相場師インタビュー
“プロギャンブラー”のぶき 2/6

「トビラを開ける前に勝負を決めろ」

プロギャンブラーのぶき

プロギャンブラー

新井乃武喜(あらいのぶき)

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2013年11月号掲載


第1回からの続き……

2.正しい勉強を経て自分のものをつくり出す

──もともとギャンブルが好きではなかったのですから、完全にゼロからの出発だったわけですよね?

 そうです。でも学生時代にラスベガスに行って、カジノで遊んだ経験はありました。

──ギャンブルに興味はなかったのに?

 卒業旅行だったのですが、仲間と相談しながら僕は「ただ行って帰ってくるだけで、何のゴール(目標)設定もない旅はつまらない」って主張したんです。で、最もわかりやすいということで、ラスベガスのカジノに行くと決まったわけです。ギャンブルそのものでなく、ギャンブルという明確な目標物のあるカジノという場所が重要だったんですね。真剣にルールを勉強し、真剣に臨みましたよ。

──軍資金はどれくらい用意したのですか?

 旅費とは別に、カジノ用に80万円用意しました。バイトを頑張って貯金していたとはいえ、それなりの金額でしたが、ゼロになってもいいと考えました。勝ち負けよりも、「ラスベガスを感じるために行くんだ」って気持ちでしたから。

──成績はどうだったのですか?

 1日の睡眠が平均3時間という状態で、ずっとカジノにいました。そして、トータルで20万円勝ちました。
 でも勝ったことなんてどうでもよく、ベガスという街に魅力を感じたんです。そうそう、僕がずっと勝負し続けていたら、そのカジノのエライ人っぽいオッチャンが名刺をくれたんです。そのころは英語なんてさっぱりでしたら、何を言っているのか全くわからなかったんですが、その名刺1枚で未知の体験をしたのです。
 いったんそのカジノをチェックアウトする際に「ディスカウントしてくれるかも」と期待して名刺を見せたら、それまでは日本人の学生に対して“上から目線”だった従業員の態度がガラッと変わり、「失礼いたしました。少々お待ちいただけますか」みたいな感じで、急いで電話をかけるんです。そうしたら名刺のオッチャンが出てきて、またベラベラッとしゃべるんですが、再び何を言っているのかわからない。仲間で英語が少しできるヤツの説明だと、「よく来てくださいました。今回のホテル代はいりません。また、いつでもおいでください。同じように待遇します」ってことでした。
 実はオッチャン、そのカジノのトップの人だったんです。

──金持ちが派手に遊んでいたわけでもないのに、どうしてホテル代を無料にしてくれたり名刺を渡して「いつでもどうぞ」なんて言うのでしょうか?

 たぶん、若い僕が夢中になってテーブルに張りついている姿を見たからでしょう。カジノには大勢の人が集まりますが、その人たちの負け分がカジノの利益です。でも、そうやってカジノが勝つためには、客が長く滞在して何百回、何千回と賭けてくれなくちゃいけない。それには、まず自分のカジノに来てもらう必要がある、というわけです。
 そのカジノが気に入る、長く滞在してたくさん賭ける、賭ける回数が多ければ確実に負ける──。こうやってカモをつくるという、わかりやすいビジネスなんですね。
 実はその滞在期間の後半、泊まるところがなくて困ったんです。ベガスという街に人を呼ぶ目的で幕張メッセみたいな施設があって大企業が大人数の会議を開いたりするのですが、ちょうど会議がまとめて開催される時期に当たってしまったんです。だから最後の頼みの綱で、名刺をくれたカジノのトップの人に電話したら、「どうぞお越しください」って。あらためて訪れようとしたそのカジノに部屋がないって断られた数分後なのにOKをくれるし、それじゃあというので行ってみたら部屋も選べるしで、驚いてしまいました。

──その経験が、ギャンブラーへの道につながったのでしょうか?

