9月3日放送のフォローアップ(2)
林 知之

「予測の精度」を決するもの

株価変動のトレンドを捉えるポイントは、まさに千差万別ですが、2つの共通点を挙げることができます。(1)具体的なポジション操作とのセットで意味をなす、(2)取れる場面と取れない場面がある……この原則から逃れることはできません。

その中で中源線は、ひとつのロジック(判断基準)で「うねり」に対応すると同時に「大きなトレンド」も取りにいきます。では、そんな特長の裏にある弱みとは?

2018年9月の放送は、久しぶりに中源線の解説。あらためて中源線の“キモ”となる基本ロジックを別の角度から説明し、「うねりを制する」ための実践的なアイデアを紹介しました。

映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第140回 うねり取りを制す ~トレードに必要なブレない土台~

混在の文化に抗え!

9月の番組には、裏のテーマがありました。
「基本に帰ろう」です。

情報を増やした結果、混乱することがあります。
トレードは、そんなワナにはまりやすいゲームだと思うのです。

オトナとして、刻一刻と変化するマーケットに対応するためには、広い視野を保ちたいものです。しかし、売り買いの決断に直結する部分は、素朴がいちばんです。

例えばチャート。「株価の推移をチャートという形にした時点で、けっこう積極的な加工が施されている」と思うのです。だから、移動平均線を重ねたり、トレンドラインを引いたり、ローソク足の組み合わせ(線組み=せんぐみ)ばかり考えたり……こういった突っ込んだ観察は、いきすぎないように注意すべきです。

以下に、複数の価値判断が混ざるキケンな例を挙げますが、おそらく反論があるでしょう。例を示したあとに、私が気にするポイントを説明します。

複数の移動平均線を使う

「●●日線を上回っている」「しかし、まだ●●日線の下にいる」
行動をピシッと決めることが求められるのに、永遠に答えの出ない「迷い」の世界に踏み込んでしまいます。

複数種類のチャートを使う

「日足ではいい形になったが、週足ではよくない」
日足、週足、月足といった、ヨコ軸の設定が異なるチャートは、基本的に、同時に使うことができません。地図ならば、大きな地図で高速道路と国道をチェック、次に街中の細かい道をチェック、という順序で道を確認しますが、地図は単に縮尺が異なるだけだから、同時に使うことができるのです。

チャートを描くために、日、週、月と、便宜的に区切りを設定しています。地図の縮尺のちがいとは異質です。また、ローソク足の“白抜き”や“黒塗り”、高値・安値を示す“ヒゲ”など、本来の価格情報にはないものをつくり出しています。

値動き以外の情報を書き込む

「利上げ」とか「選挙」など、重要とされる外部要因をチャートに書き込むケースが見受けられますが、テクニカル分析の基本は「すべての材料が株価に反映されている」と考えることです。チャートをそのまま素直に観察するべきです。

また、自分の売買を記入する人がいます。「●月●日、1,500株買い」なんて個人的な情報は、チャート分析を行ううえでは、ただのノイズです。

特定の参加者の都合や思惑を排除するのが、マーケットの第一の機能です。

「おそらく反論があるでしょう」と述べたのは、「いや、その情報は外したくない」と感じるものが、誰にでもひとつやふたつあるからです。

私たち現代人が触れているものは、昔に比べて相当に複雑です。技術革新を背景に、あらゆるものが進歩しているからです。例えばスマホによって、「便利」「お手軽」「多機能」が当たり前のものになっています。そこに、相場の世界に元来ある“要素を重ねて精度を上げよう”という発想があれば、自然といきすぎてしまうものです。

多くの場合、「混ぜるなキケン!」が合い言葉です。

中源線とFAIを混ぜる道

混ぜるなキケンと述べましたが、7月と8月で紹介した低位株投資の手法「FAI投資法」も、今回触れているうねり取りを機械的判断で行う中源線建玉法も、林投資研究所のトレード思想に合致したものなので、うまく一緒にできないか、一部の要素くらい持ち込めるのではないか、といった発想が生まれるようです。

この疑問に、ひとつの角度から答えてみます。

低位株の選別投資を行う「FAI投資法」は、長期のトレンドに着目します。上げ始めを捉える狙いは、「少なくとも2~3年つづく」上げトレンドに乗るためです。

それに対して「中源線建玉法」は、「3カ月または6カ月の波」に乗ろうとします。

両者は、根本的に「時間軸」が異なるのですが、中源線における、安値から上げトレンドに移行する際の「N字」(フォローアップ第1回)が、月足にも現れるかどうかを考えてみます。

では、実際に私たちが「FAI投資法」で選定して成功した事例、つまり安値で選定して期待通りに暴騰した銘柄の月足チャートを並べるので、安値から立ち上がる部分に注目してください(赤いラインは、私たちが買い選定したタイミングです)。

どうでしょうか。「N字」があるような、ないような……「上向きの動きがあり、さらに上向きの動きがある」というのは、ごく当たり前に「上昇トレンドのスタート」を感じさせる流れとして多くの予測法に共通するアイデアですが、単純に流用することは難しいのです。

「売り」と「買い」だけだ

「相場は売りと買いだけ、実にシンプルだ」といわれます。
これを聞いて「そうだよなあ」と感じながらも、つい複雑な思考から離れられません。理由は、前述した通りです。

思いきりシンプルに、「核」となる部分だけを考えてみましょう。

「上がる」と思う → 買う
「下がる」と思う → 売る(カラ売りを仕掛ける)

行動はこの2つだけなのですが、ビミョーな状況において「迷うけど、チャンスかもしれない」「取り損なったらイヤだ」と考えて難しくなります。基本に帰って「迷うなら手を出さない」とキッパリ分類するのが実践的な考え方です。いわゆる「確信」があるときだけ、ポジションを取るのです。

では、ポジションを取ったあとの行動は?

