神の領域
トレードは頭のゲーム──とはいえ、論理性や合理性だけでなく、自由闊達(かったつ)な創造性や感情を併せもつのが人間……しかも、株価は理屈通りに動いてくれません。
だから、思わぬ落とし穴にはまらないために、「やってみないとわからない」ことを確認する作業は欠かせないのです。
2018年6月4日のマーケット・スクランブルでは、地味なテーマながら、「売買の練習」が必要な理由、そして、その方法について解説しました。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第134回 うねり取りはカンタンじゃない!? ~中源線を使った実践売買のポイント)

トレードの予測について考えてみよう
多くの人が「上がる」とか「下がる」とか、いろいろと言いますが、感心するほど当たっている人はいるのでしょうか? 「この銘柄、くるよ」なんて言ったあと1、2カ月で暴騰すれば、間違いなく大当たり。そんな個々の見通しについては「お見事!」といえるものにちょくちょくと出会いますが、半年、1年と予測が当たり続けることはありません。
株価変動は、市場に参加する投資家の売り買いで決まるという構造によって、「当たり続ける人はいない」ということは明白。
期待があるから、「当たり続けている人がいる」ような気がする、「ラクに儲かる情報がある」ような気がするのです。キケンな錯覚です。
私たちが提唱する「相場技術論」は、このキケンな錯覚に絶対に近づかない方法です。
「技術論」なんて表現を使うと、なにか小難しいイメージですが、要するに・・・
・予測に期待するのはキケン
・対応力を主としよう
ということです。
トレードは、宝さがしのようなものです。
それらしき地図(チャート)はあるのですが、これから進む道は描かれていません。ポジションを取った結果は、期待通りだったり、期待外れだったり……立ち止まって「さて、どうするか」と自分で答えを出すしかないのです。
別に「宝さがし」なんて特別な例えを出すまでもなく、ふだんの生活で道に迷ったときと同じですよね。
じゃあ、「予測」ってなに?
答えは、「行動のキッカケ」です。
「上がる」と予測するから、買い出動することができます。
でも、しばらくすると、「読み通りだねえ」と思うこともある一方、「なんかちがうかなぁ……」と残念な展開になることもあります。あらためて次の予測を立て、その先の行動を決めるわけです。
予測は行動のキッカケ、その予測は「対応する」というオトナの意識によって変化していくのです。

練習は単一銘柄
今回の放送では、「練習してください」と繰り返し言いました。
「やらなきゃわからない」ことがあるからです。
例えば、避難訓練。
災害など起こっていない状況で、避難経路を確認しながらのんびり歩きます。緊張感はゼロです。でも、その体験が、いざというときに役立ちます。実際に避難経路をたどった経験によって、いざというときでも「そうだ、この先を右に曲がるんだ」なんて落ち着いて考えることができるようになります。慌てふためいて逆に進むといった、マズい状況になりにくいわけです。
番組で大橋さんも、次のようにコメントしました。
「避難訓練は、みんなタラタラとやっているだけのようで、実際に参加してみることに意味がある」と。
では、「避難訓練」に相当するトレードの練習とは?
私がオススメするのは、数量を抑えた「単一銘柄」の売買です。
「どの銘柄がいいの?」というアイデアが、前項で述べたキケンな錯覚に直結します。だから、銘柄探しの発想をゼロにするために、単一銘柄の売買が有効なのです。
銘柄がひとつしかない──この状況だと、「どんな動きを狙うか」「どのように決着をつけて利益を確保するか」という現実のことに目が向きます。それを考えるしかない状況に、自分の身を置くということです。
泳ぎ方を本で勉強して、いきなり海に飛び込む人はいません。
新しい料理を考え、試作もなしにメニューに載せるシェフはいません。
どんな分野でも、どんなレベルでも、練習は不可欠です。
トレードにも練習が必要、練習する方法がある、ということを忘れないでください。

「値動きモデル」と「実践モデル」
予測は行動のキッカケ、と述べました。
その時点での予測は、その時点で“理想と考える展開”です。
こうなってほしいよね、こうなるはずなんだよ──。
このように確信できる「値動きモデル」です。
ところが、その予測そのものが期待通りには当たらないし、当たったとしても、上手に利益確保の手仕舞いができるかどうかが問題です。ましてや、予測が曲がったときは、どこで負けを認め、どのタイミングで損切り撤退するかという大きな問題に直面します。
この段階で必要なのは「実践モデル」、つまり「生身の人間が確実に実行できることはなに?」という理論です。
この理論を固める、実際にからだが動くようにする、その自信をつける……そのためには「練習」が必要です。「やらなきゃわからない」ことがあるのです。
銘柄情報を追いかけて錯覚が生じると、こういう当たり前の組み立て方ができなくなります。仕事でも趣味でも、ちゃんとした向き合い方ができるのに、大切なカネを扱うトレードでグダグダになったらいけません。
さて、中源線の実際のチャートを見ながら、現実の対応を考えてみましょう。
※赤が買い線で買いポジションを3分割で増減、黒が売り線で売りポジション(カラ売り)を3分割で増減させていきます。