 そうですね。その時の気分の良さは脳裏にしっかりと焼きついていました。
 やりたいことが見つからない中でなんとなく卒業旅行の体験を思い出し、「これなら本気になれるかもしれない」という気づきが感情的に背中を押してくれたのかもしれません。あとでわかりましたが、トップの人が名刺をくれるなんて、なかなかないことなんです。偶然、ほかの人たちがすごくなかったということもあったでしょうね。まあ、あくまでも僕がカモという目線ですが。
実際、例えばポーカーならば、90%の人が負けます。残りの10%の人が勝ち組ですが、わずかに1円勝っただけの人も含めた数字です。結局、プロとして勝っている人は全体の1%だけなんです。ちなみにブラックジャックは、勝つ人の割合はもっと少なくなります。
 真のプロギャンプラーとは、スペシャリストのさらに上の存在ではないかと私は考えています。

──その1%に入ろうというチャレンジだったわけですね。まず何をしましたか?

 当然、勉強です。僕は「ギャンブルは数学だ」と最初から考えていたので、ベガスに行ってギャンブルの教科書を買って読みました。まずは基本の公式を理解しないと、絶対に勝てないと思ったからです。
 それに、モチベーション(動機づけ)を維持するためにも実践力をつけるためにも、机の上の勉強に偏ったらダメですよね。だから、ドアを開ければカジノがあるという環境が必要だと思ったんです。
 それから、単独でベガスにいれば集中できます。日本で勉強してたって、女の子から電話が来たらすぐに遊びに行っちゃいますよ。林さんだって、すぐに行っちゃいますよね?

──いや、同意を求められても困りますね(笑)。

 あはは。とにかくベガスに行き、そのころ読んだ本の1冊に「3カ月で勝てるようになる」って書いてあったので、観光ビザで滞在できる3カ月間、頑張って勉強しながら実践してみました。そして3カ月後にわかったのは、「3カ月ではムリだ」ということでした(笑)。
 あと本を読みながらわかったのは、1冊の本、1人の視点だけでは弱い、ということです。その著者が間違っていたらすべて終わりというリスクもありますが、ものすごく重要なことまでは書いても本当のトップスキルみたいな部分は本に書かない、書けないものだと思うのです。だから例えばAという専門書とBという専門書があったら、その2冊を読んで「A+B」という自分のノウハウをつくり出す必要があるということです。もしA、B、Cと3冊あれば、2冊の組合せは「A+B」「B+C」「A+C」の3通りあります。こういったプロセスで、自分で使う自分だけのものを見つける必要があるはずです。
 例えばブラックジャックに限ったとしても、多くの視点からアプローチしてはじめて、そのブラックジャックというカードゲームでの勝ち方が見えてくると考えています。
 ちなみに、単なる自己流では絶対に勝てません。自己流っぽくやってきた人でもきちんと勝っているのなら、周囲の人から教わったことを蓄積するなど多くの視点を確認したうえで自分のものをつくり出す作業を積み上げてきたはずです。

──最初の3カ月が終わったあとは?

 いったん帰国して、すぐにベガスに戻りました。そして日本とアメリカを行ったり来たりしながら、ベガスにいる間は「モチベーション×集中」ということで1日14時間、365日やっていたのですが、なかなか勝ち方がわからない状態が続きました。
 そして1年半が過ぎ、「1年半では勝てない」ってことがわかりました。

──またですか?(笑) 最終的に勝てるようになったのは?

