理想と現実を認識する方法
手法の優劣を語るのは難しいのですが、個人投資家にとって“やりやすい”か“手がけやすい”かで判断することは可能です。
最も制約が少なく、感情の面も含めて継続が容易なのは、数カ月単位の上げ下げに注目した「うねり取り」だと思います。その「うねり取り」を、機械的判断で実行しようとする手法が、中源線建玉法です。
マーケット・スクランブル10月3日の放送は、手法とは何か、個人の努力がどこまで及ぶか、といった深い事柄をテーマに設定し、個別銘柄の中源線を数多く取り上げて解説しながら“トレードのあり方”を考えました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第94回 個人投資家の勝負所「うねり取り」の銘柄選び ~中源線を軸にチャートを見るポイントを探る~)
理想の“モデル”が必要
株価の上げ下げを的確に当てる方法はありません。値動きには、さまざまなパターンがあるからです。
そのため多くの投資家は「臨機応変に判断しよう」と考え、複数の判断基準を使い分けようとするのですが、混乱するばかりで、情報をうまく整理したとしても、非常に行動しにくくなってしまいます。
さまざまな値動きパターンの中には、「これだけは逃したくない」と思えるものがあるはずです。それだけを大切にして、自分の理想のモデルとするのです。必然的に、そのパターン以外は黙って見逃しです。「できそうだ」程度のパターンは捨ててしまえば、適当な「休み」の期間が生まれます。そして、余ったエネルギーを向けるべきは、「これは取る!」という理想の値動きパターンが発生したときです。
こう考えることができれば、プロが行うメリハリのあるトレードが実現します。
「もう少しできそうだ」という気持ちをグッと抑え、ちょっと物足りないくらいのところに基準を置くのが正解です。どんな分野でも同じで、何でもこなすのがプロではなく、「自分が絶対にできる」と自信のあるものにしか手を出さないのがプロです。「機会損失」などという言葉に惑わされず、得意なパターン、好きなパターンに集中し、あとは気持ちよく捨ててしまいましょう。
さて、自分の理想のパターンに絞れば、いわゆる勝率は上がると期待できます。それでも、負けるときは必ずありますし、そもそも勝率の高い低いは大きな問題ではありません。すべては、値動きに応じた対応の仕方です。
予測が当たった、つまり見込み通りに展開している場合は、確実な利食い手仕舞いを考えつつも、可能な限り利を伸ばす努力をします。
予測が曲がったという状況は、要するに避けられない見込み違いなので、「チキショー」と叫ぼうが「相場が間違っている」と嘆こうが、ストレス発散のために好きなようにすればいいのですが、撤退の処理、仕入れてしまったダメ商品の処分売りを行うことは待ったなしです。
こうして「当たった」「曲がった」と結果を二分すれば極めて単純ですが、時間の経過の中ですべてを自由に決定する、その決定を連続して行うのがトレードですから、常に無限の選択肢を抱える難しい作業を強いられます。
だからこそ、フリーズして行動できない事態に陥らないよう、超シンプルな基準を持たなければなりません。「儲かりそうだけど、自分の好きなパターンではないから手を出さない」といった、抑えめの行動規範を心地よく感じる心が求められるのです。
それが、「理想のモデルを設定する」ことです。
この条件とこの条件がそろったら上がる、だから買う、といった自分の「型」です。
理想型ならばOK、理想から少し外れたらバツ、三角印をつけてあがいたりしない……こう考えることでギリギリ、一連のポジション操作をこなすことができるのです。
また、経験を積みながら戦略を向上させていくうえでも、この「理想のモデル」が役に立ちます。明確なモデルが、変化と向上を見据えて試行錯誤する基準となります。この部分が少しでも弱いと、常に結果論、常に結果に一喜一憂する「相場難民」に近づいてしまうのです。
そして現実を受け入れる
さて、前項で、「理想のパターンに絞ると勝率が上がるが、それでも負けるときはある」と述べました。これを聞いた冷静な常識人は、「その通りですね。肝に銘じます」と答えるのですが、実際に負けると感情的には受け入れにくい気持ちになり、いたたまれなくなるものです。
「これなら勝てる」という理想のパターンに絞り込んでいるのに負ける、「ここで出動しないでどうするんだ!」と感じる流れでポジションをつくったのに勝てないなんて、冷静な常識人でも納得しがたいのです。
もう少しなんとかならないものか……この気持ちがないと、必要な創造性が刺激されません。でも、紙一重で“やりすぎ”のダメな対応になってしまいます。現実を、さらに冷静に分析することが必要です。
「やってみると予測の4割は外れる」というのが現実として、この表現は単なる傍観者の視点でしかありません。プレーヤーにとって“真の現実”は、4割の外れによって何を感じるか、どういった行動の傾向が生まれるか、といった、二次的な作用を含んだ複雑な事柄です。
「この対応基準なら、一定期間の累計損益はプラスになる」と確信があったとしても、たまたまの連敗があれば非常につらいと感じます。不安になり、基準を変更してみようかと考えるものです。
こんなとき、「取れない場面もある」「それが続くことだってある」という認識が、非常に重要です。1回ごとの結果で、いちいち基準を変更しようとしたら、永遠に迷うことになります。それこそ、相場難民です。
さて、こういったトレードの機微を考えながら、実際のチャートを見てみましょう。
中源線なので、3分割の売買が機械的に判断されます。
赤い線は買い線(陽線)で、買いポジションを3分割で増減させます。