「思惑通りだ」 → ポジションを維持する
「見込み違いだ」 → ポジションを落として撤退

やはり、たった2つです。「うぅ~ん、ビミョーだ……」と迷うケースが多々ありますが、基本に照らし合わせたら「迷ったら切る」という答えが出ます。

これら「基本」となるものに、アクセサリーをつけて仕上げるのですが、落とし穴にはまってアクセサリーを増やしすぎてしまうのです。

下の図を見てください。同じ値動きに対して、2つの異なる戦略がどのような結果を生むかを考えたイメージ図です。

上は、「逆張りでうねりを取る」狙いの売買です。往来の高値で売り、安値で買い、また高値で売りとドテンを繰り返してコツコツ利益を重ねます。しかし、往来から上にブレイクしたときに売りポジションがかつがれます。仕方がないので、踏んで(カラ売りの損切り手仕舞い)休むことにします。

下は、最初から「ブレイクアウト」を狙う売買です。最初の波は見送り、2つめの波で上抜けを狙って買いますが、下げたところで投げます。こんどは下抜けと考えて売りを仕掛けますが、往来の安値になったようなので踏みます。3回目に買いついたら上抜けに乗れた、「今までの損を取り返せそうだ」という状況になりました。

それぞれの狙いに、取れる場面と取れない場面がある、ということです。
パッと戦略を切り替えたりできませんし、往来でもブレイクアウトでも取れる戦略なんて、基本的には存在しません。

マーケットの競争で勝つためには「専門化」が必要です。
だから、取れる場面と取れない場面があるのが当然です。
これを補うのは、手仕舞いのタイミングしかありません。

多数の参加者が、等しい条件で争うのがマーケットという場です。だから予測の当たり外れは必然で、「予測の的中率」をムリに求めるのはゼッタイに誤りなのです。

分割こそがトレードの技術

予測の的中率を上げずに利益を増やすには、見込み違いの損を小さく抑えると同時に、思惑通りだったときの利益を伸ばす必要があります。「損小利大」と呼ばれる、“結果のコントロール”です。

これを可能にする必須の要素が、「数量の調整」です。

といっても、未来を事前に知ることはできないので、分割のポジション操作を行うことで、「ダメなときは数量が少ないうちに損切りを決断できる」「流れに乗れたときは数量が多くなっている」状態をつくり出します。これらは、計算上で“結果をコントロール”することですが、分割によってメンタル面もラクになり、実行がより確実になるのです。

「核心」があるときだけ出動するのですが、いきなり予定の数量を建てず、少しずつ増やすようにします。日柄の間隔は戦略次第ですが、5回の等分割の場合、2回目のあとで「これは見込み違いかな」と判断した場合、数量は予定の4割かつ時期が早いので損失額は抑えられ、精神的にも損切りの実行が容易です。

「中源線建玉法」は、売買を機械的に判断しますが、わかりやすく受け入れやすい、実用性の高い3回の等分割がルール化されているのです。

左の図では、フォローアップ(1)で示した「N字」によって陽転、3分割のうちの1単位を買いましたが、直後に逆行したことで「下向きトレンドがつづいていた」と判断を覆します。そして、1単位を投げると同時に、2単位を売り建てします。中源線で「再転換」と呼ぶルールですが、こんな機敏かつ臨機応変な対応が、利用者の感覚と一致します。

右の図では、やはり「N字」によって陽転しますが、その後の経過から「この転換はホンモノのようだ」と判断しています(この条件もルール化されています)。こうして「転換の確度は高い」と判断したあと、やはり分割で1単位ずつ増やしていきます。

値運びを落ち着いた観察すると同時に、「損小利大」を実現する工夫が盛り込まれているのです。

うねりも大トレンドも取る中源線

逆張り戦略とブレイクアウト戦略は両立しない──すでに述べたことですが、中源線の最大の特長は、「うねり」も「大きなトレンド」もひとつのロジック(判断基準)で捉えることができる点です。

最大の特長があれば、その裏には最大の弱みが存在します。中源線の弱みは、「N字」によって、うねりもトレンドも捉える一方で、中途半端は往来で機能しないことです。

しかし、「小さめの波も取りたい」「大きなトレンドも逃したくない」という、ありがちな欲を追求する道がひらけているので、多くの実践家が高く評価します。この部分を、実際の中源線チャートで確認してみましょう。

3つとも同じ銘柄、7717ブイ・テクノロジーですが、時期が違います。

1枚目は2015年3月から2016年3月までで、そこそこの幅のうねりを上手に捉えていることがわかります。ただ、最後のほうで残念なダマシがつづいています。

2枚目のチャートは、2015年7月から2016年7月ですが、後半の大暴騰をうまく捉えていることがわかります。「想定内の上げ下げで利益」と「連敗」前半部分が、1枚目のチャートと重なっているわけですが、「うねりを取った」「ドカンも取った」「中途半端な往来で機能しなかった」と、中源線の働きがよくわかるチャートです。