 実践を始めて2年後でしたね。いや実は、1年半が過ぎたところで限界に達して、「頭がおかしくなる3歩手前だ」って感じたんですよ。さすがに1歩手前まで近づいてはいないけど、5歩手前といえるほどの余裕はありませんでした。
 そこで日本に帰り、彼女ができたら一緒に見ようと考えていた映画を片っ端から借りてきて、ずっと独りで見ていました。そんな引きこもり生活を何カ月も送ったところで、ふと思いついたんです。「1年半も勉強してそれなりのスキルを身につけたはずなのに、なぜなんだ?」と考え、常識だと信じていたことの逆をやってみよう、ベガスのギャンブラーたちが「勝てない」と言っているカジノで試してみようって。自己防衛のためにとりあえず逃避していましたが、あきらめる気なんて毛頭なくモチベーションだけは維持していましたから。
 僕はニューオーリンズ近郊のビクロシーという町にある、ベガスのギャンブラーたちが敬遠するカジノに挑みました。ブラックジャックです。最初は勝てなかったのですが、改良点を見つけて修正したところで勝てるようになり、「おまえは勝っちゃうから出入り禁止だ」って追い出されるレベルにまで到達しました。やっとプロデビューできたわけです。
 「あのカジノでは勝てない」と言っていた連中だってプロなんですが、それぞれの狭い常識でしか考えていなかったわけです。それを真に受けずに自分で考えたから、勝ち方がわかったのでしょう。視野の狭い自己流はダメですが、林さんが言っている「自分流」が出来上がったんじゃないでしょうか。

第3回につづく>

このインタビューは2013年12月11日に林知之が行い、林投資研究所が発行する『研究部会報』2013年11月号に掲載したものです。


プロギャンブラーのぶき(新井乃武喜)
15年間カジノに勝ち続けたお金で、世界82カ国を旅し続ける。震災後、被災地のボランティアのために一時帰国したところ、「ギャンブルの勝ち方が金融トレードに通じる」と評判になり、投資関係者からのトーク依頼や執筆の依頼が激増、現在も日本にステイ中。

相場師インタビュー
“プロギャンブラー”のぶき 1/6

「トビラを開ける前に勝負を決めろ」

プロギャンブラーのぶき

プロギャンブラー

新井乃武喜(あらいのぶき)

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2013年11月号掲載


 

 今回インタビューしたのは、トレーダーではなくプロのギャンブラーだ。別に、私の頭がおかしくなってしまったわけではない。10年以上もカジノを渡り歩いてきた新井乃武喜氏が明瞭な言葉で説明してくれる“勝つための考え方”が実にわかりやすく、そのままトレードの世界にも当てはまると強く感じたからである。
 インターネット放送「マーケット・スクランブル」で行っている2時間弱のトーク番組「増刊号」に特別ゲストとして参加したのが新井氏、通称「プロギャンブラーのぶき」で、私を含めたマーケット関係者が異口同音に、彼のギャンブル哲学がそのままトレードに使えると盛り上がった。終了後の食事会でさらに彼と議論し、そのあとでインタビューを願い出たというのが経緯である。
 インタビューは2013年10月3日、林投資研究所のオフィスで行った。

 

1.運だけに左右される状況はイヤだった

 

──まず気になるのは、ギャンブラーになった経緯です。

 学生時代は最初、多くの人と同じようにサラリーマンになろうと考えていました。でも浪人して大学に入った僕よりも先に大企業に就職した元同級生たちが、組織の中で苦しんでいるのを見たんです。何が正しいのかを判定するのは難しいのですが、やりたくない仕事を命じられた結果、学生時代に輝いていた者がうつのような状態になったりしていました。そこで「仕事って、そういうものなの?」と、自ら積極的に考えてみたんですよ。
 そして漠然とですが、自分で何かをやろうと決めたんです。もともと「就職したら、その会社の社長になるんだ」なんて考えていましたが、「企業に入って働く」という視点から、広く見渡して自分で見つけたものを仕事にしようという発想に変わったのです。

──大企業を嫌ってギャンブラー……なんて聞くと、他人とうまくつき合えない人のようです。私が持っているのぶきさんのイメージとは、かなりのギャップがあります。

 いや、人づきあいは上手だと思っています。中学・高校が全寮制でした。大勢の人間が24時間一緒にいるのですから、ひとつのコミュニティじゃないですか。でも全員が仲良くなるわけじゃない。ふつうは、同級生に好かれたら先生や先輩からは認められないとか、先生に好かれるようなヤツは同級生から嫌われるとか、そういうものですよね。でも僕は、先輩からも同級生からも、そして先生からも好かれる存在だったと自負しています。

