王道の待ち伏せ
林投資研究所が30年以上にわたって提唱している低位株投資の手法、「FAI投資法」に関する2回目の放送です。
「下値不安が少ない」「上昇したときの率が大きい」といった長所の裏にある、低位株投資のマイナス面はなにか。そのマイナス面をどう埋めるのか──2018年8月6日のマーケット・スクランブルでは、実際に私たちが選定した銘柄、将来に注目している銘柄を挙げながら、本質となる部分に切り込んで解説しました。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第138回 東証1部24銘柄で“らくらく2倍”の低位株バスケット投資(プロが行うお宝銘柄発掘法、第2回))

マーケットはなんでもアリ
売買の“形式”を取り上げて、「これはキケン」「これはリスクが少ない」と評価することがあります。例えば、「信用取引、とくにカラ売りはキケン」とか、「先物の証拠金取引はキケン」といった考え方です。
しかし、一般的な評価について、多くの疑問があります。
「先物取引はキケン」といいますが、株価指数先物も商品先物も、価格の変動率は小さいのです。個別株のように、激しく上下することはありません。ただ、証拠金取引、つまり「丸代金のほんの一部を入れるだけでポジションが取れる」ので、張れるだけ張った結果、少しの変動で大ヤラレする可能性があります。
個別株の信用取引は、先物ほど高倍率ではありませんませんが、それでも資金の3倍強までポジションを取ることができます。
多くの人が「アブナイ」というのは、単に“張りすぎているだけ”なのです。
エンジンが大きくて馬力のある車はキケンですか?
いいえ、そんな車でおとなしく走れば、とても安全です。
給料日の直後や、財布に現金が多めに入っているときは、ムダづかいしやすい?
いえいえ、単にコントロールが効いていないだけです。
少しだけ、マーケット理論に触れます。
先物取引や信用取引は、マーケット参加者に、少ない資金でヘッジするチャンスを与えるために存在します。例えば、「現物をたくさん抱えていても、状況に応じて先物を売り建てすれば値下がりによる損失を軽減できる」とか、「5カ月後にまとまった資金が入るので株を買う予定だが、上がりそうだから今のうちに手当てしておきたい。信用取引で買っておこう」といった需要を想定しているのです。
ヘッジを含め、機敏な行動を手軽に取れるなら、より大きな資金を投じることができます。便利な仕組みを用意して、参加者を増やそうとするのがマーケットのあり方なのです。
この便利な仕組みを利用して、ものすごく積極的にリスクを取ることもできますし、そういった“投機筋”の参加をマーケットはむしろ歓迎しています。手堅くヘッジする参加者ばかりでは取引が偏り、ヘッジ注文の相手方が不足するからです。
どんな張り方をするか──すべては、参加者の自由意思です。

現物取引が最もキケン
前項で述べたように、マーケットの仕組みをどう利用するかは自分次第、キケンな度合いは一概にいえません。
「信用を使ったカラ売りがキケン」といわれますが、強烈に上がった銘柄とケンカするようにカラ売りを仕掛けたり、見込み違いでどんどん上伸する様子を見ながら放置すれば大ケガをするだけです。「現金を増やす目的でポジションを取る」「仕掛けも手仕舞いも、すべて自由意思」ということを考えれば、買いが安全でカラ売りがキケンなどという評価が、そもそも誤りだとわかります。
信用取引には、6カ月という期限があります。だから、「つい放置してしまうことがない」という理由から、現金があるのに、わざわざ信用取引で買う人もいます。ちゃんと計算して、自分の売買に合わせてポジションを管理するのがベストですが……。
こういった観点で考えると、「現物買い」こそキケンです。
いや、キケンだと決めつけるのは誤りですが、「現物だから戻りのを待っていられる」という考えがあるために、ポジションを放置しがちなのです。
東京電力の株について、「これ以上、手堅い銘柄はない」「国債を持っているのと同じだ」くらいに考えていた投資家も多かったはずですが、原発事故で暴落しました。JAL(日本航空)の株について、「バックが政府だからゼッタイ大丈夫」と決めて買っていた投資家は、再生の過程で価値がゼロになってショックを受けました。
不測の事態というリスクを抱えながら、資金を寝かしてしまうことは避けるべきです。大切な資金を投じる以上、戦略的な理由があるべきです。