3枚目は、直近1年間のチャートです。2枚目の「ドカン」で大きく居所を変えたブイ・テクノロジーですが、その時の高値は約14,000円でした。ところが直近、2018年3月の高値は30,000円を超えています。そして、不可避のダマシをはさみながらも、大きな波を捉えている様子がわかります。

さて、3枚のチャートから、多くのことを読み取ることができます。

  • 株価は専門家も予想できない動きをみせる
  • 値ごろで判断するとキケン
  • 中源線は居所が変わってもついていく
  • 予測の当たり外れは避けられない
  • 分割売買による“結果のコントロール”が不可欠
  • 理屈ではなく、単純な基礎を大切にすることこそ技術

これら3枚のチャートだけでも、本1冊分の話に発展していくので、カンタンにまとめましたが、「売りと買いしかない」のに深いのがトレードという行為です。情報の整理方法、それを支える「手法」の存在、そして自分自身のメンタル面を、バランスよく整えることが求められます。

こういった意味で、「中源線建玉法」は、お手本としての完成度が非常に高いと考えています。

次回のフォローアップ(3)では、裏テーマの「基本に帰ろう」に沿って、5倍、10倍と激しく動く株価を、どのように認識すべきか、どのように行動すべきか、を考えます。お楽しみに!


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失せ物・・・
「ここにあるはずだ」という場所にないことが多いのですが、その確認がないと探す行動そのものが始まらないので困ります。

SQ(先物・オプションの特別清算指数)算出日が近づくと、多くの投資家が話題にしているようですが、ポジションを調整するなどの対応をしている人がいません。

「SQで警戒心があるから、オレのポジションがうまくなくても当然」
こんなふうに、売りだろうが買いだろうが、どんな銘柄だろうが、わるい玉の先送りに利用する姿勢はよく目にしますが……。

拙著『凄腕ディーラーの戦い方』に登場する硬派の実践家、“アンディ”こと沼田武氏は、次のように言います。

単に「抵抗線をブレイクした」という認識で行動したのでは、当てにいってるだけですよね。そこには、「やり方」という要素がないんです。
(中略)
判断基準に加えて「どこで買う(売る)のか」という“ポジションのつくり方”が必要です。ここまできちんと考えると、「当てにいく」だけの観察ではなく「根拠のある売買」という実践的思考の世界に到達するわけです。
(引用おわり)

SQによって、裁定取引や、それに絡む先物・オプションの動きが活発化するようですが、どのように影響するか、上なのか下なのか、過去にどんな影響があったか、今現在の流れを読むことが可能か……「SQだから」を言う前に、自分なりの予想、根拠を考えていますか?

前述の沼田氏が説明するように、適正な予測は「勝率5割」だと私も考えています。しかし、確信ある行動(沼田氏の「根拠ある売買」)に限定することで、その後の対応をどうにかこうにかコントロールできる──これしか突破口がないのが現実です。


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9月3日放送のフォローアップ(1)
林 知之

中源線の秘密は「N字」

株価変動のトレンドを捉えるポイントは、まさに千差万別ですが、2つの共通点を挙げることができます。(1)具体的なポジション操作とのセットで意味をなす、(2)取れる場面と取れない場面がある……この原則から逃れることはできません。

その中で中源線は、ひとつのロジック(判断基準)で「うねり」に対応すると同時に「大きなトレンド」も取りにいきます。では、そんな特長の裏にある弱みとは?

2018年9月の放送は、久しぶりに中源線の解説。あらためて中源線の“キモ”となる基本ロジックを別の角度から説明し、「うねりを制する」ための実践的なアイデアを紹介しました。

映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第140回 うねり取りを制す ~トレードに必要なブレない土台~

 

最大の錯覚は「安く買う」

ときどき触れていることですが、「安く買って高く売る」を言葉通りに捉えると、実践的には通用しない思考、誤った考え方になりかねません。

この事実を、具体的に説明しましょう。
下の月足チャートは、7月と8月の放送で、林投資研究所の低位株投資の手法「FAI投資法」を紹介した際のものです。東証一部の1801大成建設、実際に私たちが選定して見事に化けた銘柄のひとつです。

こうして月足を見ると、株価の基本サイクルがとても長いことがわかります。4年間で大きく下げて安値圏に到達し、3年間の底練りを経て再び上昇に向かっています。

さて、最安値は底練りの初期で、瞬間的には130円台までありました。
しかし、3年間の底練りで少しずつ下値を切り上げています。「よし、トレンドが変わった」と確認できる“兆し陽線”が出たあとの初押し、つまり「絶好の買い場」といえるタイミングでは、すでに200円台の後半、最安値と比べて2倍近い価格になっていたのです。