──それなら、どんな会社でもうまく立ち回る自信を持っていたのでは? あるいは中小企業なんて、ピッタリかもしれません。

 そうなんですけど、例えば優秀だったからといって上司が大切にしてくれるとは限らず、逆につぶされるかもしれないとか、個人の努力だけではどうにもならないことが多いと考えました。組織の論理による転勤とか出向もありますよね。つまり、そういう“運に左右される”部分を避けたんです。
 何をしたって運という要素はありますし大企業で働く人たちを否定するつもりもありませんが、運という要素ができるだけ少ない世界を選びたかったんです。自分の失敗を繰り返さないことは当然ですが、知り得た他人の失敗についても同じ轍を踏んではいけないと。
 中小企業ならばわかりやすい部分が多くてステキな場所かもしれませんが、その時は“就職するかしないか”と単純に切り分けてしまい、企業でバリバリと働く自分しかイメージしていなかった状態から一気に解放されて「自分で何かをやるんだ!」って方向になったんです。そして、独立のために資金をため始めました。
 学生時代には親から「生活費は自分で稼げ」と言われていたのでバイトには熱心でしたし、バイトでも正社員でも仕事は仕事と考えて真剣に取り組みながら貯金もしていました。NHKの受信料集金のバイトでは成績が良く、正社員にならないかと好条件で誘ってもらったのですが検討もしませんでした。そのバイトは卒業後も続けていましたが、「独立」を考えながらの貯金に集中していましたよ。

──独立の具体的なプランがない状態で、貯金の目標額は?

 周囲のオトナから「カネはあればあるほどいい」って言われて当初は素直にそう思っていたのですが、「カネをためるためだけに働くの?」「きりがないよね」って気づいたんです。
 これまたオトナから教わったことですが、1千万円=1本という数え方で「とりあえず1本」みたいな考え方が頭の中にあり、25歳で蓄えが1千万円に達したところでバイトを完全に辞めて将来についてのプランを本格的に考えたのです。

──でも一般的な起業ではなく、ギャンブラーになった。

 まずは、数年かけて書きためた「やりたいことリスト」を吟味しました。例えばパン屋とか。

──それは、自分でパンを焼いて販売する店ですか?

 そうです。でもパン屋を真剣に考えていた時、「軌道に乗るまでの時間」をポイントに考え直してみたんです。
 独立してビジネスを始めたら3年から5年は休めない、それならば3年から5年休まなくてもいい、つまり休みたいと思わないで働ける仕事を選ぼうと思ったわけです。日本のパン屋が好きなので5年後でも10年後でも飽きずに食べられると感じていましたが、それって単なる客側の視点じゃないですか。自分が焼くことを考えたら、1年ももたないかもしれないなって(笑)。
 相も変わらず漠然とした状態でしたが、考えていく基準が明確になりました。そこでリストにある100個くらいのアイデアを見直したんです。そうしたら……なんと、3年から5年続けられそうなものがひとつもなかったんですよ。

──ギャンブラーから遠ざかったようです……。

 いや、いよいよです(笑)。
 卒業旅行でラスベガスに寄った時になんとなく買った『Playing Blackjack as a Business』という本が部屋にあったのですが、将来について考えていた時、その表紙がふと目に入ってきたんです。「ビジネスとしてカードゲームの“ブラックジャック”をやる」って意味ですよね。そして、ラスベガスで地元の人に言われた言葉を思い出したんです。スマート、つまり頭が良ければギャンブルで食っていけるよって。
 やっと1千万円ためただけの男がいきなりギャンブルなんてあり得ないと頭では考えたのですが、部屋の隅に置いてあったその本のタイトルが光り輝いていたんです。実は読んでいなかったのに(笑)。もともとギャンブルなんて好きではなかったのに、職業として考えているうちに別の観点が見えてきました。そして、どうしても気になってギャンブラーという将来の姿を想像し、「これなら真剣になれる」「5年間頑張れる」という気持ちになったのです。

──なるほど。でも、周囲の人が驚いたのでは?

