「予測の精度」を決するもの
株価変動のトレンドを捉えるポイントは、まさに千差万別ですが、2つの共通点を挙げることができます。(1)具体的なポジション操作とのセットで意味をなす、(2)取れる場面と取れない場面がある……この原則から逃れることはできません。
その中で中源線は、ひとつのロジック(判断基準)で「うねり」に対応すると同時に「大きなトレンド」も取りにいきます。では、そんな特長の裏にある弱みとは?
2018年9月の放送は、久しぶりに中源線の解説。あらためて中源線の“キモ”となる基本ロジックを別の角度から説明し、「うねりを制する」ための実践的なアイデアを紹介しました。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第140回 うねり取りを制す ~トレードに必要なブレない土台~)

混在の文化に抗え!
9月の番組には、裏のテーマがありました。
「基本に帰ろう」です。
情報を増やした結果、混乱することがあります。
トレードは、そんなワナにはまりやすいゲームだと思うのです。
オトナとして、刻一刻と変化するマーケットに対応するためには、広い視野を保ちたいものです。しかし、売り買いの決断に直結する部分は、素朴がいちばんです。
例えばチャート。「株価の推移をチャートという形にした時点で、けっこう積極的な加工が施されている」と思うのです。だから、移動平均線を重ねたり、トレンドラインを引いたり、ローソク足の組み合わせ(線組み=せんぐみ)ばかり考えたり……こういった突っ込んだ観察は、いきすぎないように注意すべきです。
以下に、複数の価値判断が混ざるキケンな例を挙げますが、おそらく反論があるでしょう。例を示したあとに、私が気にするポイントを説明します。
複数の移動平均線を使う
「●●日線を上回っている」「しかし、まだ●●日線の下にいる」
行動をピシッと決めることが求められるのに、永遠に答えの出ない「迷い」の世界に踏み込んでしまいます。
複数種類のチャートを使う
「日足ではいい形になったが、週足ではよくない」
日足、週足、月足といった、ヨコ軸の設定が異なるチャートは、基本的に、同時に使うことができません。地図ならば、大きな地図で高速道路と国道をチェック、次に街中の細かい道をチェック、という順序で道を確認しますが、地図は単に縮尺が異なるだけだから、同時に使うことができるのです。
チャートを描くために、日、週、月と、便宜的に区切りを設定しています。地図の縮尺のちがいとは異質です。また、ローソク足の“白抜き”や“黒塗り”、高値・安値を示す“ヒゲ”など、本来の価格情報にはないものをつくり出しています。
値動き以外の情報を書き込む
「利上げ」とか「選挙」など、重要とされる外部要因をチャートに書き込むケースが見受けられますが、テクニカル分析の基本は「すべての材料が株価に反映されている」と考えることです。チャートをそのまま素直に観察するべきです。
また、自分の売買を記入する人がいます。「●月●日、1,500株買い」なんて個人的な情報は、チャート分析を行ううえでは、ただのノイズです。
特定の参加者の都合や思惑を排除するのが、マーケットの第一の機能です。
「おそらく反論があるでしょう」と述べたのは、「いや、その情報は外したくない」と感じるものが、誰にでもひとつやふたつあるからです。
私たち現代人が触れているものは、昔に比べて相当に複雑です。技術革新を背景に、あらゆるものが進歩しているからです。例えばスマホによって、「便利」「お手軽」「多機能」が当たり前のものになっています。そこに、相場の世界に元来ある“要素を重ねて精度を上げよう”という発想があれば、自然といきすぎてしまうものです。
多くの場合、「混ぜるなキケン!」が合い言葉です。