株式投資における“実践的な正解”は、「安く買う」ではなく「上げトレンドのときに買う」ことです。上げトレンドを見極めていれば、高く買っても、さらに高値で売れます。

もし大成建設の最安値を買っていたら、本格的な上昇まで待つことが難しいのです。仮に待てたとしても、少しの値幅を取って売り逃げてしまうでしょう。

正しい飛び乗り戦法

特定の銘柄が動意づいて話題になった、これをキッカケに参戦する……多くの人が経験しているでしょう。でも、うまくいったり、いかなかったり・・・

相場ですから、プロ中のプロがやっても見込み違いは多々あります。でも、うかつな飛び乗り戦法は、想像以上の混乱を生みます。うまく乗れたのに思ったほど取れないとか、見込み違いの判断が遅れるとか、対応がわるくなってしまうのです。

前項で挙げた大成建設は、2012年12月に出現した長い陽線を「兆し陽線」とみなして見事なタイミングで選定した例ですが、単なる「長い陽線」ならば随所に見られます。全体の流れをよく観察し、経験によって確立された感覚で、質の高い見極めが必要になります。落ち着いて継続的に観察する、つまりプロの目による「定点観測」を行えば、「よし、ここだ!」という確信ある判断が生まれるわけです。

確信があり、出動する理由が明確なので、その後の対応がうまくできる、自分の行動をコントロールできるのです。

林投資研究所が提唱する「うねり取り」の手法、『中源線建玉法』は、銘柄を絞って売買します。必然的に、落ち着いた姿勢の「定点観測」が可能になるのです。

日々の終値を折れ線チャートにして観察し、次の項で説明する中源線のロジックで、トレンドのスタートを検知しようと試みます。その結果として、上げトレンドへの飛び乗り、下げトレンドへの飛び乗りを行います。

「飛び乗り」という表現は、思いつきのダメな行動という意味で使うことが多いかもしれませんが、ポジション操作の具体策も含めて整っていれば、いろいろなアイデアが立派な「手法」として成立します。

今回は、中源線について、今までにないアプローチで考えていきますが、おさらいを兼ねて、まずは2つの実例で特徴的な判断を説明しましょう。

これは、8609岡三証券グループの中源線チャート、日々の終値を結んだ折れ線を、中源線の判断で色分けしたものです(赤=買い線、黒=売り線)。

2018年1月の高値から下げ始めたタイミングで陰転(買い→売り、赤→黒)しています。ポジションをひっくり返して、ドテン売りです。その後の7カ月間、陰湿なダラダラ下げをみせています。

途中、以前の安値水準に達した場面で、「下げ止まったかな?」と感じさせる小さな往来をみせました(赤い丸印)。4カ月の上げ、3カ月の下げ、小さく往来……「買いだ」との判断もあるでしょうが、結果は、さらに3カ月もジワッと下げて現在に至っています。早めに買っていたら、投げるタイミングを逸したまま苦しい状況に陥っていた可能性が高いといえます。

こんな推移に対して中源線は、次項で示すトレンド転換のサイン「N字」が見えないことから、「売りのまま」という判断を示しています。まあ、感覚的には「そろそろいいかも」ということで、チャート上にも赤い上向き矢印を入れましたが、中源線に従うと現在も満玉売りの状態です。

もうひとつは、4331テイクアンドギヴ・ニーズです。
ジワジワと水準を上げてきた銘柄で、2018年2月からの約6カ月では、かるく倍化していますね。その上げ下げを、中源線がいい感じで捉えています(3つの青い矢印)。

しかし直近は、ちょっとハデな展開をみせています。
7月に下げて陰転したのですが、8月に入ってガツンと切り返して陽転しています。結果として7月の陰転はダマシとなりましたが(その手前の買い線の利食いが確定)、最後に陽転したあと高値を取っています。

裁量ではついていけない買い転換ですが、中源線は機敏に反応します。
もちろん、このあと絵に描いたような上伸をみせるかどうかなんて、誰にもわかりません。「3月から上げている」「ここが二番天井、売り狙いだ!」という見方もあり、その通りになるかもしれませんが、見込み違いだったときの対処ができるかどうかが重要です。

中源線は、その対処も含めて“迷い”のない判断、“機敏”な行動が数式化されています。その骨子を、次の項で説明します。

N字をさがせ!

前項では、2銘柄を挙げて中源線の特徴的な対応をご覧に入れました。
その行動を支えるのが、中源線の基本ロジックです。

林投資研究所は、中源線のロジックを、書籍『新版 中源線建玉法』で、すべて公開しています。

でも、「どんなものだろう……」というくらいなら、廉価で販売している書籍『入門の入門 中源線投資法』をお読みください。

このフォローアップでは、番組と同じように、すぐに理解できる簡素な説明を行います。中源線の陰陽転換(トレンドが変わったという判断)は、ズバリ「N字」です。

中源線による3分割のポジション操作を含めて2つのパターンを示した図ですが、どちらも“買い転換”を判断する部分を青い四角で囲んであります。

中源線は、「逆行」に注目します。
売り線(黒)で推移してきたので、下げる動きが「順行」、上げる動きが「逆行」です。そして、逆行→順行→大きな逆行……この動きを捉えて「トレンド転換」と判断するのが、中源線の基本ロジックです。

そして、このジグザグ(逆行→順行→大きな逆行=上げ、下げ、大きな上げ)を「N字」と説明しているのです。とても単純ですが、3分割のポジション操作とセットになって、実践者にとって納得のいく行動パターンが示されます。