 当然のごとく、周りの全員から大反対されましたよ。わずか1千万円の貯金といっても、それを25歳で達成した僕をみんなが認めてくれましたし、これから何をやるんだろうって期待して見てくれていたんですから。僕だって自分自身に期待していましたからね。
 感じるものがあったとはいえ、ギャンブルなんて世間的には完全に非常識な選択です。説明したって誰も理解してくれません。でも僕は、こう言ったんです。「やっと本気になれるものを見つけたんだ。常識外だからやめましたなんて結論を出したら、オレ自身がクソなんだよ!」って。
 その1千万円は自分で稼いだおカネだから「自由に使えるんだ」と再確認しましたし、ちょうど彼女と別れたあとだったので「あっ、1人で自由に行動できるんだ」という気持ちもありました。

 

 「刹那的で無計画な若者だった」という印象を受けるかもしれない。だが読み進めてもらえばわかるように、新井氏のものごとに対する真剣さや、準備を怠らない姿勢は実に素晴らしいものだ。最大の長所は、常にゴール(目標)を定めて行動するところだと私は思う。「どこに向かっているのだろう」「何をすれば達成なのか」という視点を大切にしているのである。
 初めて顔を合わせたのは、前述したように、トレードに関するトーク番組だったが、彼は事前に関係者のことを調べてから現場に来ていた。そこに集まる人たちの情報を集め、出演する人間については過去の放送をUstream(動画配信のインターネットサイト)で見て、顔と名前だけでなく立場や考え方まで確認していたのである。放送は林投資研究所のセミナールームから行ったのだが、私が外出先から戻った時にはすでに新井氏も来ていて、初対面にもかかわらず部屋に入った私の顔を見るなり「林さんですよね」と名刺を差し出してきた。
 終了後の食事会でも酒を口にせず、真剣なまなざしで私たちの話を聞きながら議論に参加してきた。飲まない理由を尋ねると彼は、「いや、初めて会う人ばかりだし自分の知らない分野なので、ある意味、“勝負”なんですよ」という答えが返ってきたのだ。この時に私は、「チャラチャラとした気持ちでギャンブルをやって、たまたま勝ってきただけの人ではない」「番組中に感じていた通りだ」と確信した。
 さてギャンブラーになった経緯が明らかになったところで、ギャンブラーとして勝てるようになるまでの勉強について話を聞いた。

第2回につづく>

このインタビューは2013年12月11日に林知之が行い、林投資研究所が発行する『研究部会報』2013年11月号に掲載したものです。


プロギャンブラーのぶき(新井乃武喜)
15年間カジノに勝ち続けたお金で、世界82カ国を旅し続ける。震災後、被災地のボランティアのために一時帰国したところ、「ギャンブルの勝ち方が金融トレードに通じる」と評判になり、投資関係者からのトーク依頼や執筆の依頼が激増、現在も日本にステイ中。

12月8日放送のフォローアップ(4)
林 知之

シグナル配信の趣旨と使い方

マーケット・スクランブル、昨年12月8日の放送は「トレンドにつくために」というテーマでお送りしました。
そのフォローアップ(4)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第50回 トレンドにつくために~個別銘柄の動きを分析する基準1~

番組で紹介した「中源線のシグナル配信」について、特徴を整理して説明します。

個別銘柄および株価指数(日経平均およびTOPIX)について、中源線によるシグナル、つまり「陰陽の別」と「3分割の売買」を示します。

ロジック(売買ルール)が公開されていないシステムでシグナルだけを見る、つまり“最終的な答え”を受け取るだけだと、単に「当たった。外れた」を評価して一喜一憂する、良くない流れに陥ってしまいます。