中源線とFAIを混ぜる道
混ぜるなキケンと述べましたが、7月と8月で紹介した低位株投資の手法「FAI投資法」も、今回触れているうねり取りを機械的判断で行う中源線建玉法も、林投資研究所のトレード思想に合致したものなので、うまく一緒にできないか、一部の要素くらい持ち込めるのではないか、といった発想が生まれるようです。
この疑問に、ひとつの角度から答えてみます。
低位株の選別投資を行う「FAI投資法」は、長期のトレンドに着目します。上げ始めを捉える狙いは、「少なくとも2~3年つづく」上げトレンドに乗るためです。
それに対して「中源線建玉法」は、「3カ月または6カ月の波」に乗ろうとします。
両者は、根本的に「時間軸」が異なるのですが、中源線における、安値から上げトレンドに移行する際の「N字」(フォローアップ第1回)が、月足にも現れるかどうかを考えてみます。
では、実際に私たちが「FAI投資法」で選定して成功した事例、つまり安値で選定して期待通りに暴騰した銘柄の月足チャートを並べるので、安値から立ち上がる部分に注目してください(赤いラインは、私たちが買い選定したタイミングです)。
どうでしょうか。「N字」があるような、ないような……「上向きの動きがあり、さらに上向きの動きがある」というのは、ごく当たり前に「上昇トレンドのスタート」を感じさせる流れとして多くの予測法に共通するアイデアですが、単純に流用することは難しいのです。

「売り」と「買い」だけだ
「相場は売りと買いだけ、実にシンプルだ」といわれます。
これを聞いて「そうだよなあ」と感じながらも、つい複雑な思考から離れられません。理由は、前述した通りです。
思いきりシンプルに、「核」となる部分だけを考えてみましょう。
「上がる」と思う → 買う
「下がる」と思う → 売る(カラ売りを仕掛ける)
行動はこの2つだけなのですが、ビミョーな状況において「迷うけど、チャンスかもしれない」「取り損なったらイヤだ」と考えて難しくなります。基本に帰って「迷うなら手を出さない」とキッパリ分類するのが実践的な考え方です。いわゆる「確信」があるときだけ、ポジションを取るのです。
では、ポジションを取ったあとの行動は?
「思惑通りだ」 → ポジションを維持する
「見込み違いだ」 → ポジションを落として撤退
やはり、たった2つです。「うぅ~ん、ビミョーだ……」と迷うケースが多々ありますが、基本に照らし合わせたら「迷ったら切る」という答えが出ます。
これら「基本」となるものに、アクセサリーをつけて仕上げるのですが、落とし穴にはまってアクセサリーを増やしすぎてしまうのです。
下の図を見てください。同じ値動きに対して、2つの異なる戦略がどのような結果を生むかを考えたイメージ図です。

上は、「逆張りでうねりを取る」狙いの売買です。往来の高値で売り、安値で買い、また高値で売りとドテンを繰り返してコツコツ利益を重ねます。しかし、往来から上にブレイクしたときに売りポジションがかつがれます。仕方がないので、踏んで(カラ売りの損切り手仕舞い)休むことにします。
下は、最初から「ブレイクアウト」を狙う売買です。最初の波は見送り、2つめの波で上抜けを狙って買いますが、下げたところで投げます。こんどは下抜けと考えて売りを仕掛けますが、往来の安値になったようなので踏みます。3回目に買いついたら上抜けに乗れた、「今までの損を取り返せそうだ」という状況になりました。
それぞれの狙いに、取れる場面と取れない場面がある、ということです。
パッと戦略を切り替えたりできませんし、往来でもブレイクアウトでも取れる戦略なんて、基本的には存在しません。
マーケットの競争で勝つためには「専門化」が必要です。
だから、取れる場面と取れない場面があるのが当然です。
これを補うのは、手仕舞いのタイミングしかありません。
多数の参加者が、等しい条件で争うのがマーケットという場です。だから予測の当たり外れは必然で、「予測の的中率」をムリに求めるのはゼッタイに誤りなのです。

