ウルフ村田こと村田美夏
特別インタビュー 2/5

「トレードすることで人とつながりたい」

村田美夏行動派の独立トレーダー
村田美夏

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2014年1月号掲載


第1回からのつづき……

2.トレーダーとしてデビュー

──(長銀の)破綻後は、どうしたのですか?

 2000年に新生銀行として生まれ変わるまで残り、残務処理をしていました。そのあとは、簡単に言えば現在の独立トレーダーという立場です。まずはトレードで利益を上げ、余った分でエンジェル投資(注)というスタイルですね。

(注)エンジェル投資
 創業間もない企業に資金を供給する事業、つまりベンチャー投資のことだが、規模の大きいベンチャー投資とは区別され、「個人投資家による小規模な資金供給」を指す。

──上場株のトレードだけでなくエンジェル投資をする理由は何ですか?

 銀行で働いていたころに“真面目に努力する企業を金融で支援する”“有益なアイデアを提供する”というテーマにたどり着き、現在もその路線を進んでいるつもりです。ただ銀行という器がなくなってしまったので、「今度は自分の資金で」と考えただけです。

──日本ではベンチャー投資に関する情報網や仕組みが未整備なので、苦労したのでは?

 自分なりの基準をつくるまでに、それなりの時間がかかりました。でも続けてきた結果、起業して真剣に努力する若い人たちとのつながりは楽しさいっぱいで、私にとっては貴重なものとなっています。
 当たり前のことかもしれませんが、資金を提供すればいい、というわけではありません。アイデアだけの若い人にはふつう、その人を育てられる経験者が必要です。状況に応じて私自身が手伝ったり一緒に経営を考えたりすることができればいいのですが、これには物理的にも能力的にも限界があります。もちろん「資金だけで大丈夫」ということもまれにあるのですが、私の人脈の中から接点がありそうな人を紹介することで事業が軌道に乗るというケースがけっこうあります。私のそういうアイデアや決断で喜んでもらえることが、うれしいですね。
 今までいろいろな案件に遭遇して学んだので、40歳になって以降、おカネだけを出すというやり方はしていません。中途半端に資金を提供したって、お互いが不幸になるだけですから。市場でのトレードにはない難しい部分であり、社会人として活動するうえでの魅力みたいなものがありますよ。

──なんだか、マネしてみたくなりますね。ところで、長銀を辞めて独立する時点で十分な資金があったのですか?

 大学生の時代、そして長銀の時代と、株のトレードは続けていました。あまり頻度は高くなく、ジッと見ていてチャンスだと思ったときにポジションを取るという、地味なやり方でしたね。林投資研究所が示すような相場師像とは異なり、一般に公開された情報をベースに大きな流れに目を向け、かなりの確信が得られたときだけに出動するという、特に説明するような特徴のない選別投資の手法です。それでもコツコツと利益を重ねていましたし、新規公開が活況だったときにうまく立ち回って資金の増加が加速したので、長銀が破綻して独立する時点で1億円の資金を持っていました。

第3回へつづく─ 


村田美夏(むらた みか)
東京大学経済学部を卒業後、銀行に勤務。その後は独立トレーダーとして活躍。トレードの利益は、エンジェル投資などを通じて社会貢献に充てている。現在は(株)サクセスワイズ代表取締役社長として、社会貢献事業を本格的に進めている。

【村田美夏 関連リンク】

11月10日放送のフォローアップ(3)
林 知之

値動きは銘柄ごとに異なる

マーケット・スクランブル、11月10日の放送は「リスク管理」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第48回 相場で“痛い目”に遭わないための工夫

「株は買いか」とか「株はこれから上がるのか」といった言葉で考え始めるケースが多いと思いますが、こういうアプローチをした時点で誤った方向にいくように思います。

カンタンに考えようとしているのでしょうが、捉え方が大き過ぎるために盲点が生じ、逆に難しくなってしまうのです。

ひと言で「株」といっても、多くの銘柄があります。東証一部だけでも、1,841銘柄です(2014年11月13日現在)。そして、それぞれの値動きは想像以上にバラバラなのです。

トレードを考える場合、第1段階は手法を決めることです。第2段階は、その手法に合う値動きの銘柄を選ぶことです。

少しだけ、ここから派生した説明をしましょう。
単に「株は買いだ」「では何を買うか」という順序で考えてしまうと、現実で欠かせないポジション操作という観点が抜け落ちてしまうのです。
例えば、「常に資金いっぱいに株を持っている」という前提で「暴落を予見しよう」というような発想を持つことは、残念ながら実践から大きく外れたものでしかありません。

