717ブイ・テクノロジーの損益状況について概略を示しました。今回は、1年間の損益状況を詳しく確認します。


※チャートの赤は買い線で、買いポジションを3分割で増減させます。
※チャートの黒は売り線で、カラ売りを3分割で増減させます。
※損益は、3分割の1単位ごとに「値幅」を計算しています。したがって、累計の損益は最高3単位の値幅合計です。
※転換を含まない手仕舞い(トレンド途中の利食い)は、左側の「シグナル」として示さず、「手仕舞い」の列にだけ表示してあります。
※画像で見にくい場合は、以下のリンクをクリックしてください(PDFファイルが別ウインドウで開きます)。
ブイ・テクノロジー チャート
ブイ・テクノロジー損益状況
1年間の戦績が25勝25敗と、絵に描いたように勝敗は五分と五分、しかしトータルで利益になっているのです。今年に入ってからド派手な動きが発生したので、ちょっと特殊な例ともいえますが、ある意味、損小利大の実現を示す好例といえるでしょう。
期間別に見てみましょう。
2015年8月の陽転は負け
期間の最初は、陽転したあとに再び下落したので負けています。累計410円のマイナスです。
想定する“うねり”でしっかりと利益
次の陰転(2015年8月19日)からは、順調に利益を積み重ねています。上げの途中、11月11日に陰転(売買は11月12日)していますが、1単位の建玉にとどまって損失は抑えられています。
この間、利益の累計は8,905円、損失は1回だけで325円という結果は見事です。
3カ月強、8回のダマシ
大暴騰の手前、2016年1月下旬から5月上旬までは、中源線が機能しない動きが続いています。こういう場面があるのは仕方がないこととはいえ、3カ月を超える期間、8回もダマシが連続したのですから、精神的にラクではありません。
この期間、累計の損失は5,405円、利益は1回きりで230円でした。
2015年8月にスタートしていれば、この時点でもトータルはプラスですが、これだけ続けて利益をはき出すと心が折れそうになるでしょう。こういう場面を冷静に分析し、そのまま続けるか、銘柄を替えるか、パラメータ設定を見直すかと自分自身の対応を決めることこそトレードに求められる判断です。そのためにも、ロジック(売買ルール)を深く正しく把握しておくことが重要です。
たまたまこの期間にスタートしていたら……冷静に状況を分析して続けることは難しいかもしれません。ですが、こういうことも起こるのがトレードの現実だと理解しておく必要があります。
必要経費としてのドテン売り
ゴールデンウィーク明け、5月11日の陽転(売買は5月12日)からは、上昇に乗って大きく値幅を取っています。直近、8月3日の陰転(売買は8月4日)までの累計利益は、13,100円に達しています。
しかし、上昇途中でガクンと下げた場面で中源線は、「陰転」という判断を示しています。つまり、いったん買いポジションを利食い手仕舞いし、ドテン売っているのです。この時(6月2日および6月13日の陰転)、そのあとの買い転換でマイナスが発生しています。これらは、値幅取りに必要な“ねばり”を実現するための必要経費と考えるしかありません。
中源線ルールが定義する一定の逆行(トレンド転換とみなす)で手仕舞いし、最低1単位だけはドテンする姿勢があるから、値幅が発生した際に維持する戦略を貫くことができるのです。
「もっともっと」とねばる姿勢が利を伸ばしてくれるのですが、ただフリーズしてポジションを固定しているだけでは、天井や突っ込みの安値を見逃す単なる「居過ごし」になり、次の一手が決められなくなってしまいます。
裁量で改善するか
損益の出方には、どうしても波があります。同じ銘柄でも値動きの性質は刻一刻と変化し、同じ基準で勝ち続けることを許してくれないからです。だから、勝ちトレードと同じように負けトレードが発生することを受け入れ、「損小利大」のポジション操作を目指す、取れるときに取る「値幅取り」の実現を試みるのです。
とはいえ、「もう少しなんとかならないか」と考えるのが人情というもの。
長所があれば、その長所ゆえの欠点が生じるのが道理なので、まさに“永遠のテーマ”なのですが、これを考えることこそがトレーダーのシゴトでしょう。
まずは、2016年前半に起こった8回連続のダマシを回避できるかを考えてみます。
中源線は、一定の条件を伴う上昇をみて陽転、同じく一定の条件が整った下落で陰転と判断します。いわゆる、トレンドフォロー型ですから、中途半端な往来には弱いのが特徴です。
パラメータの設定が適正ならば、小さい動きでダマシが出る確率は低下しますが、上がりかけて上げ損ない、下げかけて戻す、といった場面でダマシが発生しやすくなるのです。
絞り込んだ対象銘柄を継続的に手がけ、その銘柄の値動きを感覚的に捉えるという職人的な判断によって、この手のダマシを回避しようという試みはあり得ます。しかし、言うは易く行うは難し、利益のチャンスを逃すこともあるので非常に困難なことです。
それでも、「こういうマーケットではダマシが出やすい」といった判断で休みを入れれば、必要な休息を取ることになり、デリケートな精神面を良い状態に保つことにつながります。前述したように「利益のチャンスを逃す」こともあるので、パフォーマンスが上がるとは言いきれないのですが、2つの大きな効果を期待できます。
1つは、個人投資家ならではの「休んでOK」という武器を使ってメンタルの健康を維持することです。
もう1つは、自分自身の相場観を駆使して積極的に判断しようとする姿勢が、中源線の理解を深めるという点です。最終的に、独自のトレードルールを構築する段階への足がかりとなるでしょう。
説明が行ったり来たり、肯定したり否定したりで申し訳ないのですが、裁量を入れることの重要性は否定できないものの、いわゆる教科書的な説明としては、「ダマシを容認してトレードし続けるのが基本」と言わざるを得ません。
ブイ・テクノロジーの例では、大きな利益を生む5月からの暴騰直前に負けが8回も続いています。「今度もダメかな……」と気が乗らない状態でいるところに大当たりの大暴騰なんて、誰にも読むことはできません。
また、分割の3回目がたまたま遅かった時(5月31日の買い増し、売買は6月1日)や、手仕舞いのあとの建て直し(7月20日および7月21日の買い増し、売買はそれぞれ翌日)がマイナスになっていて、あとから見れば「ムダだ」と言いたくなるのですが、これらも、利益を取るためのロジック、すなわち中源線の長所と表裏一体の部分として受け入れるしかありません。
一緒に番組を進行しているフリーアナウンサーの大橋ひろこさんも、中源線を利用しています。そして、このブイ・テクノロジーの5月からの暴騰に乗ったそうです。しかし、約1,000円幅取ったところで利食い手仕舞いしたあとは、それ以上、手出しせずに終わったとのこと。単発的なトレードとしては成功ですが、中源線の武器ともいえる「値幅取り」の要素は享受できませんでした。
少しだけ視点を変えて解説すると、「安い時期に買ったために早めに降りてしまった」という、やはり“相場あるある”の結果といえます。
トレードって、実に深いですね。
次回のフォローアップ(3)では、手法による「取れる相場と取れない相場」を考えてみます。ダマシを減らそうと努めながらもダマシを容認しなければならない……この部分をどうやって納得するかを考えてみようと思うのです。
お楽しみに!
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