分割売買の効果
「予測が当たれば儲かる」と、多くの人が先行きを読もうと努めます。
でも実際は、頑張っても当たったり外れたり……。
実践派は、真剣に予測を立てるものの、それに固執することなく、「流れについていこう」とします。
6月12日の放送では、予測不能の株価変動への“対応”、必然となる分割売買の考え方と実際を解説しました。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第110回 中源線は“分割売買” ~建玉操作で“うねり取り”を実現する)

自らの手で“結果”をコントロール
「売買には分割が必須」
「分割売買が技法の要件」
私はこのように述べ、分割売買を提唱しています。
しかし、反論もあるでしょう。
「分割に注ぐエネルギーで、より精緻な分析に努めるべきだ」
「真剣に分析するのだから、売買のタイミングも絞り込めばいい」
なるほど、一理あります。
「分割そのものが、林が指摘する“カッコいいワザ”“不要な行為”ではないか」ってことですよね。
しかし、私の主張の前提は、「ものごとが計算通りに進まない現実」です。
例えば、スポーツの世界に、「イップス」という、やっかいなシロモノがあります。
メンタル面のよろしくない作用によって、体を動かせなくなる、体がスムーズに動かないという“病気”です。
練習ではスムーズにできる、しかし本番でダメになる・・・
例えばゴルフは、ボールが止まっていて好きなタイミングで打てばいいので、症状が顕著になりますが、イップスはあらゆるスポーツに存在するようです。
私はほとんど見ないので知りませんが、テニスのシャラポワ選手がイップスで苦しんでいるとか……。
トレードには肉体的要素がないのですが、メンタルの働きは同じです。
「こうするんだ」というやり方を知っているうえに、理論も経験も十分なのに、肝心なところで脳がブレーキをかけてしまう……正確には、感情を伴う複雑な記憶が作用して「脳と心」がヘンな命令を下す、ということでしょう。
こんな現実を考えると、表面的な理論の限界は意外と低いと考えざるを得ません。
また、分析と研究にエネルギーを注いでも、長い時間を割いても、先行きを当てる能力は大きく上がりません。マーケット参加者全員が、ほぼ同じ条件で「当てよう」と競争しているからです。つまり、努力しても、予測の的中率はわずかな上昇しか望めないという現実があるのです。これも、「予測」よりも「対応」に力を入れるべきだと考える根拠のひとつです。
結局は、それなりの確率で曲がる(予測が外れる)ことを前提にするということです。
少なくとも勝率100%でない限り、負けたときの金額を抑える努力は欠かせません。
99連勝しても、それまでの勝ち分をつぎ込んだ100回目の勝負で大負けしたら・・・
資金が大幅に減って物理的に厳しい状況に追い込まれる、あるいは、大きな負けで精神的にダメージを受け、イップスどころか再起不能になるといった“激ヤバ”な状況だけは、なにがなんでも避けなければなりません。
しかし、そんな厳しいことが起きてしまうのが、株式市場の現実です。
もう少し軽いダメージのほうが、想像しやすいでしょうか?
▼ちょっと株数が多いために、「あれ、ダメかも……」と感じながらポジションを維持して、結局は損切り……株数を抑えていれば、などと後悔する。
▼株数は多くないけど、損切りが遅れて放置した結果、まあまあの値幅のヤラレ……ダメ玉の維持に長い期間とエネルギーを費やし、ほかのチャンスを逃してしまう。
小さな悪循環でも、蓄積すると、かなり大きなマイナスとなります。
躊躇(ちゅうちょ)せずに行動する、ポジションを維持するべきときはジッとする。
こういったメリハリをつけ、株価そのものはコントロールできない、予測の的中率もままならない現実の中で『結果をコントロールする』するのが、実践家の狙いです。
それを可能にする、いや、どうにか実現するための工夫が「分割売買」なのです。
当てようと躍起になっても、なかなか当たらない。
だから、真剣な予測で「売りか買いか」を決めて行動しながらも、その後の値動きに応じて予測を変化させる、その変化をポジションに反映させる“対応”が重要です。そのためには、「分割売買」が不可欠なのです。

一点狙いの危険性
すでに前項で述べましたが、狙いすまして「よしここだ!」という“一点狙い”は、なにかとギクシャクした状態を生みます。柔軟に対応する姿勢が、どうしても薄らいでしまうのです。
2016年11月、米大統領選の時の値動きを思い出してください。
「トランプ氏が当選することはないだろう。彼が大統領になったら、株は暴落する」
こんな観測が広がり、実際にトランプ氏が優勢との情報に反応するかのように11月9日、日本の株は大きく売られました。しかし、日本時間の夜、ヨーロッパ時間、アメリカ時間と進むうちに日経平均先物は逆に大暴騰。翌日からは、日本株の上げが加速しました。
決め打ち、一点狙い、気合いを入れた予測、自信たっぷりの読み……これらには「当たったら気持ちいい」という期待があるだけで、実際に当たってもカンタンに大きな利益につながるわけでもないし、当たらなかったときは対処が遅れます。
最初から、当たったり外れたり、まあ予測なんてそんなものだ……とユルいくらいの構えでいるほうが、素直な対応を実行できるというもの。
だから、『分割売買』なのです!