話を戻します。
第1段階が手法の決定、第2段階が手法に合う銘柄選定、と示しましたが、銘柄をいろいろな観点で分類して“値動きの特徴を考えてみる”という方法も、わかりやすくて有効です。

番組でも取り上げた低位株の値動きを、あらためて紹介します。
林投資研究所の低位株研究会「FAIクラブ」で買い選定している日清オイリオ(2602)の月足と、9月以降の値動きを日足(終値折れ線)で日経平均と比較したものです。

日清オイリオ月足  日足(225、オイリオ)

日清オイリオを月足で見ると(左の図)、10月の下げ局面でもあまり下げず(下ヒゲが短い)、しっかりと陽線を立てて上に抜けかけているような姿です。

日清オイリオと日経平均の比較(右の図、9月1月~11月7日)では、日経平均が大きく下げた場面で、日清オイリオの連れ安は限定的だったことがわかります。

低位株というのは、人気の圏外にある銘柄です。
したがって上がりにくいのですが、それ以前に「下げにくい」というのが大きな特徴なのです。

番組で何度も取り上げている「FAI投資法」は、こういった低位株群を対象にして、効率良く資産形成をしていこうという手法です。
次回のフォローアップ(4)では、まだまだ下値不安が少ないと思える低位株を手がける「FAI投資法」について、もう少し詳しく説明します。

ウルフ村田こと村田美夏
特別インタビュー 1/5

「トレードすることで人とつながりたい」

村田美夏行動派の独立トレーダー
村田美夏

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2014年1月号掲載


 

 今回インタビューした村田美夏氏は、プロとして10数年の実績を持つ独立トレーダーだ。東京大学経済学部をトップで卒業したあと金融業界に入り、現在は自己資金による株式トレードを行うかたわら、起業する若者の支援活動にも積極的にかかわっている。
 また国連の経済社会理事会の諮問機関として一般協議資格を持つNGO「BPW」において、日本の組織の代表としても活動しているという、とても興味深い人である。
 専業トレーダーというと時間的に余裕があって実にゆったりとした雰囲気の人が多いが、彼女は多くの集まりに顔を出すなど、常に忙しく活動している。仕事で知り合って以降、トレーダーというよりも1人の人間として詳しく話を聞いてみたいと思っていた人物だ。
 インタビューは2013年12月11日、林投資研究所のオフィスで行った。

1.長銀の破綻

──美夏さんは、株専門ですよね。株のトレードを始めたきっかけは何ですか?

 育った家が、いわば金融一族だったのです。まず、金融機関で働く人がたくさんいました。それに、大企業の財務部の管理職などですね。素晴らしい人たちばかりなのですが、尊敬する親類の1人で母方の祖母の弟は、東京証券取引所に入って専務にまでなり、大納会や大発会で「いよ~っ」って発声する役目を10年間務めていました。
 親戚同士の交流は活発で、集まると自然に金融の話題が出ましたし、株の銘柄に関するベタな情報交換もありました。インサイダー情報みたいな暗い話ではなく、一般の銘柄の動向といった、ごく普通に株好きの人の会話でしたね。
 私の父も、三菱重工の資金部に勤めていました。だから自宅の書庫には、例えば『転換社債の○○○』とか『連結決算のすべて』といったタイトルの本をはじめ、金融市場、株の取引に関係する実務的な書物がたっぷりとあったんです。輝太郎先生の本も何冊かありましたよ。
 とにかく金融取引に対して、情報が豊富でオープンな環境だったんですね。だからでしょうか、もともと株に対してものすごく良いイメージを持っていました。
 ある時に伯父が、奥さん(伯母)から冷蔵庫を買い換えたいと言われると、用意した現金で冷蔵庫を買うのではなく、その資金で株の売買をした利益で冷蔵庫を買ったことを覚えています。そんなエピソードが、とてもふつうに伝わってくるような状況だったのです。
 そのような環境で育ったせいか自分でも株を取引したいと思い、大学生の時にトレードし始めました。

──軍資金は?

 アルバイトに精を出して1,000万円ためました。でも、水商売はしていませんし、違法行為もしていません(笑)。大学にいたのが89年から93年でしたから、学生でも時給の高いアルバイトがありました。だから工夫と頑張りで、効率良く貯金することが可能だったんです。

──それにしても、かなりの頑張りですよね。ちなみに、大学時代の専攻は?