初動で乗るためのテクニック
7月と8月の番組は、林投資研究所が30年以上つづけている低位株投資の手法「FAI投資法」のエッセンスを紹介しました。
「誰でも実践しやすい」投資法と説明している理由は、実用的な説明が「29項目のルール」として定められているからです。また、いくつかの「付則」もあります。その付則のひとつは、以下のような資金管理の決め事です。
◆資金の2割以上は常に余裕をもつ
レバレッジを効かせる(資金を超えるサイズのポジションを取る)どころか、「2割余らせろ」と書いてあります。「常に」なので、分散で買っていって(最高で24銘柄)、「よし、これはチャンスだ。もっと買おう」となったときでも、絶対に2割は余らせなければなりません。すると、ふだんは「半分だけ買う」くらいのイメージが必要です。
さらに、いわゆる“時間切れ”のルールもありましたね。
◆買ってから24カ月以上経過したものはいったん手仕舞いし、再検討する
これら2つの資金管理ルールによって、限られた運用資金が底をつくことなく、適正なゆとりを維持し続けることになります。「給料日前でカネがない」なんてことにならず、感覚だけで好きなようにカネを使っても適当な金額が財布に残る──そんなバランス良好な状態が生まれます。
「誰でも実践しやすい」投資法と述べましたが、「現物買いだから安全」とか「レバレッジをかけないから手堅い」なんて無責任な言葉を投げるつもりはありません。対象とする銘柄の値動き特性、手がけようと努めるタイミング、分散の方法、資金管理の仕方……等々、多くの項目がバランスよくまとまっているから、「実践しやすい」「マネしやすい」のです。
そして、そのバランス感覚を維持することによって、肝心の売買、「初動で乗る」という具体的な行動が成立すると考えてください。

上のチャートは再び、1801大成建設の月足です。
安値の小動きから1本、非常に目立つ陽線をみせました。これが「兆し陽線」です。
十字足を挟んでいますが、ルールの文言通り「陰線2本押し」のあと本格的な上昇に移りました。こんなタイミングを、月足観察で見つけられたら快感です。
でも、この兆し陽線を見つけようと必死になるだけではダメです。
多くの月足を見て慣れること、つまり“心のゆとり”が求められます。
また、資金管理にも“ゆとり”が必要です。
買い集めたものが、みんなダメ玉で、毎日気が気ではない……そんな状態では、月足観察も必死すぎてうまくいきません。「取り返そう」という気持ちが前面に出てしまい、売買の行動もフワフワ、ソワソワでしょう。
大成建設のように、実際に大きく上昇した銘柄のチャートを、あとから見ていると、「利益を上げるのはカンタンだ」と感じます。とくに、わかりやすい動き、典型的な動きだから、なおさらです。
ここで、今の時点で「兆し陽線ではないだろうか」という銘柄を紹介します。


1つめは1805飛島建設、2つめは1813不動テトラの月足チャートです。
最後のところでクッと上に向いていますが、大成建設ほどクッキリハッキリした長大陽線ではありません。でも、「兆し陽線ではないか」「ここから相場がはじまるかも」と期待します。
もちろん、実践者によっては、「出損ないで終わる可能性が大きい」と否定的な見解をもつでしょう。
また、大成建設は代表的なオリンピック関連だし、これら2つは超出遅れだし……という具合に、材料を並べ始めるとキリがなくなります。そもそも、大成建設が動き始めた2012年末とは、さまざまな点で環境が異なります。
常に、こうした不安定な状況で確固たる判断を求められるのが相場、トレードという行為です。最後に「えいやっ」と行動するしかないのですが、そのためには、いざ行動する際に難しいことを考えるのではなく、前述した資金管理を含めて資金全体の動かし方を計画的かつ丁寧にすることです。
切羽詰まった状態から、起死回生の一手を打つべくカッコよく当てる? それは、映画やドラマの世界です。
現実では、こうしたチョー地味な対応で“ゆとり”をもつことこそが、大切な「技術」だと信じます。