順行と逆行を繰り返すのは当然で、その繰り返しが上下どちら向きのトレンドを形成するかが、私たち投資家が関心を寄せる問題です。その“変わり目”を、「N字」によって判断するのです。

詳しい説明は今回、割愛しますが、左側の図は陽転後に逆行して「再転換」、3分割のうちの1回(1単位)買ったものを投げてドテン2単位売りにいくパターンです。右側の図は、陽転後に「転換の確度は高い」と判断する条件が整い、押し目で2回の増し玉をして満玉(3単位)になる、というパターンを示しています。

さて、この「N字」は、株価の動きというか市場の構造を素直に捉える発想だと思うのです。ちょっと上がった、間をおいて再び上がるときに上抜いた……いかにも“動意づいた”感じがするはずです。だったら、7月と8月に紹介した低位株投資の「FAI投資法」にも通用するのか──こんな考えが浮かんでも自然です。

ややこしい話のようですが、「中源線建玉法」「FAI投資法」は、どちらも林投資研究所が提唱している手法なので、同じ考え方があるのか、2つをうまく同時利用できないか、そんな興味をもつ投資家が多いようです。

次回、フォローアップ(2)で、この問題に切り込みます。

次回のフォローアップ(2)では、上記の通り、複数の観点を混在させる発想を検証しながら、「予測の精度」について考えます。お楽しみに!


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損も利益も単なる撤退

9月の放送は、あらためて中源線の話。
7月、8月とつづけて放送した「FAI投資法」との比較など、新しい着眼点で解説しました。

オンデマンド放送は、こちらをクリックしてご覧ください。

※番組フォローアップのブログは、9月8日(土)から3週連続でアップする予定です。

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「手仕舞い論」を、6回にわたって展開しました。
今回で7回目、とりあえず最後のまとめです。

見た映画がメチャおもしろくてもクソつまらなくても、終わったら映画館を出ます。
パーティーに参加して、楽しくても退屈でも、終わったら会場をあとにします。

この“当たり前”のことを、トレードに当てはめます。

トレードで損をすればガックリきます。
利益を取れば舞い上がります。
これらの感情を抜きにして「終わり」を考えてみよう、という提案です。

損か利益か……気持ちは大きくちがいます。
プラスマイナスで、大きな差があるわけです。

でも、「現金をふやす」ためにポジションを取っているだけなので、どちらにしても手仕舞いして“次のこと”を考えます。

その場ではムリでも、落ち着いた考えれば、こんなふうに割りきって淡々とまとめられるでしょう。

「まずい……」と感じたら早めに撤退します。
この「撤退」という単語を、利食いにも当てはめるのです。

「十分に利益を取った。これ以上戦わずに撤退」と。

1対1の戦いで、客観的な“勝ち負け”が決するものではないので、どちらにしても撤退、退くだけ、と考えるのです。

「損切りが重要だ」などと力を入れる必要はありません。
利食い手仕舞いのコーフンも抑えられます。

撤退しても、すぐに「建て直す」選択肢があるのです。

──「手仕舞い論」、ひとまず終わり──

売りと買いはセット

7月と8月の放送では、林投資研究所が30年以上つづけている低位株の手法「FAI投資法」を解説しました。

番組オンデマンド映像と、フォローアップのリンクは、こちらのページにまとめてあります。


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家で料理を手伝うと必ず、こうなります。
作る前 「助かるわ~」(笑顔)
食後 「後片づけしない」「キッチンがメッチャ汚れてる」(怒)

手仕舞いは、自分の意思で自分の活動を終わりにする行為なので、そもそも難しいのですが、ちょっとした準備不足が原因だったりします。

「現金をふやす」ために「ポジションを取る」のですから、どこかで区切りをつけて現金ポジションに戻るのですが、仕掛ける(新たにポジションを取る)ときに手仕舞いを想定しない……実践者の脳内で起こりがちなことです。

・仕事に出かけたら帰宅する
・離陸したら着陸する
・山に登ったら下山する

手仕舞いする基準は、今までに述べました。
「時間」「価格」が主ですが、「ワクワクしなくなった」「不安が台頭した」「本業が忙しくなった」「私生活が落ち着かない」といった理由で、積極的に手を引く発想も重要です。

ポジションをつくるのはカンタン、手仕舞いは難しい……

それなら「つくり直せばいい」と考えるべきです。
その前に、「売りと買いをセット」にすることです。

子どものころ、学校の先生が、
「家に帰るまでが遠足です」と言っていました。
「うるさいなぁ」なんて感じたものですが、実はとてもいいことを教えてくれていたのです。

『手仕舞いして現金に戻るまでがトレードです』

おかたづけ(手仕舞い)しやすいように、ちらかし(仕掛け)ましょう!