 東大の経済学部でトップと称されていた、根岸隆先生の『理論経済学』ゼミにいました。親戚の人たちはみな専門家でしたが、学者のような人はいませんでした。そのせいか、ちょっとアカデミックな観点からも経済を学んでみたいという気持ちがあったのだと思います。
 また伯父が日立グループの連結決算書を作成していたので、「決算書は会社を映す鏡なんだ」といった哲学に加えていろいろなことを教えてもらうなど、さまざまな視点から金融を見ることができたので、とても恵まれていたと思います。

──卒業して長銀(注)に入社したんですよね。美夏さんが入社した時には、いわば存続が危ぶまれるくらいの状況だったのでは?

(注)長銀=日本長期信用銀行
吉田茂内閣が打ち出した「金融機関の長短分離」政策に沿って長期資金の安定供給を目的にしていたが、産業・金融構造の変化の中で不動産に対する融資が不良債権化して経営難に陥り、98年の国有化を経て現在の新生銀行になった。

 株の取引を続けながら、金融のことをもっと実地で学びたいと考えていたから「金融機関」だったのですが、たしかに長銀は良くない状況でした。でも当時は、女性というだけで就職先の選択肢がかなり限られていたのです。そんな中で長銀は私に対して「ぜひ」と言ってくれたので、求められる場所に行くべきだと考えて決断しました。
 でも入社後、「なぜ大学の成績が良かったのに、それほどまで事務仕事ができないんだ?」と言われてしまいました。文章を書くのが苦手でしたし、「しゃべりだけでどうにかなる職種にしてください」と願い出て、上司にあきれられたくらいです(笑)。例えば融資案件が1つあれば、詳細を記した書類を仕上げなければいけないわけですが、そういうのがダメだったんですね。

──それならば、証券会社がよかったのでは?

 証券会社だと、大好きな株の売買を制限されてしまうと思ったので……。

──なるほど。で、長銀ではどんな仕事をしたのですか?

 最初に配属されたのは、国際部門でした。国内企業向けの外貨建て貸付があったのですが、すでに不良債権化していた部分があり、その処理が強く記憶に残っています。例えば返済が滞って金利も入金されなくなると、払ってもらえない金利に対しても「利息損害金」(利息に対する遅延損害金)というものが発生します。要するに利息にまで利息のようなものがついてしまう、とても厳しい状態ですね。
 すると突然、その貸付が「不良債権かどうか」という判断が行われる場合も出てくるのです。担当者としてはそれまで通りの大切なお客様なのに、そんな観点を気にすることになるのですから、仕事とはいえ、助け合うためのつながりなのに……と、非常につらい部分がありました。
 そのあとの名古屋支店では、会社の状況が悪化する中で苦戦しました。長銀は大きな金融機関だったので、いわゆる中小企業との取引はありませんでした。しかし私が担当したのはトヨタのような大企業ではなく規模が小さめの地場の優良企業で、貸付や上場のサポートなどが主な業務でしたね。
 でもそのころ長銀そのものの格付けが下がったので、市場からの調達金利が上昇してしまいました。要するに信用力が落ちて“仕入値”が高くなったわけですから、適正なスプレッド(金利差)を乗せて貸付に回そうとすると、ほかの金融機関よりも明らかに高くなってしまうんです。それどころか、大手の事業法人のほうが有利に資金調達できるくらいの状態でした。

──ストレートに表現すると、その時点ですでに銀行として機能していなかったわけですね。

 そうですね、とても苦しい状況でした。既存の取引先に対しても、まっとうなサービスを提供できなくなっていったわけですから。金融機関の信用力が低下していく姿を内部から見ていたという点では良い経験をしたともいえますが、そのころはお客さんに対しては、とにかく申し訳ないという気持ちばかりでしたね。いくら知恵を絞っても、ごく当たり前の業務が成立しないんです。

──早めに逃げ出した社員も多かったでしょう。

 はい、男性社員の一部はそういう行動に出ました。でも、私なんかを拾ってくれる企業はなかったと思います。MBA(注)を持っているとかクオンツ(注)の知識があるとか、そんな特別な能力はありませんでしたから。それに何よりも「悪くなったから辞めちゃう」といった考え方がイヤだったので日々、自分にできることを考えていました。
 そして、「ここを乗り切れば……」と歯を食いしばっているときに破綻が確定しました。1998年、私が28歳になる年のことでした。
 とても残念でしたが、就職したことを後悔などしていません。そして大学卒業後の5年間は、素晴らしい先輩や同僚に囲まれて仕事に取り組むことのできた時代でした。