厳選する姿勢
林投資研究所が主宰する、低位株投資の研究会「FAIクラブ」(※)では、売買は常に個人で行うのが鉄則です。しかし、銘柄は、メンバーで繰り返し議論して選定しています。
※FAIクラブ
林投資研究所が主宰する、低位株投資の研究会。1984年の発足いらい、30年以上活動をつづけ、「FAI投資法」で手がける銘柄を毎月の例会で議論して決定し、個人投資家向けの機関誌『研究部会報』に掲載している。
ここで、FAIクラブが銘柄を選定する手順を、カンタンに説明しましょう。
まずは、ザックリと、ほぼ条件に合う銘柄を見つけます。
毎月の例会で検討し、「これはウォッチしておこう」と決めたら、「注意銘柄」に選びます。つまり、実際に手がける銘柄の“候補”です。
この、候補として選んだ「注意銘柄」を毎月の例会で継続的に観察し、「そろそろ、いけるかも」と判断した時点で買いの対象、「買い銘柄」に選定します。
ウォッチしているうちに、ピューッと上がってしまうこともあります。
しかし、それを嫌うあまり、雑な選定になるのはサイアクなので、丁寧に考えます。
以下に示す2銘柄は現在、「注意銘柄」としてウォッチしているものです。

これは、3205ダイドーリミテッド、昔の大同毛織です。
老舗企業で十分な資産があるのですが、最近は業績が思わしくありません。十分に下げていますが、しっかり底固めをしている雰囲気は弱いと感じます。

2つめは、8166タカキューです。
業績は横ばいですが、利益が小さくて“さえない”印象です。現時点で「株主になってください」と頼まれたことを想像してみると、それほどの不安はありません。しかし、この先、業績が落ち込む可能性は否めませんし、少なくとも現時点では、株式市場で人気化すると感じられません。
このように、とくに深い企業分析などししなくても、月足とともに業績・財務データの推移を丁寧に見ることで、売り買いの行動を決めることができます。ヘンな迷いが生じないように注意し、「逃してもいいから、精度の高い選定を実現したい」と考えて月足を観察しているのです。

「手法」を固めるプロの思考
株式市場では、プロもアマも同じ土俵で勝負します。
初心者だからといって、ハンディなどもらえません。
ただし、誰にでも、「大化け銘柄の上げ直前で買って天井圏で売り抜ける」みたいな大成功の可能性があります。
とはいえ、安定した結果を出せるかどうかを考えると、プロはそのための要素をひとつひとつ丁寧に積み上げているといえます。
継続的に解説している「中源線建玉法」と、7月および8月の番組で紹介した「FAI投資法」は、アプローチが全くちがいます。完全に相容れない、別々の手法です。
でも、「手法」として成立している以上、トレードの原則を守っています。プロが大切にしていることを、多くの共通点として見出すことができるのです。箇条書きで示します。

どちらも、「ほぼすべての情報が株価に反映されている」という思想をベースに、チャートによる判断を重視します。株価を「総合的な人気によるもの」と捉えるのが、大きな特徴です。
あとは、多くの投資家が想像できないレベルで、実に地味なことを考え、地味なまま実行に移そうと努めています。
箇条書きの2番目には、「想定」と「現実」のギャップ、と示しました。
どんなに地味な姿勢でも、相場を張る以上は「期待」が膨らみます。また、売買する際の「モデル」としては、理想的な展開を想定します。
だから、現実とのギャップに悩まされる状態を、落ち着いて受け止めなければなりません。
損を被って「取り返そう」と考えるのは当たり前ですが、そこで背伸びした「想定」をしてしまうと、大ケガのもと。逆に、現実を見すぎて「想定」を縮小しすぎると、不要なネガティブ思考に傾き、これまたバランスのわるいことになります。
さて、プロと同じ土俵で勝負するには、プロと同じレベルのことをするしかないのですが、時間的な制約のある一般的な個人投資家にとって完全なコピーは物理的にムリです。でも、資金を抑えめにしたり、売買頻度を低めにすることで、限定的に高いレベルのトレードが実現します。
「いざやるときはプロと同じ」ということです。
「FAI投資法」を説明する中で、いくつか具体的な銘柄を挙げましたが、それらについて「上か下か」と目先の結果を追うのではなく、確固たる「自分のスタイル」を固める、より高めるためのヒントとして活用してほしいと思います。
「マネしやすいプロの投資法」として、資料や教科書もそろっています。

これで、8月放送のフォローアップは終了です。
次回の放送は9月3日(月)の夜8時から生放送、中源線建玉法をテーマにした番組に戻る予定です。
お楽しみに!
東証1部24銘柄で
らくらく2倍の低位株選別投資術
林投資研究所で30年以上続く低位株投資の手法「FAI投資法」の完全解説版。倍化した実例と解説もあります。
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詳しい内容はこちら(内容のチラ読みもできます)
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1971年創刊で、数多くのプロを輩出してきた。会員は、初心者からファンドマネージャーまで幅広い。FAI投資法の選定銘柄、実力につながる実践家の読みものなど内容多彩。
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