分割こそがトレードの技術
予測の的中率を上げずに利益を増やすには、見込み違いの損を小さく抑えると同時に、思惑通りだったときの利益を伸ばす必要があります。「損小利大」と呼ばれる、“結果のコントロール”です。
これを可能にする必須の要素が、「数量の調整」です。
といっても、未来を事前に知ることはできないので、分割のポジション操作を行うことで、「ダメなときは数量が少ないうちに損切りを決断できる」「流れに乗れたときは数量が多くなっている」状態をつくり出します。これらは、計算上で“結果をコントロール”することですが、分割によってメンタル面もラクになり、実行がより確実になるのです。
「核心」があるときだけ出動するのですが、いきなり予定の数量を建てず、少しずつ増やすようにします。日柄の間隔は戦略次第ですが、5回の等分割の場合、2回目のあとで「これは見込み違いかな」と判断した場合、数量は予定の4割かつ時期が早いので損失額は抑えられ、精神的にも損切りの実行が容易です。
「中源線建玉法」は、売買を機械的に判断しますが、わかりやすく受け入れやすい、実用性の高い3回の等分割がルール化されているのです。
左の図では、フォローアップ(1)で示した「N字」によって陽転、3分割のうちの1単位を買いましたが、直後に逆行したことで「下向きトレンドがつづいていた」と判断を覆します。そして、1単位を投げると同時に、2単位を売り建てします。中源線で「再転換」と呼ぶルールですが、こんな機敏かつ臨機応変な対応が、利用者の感覚と一致します。
右の図では、やはり「N字」によって陽転しますが、その後の経過から「この転換はホンモノのようだ」と判断しています(この条件もルール化されています)。こうして「転換の確度は高い」と判断したあと、やはり分割で1単位ずつ増やしていきます。
値運びを落ち着いた観察すると同時に、「損小利大」を実現する工夫が盛り込まれているのです。

うねりも大トレンドも取る中源線
逆張り戦略とブレイクアウト戦略は両立しない──すでに述べたことですが、中源線の最大の特長は、「うねり」も「大きなトレンド」もひとつのロジック(判断基準)で捉えることができる点です。
最大の特長があれば、その裏には最大の弱みが存在します。中源線の弱みは、「N字」によって、うねりもトレンドも捉える一方で、中途半端は往来で機能しないことです。
しかし、「小さめの波も取りたい」「大きなトレンドも逃したくない」という、ありがちな欲を追求する道がひらけているので、多くの実践家が高く評価します。この部分を、実際の中源線チャートで確認してみましょう。
3つとも同じ銘柄、7717ブイ・テクノロジーですが、時期が違います。
1枚目は2015年3月から2016年3月までで、そこそこの幅のうねりを上手に捉えていることがわかります。ただ、最後のほうで残念なダマシがつづいています。
2枚目のチャートは、2015年7月から2016年7月ですが、後半の大暴騰をうまく捉えていることがわかります。「想定内の上げ下げで利益」と「連敗」前半部分が、1枚目のチャートと重なっているわけですが、「うねりを取った」「ドカンも取った」「中途半端な往来で機能しなかった」と、中源線の働きがよくわかるチャートです。
3枚目は、直近1年間のチャートです。2枚目の「ドカン」で大きく居所を変えたブイ・テクノロジーですが、その時の高値は約14,000円でした。ところが直近、2018年3月の高値は30,000円を超えています。そして、不可避のダマシをはさみながらも、大きな波を捉えている様子がわかります。
さて、3枚のチャートから、多くのことを読み取ることができます。
- 株価は専門家も予想できない動きをみせる
- 値ごろで判断するとキケン
- 中源線は居所が変わってもついていく
- 予測の当たり外れは避けられない
- 分割売買による“結果のコントロール”が不可欠
- 理屈ではなく、単純な基礎を大切にすることこそ技術
これら3枚のチャートだけでも、本1冊分の話に発展していくので、カンタンにまとめましたが、「売りと買いしかない」のに深いのがトレードという行為です。情報の整理方法、それを支える「手法」の存在、そして自分自身のメンタル面を、バランスよく整えることが求められます。
こういった意味で、「中源線建玉法」は、お手本としての完成度が非常に高いと考えています。

次回のフォローアップ(3)では、裏テーマの「基本に帰ろう」に沿って、5倍、10倍と激しく動く株価を、どのように認識すべきか、どのように行動すべきか、を考えます。お楽しみに!
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詳しい内容はこちら(内容のチラ読みもできます)
※「研究部会報」および「中源線シグナル配信」は、林投資研究所が行っている投資助言サービスです。契約にあたっては、林投資研究所が交付する「契約締結前の書面」をよくお読みください。





















9月の放送は、あらためて中源線の話。
7月と8月の放送では、林投資研究所が30年以上つづけている低位株の手法「FAI投資法」を解説しました。