(注)MBA
 経営管理学修士、Master of Business Administration。
(注)クオンツ
 高度な数学や数理モデルを使ったマーケットの分析、投資戦略や金融商品の考案・開発。

 

左から、村田氏、MSプロデューサー生田氏、筆者

左から、村田氏、番組プロデューサー生田氏、筆者

 村田氏は、マーケット・スクランブルの放送を行うスタジオに、友だちとして顔を出してくれるので、放送後に近くで一緒に酒を飲んだりしている間柄だ。ベタな相場談議よりも日常のたわいない話のほうが多いのだが、彼女がパソコンを取り出してトレードのことを語り始める機会もある。実に明るくエネルギーに満ちあふれた話しぶりなのだが、別の見方をすると、なんだか“初心者がはしゃいでいる”ように見えるかもしれない。同じプレーヤーとして、確固たる戦略を基に流れを見ながら個々のトレードを振り返る彼女の姿が好きなのだが、たぶん数回会っただけでは、金融一族で英才教育を受けたなどとは想像できないのではないか(失礼)。
 詳しく話を聞けば安定して利益を出しているのだと確信できるのに、ポジショントークには真逆のイメージがあるという、なんとも不思議な人なのである。
 続いて、長銀の破綻処理後の、トレードを主体とした活動について詳しく聞いた。

第2回へつづく─


村田美夏(むらた みか)
東京大学経済学部を卒業後、銀行に勤務。その後は独立トレーダーとして活躍。トレードの利益は、エンジェル投資などを通じて社会貢献に充てている。現在は(株)サクセスワイズ代表取締役社長として、社会貢献事業を本格的に進めている。

【村田美夏 関連リンク】

11月10日放送のフォローアップ(2)
林 知之

トレードにおける“ガマン”を考える

マーケット・スクランブル、11月10日の放送は「リスク管理」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第48回 相場で“痛い目”に遭わないための工夫

「トレードではガマンが必要だ」といわれますが、こんな説明だけでは抽象的過ぎます。そもそも、ガマンできないから「ガマンが必要だ」という言葉が使われるわけです。だから実際には、必要なガマンをちゃんと実行するための思考が必要です。

まずは、「ガマンが足りなかった」と後悔する、ありがちなケースを挙げてみましょう。

  1. 安く買おうとしたが、下げの途中で買ってしまった……もう少し待てばよかった。。。
  2. 買ったあとの下値を見て損切りしたら、そこから上昇した……ブレの範囲だったのにガマンできなかった。。。
  3. 買ったら下がったので、つい予定外の買い増し(やられナンピン)をしちゃった……短期のうちに大きく反転してくれないと困る。。。

例えば先月(2014年10月)の下げ局面で「見事に泳ぎ切った」という人は少ないでしょう。ところが、あとで見て「あの安値を買えばよかった」とか「下がる場面で売り建てしておけば……」と考えてしまいがちですね。

10月の乱高下で実際に行動に出た人は、けっこうな確率で振り回されてしまったのではないかと思います。下げでムリして買っている人がやられ、戻りでは“にわか売り方”がやられた──そんな動きだったと感じています。

値動きにドンピシャリのポジション操作を想定すると、結果論の後悔を繰り返すだけです。「買いが早かった、では今度こそ」と力を入れて最安値を狙ったって、天文学的確率で起こる偶然を頼るしかないのです。

だから、常にズレることを前提にして、分割で仕掛けるなどのポジション操作が必要なのです。それを支えるのは、ある程度までのズレを許容した「自分の得意パターン」です。

買い始めのタイミングを大ざっぱに分類しただけで、いくつものパターンが見えてきます。

「底が近い」と感じて買い下がる、「底を打った」と感じて安値を拾っていく、「上げ始めた」と感じて押し目を狙う、はたまた「大きくブレークした」場面だけに絞って順張りで乗る──得意なパターンを決め、その得意技で取れる場面だけ取れればいい、それ以外の動きは取れなくてもいい(小さい損で抑えられればOK)というのが、現実のトレードでしょう。

