複数の個別銘柄を保有した状態で、多くの投資家は急落を警戒します。
株式市場では、「○○ショック」と呼ばれる突発的な下げがあり得るからです。
「暴落時の対応は?」と問われ、「日経平均を売り建てする」と答える投資家も多いようです。
先物でなくても、日経平均に連動するETF(上場投信)やCFD(差金決済取引)を利用すれば実行はカンタンです。手持ちの現物はそのままに別途、日経平均が下がると利益が出るポジションをつくればいいのです。
でも、こういった方法が本当に値下がりをヘッジできる(損失をカバーできる)のでしょうか?
「現物の保有」に「指数の売り建て」を追加した場合、以下に挙げるような問題が気になります。
- 機能するとはかぎらない
保有銘柄とヘッジの指数売買が連動するのか? - ヘタをすれば「股裂き」になる
保有銘柄は下落、売り建てした指数は上昇……こんなオチも“あるある” - ほぐすのに苦労する
両建ては予想外に複雑……どうやって外していくの?
利食いの両建てでも、ほぐすときに苦労しますよ - 思いつきでやっていませんか?
上記のようなことを真剣に考えた戦略ではなく、下げに遭遇して、慌てて思いついた対応であることが多いようです……要注意!
せっかく買った銘柄を手放したくない、個別銘柄を細かく動かすのは手間だ、ちょっとカッコいいことをやってみたい──こんな心理が誰にでもあるのですが、もっとシンプルに考えてみてはどうかというのが、私からの提案です。
前述した「ポジションをほぐすのに苦労する」という部分には、疑問をもつ読者もいると思います。
まずは、単純な手仕舞いを考えてください。
- 買って上がったから手仕舞いする(利食い)
- 買ったら下がった……見切りをつけて手仕舞いする(損切り)
利食い手仕舞いは、ルンルン仲良しの恋人と別れるようなもの……明確な理由を見つけにくいのです。
一方の損切りは、「このポジションはダメだ」と手仕舞いする理由は明確なのですが、自分自身で負けを認めることに抵抗を感じます。やはり難しい……。
いずれにしても、つくるのはカンタン、捨てたり壊したりするのは難しいのです。
買った銘柄が上がったので、「利益確保」を狙って両建てにする(買いポジションは維持したまま、同じ銘柄をカラ売りする)──そのあと、どうするのですか?
値動きを見ながら臨機応変に売り買いして利益を積み上げていくという狙いでしょうが、混乱して余分な売買をしてしまうことが懸念されます。
日々の値動きや大量のニュースによって、ただでさえ混乱しがちなのが株式投資・トレードという行為です。その波に巻き込まれないようにするには、よほどシンプルな行動指針が必要です。
少なくとも、自ら複雑な状況をつくり出すなんて得策ではありません。