日本のことわざには「数字」をうまく盛り込んだものが多いと感じます。
とくに、奇数がよく使われるようです。
「仏の顔も三度」とか「三度目の正直」とか、「石の上にも三年」とか……。
「二度あることは三度ある」なんて戒めの表現もありますが、決して「3回目が最後」という意味ではありませんよね。
「何度でもあるから気をつけろ」と、警戒を促しているのです。
2回の失敗を経て「三度目の正直」と期待するのは当然ですが、成功するのは4回目か5回目、あるいは6回目かもしれません。
「めげずにつづけるんだ!」と捉えるのが正解でしょう。
同様に、「仏の顔も三度」という言葉を「2回目までは許される」なんて解釈したら、最初の失敗をしたあとの態度で「ふざけたヤツだ」と切り捨てられるのではないでしょうか。
ことわざは、イメージしやすいように具体的な数字を入れていますが、しゃくし定規に「回数」を問題にするのは誤りです。
いわゆる“自然言語”の領域ですから、数学の公式のような扱い方をしてはいけないのです。
相場用語にも当然、自然言語としての“ユルさ”があります。
大きなトレンドを指して「三段上げ」とか「三段下げ」ということがありますが、機械的に(便宜的に)「ここで1段、ここで2段……」と数えると、「なんだよ、ウソじゃんか」みたいなことになってしまいます。
上げきったということで、漢字を使って「三段上げ」、下げ切った状態を示すために漢字を使って「三段下げ」というのが、正しいおさめ方です。数字ではなく、「しつこく売られて下げきった」「さんざん上昇して上げきった」という捉え方です。
では、ちまたで話題となる「二番底」とは……。
安値圏の動きを考えてみます。
「暗い雰囲気の下げがつづいて安値圏に達しても、すぐに上昇せずにモタモタする。その後、多くの人があきらめたころに少しだけ価格帯が戻り、さらに時間が経過してからやっと、ゆっくりと上げトレンドがスタートする」
こんなふうに、時間を費やして「ナベ底」を形成するのが、標準的なイメージかもしれません。必然的に、「これが1番底」「こっちが2番底」と“数字”で解説することが可能だったりします。
でも、暴落後の切り返した銘柄は、ほとんどが“V字型”の底なんてこともあります。
強いて「これが2番底」と解説できるパターンがあったり、なかったり……。
「三段上げ」「三段下げ」と同様に、その場で「はい、ここだ」と検知するのは難しいのです。単純に価格水準で考える(チャートのタテ軸だけを見る)といったように、観点を絞り込んで行動のタイミングを計るのはムリ、ということです。
しかも、数カ月程度の動きを見るうえで「二番底」というアプローチは機能しにくいのです。また、急落時の価格変動はかなりスピーディーなので、なおさらです。
だから、意識的にゆる~く考えてみましょう。
銘柄や、そのときの売られ方によって異なるものの、いわゆる“トレンドの変化”を自分なりに検知するしかない、という考え方に至ると思うのです。
自分の“軸”をもつことで、取って付けたように相場解説で使われる経験則(今回は「二番底」)への飛びつきを避ける、というか、そもそも雑音を気にしない姿勢が大切です。