でも中源線は、ロジックをすべて公開しています。

だから、当たり外れという目先の結果を見ながらも、その理由を探ることによって、将来につながる実践的な事柄を考えていくことができます。
「キザミ」と呼ぶ、唯一といえるパラメータを変化させることで結果がどうなるのか、どんな銘柄に合うか(そして、その理由は)、どんな動きでよく機能するか(なぜなのか)、というように具体的かつ実用的な研究に結びつくのです。

これこそが「中源線研究会」のテーマです。
そしてシグナル配信は、中源線研究の“目玉”ともいえる取り組みなのです。

中源線研究会に登録(無料)するだけでも、一定のシグナル情報を閲覧できるようにする予定です。
2015年1月中にはスタートさせたいと考えていますので、興味のあるかたは、ぜひ登録してください。

シグナル配信画面20141215

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

中源線研究会
 登録(無料)だけで、中源線シグナル配信(近日サービス開始)で一定の情報を閲覧できます。

12月8日放送のフォローアップ(3)
林 知之

中源線の実例 日経平均

マーケット・スクランブル、12月8日の放送は「トレンドにつくために」というテーマでお送りしました。
そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第50回 トレンドにつくために~個別銘柄の動きを分析する基準1~

今回は、日経平均の中源線チャートを見てみます。
期間は、2014年6月2日~12月25日です。

中源線個別銘柄

うまく合っていることがわかりますね。

10月1日まで陽線(5月26日に陽転した)
10月2日陰転
10月31日陽転し、その後は陽線のまま現在に至る

「相場についていく」というのが中源線の基本的な思想で、いわゆるトレンドフォローのシステムです。したがって、転換は少し遅れる傾向があります。しかし、感覚的にはとても納得のいく部分ですし、それゆえ「使いやすい」という評価が多いようです。

ちなみに5月以降の上昇局面において、番組で紹介した旭化成(3407)は5月13日、三菱重工(7011)は5月9日に陽転しています。日経平均よりも先行して上昇し始め、それに伴って中源線も陽転していたわけです。

中源線建玉法
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ウルフ村田こと村田美夏
特別インタビュー 5/5

「トレードすることで人とつながりたい」

村田美夏行動派の独立トレーダー
村田美夏

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2014年1月号掲載


第4回からのつづき……

3.トレードを続ける理由

──ところで美夏さんは、エンジェル投資だけでなく寄付の活動もしていませんでしたか?

 はい。エンジェル投資や、それに付随する各種の支援などと同じ感覚で行っています。例えば私が所属しているNGO「BPW」では、国連で行われる会議に若い人を連れていくという仕事があるのですが、優秀な若い人が余裕で休みを取って航空券や宿泊代も負担できるとは限りません。むしろ逆です。しかし全額を誰かが負担してしまったら「自立心が育たない」というような論理もあるので、人選を行うかたわら費用の一部分を私が負担しています。
 あとは、農業のビジネスプランコンテストを援助したり、出身校を含めた数校の学生たちを対象に、彼らが自発的に行う活動を助けたりもしています。

──BPWとの出会いって何だったのですか?

 APEC(注)が2010年に日本で開催した会議に、経産省の人の紹介で私も参加していたのですが、そこに参加していたBPWの人たちと出会ったのがきっかけでした。

(注)APEC、エイペック
 アジア太平洋経済協力、Asia-Pacific Economic Cooperation。太平洋を取り囲む21の国と地域の経済協力を実現する枠組み。

──行動範囲が広いと、いろいろなことがありますね。ちなみに美夏さんが代表を務める「サクセスワイズ」という会社が、個人的な援助活動の基盤となっているのでしょうか?