11月10日放送のフォローアップ(1)
林 知之

“かたち”によるリスク管理いろいろ

マーケット・スクランブル、11月10日の放送は「リスク管理」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(1)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第48回 相場で“痛い目”に遭わないための工夫

まずは、リスク管理の方法を再確認してみます。

  • 銘柄分散
  • 期間分散
  • 資金管理
  • ヘッジ玉
  • サヤ取り
  • ロング/ショート戦略

よく聞く用語ばかりですが、何となく納得して終わっていることも多いかもしれません。そこで、少し突っ込んで考えてみましょう。

「分散投資は安全」といいます。たしかに分散投資は、部分的な見込み違いや不測の事態による被害を軽減してくれます。でも、単なる分散では“薄まる”だけの結果になりかねません。
「ポートフォリオ=分散」と考える人が多いようですが、それは違います。
100銘柄に分散するのもポートフォリオならば、戦略的に1銘柄に全資金を投下するのもポートフォリオです。やみくもに分散するのではなく、競争に勝つために意思を持ってポートフォリオを決めたり、状況に応じて変化させる必要があるでしょう。

これに対して「期間の分散」は、値動きへの対応を素直に考えさせてくれる発想だと思います。「おそらく底だろう。しかし決め打ちはできない」と考え、少しずつ分散してポジションをつくっていく、といった実践的かつ機動的な行動につながるからです。

「資金管理」は、多くの人があまり考えない事柄ですが、実は最も重要な要素です。常に目一杯の建玉があるのに評価損ばかり、その状態で新しい銘柄に目が向くけど資金が足りない、そこで「何かを切らなければ」とやりくりする……完全に行き当たりばったりの売買です。基本的な「設計」がない状態ですね。
生活と切り離して固定しておける金額を取引口座に入れ、その資金を効率良く安全に動かしていくことに集中するべきです。

「ヘッジ玉」「サヤ取り」「ロング/ショート戦略」は、方式としては異なるものの、いずれも、売りと買いを組み合わせてリスクをコントロールしようする方法論です。ただし、単に売り思惑と買い思惑を同時にやるだけだと、やみくもな分散投資と同様、手数が増えてコントロールが効かないだけで、良い結果が得られない可能性があります。
過去の値動きの分析、今後の値動きの想定、ダメだったときの対処とその判断基準、うまくいったときの引き際などなど、自らつくる総合的な戦略が必要ですね。

次回のフォローアップ(2)では、メンタル的な要素の大きい「ガマン」について、理論による戦略と併せて考える予定です。

 

研究部会報
 林投資研究所で40年以上続いている、プレーヤーのための定期刊行物。

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

林投資研究所
 林投資研究所の公式Webサイト。

 まずは資料請求(無料)してください。電話等での勧誘はいたしません。

10月6日放送のフォローアップ(5)
林 知之

銘柄を絞ると“戦略”が見える!

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(5)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

過去4回のフォローアップでは、いくつかの異なる観点から「売り」という考え方の重要性を説明しました。でも断片的に考えてばかりいると逆に、情報が増えて混乱するかもしれません。

そこでフォローアップの最後として、実際のトレードを想像してもらうことにします。タイトルにある通り「銘柄を絞る」のです。あれこれと対象が定まらないと計画的な行動は取れませんし、自分の戦略を持つことが難しくなってしまう、という仮定で、トレード対象を狭い範囲に限定してしまうということです。

想像するのは自由なので、極端な設定をしてみましょう。

あなたは、ある1つの銘柄しか売買できません。しかし、その銘柄が何なのかはわかりません。個別株なのか指数なのかもわからず、それを考えるヒントすらないという状況です。

ある人物から毎日、謎の銘柄の終値だけが伝えられます。そして、その人物に注文を出すと、その謎の銘柄が売買され、実際に自分の資金が増減することになるわけです。

こんな状況などあり得ませんが、この極端な設定をリアルに想像してみてください。この状況では、自分が何を考え、何をしようとするだろうと。

何しろ材料も何もないわけですから、ひたすら価格を見るしかありません。それも、1日に1回知らされる「終値」だけなので、情報は非常に少ないのです。終値を場帳に記録する、あるいは終値の折れ線チャートを描くくらいしかできません。移動平均線を重ねるなどの工夫もあり得ますが、いずれにしても元データは終値だけです。

もしこのような状況に置かれたら、価格の推移をにらみながら、「こういう上げを狙ってポジションを取ろうか……」といった具合に、変動に対応するための戦略を考えるしかありません。