──「手仕舞い論」は、次号につづく──

(後記)
酷暑の疲れが蓄積されているはずです。
夏の後始末は、健康チェック。

時間+価格

7月と8月の放送では、林投資研究所が30年以上つづけている低位株の手法「FAI投資法」を解説しました。

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いつも「時間軸」を意識しろと説明しています。
チャートのタテ軸よりも、ヨコ軸に目を向けるべき、という意味です。

今回は、「価格」を主体にすべきケースを考えます。

約3カ月と想定していたのに、2週間で十分な評価益が生まれた──。
「勢いでさらに伸びる可能性」を考えつつも、“自分勝手な背伸び”を警戒します。
サッと手仕舞いすれば、想定を超える成功が確定するからです。

下げ狙いでカラ売りしたらグングン上昇した……現物買いのように「待っていよう」と先送りできないのに、「売ったばかりだから」という自分の都合で先送りするのが、“相場あるある”です。

カラ売りそのものは、自由意思で仕掛け・手仕舞いできるので、現物買いとリスクの度合いは同じですが、落とし穴はある、高値圏での出動は難易度が高い、といった認識は重要です。

さて、想定を大きく超える変動に対しては、日柄を無視した対応もあり得るということです。

利食いなら「調子がいいから攻める」という発想もアリですが、区切りをつける選択肢が重要な場面もあります。

見込み違いの場合、まずは撤退が正解のケースが多いでしょう。
極端な例ですが、少し仕掛けては切るを繰り返し、「1勝9敗で勝ちを獲得する」実践家もいるくらいです。

──「手仕舞い論」は、次号につづく──

(後記)
相場では、ちょっとしたことで苦悩します。
夏休みのおわり、友だちとの関係がよくない子どもが、2学期を想像してウツになるのも当然。
ご家族、周囲のお子さんの話を聞いてあげてください。

逃げるが勝ち

7月と8月の放送では、林投資研究所が30年以上つづけている低位株の手法「FAI投資法」を解説しました。

番組オンデマンド映像と、フォローアップのリンクは、こちらのページにまとめてあります。


本日発行のメールマガジン「1分間の相場実践知識」の内容を、そのまま掲載します。メール配信をご希望の場合、こちらのページからお申し込みください。

“ボヤきのノムさん”の異名をとる元プロ野球選手、監督の野村克也さん。
理想があって、理想通りには事が運ばないからボヤく、問題なし、とのこと。
でも、グチはだめ。理想がない状態だからだそうです。

HUFFPOST「あの人のことば」所載
→ 元記事はこちら

ポジションを取る前には、理想の結末を思い描きます。
「どうかなぁ……」で出動してはいけません。
常に、理想型を基準に対応を考えるのです。

損切りの難しさが話題になることもありますが、理想の結末が明確になっていれば本当はカンタンです。

延長で“許容範囲”も明確になり、「そこから外れたら切るだけ」と行動まで明確になるからです。

損切りが難しいのは、「その場だけの感情」を大切にするからでしょう。

冒頭で紹介した記事によると、野村克也さんは、30年間常に完全試合を狙い、1回も達成できなかったそうです。

理想が非常に高い。しかし現実はちがう・・・いつもボヤきながら、しかし「最善の策」を考える習慣が、一流を維持できた理由のひとつだと思います。

 

この玉を切らないと、1週間後にどうなるか……
1カ月後に、どう思うだろうか……

「おい、答えろよ!」と、厳しく自問自答する姿勢も必要です。

──「手仕舞い論」は、次号につづく──

8月6日放送のフォローアップ(3)
林 知之

王道の待ち伏せ

林投資研究所が30年以上にわたって提唱している低位株投資の手法、「FAI投資法」に関する2回目の放送です。

「下値不安が少ない」「上昇したときの率が大きい」といった長所の裏にある、低位株投資のマイナス面はなにか。そのマイナス面をどう埋めるのか──2018年8月6日のマーケット・スクランブルでは、実際に私たちが選定した銘柄、将来に注目している銘柄を挙げながら、本質となる部分に切り込んで解説しました。

映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第138回 東証1部24銘柄で“らくらく2倍”の低位株バスケット投資(プロが行うお宝銘柄発掘法、第2回)

マーケットはなんでもアリ

売買の“形式”を取り上げて、「これはキケン」「これはリスクが少ない」と評価することがあります。例えば、「信用取引、とくにカラ売りはキケン」とか、「先物の証拠金取引はキケン」といった考え方です。

しかし、一般的な評価について、多くの疑問があります。

「先物取引はキケン」といいますが、株価指数先物も商品先物も、価格の変動率は小さいのです。個別株のように、激しく上下することはありません。ただ、証拠金取引、つまり「丸代金のほんの一部を入れるだけでポジションが取れる」ので、張れるだけ張った結果、少しの変動で大ヤラレする可能性があります。

個別株の信用取引は、先物ほど高倍率ではありませんませんが、それでも資金の3倍強までポジションを取ることができます。

多くの人が「アブナイ」というのは、単に“張りすぎているだけ”なのです。

エンジンが大きくて馬力のある車はキケンですか?
いいえ、そんな車でおとなしく走れば、とても安全です。

給料日の直後や、財布に現金が多めに入っているときは、ムダづかいしやすい?
いえいえ、単にコントロールが効いていないだけです。

少しだけ、マーケット理論に触れます。
先物取引や信用取引は、マーケット参加者に、少ない資金でヘッジするチャンスを与えるために存在します。例えば、「現物をたくさん抱えていても、状況に応じて先物を売り建てすれば値下がりによる損失を軽減できる」とか、「5カ月後にまとまった資金が入るので株を買う予定だが、上がりそうだから今のうちに手当てしておきたい。信用取引で買っておこう」といった需要を想定しているのです。