黒い線は売り線(陰線)で、買いポジションを持たずにカラ売りを3分割で増減させます。
今回のチャートには、中源線による売買の結果を大まかに示す記号を加えました。
○=取れた、△=トントンかわずかな利益、×=少なからずマイナス、と3つに分けてあります。

宝ホールディングスは、この1年間、適度な上げ下げがあり、かつ周期的で、中源線の基準と合致しています。俗にいう、「手が合っている」状態です。かなりうまくいっているケースだと思いますが、それでも「×」の場面があります。こういった悪い結果を過剰に気にすると、ルールを変更して“根底のロジックを壊す”ことになりかねないので、注意が必要です。

双日の直近1年間を見ると、「うねり」とは呼べない小さな上げ下げに終始していることがわかります。感覚的に眺めるだけで、「数カ月の上げ下げ」を感じない、いわゆるトレンドを見出しにくい値動きが続いていることがわかります。
結果として、適度なトレンド発生を前提とした中源線のルール、つまり売買判断の基準として設定した「理想のパターン」に合わない値動きで、必然の連敗が起こっているわけです。
シグナル配信においてパラメータ(変数、中源線では「キザミ」)の設定を行う際、「どこの1年間を切り取ってもプラスになるようにしたい」と思いました。しかし、現実的な発想ではないことが、すぐにわかりました。
株価変動のサイクルは、思った以上に長いものです。数カ月単位の「うねり」が集まって数年単位の大きな上げ下げを形成しているので、銘柄ややり方を適切に絞り込んでいると、「取れない年」が発生することも珍しくありません。
これも、受け入れる必要のある現実でしょう。
このことから導き出される対応方法のひとつは、「波動の異なる銘柄を複数、組み合わせて売買する」ことでしょう。ドカンと暴騰する銘柄を当てたいと考える人もいますが、まともに考えれば、小さな資金でしか実行できないやり方です。結果として、過度なリスクを抱える(大きな資金で一発狙い)か、大化けを当てても金額的には小さい(適正なトレードサイズ)かのどちらかです。
大切な資産を運用する、計画的にトレードして継続させる、バカ勝ちを夢見ずに結果を安定させることが最優先です。
ヤラレてもブレるな!
一定の金額を動かさないと、トレードを実行する意味がありません。10万円の資金を100%稼働させて10倍になる銘柄を当てたとしても(さらに10倍まで持ち続けたとしても)利益は90万円ですが、資金が1,000万円あれば1割の利益を取れば100万円ですし、継続して結果を出すことも可能です。
かといって、ムリは禁物です。資金の稼働率には、実行するやり方に応じて適正な余裕をもたせる必要があります。そもそも、過度に大きな金額を売買口座に入れてはいけません。見込み通りにいったときの利益を減らしてでも、大きくヤラレる可能性を排除しなければならないのです。
こういった、ちょっと臆病すぎるくらいの感覚で余裕ある計画を立て、そのなかで思いきり、感じた通り積極的に行動すると、全体のバランスは良くなるでしょう。
中源線に従う機械的な売買には「感じた通り」と呼ぶ細かい対応がないと感じるかもしれませんが、銘柄の選定と組み合わせ、裁量を加えるか否かなど、プレーヤーとして感じた通りに行う設定がいくらでもあります。それ以前に、中源線を手法として選んだことが、自由意思によるものにほかなりません。
とにかくトレードでは、数多くの事柄を自分自身で決めることが求められます。
ところが、自分で決めたことなので、自分で変更することもカンタンです。注意すべきは、いわゆる「ブレ」です。今回はダメだったから次はこの基準で……とチョコマカ変更するようでは、数回後には「ダメだった」と判断する基準そのものが消失しているでしょう。
統計的に降水が少ない時期に雨の日が続いて客が来なかった……こんなことだけで商売の方向を変更したりしません。ところがトレードでは、そんなダメな対応をしてしまいがちなのです。「ラクして儲かる方程式」を探そうとすると、この類の過ちを犯してしまうので、「苦労をつらいと感じない姿勢」を探し求めるべきです。
基準を絞り込んでトレードに臨むしかない以上、避けようのない連敗でブレないこと、小手先の対応を試みないこと、そうならないような認識と計画をもつことが大切です。
自分の意思で方式を決めてトレードしているのですから、「ヤラレても続ける」ことが、ひとつのコツといえるでしょう。
根本を見直す姿勢
連敗も必須だから、ヤラレても続ける──これがトレードの現実ですが、連敗が多すぎる場合や、2年、3年と続けてもプラスになりそうもないのならば、根本を見直す必要があります。
直近だけ具合が悪いか、根本的な誤りがあるかの判断は非常に難しいのですが、理屈として理解しておく必要があります。
パラメータ設定がうまくできていない、銘柄選定が悪い、資金稼働率の設定が悪い、銘柄の組み合わせ方が良くない等々、チェックする観点はたくさんあります。これを総合的に考えて「長く続く」方法を構築していくことこそが、トレードの道です。
そのなかで、思い切って方式を変更すべきときもあります。
トレードの道を適切かつ良質なものにするために、理想のパターンを設定する、そのうえで現実を正しく認識することが必須です。手法を決め、その手法の長所だけでなく欠点もあわせて確認することです。
自由に考えて自由に進むのが個人投資家の姿ですが、自由とブレは全く意味が違います。確固たる考え方をもち、ブレずに続けることです。同時に、考えを改めることをいとわずに研究してください。
次回のフォローアップ(3)では、個々のトレード手法がもつ欠点に焦点を当てて考えます。
お楽しみに!
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