いかがでしょうか。

新聞などで紹介される経済の“新しい流れ”から連想して「次はこの業種だ」などと興味を移していくと、値動きの分析や戦略、ポジション操作といった発想には、なかなか届きません。でも、上記の例のように「銘柄がわからない」などという非現実的な状況ではなく、単に銘柄を絞り込んで固定するだけで、自分がやらなければならない肝心なことに目が向くようになります。

そして、「買い」だけに偏らず、「売り」もバランス良く考える“相場脳”になると、私は考えています。

10月6日放送のフォローアップ(4)
林 知之

事が起きてから「どうしよう」ではちょっと遅い

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(4)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

前回のフォローアップ(3)で、「自分自身の予測」という表現を使いました。「予測は当たらない」という前提が大切なのですが、自分の戦略における自分の見通し、自分の想定というものがなければ、行動を取ることはできません。だから、とても大切なことです。

自分自身の予測があり、多少の意地がなければ、ただ流されるだけです。
ちょっと上がったら「上なのか!」と買いつき、下がったら「あらら、下なのかな?」と買い玉を切る……そんな後追いばかりになります。

ですから、見込み違いのミスは当然と考えながら、上がる前に買う、下がる前に売る、という行動を取ることになるのです。実際には値動きの一部分しか取れませんが、一部分でも取って勝ち逃げれば勝者です。

多くの人は、せっかく経験が豊富だったり、時間をかけて理論を勉強しているのに、なかなか自分自身の戦略を持てずにいます。
あるいは、頭の中には自分の戦略があるのに、それを実行することなく周囲の情報ばかりを気にして“正解探し”をしてしまいます。

だから、行動はすべて後追いになります。

予期せず暴落したあと、「このあと、どうしよう」と新聞やTVニュースで情報を探します。残念ながら、誰も正解を持っていないのに……。
急に上がった場合は、「今からでも買っていいのか?」と他人に質問します。未来が見えている人など、どこにもいないのに……。

しかし自分の想定があれば、迷いながらも自分の答えを出すことができます。そのためには、たとえ現物投資であっても「買って持つ」という発想を捨て、「売るために買う」という当たり前のことを日頃から意識することが大切でしょう。

「売る」という行為、「売り」という概念を、積極的に考えてみてください。

10月6日放送のフォローアップ(3)
林 知之

個人投資家がヘッジするときのテクニック

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

利益を求めてポジションを取りたい、しかしリスクは抑えたい──。金融取引ですから、リターン(期待収益)が大きいほどリスク(損失の可能性)は高くなるのに、私たち投資家は、できる限り高リターンで低リスクという矛盾する状態を求めるのです。

矛盾するとはいえ、2つのことが両立する状態に近づこうとするのが、資産運用という行為です。

ただし完全にリスクを抑えることなど不可能で、理論上、リスクをゼロにすればリターンもゼロになるのです。どこまでできるか、の勝負です。

例えば、株式を一定の金額で保有していたとすると、マーケット全体の一時的なブレによるマイナスを避けたい、と考えるのは当然でしょう。

しかしポジションを持ちっぱなしで希望通りになる、つまり「上がっても下がっても大丈夫」なんてことが簡単に実現するのなら、誰も苦労はしません。

動きの一部をうまく取るためには、ポジションを動かしていくしかありません。予測は常に当たるものではありませんが、自分自身の予測を基準に、なんとか動きについていけないのかと、必死になるのです。

保有している現物のヘッジ(値下がり回避)のために先物売りや株価指数連動ETFを利用する方法もありますが、考え方も売買も複雑になるだけで大きな効果は期待できません。

なので、単純に一部を売って持ち高を減らすことが基本です。
個人の資金量ならば、よほど流動性の低い銘柄を対象としていない限り、たとえ全玉であっても、極めて短時間で処分することが可能なはずです。

買い戦略における「売り」を単なる「終わり」ととらえるのではなく、臨機応変にポジションを動かしながら上げ下げについていくための手段だと考えればいいのです。

10月6日放送のフォローアップ(2)
林 知之

カラ売りなんてこわくない

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

「カラ売りは危険」という認識の人が多いと思います。
果たしてそうでしょうか?
こういう感覚こそ投資家の最大の誤解だ、と私は考えています。

「カラ売りは危険」の反対として、「現物投資ならば安全」という考え方をチェックしてみます。
根底には「思惑とは逆に下がっても、持っていられる」「売らなければ損にはならない」といった発想があるのですが、それは「失敗したから対処が必要だ」という問題を先送りしているだけといえます。