ヘッジを含め、機敏な行動を手軽に取れるなら、より大きな資金を投じることができます。便利な仕組みを用意して、参加者を増やそうとするのがマーケットのあり方なのです。

この便利な仕組みを利用して、ものすごく積極的にリスクを取ることもできますし、そういった“投機筋”の参加をマーケットはむしろ歓迎しています。手堅くヘッジする参加者ばかりでは取引が偏り、ヘッジ注文の相手方が不足するからです。

どんな張り方をするか──すべては、参加者の自由意思です。

現物取引が最もキケン

前項で述べたように、マーケットの仕組みをどう利用するかは自分次第、キケンな度合いは一概にいえません。

「信用を使ったカラ売りがキケン」といわれますが、強烈に上がった銘柄とケンカするようにカラ売りを仕掛けたり、見込み違いでどんどん上伸する様子を見ながら放置すれば大ケガをするだけです。「現金を増やす目的でポジションを取る」「仕掛けも手仕舞いも、すべて自由意思」ということを考えれば、買いが安全でカラ売りがキケンなどという評価が、そもそも誤りだとわかります。

信用取引には、6カ月という期限があります。だから、「つい放置してしまうことがない」という理由から、現金があるのに、わざわざ信用取引で買う人もいます。ちゃんと計算して、自分の売買に合わせてポジションを管理するのがベストですが……。

こういった観点で考えると、「現物買い」こそキケンです。
いや、キケンだと決めつけるのは誤りですが、「現物だから戻りのを待っていられる」という考えがあるために、ポジションを放置しがちなのです。

東京電力の株について、「これ以上、手堅い銘柄はない」「国債を持っているのと同じだ」くらいに考えていた投資家も多かったはずですが、原発事故で暴落しました。JAL(日本航空)の株について、「バックが政府だからゼッタイ大丈夫」と決めて買っていた投資家は、再生の過程で価値がゼロになってショックを受けました。

不測の事態というリスクを抱えながら、資金を寝かしてしまうことは避けるべきです。大切な資金を投じる以上、戦略的な理由があるべきです。

初動で乗るためのテクニック

7月と8月の番組は、林投資研究所が30年以上つづけている低位株投資の手法「FAI投資法」のエッセンスを紹介しました。

「誰でも実践しやすい」投資法と説明している理由は、実用的な説明が「29項目のルール」として定められているからです。また、いくつかの「付則」もあります。その付則のひとつは、以下のような資金管理の決め事です。

◆資金の2割以上は常に余裕をもつ

レバレッジを効かせる(資金を超えるサイズのポジションを取る)どころか、「2割余らせろ」と書いてあります。「常に」なので、分散で買っていって(最高で24銘柄)、「よし、これはチャンスだ。もっと買おう」となったときでも、絶対に2割は余らせなければなりません。すると、ふだんは「半分だけ買う」くらいのイメージが必要です。

さらに、いわゆる“時間切れ”のルールもありましたね。

◆買ってから24カ月以上経過したものはいったん手仕舞いし、再検討する

これら2つの資金管理ルールによって、限られた運用資金が底をつくことなく、適正なゆとりを維持し続けることになります。「給料日前でカネがない」なんてことにならず、感覚だけで好きなようにカネを使っても適当な金額が財布に残る──そんなバランス良好な状態が生まれます。

「誰でも実践しやすい」投資法と述べましたが、「現物買いだから安全」とか「レバレッジをかけないから手堅い」なんて無責任な言葉を投げるつもりはありません。対象とする銘柄の値動き特性、手がけようと努めるタイミング、分散の方法、資金管理の仕方……等々、多くの項目がバランスよくまとまっているから、「実践しやすい」「マネしやすい」のです。

そして、そのバランス感覚を維持することによって、肝心の売買、「初動で乗る」という具体的な行動が成立すると考えてください。

上のチャートは再び、1801大成建設の月足です。
安値の小動きから1本、非常に目立つ陽線をみせました。これが「兆し陽線」です。
十字足を挟んでいますが、ルールの文言通り「陰線2本押し」のあと本格的な上昇に移りました。こんなタイミングを、月足観察で見つけられたら快感です。

でも、この兆し陽線を見つけようと必死になるだけではダメです。
多くの月足を見て慣れること、つまり“心のゆとり”が求められます。

また、資金管理にも“ゆとり”が必要です。
買い集めたものが、みんなダメ玉で、毎日気が気ではない……そんな状態では、月足観察も必死すぎてうまくいきません。「取り返そう」という気持ちが前面に出てしまい、売買の行動もフワフワ、ソワソワでしょう。

大成建設のように、実際に大きく上昇した銘柄のチャートを、あとから見ていると、「利益を上げるのはカンタンだ」と感じます。とくに、わかりやすい動き、典型的な動きだから、なおさらです。

ここで、今の時点で「兆し陽線ではないだろうか」という銘柄を紹介します。

1つめは1805飛島建設、2つめは1813不動テトラの月足チャートです。
最後のところでクッと上に向いていますが、大成建設ほどクッキリハッキリした長大陽線ではありません。でも、「兆し陽線ではないか」「ここから相場がはじまるかも」と期待します。

もちろん、実践者によっては、「出損ないで終わる可能性が大きい」と否定的な見解をもつでしょう。

また、大成建設は代表的なオリンピック関連だし、これら2つは超出遅れだし……という具合に、材料を並べ始めるとキリがなくなります。そもそも、大成建設が動き始めた2012年末とは、さまざまな点で環境が異なります。