7513コジマは、直近の上げを中源線がうまく捉えています(1)。
しかし、高値でおじぎしたところで陰転(ポジションはドテン売り)、「ここから暴落か」と期待したところ、陰線のまま切り返して高値を取っています(2)。
今回の上げのスタートでは、中源線らしく機敏に反応したのですが、高値波乱ではちょっとズレが生じているのでしょう。きちんと対応するには「値動きモデル」という判断基準が必要ですが、その基準とズレが生じることだってあります。仕方がないことです。
コジマの今後の展開について、いくつかのパターンを思い浮かべることができます。
- 陰線のまま、結局は下げに向かう
「売ったままでよかった~」
- 高値で陽転して売り玉は損切り、でも上げで利益が生まれる
「よし、取り返したぞ」」
- 高値で陽転し、それもダマシ……再び陰転する
「往復ビンタかよ~」
トレードはミスの連続です。
ミスしたときのケガを大きくしない──これが、「実践モデル」の核です。

私たち投資家は、神のように先行きを言い当てようとすべきなのでしょうか?
否! 単なる人間であり、「カネがほしい」と欲をもつ俗っぽい存在でありながら、現実を熟知して上手に対応できるプレーヤーを目指すべきです。

単一銘柄売買がもたらすもの
多くの個人投資家は、「自分は知識が足りないシロートだ」という認識を少なからずもっています。すると、投資信託などの金融商品を販売する人が単なる“売り子”であっても、「金融機関にいるのだからプロだ」「自分に有益な情報をくれるのだろう」と、期待を込めた勘違いをしてしまいます。
行動心理学では「権威づけ効果」と呼びます。
根拠なしに信じてしまう、無防備に受け入れてしまうのです。
たしかに、金融のことを考える時間は、単なるセールスマンでも、一般の個人投資家とは比べものにならないほどあるでしょう。知識だって、それなりに豊富です。
でも、あなたのことを完ぺきに理解して素晴らしいアドバイスをくれるとは限りません。そもそも相場の先行きは……だれにもわからないのです。ここがポイント!
「推奨銘柄」情報を安易に手に入れてはいけない理由が、ここにあるのです。
さて、先行きがわからない状態でも、確固たる予測を立てて行動を取る、その結果がどうであれ適切に対応する──私たちプレーヤーに求められることのすべてです。
つまり、あやふやな気持ちで行動してはいけないのです。
「どうかなぁ・・・」と感じながらポジションを取るのは、禁じ手なのです。
「わからない」「だから、やらない」という選択肢が重要です。
手を出さなかった結果、「なんだよ、買っていれば大儲けだった」なんて、タラレバを言ってはいけません。
やってみたら儲かった、やってみたら損した、見送って損を未然に防いだ、見送ったら儲けそこなった……確固たる意思があれば、4つのパターンすべてが「正解」なのです。出動(仕掛け)から撤退(手仕舞い)までを、自分でコントロールできているかどうかがカギです。

7532ドンキホーテは、チャート中央に見える大きな上げを、中源線が見事に捉えました(1)。しかし、(2)の陰転以降は、たしかに下げトレンドですが中途半端で、ときどき陽転するという実にイヤな展開です。
なかなかできないことですが、「こういうときに休みを入れられたらいいなあ(その結果、取り損なっても仕方がない)」という発想があれば、ヘンな錯覚が生じない冷静な思考を維持することができます。
また、中源線のように、ルールをちゃんと公開している手法ならば、「なぜ勝ったか」「なぜ負けたか」が明確なので、冷静な思考の先に進歩があります。
このように考えていけば、私が提唱する「練習」の意味や効果も、納得してもらえると思います。

次回のフォローアップ(2)では、どうしても言いたくなるタラレバについて、実は“許されるタラレバがある”という話をします。お楽しみに!
東証1部24銘柄で
らくらく2倍の低位株選別投資術
林投資研究所で30年以上続く低位株投資の手法「FAI投資法」の完全解説版。倍化した実例と解説もあります。
2018年6月新刊
現在「送料無料」で予約受付中(内容のチラ読みもできます)
中源線第一部(無料)
書籍『中源線建玉法』の「第一部 解説」には、無料配布版があります。印刷版(無料郵送)のほか、PDF版またはeBook版(ダウンロード)もあります。
こちらのページへどうぞ!
※「研究部会報」および「中源線シグナル配信」は、林投資研究所が行っている投資助言サービスです。契約にあたっては、林投資研究所が交付する「契約締結前の書面」をよくお読みください。