 そうです。最初は個人でやっていたのですが、信用を築いたり活動をスムーズにするためには法人のほうがいいというアドバイスを知人からいただいたので、富士通に協力してもらって平成22年(2010年)2月2日に会社を設立しました。私はいまだに文章を書けないので(笑)、マニュアル的なものを富士通の人に作成してもらったりしています。大きな会社が認めてくれたうえに支援してくれるので、活動の方向も明確になるなど、ものすごく助かっています。

──そういう話をあらためて聞くと、美夏さん自身はさっぱりとしているのに、一方でガツガツとトレードする部分があることを納得できます。

 そういってもらえると、うれしいですね。
 専業トレーダーなので株で利益を上げないと生きていけないのですが、なんだか自分のことだけを考えていると落ち着かなくて……。きれい事に聞こえてしまうかもしれませんが、「トレードで生活費を稼いでいます」っていうのもなんだか気持ち悪いんですよね。トレードで勝って、「これで今夜、何人かと食事を楽しめる」みたいなのが心地いいというか……うまく表現できませんけど。

──でも、周囲から頼られ過ぎることもあるのでは?

 多少はあると思います。だから、「村田さん少し援助して」みたいなことを一方的に言われると、気持ちがなえることもあります。非常に微妙なところなのですが、同じことをするにしても、それが義務になってしまうと重たいものになり、余分な足かせがなければ楽しい目標になります。
 だから逆に「自分のために」っていう気持ちが強いと、どこかで必死になり過ぎてしまうんです。勝ったら人を助けることもできるという気持ちのほうが、良い結果にもつながるようです。

──個人で行うことなので、それこそブレが生じたりしますよね?

 その通りです。でも私の原動力みたいな部分なので、システマティックに組み立てるのが難しいというか……。しかしBPWという組織があって経験豊かな人がいたり、サクセスワイズを富士通の人が援助してくれながらチェックしてくれたりと、筋の通った活動を維持する仕組みは出来上がっていると思います。
 単純に個人で行っていたころと比べて、“レイヤー(階層)が上がった”という言葉で私は評価しています。社会的に一段上になり、より効率的、より機動的になったと感じているので、それはうれしい限りです。
 こういった社会貢献的な活動も、ガツガツと利益を取りにいくデイトレードも、一定のカタチがあったほうが安定するというか、安心して直感的な行動を取れるという共通点があると感じます。ですからトレードについても、過去の経験を振り返りながらレイヤーを上げていく努力をしていきたいと考えています。

 トレーダーというのは、しがらみがないかわりに孤独だ。だから継続していくためには内向し過ぎないように注意する必要があり、人それぞれで工夫を凝らしている。だが例えば、「相場でメシを食っています」と公言することに抵抗があるという理由でトレード活動を会社組織にしている、つまり公的な書類などに「会社役員」と書くだけ、という人も多いようだ。独りで相場を張るくらいだから不器用で、友だち関係をうまく築けない人も少なくない。
 そんな中で村田氏は、特別に器用とはいえないものの持ち前の行動力で周囲の人とつながりを保ち、孤立することなく社会人としての地位を不動のものにしている。彼女にとって、そういう立場を違和感なしにつくる手段が社会貢献であり、エンジェル投資や付随する人助けのようだ。
 人は、目標なしでは継続的に行動できない。「資金を1億円にする」というのも目標だが、「なぜ1億円なのか」「その1億円で何をするのか」という“達成した状態”をリアルに想像できないと、苦労しながらトレードを続けていくエネルギーなど生まれない。村田氏は自身の目標が「人とのつながり」と明確だし、単なるモノではないから相乗効果を生むという点で魅力的だと思う。
 インタビューの途中までは本当に照れながら自分のことを語っていたのだが、後半はとても自然な表情で次のように話した。

 「個人個人が、それぞれ持ち前の能力を発揮して助け合うのが社会です。私の場合はたまたま、金融というかトレードが自分の役割みたいなものなのだと思っています」

 これからも長くつき合っていきたいと感じる、実に“男前”の女性トレーダーである。

─村田美夏氏のインタビュー、終わり─ 

このインタビューは2013年12月11日に林知之が行い、林投資研究所が発行する『研究部会報』2014年1月号に掲載したものです。


村田美夏(むらた みか)
東京大学経済学部を卒業後、銀行に勤務。その後は独立トレーダーとして活躍。トレードの利益は、エンジェル投資などを通じて社会貢献に充てている。現在は(株)サクセスワイズ代表取締役社長として、社会貢献事業を本格的に進めている。