常に、こうした不安定な状況で確固たる判断を求められるのが相場、トレードという行為です。最後に「えいやっ」と行動するしかないのですが、そのためには、いざ行動する際に難しいことを考えるのではなく、前述した資金管理を含めて資金全体の動かし方を計画的かつ丁寧にすることです。

切羽詰まった状態から、起死回生の一手を打つべくカッコよく当てる? それは、映画やドラマの世界です。
現実では、こうしたチョー地味な対応で“ゆとり”をもつことこそが、大切な「技術」だと信じます。

厳選する姿勢

林投資研究所が主宰する、低位株投資の研究会「FAIクラブ」(※)では、売買は常に個人で行うのが鉄則です。しかし、銘柄は、メンバーで繰り返し議論して選定しています。

※FAIクラブ
林投資研究所が主宰する、低位株投資の研究会。1984年の発足いらい、30年以上活動をつづけ、「FAI投資法」で手がける銘柄を毎月の例会で議論して決定し、個人投資家向けの機関誌『研究部会報』に掲載している。

ここで、FAIクラブが銘柄を選定する手順を、カンタンに説明しましょう。

まずは、ザックリと、ほぼ条件に合う銘柄を見つけます。
毎月の例会で検討し、「これはウォッチしておこう」と決めたら、「注意銘柄」に選びます。つまり、実際に手がける銘柄の“候補”です。

この、候補として選んだ「注意銘柄」を毎月の例会で継続的に観察し、「そろそろ、いけるかも」と判断した時点で買いの対象、「買い銘柄」に選定します。

ウォッチしているうちに、ピューッと上がってしまうこともあります。
しかし、それを嫌うあまり、雑な選定になるのはサイアクなので、丁寧に考えます。

以下に示す2銘柄は現在、「注意銘柄」としてウォッチしているものです。

これは、3205ダイドーリミテッド、昔の大同毛織です。
老舗企業で十分な資産があるのですが、最近は業績が思わしくありません。十分に下げていますが、しっかり底固めをしている雰囲気は弱いと感じます。

2つめは、8166タカキューです。
業績は横ばいですが、利益が小さくて“さえない”印象です。現時点で「株主になってください」と頼まれたことを想像してみると、それほどの不安はありません。しかし、この先、業績が落ち込む可能性は否めませんし、少なくとも現時点では、株式市場で人気化すると感じられません。

このように、とくに深い企業分析などししなくても、月足とともに業績・財務データの推移を丁寧に見ることで、売り買いの行動を決めることができます。ヘンな迷いが生じないように注意し、「逃してもいいから、精度の高い選定を実現したい」と考えて月足を観察しているのです。

「手法」を固めるプロの思考

株式市場では、プロもアマも同じ土俵で勝負します。
初心者だからといって、ハンディなどもらえません。
ただし、誰にでも、「大化け銘柄の上げ直前で買って天井圏で売り抜ける」みたいな大成功の可能性があります。

とはいえ、安定した結果を出せるかどうかを考えると、プロはそのための要素をひとつひとつ丁寧に積み上げているといえます。

継続的に解説している「中源線建玉法」と、7月および8月の番組で紹介した「FAI投資法」は、アプローチが全くちがいます。完全に相容れない、別々の手法です。

でも、「手法」として成立している以上、トレードの原則を守っています。プロが大切にしていることを、多くの共通点として見出すことができるのです。箇条書きで示します。

どちらも、「ほぼすべての情報が株価に反映されている」という思想をベースに、チャートによる判断を重視します。株価を「総合的な人気によるもの」と捉えるのが、大きな特徴です。

あとは、多くの投資家が想像できないレベルで、実に地味なことを考え、地味なまま実行に移そうと努めています。

箇条書きの2番目には、「想定」と「現実」のギャップ、と示しました。
どんなに地味な姿勢でも、相場を張る以上は「期待」が膨らみます。また、売買する際の「モデル」としては、理想的な展開を想定します。

だから、現実とのギャップに悩まされる状態を、落ち着いて受け止めなければなりません。

損を被って「取り返そう」と考えるのは当たり前ですが、そこで背伸びした「想定」をしてしまうと、大ケガのもと。逆に、現実を見すぎて「想定」を縮小しすぎると、不要なネガティブ思考に傾き、これまたバランスのわるいことになります。

さて、プロと同じ土俵で勝負するには、プロと同じレベルのことをするしかないのですが、時間的な制約のある一般的な個人投資家にとって完全なコピーは物理的にムリです。でも、資金を抑えめにしたり、売買頻度を低めにすることで、限定的に高いレベルのトレードが実現します。

「いざやるときはプロと同じ」ということです。

「FAI投資法」を説明する中で、いくつか具体的な銘柄を挙げましたが、それらについて「上か下か」と目先の結果を追うのではなく、確固たる「自分のスタイル」を固める、より高めるためのヒントとして活用してほしいと思います。

「マネしやすいプロの投資法」として、資料や教科書もそろっています。

これで、8月放送のフォローアップは終了です。
次回の放送は9月3日(月)の夜8時から生放送、中源線建玉法をテーマにした番組に戻る予定です。
お楽しみに!


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