好循環を期待するな!
ものごとには必ず、好循環の時期と悪循環の時期があります。
なんだか知らないけどうまくいくときもあれば、それほどヘタを打っていないのに結果が出ないなんてときもあるわけで、運というか巡り合わせというか、どうしてもコントロールできない、読むことのできないブレがあるのです。
相場の予測がかなりの確率で当たるのなら、不測のブレが影響する度合いも小さいのですが、当たったり外れたりなので、ブレまくります。
だから、ビギナーズラックで大儲けとか、迷いながらモタついたら評価益が大幅に膨らんで大成功、なんてことも起こるのです。
好循環と悪循環、どちらもあるんだと考え、好循環のときはガンガン攻める、悪循環のときはお茶をにごすようにガマンする……一定の経験があれば、こういった発想をもつでしょう。
でも、「好循環のときは……」との発想に、警鐘を鳴らしたいと思います。
たしかに、「取れるときは取る」というイメージが大切です。
悪い玉は早めに切り、良い玉はさっさと利食いせずにねばるのが正しい考え方です。
でも、いわゆる「好循環」のイメージは、たいした流れでもないのに期待を膨らませてしまう状態、おかしな妄想だけで行動してしまう過ちを招きます。
さて、今回のテーマである「分割売買」は、こういった好ましくない過度な期待を、そもそも発生させないための工夫、“安定”と“安全”を第一に考えるプロのワザなのです。
ドラマチックな売買なんて、ふつうはありません。
あったとすれば、「あぶなかった」という反省すべきケースです。
めいっぱい買ってギリギリまでねばり、大暴落直前で売り抜けた……カッコいいトレードではなく、あと少しで息の根を止められるところだったと猛省すべきです。
プロのワザというものは、ものすごく地味で、説明しても「おぉっ!」と感じてもらえない、だけど、それなりの経験と大きな覚悟がなければ実行できない行動です。
値動きを見ながら、それなりに手を出し、しかし絶対に大負けしないギリギリを進む、意外な“スゴワザ”なのです。

中源線の3分割
さて、「プロの対応を実現する」と説明している中源線建玉法。
その3分割の売買を、詳しく説明しましょう。
あらためて、中源線による3分割売買の流れをご覧ください。

中源線は、終値を結んだシンプルな折れ線チャートのパターン分析で、トレンドを判断します。「上がる」と予測して買うか、「下がる」と想定して売るか、つまり、強弱の判断を最初に行います。
そして、上がると予測しているときは、終値と終値を赤い線で結びます。
これが「買い線」です。
しかし、下げを想定した場合には、黒い線で終値を結びます(売り線)。
この判断基準が、明確にルール化されているのです。
図は、買い線からスタートしています。
途中、弱い動きになったところで中源線が陰転、買いポジションを閉じて1単位(計画の3分の1)を売り建てします。
しかし、再び強張ったところで陽転、1単位のカラ売り玉を手仕舞いして、こんどはドテン買いに回ります。でも、まずは1単位だけです。
押し目で、1単位ずつ増し玉して、計画の総量である「3分の3」までポジションを増やします。その状態で、狙い通りに上がり始めた、という流れを示しました。
陰陽の転換、増し玉を始めるかどうか、どのタイミングで増し玉するかなど、すべてのアクションがルール化されています。そのため、状況によっては人間の感覚に反した判断が下されますが、重要なのは「確固たる判断と行動指針がある」という部分です。「どうしようかなぁ……」と迷ったり、「このままでいいかな」と甘い考えで先送りするといった不安定な対応は絶対にあり得ないのです。
必ず明確な答えを出し、その答え通りに行動することになるので、損失がどんどん膨らんでしまったり、行動できないままフリーズした状態に陥ることはありません。
また、人間の感覚だけでは行動に踏み切れないケースで「買え」「売れ」と、中源線が強みを発揮してくれるケースも少なくないのです。

