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☆81兆円のSPACを買った石破政権

先週、日米政府は4カ月半にわたった日米関税交渉を巡る合意文書に署名した。

大統領令及び、覚書・共同声明の合意内容を、日経新聞が一覧にまとめた順に箇条書きにする。(内)は同紙が挙げた今後の焦点。

1、自動車関税:
計15%に下げ。(投資不調なら再引き上げの可能性)。

2、相互関税:
15%で軽減措置も。8月7日に遡って適用。(投資不調なら再引き上げの可能性)。

3、半導体関税:
記載なし。日本に最恵国待遇。(発動時に最恵国待遇が適用されるか)。

4、農産品購入:
年80億ドル規模を購入。(いつから、いつに比べて増やすかなど不明確)。

5、コメ購入:
既存制度内で迅速に75%増加。(いつから、いつに比べて増やすかなど不明確)。

6、対米投資:
日本政府が5500億ドルを投資。投資対象は米大統領が選定。日本側が資金を出さなければ関税再引き上げも。(省略)。


ここで対米投資の今後の焦点を省略したのは、「投資対象は米大統領が選定。日本側が資金を出さなければ関税再引き上げも」が合意内容の全てであって、ここには日本側の解釈の余地がないからだ。

この部分に限らず、日経新聞が挙げる今後の焦点からは、全ての点で米側に主導権を渡してしまったことが伺われる。合意前に石破首相は「なめられてたまるか」と発言したが、実態を見るとその発言が同氏の「勇気のすべて」だったようだ。それほどまでに一方的になめられた合意だからだ。

現時点で81兆円、160円だと88兆円、円安が進めばそれ以上にもなる投資はトランプ氏の任期が終わる2029年1月19日までに実施する。投資先は米商務長官をトップに、「米国側のみで構成する投資委員会」が選定、トランプ氏が最終決断を下す。

これは投資先・投資方法などは不明なまま資金だけを白紙委任で提供するSPAC方式だと言える。SPACはカネ余りで何が何でも投資したい時には盛り上がるが、余りにも運用者有利、投資家不利なファンド形式なので、現在は下火だ。

80兆円を超える金額はピンと来ないだろうが、問題視されていた当時の日本の貿易黒字額でも年間14兆円を超えたことが一度もない。エネルギー価格が高騰し過去最大となった2022年の貿易赤字額が20兆円だったことを鑑みれば、とんでもない金額だということが分かる。この資金を円で調達してドルで運用すれば円安となり、円建ての投資額が膨れ上がる。ドルで借金して投資すれば、相応の利払い負担を迫られることになる。

また、SPACでは、運用者が最大利益の50%を取る場合があったが、7月の日米合意で米側は「投資利益の90%を米国が得る」と説明していた。今回の覚書では融資資金などの元利金の返済が終わるまではプロジェクトから生まれる利益は日米が半々で分け合うと整理された。

日本側が資金をどう調達するのか、覚書には記載がないとされるが、これは米側にとっては関心外のことだからだ。融資資金で調達すれば米側の取り分は期間中50%、それが終われば最大90%となる見込みで、日本側が約束さえ守ればいいからだ。

日本政府側は「米国で発電所をつくるなら、日本企業がつくったものが納入される。半導体工場なら、日本製の半導体製造装置や部品が使われる」と例示するとあるが、「米国側のみで構成する投資委員会」がそうしたことを考慮するとは限らない。考慮して貰いたいのならば、合意書に明記しておく必要があったのだ。

覚書は「日米両国間の行政上の了解」と位置づけられ、法的拘束力を持たないとされている。つまり、「日本人は嘘つき」だと認め、日米関係が決定的に決裂、敵対する覚悟がある場合にだけ、反故することも可能だという意味だ。

今回の合意はトランプ大統領個人に自由に使える5500億ドルを委ねたことになり、対外対内政治においても絶大な権限を与えたことになる。日本の歴代の首相には、明らかに対米追随と見られる人物が数多くいたが、石破首相はその誰にも負けないほどの対米追随であることが判明した。


トランプ氏は上海協力機構首脳会議を踏まえ、SNSで「インドとロシアを、最も深く、最も暗い、中国に奪われたようだ。長く繁栄する未来を彼らが共にするように!」と述べ、インドが米陣営から離反したことを匂わせた。

また、同じ西側諸国でも、欧州各国はパレスチナ国家の承認や、ウクライナ軍支援でも、米路線とは一線を画した路線を歩み始めている。孤立しつつある米国にとって、あくまでも対米追随である日本はますます得難い存在となってきた。とはいえ、日本にとって残念なのは、トランプ政権は目先の利益を提供できる相手としか付き合わないことだ。つまり、付き合っている限り、むしゃぶりとられてしまう。


今回の日米合意は重い。あるいは、石破氏は誰もが担ぎ切れない重荷を背負い続けるために、この巨額SPACを購入したのかも知れないとも考えたが、7日夕刻に、同氏は首相退任を発表した。日本の政治家にとって責任という文字はあまりにも軽い。

次期首相が誰になるのかは知らないが、誰にとっても今回の日米合意は重い。米国に巨額の資金を貢ぎ続けるか、法的拘束力を持たないことを盾に、米国と決別するかの選択を迫られるからだ。とはいえ、これまでの首相たちがそうであったように、何とかなると思える人が次期首相になるのだろう。

 

 


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