・AIブームはバブルか? | 矢口新

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☆AIブームはバブルか?

AIが米経済の中心になりつつある。例えば、2025年9月までの投資適格社債市場でのAI関連の資金調達額が1.2兆ドルを超え、その比率が14.0%と、長年不動の1位だった米銀の11.7%を抜いた。米国の民間設備投資額は増えてはいるものの、AI関連を除くとマイナスなのだ。

そのAIブームの中心にいるのがオープンAIで、そのデータセンターや、半導体、クラウドサービス提供などを通じて、エヌビディアやAMD、インテル、オラクル、マイクロソフト、xAI、ブロードコム、コアウィーブ、ソフトバンクグループなどを巻き込んでの相互循環投資額は現時点で総額1.3兆ドル(153.85円で200兆円を超える)にも達している。これらの投資はここ数カ月間で矢継ぎ早に発表された。

一方、オープンAIは赤字企業で、その損失額は数十億ドルだとも言われている。すべては、AIの将来性に賭けているのだ。

シティは、AI関連の売上高2025年の430億ドルが、今後5年間毎年80%近く拡大し、30年には7800億ドルに達すると予測している。

もっとも、その収益化にはAIモデルの効率化が不可避で、利用トークンの需要増加が、コスト減と相まって、経済的利益に繋がる必要があるとされている。

利用トークンとはAIの利用単位で、グーグルによれば、2024年5月に月間9兆7000億トークンを処理していたのが、25年5月には480兆以上、9月には1300兆と、1年半で134倍に膨れ上がっている。

AIモデルの向上、効率化は著しい。ごく最近まで物足りなく感じていたものが、日毎に成長し、満足の度合いを高めている。メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ氏によれば、「ここ数カ月間、AIシステムが自らを改善する兆しが見え始めた」というので、加速度的な成長が視野に入ってきた。

また、データセンターは世界中で建設中で、稼働を開始すれば、コンピューティング能力を引き上げ、AIの訓練や利用のコストを引き下げることになる。


一方、AIブームは新たな懸念をも生んでいる。

まず、懸念だけに終わらないのが、データセンターによる電力需要だ。AIデータセンターだけでなく、クラウドコンピューティング、暗号資産、産業需要、電化トレンドなどのペース拡大に対応するためには、米国は年間約80ギガワットの新規発電容量を追加する必要があるとされている。

AIデータセンターは独自の発電所を建設中で、化石燃料は温暖化に繋がるため、原発の再稼働や、新規建設を進める企業も多い。原発の安全性や、使用済み核燃料の処理問題が解決したわけではないが、そうした懸念よりも、目先の電力不足や停電リスクへの対処を優先したもので、いわばリスクの先送りを選択したのだ。

それでも、現在建設中の容量はすべて合わせて65ギガワットに足りない。その不足分15ギガワットは、夏の最も暑い時期のマンハッタン2つ分の電力に相当するという。AIデータセンターのように自前の発電所を持たないものは、停電リスクにさらされることになる。

また、話題となっている懸念が知的労働者の仕事を奪うことだ。例えば、AI俳優のティリー・ノーウッドは、英国の俳優組合から仕事を奪うとして訴えられた。

一方、GPSへの依存が空間記憶を弱めるように、批判的思考を衰えさせる可能性も指摘されている。また、AIはどんな問題にでも即答してくれるので、かえって多くの知識が失われる可能性も取りざたされている。

AIシステムが自らを改善する兆しがさらに進展し、自己増殖を始めるようになれば、いずれ自己保存の行為が「人間の死を引き起こす行為」となる可能性も出てくるという。

私見では、精神世界のみで生きるAIが、人間の肉体の生死を望む必然性がないので、この可能性に関しては否定的だ。


最も大きな懸念は人間がもたらすものではないか。将来的には人間がAIを使って他の人間を支配する懸念。もっと身近な懸念は、停電、電気代の値上がり、そして、AI関連の過剰な循環投資バブルの破裂だ。

オープンAIは非上場だが、売上に対する企業価値は38倍になっている。ドットコムバブルの代表銘柄シスコシステムズは最大で31倍強まで買われた。また、AI関連の資金供与はドットコムバブルの14倍にもなっている。

同社が収益化に失敗すれば、高い債務水準でお互いに資金を注ぎ込む循環的な性質は連鎖破綻を生む。仮に、数社が独占的に利益を上げても、利益が極度に集中することで、多くの競合企業が取り残される可能性がある。

また、AIブームの収益化は消費者の支払いを意味するので、膨大なコストに見合う付加価値が創造できなければ、ゼロサムか、他の産業を圧迫することにもなる。オープンAIはチャットGPTに性的会話を解禁させたが、そのような形の収益化では、大きな付加価値が生まれるとは思えないのだ。 

 

 

 

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