スキャルピングの落とし穴 | 株式投資「虎の穴」

売買の分類には、いろいろな観点があります。
狙う銘柄の値動き特性だったり、株価の位置だったり、ファンダメンタルによる分類だったり……。

そのなかで、小幅狙いの超短期トレードを「スキャルピング」と呼びます。

スキャルピングとは、もともと「頭の皮をはぐ」といった意味で、アメリカ先住民が戦いのあと敗者の頭の皮をはいだという歴史が一緒に紹介されたりしますが、私は詳しく知りません。

とにかく、「1カイ2ヤリ」ともいわれる、小幅の利益を数多く取ろうとする売買です。

でも、こうした“小すくい”の売買を私はおすすめしません
多くの人が一度は憧れるのですが、ほとんどの人は結果を出せないでしょう。

まず、「小幅でいいのか」という疑問を述べます。
買った銘柄が上がってきたとき、自分だけの妄想で「○○円まで!」なんて気合いを入れても、マーケットが応えてくれる可能性はゼロです。

 

だから、ねばったとしても、上げの勢いがあるうちに売り逃げるのが正解で、「手堅い利食い手仕舞い」などといわれます。

俗にいう、「アタマとシッポはくれてやれ」の精神ですね。

でも、最初から小幅の狙いだと、利益に上限を設けることになります。
もちろん、それで回数をこなそうというのがスキャルピングなのですが……。

ひとつの例ですが、「寄付で必ず買う」「買ったら即、2円上で売り指し値をする」という売買ルールを想像してみてください。よほど一方通行の下げでないかぎり、「ザラ場のブレで2円幅を取るくらい可能だろう」と感じますが、成功したとしても2円幅の利益しか得られないのです。

もし9勝1敗の成績、つまり勝率90%が実現しても、1回の負けで18円幅負けただけで利益はゼロ、手数料と手間を損する結果です。

「これはダメだ」とあきらめて損切りして10円幅ヤラレたら、5回分の利益を飛ばします。

トータルでプラスにするには、いろいろと工夫が必要と考えることができます。

また、プラスになったとしても、リスクを負って手間をかけて取り組むだけの十分な価値が生まれるかどうかは疑問です。

スキャルピングが性に合う人もいるかもしれませんが、ほとんどの人はうまくできないと思うのです。

万人に当てはまる“基本”を考えてみます。
マーケットでは多数の参加者が競争しているのですから、初心者からプロまで、いわゆる予測の的中率は50%前後におさまるでしょう。つまり、勝ったり負けたり。

だから、負けたときの損失を抑え、勝ったときの利益を伸ばすように工夫するのが王道です。
「損小利大」と呼ばれる考え方ですね。

小幅利食いは、損小利大の可能性を消す行動です。
相当な回数をこなすことで成立する、けっこう特殊な売買なのです。
一般的には、小幅利食いが手堅い、とはいえないのです。

もうひとつ、重要な課題があります。
一定期間のトレンドを狙う場合、株式市場に十分な厚みがある(多量の売り買いがある)ことが、売り買いを助けてくれます。1円や2円不利な価格で売買しても、問題にならないということです。

でも、スキャルピングを試みる場合、人間の目では確認できない超高速で注文を出すプログラム売買と正面から対峙しなければなりません。凄腕のデイトレーダーも多数、ガチンコ勝負の相手です。

翌日に持ち越さないから、海外市況の変動をくらうリスクがない──こう言って超短期売買を肯定する向きもありますが、マーケット参加者全員が享受できるメリットで、自分だけが競争で有利になるなんて理屈はありません。

もし取り組んでみるのなら、こうした理論を落ち着いて考え、自分の個性や感性で「勝ち方」を見つけられるかどうか、ヘンな妄想を捨てて戦略を練ることが必要です。
 

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