予測が当たり外れする実際
実際の中源線チャートを見ながら、分割売買の様子を確認しましょう。
8614東洋証券は、取ったり取られたりで、現実の相場を見るうえでニュートラルな素材ではないでしょうか。ちなみに、金融株は全般に、突飛な動きをすることも多く、例えば銀行株は中源線との相性が悪いのですが、証券株はまずまず手が合うようです。
2016年11月からの上げは、見事に取りました(1)。
しかし、その後は取れていません(2、3、4、5)。
直近では、6月に入ってポンッと上がったところで陽転しましたが、これもダマシですぐに陰転しています(6)。この陰転は、中源線のルールにある「再転換」です。カンタンに言うと「転換したのに、すぐに逆方向に転換」というケースで、「3分の1ずつの3分割」を基本としながら、再転換は「最初から2単位(3分の2)建てる」と決まっています。
この場合は、買いから売りへの方向転換です。
上がると思って買った(1単位)、しかし再び弱くなったので再転換で陰転……やっぱり下げトレンドが続いていたのか……で、買った1単位を投げるとともに2単位売りにいく、ということです。
裁量で実行するのは難しいかもしれませんが、「こんなときは思い切って行動したいよね。でも、完全な決め打ちはよくないなあ」といった実践家の感覚を、シンプルでわかりやすいルールに落とし込んであるのが中源線です。
次は、7717ブイ・テクノロジーです。
この銘柄については、2017年4月後半に陽転してから1カ月ちょっとで大きく上伸した期間に絞って、ポジション操作を追ってみます。
この間、図中にも示したように、細やかなポジション操作が行われています。
中源線のルールで定められた、ポジションを増減する“対応”です。
-
- 4/19 陽転 → 1単位買い → 残1/3買い
- 4/24 1単位買い増し → 残2/3買い
- 5/12 1単位買い増し → 残3/3買い
- 5/16 1単位手仕舞い → 残2/3買い
- 5/23 1単位買い増し → 残3/3買い
- 5/24 1単位手仕舞い → 残2/3買い
- 5/25 1単位買い増し → 残3/3買い
- 6/08 陰転 → 買い玉手仕舞い。ドテン1単位売り建て
中源線は、転換後に3分の1ずつポジションを増やします。
しかし、利益が伸びたとき(買い線で上伸、または売り線で下落)に、順行線をみて一部を手仕舞いするルールがあります。そのあと、一定の逆行線をみて再び増し玉します。
この、トレンド途中の手仕舞いと再度の増し玉については、「あまり意味がない」との意見もあって議論があるのですが、以下に示すような効果があります。
人間の行動は、偏りがちです。
買って上がったら成功ですが、完全に手仕舞いするまでは終わりません。
よくあるのが、ねばって評価益が膨らんだまでは良好、しかし放置したために利益がしぼんでしまった、というもの。
そこで、「やはり、上げ相場では勢いのあるうちに売り逃げなくちゃ」と考え、その通りに実行してみたら、結果的に上げの初期で降りることになった、「まだまだ取れたのに……」と嘆くのも、相場あるあるです。
天井で売るなんて不可能ですが、「取れるときは取る」と考えて値幅取りに努めることも大切です。大きく動いたときは、だいたい変動値幅の半分取れれば名人級と考えるべきですが、あまりにも早く利食いしてしまった、さらなる勢いがあると十分に判断できた、と反省するケースも少なくありません。
対する中源線は、逆方向の動きを感じるまでポジションを放置します。
その放置の中で、一部手仕舞い、再びポジション増加というアクションを起こすところがミソです。
値動きに応じて行動を取りながらも、芯となる見通しは変えない──まさにプロの姿勢が表現されているのです。
次回のフォローアップ(3)では、中源線の仕掛けに絞って考え、トレードにおける「エントリー」のあり方を深く考えてみようと思います。
お楽しみに!

2017年4月28日発売開始
ブレない投資手法 曲げない投資哲学
~相場に立ち向かうための「起承転結」~
目次などの詳しい情報はこちら(内容のチラ読みもできます)
2017年2月新刊
入門の入門 中源線投資法
目次などの詳しい情報はこちら(内容のチラ読みもできます)
書籍『中源線建玉法』の「第一部 解説」には、無料配布版があります。印刷版(無料郵送)のほか、PDF版またはeBook版(ダウンロード)もあります。
たいへん貴重な売買の実記録と、林輝太郎による実践的な解説。
林投資研究所オリジナル(旧書名「株式売買記録と解説」)
長年続く普遍的ノウハウ、低位株投資「FAI投資法」の原典。
林投資研究所オリジナル
※「研究部会報」および「中源線シグナル配信」は、林投資研究所が行っている投資助言サービスです。契約にあたっては、林投資研究所が交付する「契約締結前の書面」をよくお読みください。