例えば1,000円で買った株が、半値の500円に下がっていたとします。
明日から大きく戻し始める可能性だってあるのですが、たいていは気持ちが続かなくなりますから、投げたところを境に上げ始めるという悲喜劇が展開されるわけです。そんなに大きく下げる前に対処して現金化し、その現金を効率良く別の銘柄に充てるべきでしょう。

こんなふうに考えていくと、躍起になってしまいがちな日々のトレードと少し距離を置くことができます。
「現物買いでもカラ売りでも、手元の現金を殖やすためにポジションを取るだけなんだ」ということです。前回のフォローアップ(1)でも示した観点ですね。

ここで、テーマである「カラ売りは危険」という考え方を、あらためて検証してみます。現物買いでもカラ売りでも、実は以下のように全く同じではないか、という視点を紹介します。

  1. 手元の現金を殖やすため、株を利用してポジションを取る行為
  2. 株価の動向によって評価損益が生じる
  3. 自分自身の決断で、いつでも手仕舞い可能
  4. 評価損でも損は損

「カラ売りは危険」というのは、強い銘柄とケンカしてポジションを取り、評価損を放置した結果、大きな損につながるケースがあるからです。
多くの人は、動意づいた銘柄に注目して買い方として参入しますが、カラ売りのときにも不思議と“動いて話題になっている”銘柄を対象として検討するのです。

強いと感じる銘柄は買いを検討する、カラ売りを検討するのは弱い銘柄、つまり下げトレンドに移行したと判断できるものにするべきです。
そして、こう考えれば、「カラ売りは危険」という考え方は少しゆがんでいるみたいだ、と思えてくるのではないでしょうか。

マーケットには日々、値動きがある、ポジションは自分の手でつくって自分の判断で手仕舞いする、という原則を思う浮かべれば、カラ売りだって特別なものではないということなのです。

状況によってはカラ売り戦略も有効だし、自分はそれを実行できる──こういう発想があれば、より広い視野でマーケットの動向を観察できるようになるでしょう。

10月6日放送のフォローアップ(1)
林 知之

株は買って持つもの?

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(1)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

「少し難しい」というご意見も届いていますが、とても大切なことだと私は思うので、一緒に考えてください。

多くの人に、「株は買って持つもの」という感覚があります。
これは“YES”だけど、同時に“NO”なのです。

株は「株式会社」の持ち分です。
株式会社とは、継続的に利潤を追求する組織です。
だから、株式を保有して利潤の一部を配当として受け取り、その企業が成長することで株価も上がる、というのが当然の狙いだといえます。
ごく自然な発想ですね。だから、「株は買って持つもの」は“YES”です。

一方で、“NO”というべき部分もあります。
「適正な価格」の形成を目的に上場され、多くの人が自由に売り買いできるようにしている結果、実は「人気」による変動が非常に大きいのです。

会社の内容がそれほど変わらないのに、株価が10分の1になったり、逆に短期間で数倍に跳ね上がったりします。
200円の株はストップ幅が80円、つまり1日で4割も動く可能性があるのです。
たった1日で4割も評価が変わるなんて、マーケットの「人気」としか説明できません。

だから、非常に内容の良い企業を見つけて「投資」する場合でも、投機筋と同様にマーケットの価格動向に合わせてポジションを調整することが必要だといえます。

よほど素晴らしいビジネスモデルがあって将来の成長性がガツンと期待される企業、つまりホンモノの「お宝銘柄」であっても、マーケットでの「人気」量を含んだ価格で売買するしかないというのが実情なのです。

一般的には、長期でも短期でも、マーケットの価格動向をにらみながらトレードします。つまり「買い」「保有」で終わらせず、「売り」も考える必要があるということです。手法にかかわらず、手元の「現金を殖やす」ために株を利用して「ポジションを取る」のですから、常に「売りと買い」がセットになるわけです。

こういう発想が弱い場合に、「期待通りに暴騰したが、どこで売るの?」とか、「期待と裏腹に下げた……どうするの?」といった事態に陥るのです。

人気が先行する株式市場では臨機応変な対応が不可欠ですが、買う前に「売り」を考えておく、カラ売りを仕掛ける前に買い戻しを考えておく、ビジネスの世界でよくいわれる「出口戦略」を事前に用意することが絶対に必要なのです。