【村田美夏 関連リンク】

12月8日放送のフォローアップ(2)
林 知之

“基準を持つ”と迷わない

マーケット・スクランブル、12月8日の放送は「トレンドにつくために」というテーマでお送りしました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第50回 トレンドにつくために~個別銘柄の動きを分析する基準1~

実際に、中源線のチャートを見てみましょう。
番組でも紹介した、旭化成(3407)と三菱重工(7011)の中源線を見ながら解説を加えます。

中源線は、終値を線で結んだシンプルな折れ線チャートです。
そして、中源線のルールに従って「陽線」(赤)と「陰線」(黒)に色分けします。
陽線(赤)のときは、上がるという想定で買いポジションを取ります。
陰線(黒)では、下がるという想定で売りポジションを取るわけです。

中源線(旭化成)

旭化成(3407)は10月以降の上げが陽線で、おおむね良い感じです。
8月の陰転と9月末の陰転が、小さなダマシでした。
細かいことをいえば、10月の急落でいったん陰転し、10月下旬に再び陽転していたほうが“納得のいく”シグナルだったということですね。

中源線(重工)

三菱重工(7011)も当然、中源線に従って陰陽が明示されているのですが、10月後半以降は、値動きと中源線がうまく合わない状況だということがわかります。
10月はじめの陰転はいい感じですが、10月後半の上げでもなかなか陽転せず、かなり戻ったところでの陽転が結果的にはダマシとなり、次の陰転もダマシでした。

このように、状況によってはダマシが続くのですが、ダマシがなく、あらゆる場面で機能するシステム(数式的な判断)は存在しません。それなのに、「ダマシを減らして万能にしよう」というムリなアプローチをした結果、根本の思想が崩れて狙いが不明確なものが出来上がり、しかも次のシグナルを想像することが困難なシステムになってしまうのが、よくある失敗ではないでしょうか。

中源線のロジック(ルール)は、極めてシンプルです。
「常に人間の感覚とリンクしている」といっていいでしょう。
取りやすい状況と取りにくい状況の区別がわかりやすいため、実際に資金を投じてポジションを取るうえで安心感がある、結果として非常に実用的だと説明できます。

次回のフォローアップ(3)では、直近の日経平均について、中源線のチャートをご覧に入れます。

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

中源線研究会
 登録(無料)だけで、中源線シグナル配信(近日サービス開始)で一定の情報を閲覧できます。

ウルフ村田こと村田美夏
特別インタビュー 4/5

「トレードすることで人とつながりたい」

村田美夏行動派の独立トレーダー
村田美夏

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2014年1月号掲載


第3回からの続き……

2.トレーダーとしてデビュー(つづき)

──デイトレードでは、レバレッジを利かせていますか?

 はい、信用取引を使って膨らませますね。林投資研究所が示す「片玉2分の1」という手堅い基準とは異なりますが、1日あるいは数日間の変動幅を計算して割り出しています。
 でも、膨らませ過ぎてしまうという心配もありますよ。

──実際に「やり過ぎちゃった」ということも?

 日々の動きを追っているうちに今年(2013年)、1銘柄あたりの金額が増えてしまいました。自分でも違和感を覚えましたし周囲の人の助言にも耳を傾け、あらためて資金配分を見直した経緯があります。トレードではスタイルを固定することが大切ですが、試行錯誤も必要ですよね。でも人間がやることなので計算通りにはいきませんし、同じことを続けているつもりでも知らないうちに狂いが生じます。そしてその狂いは、意外と大きくなるものだと思うのです。

──気持ちのズレみたいな部分ですか?

 はい、トレードは感覚的に行う部分が大きいので、どうしてもズレが生じます。例えば信用取引の枠が2億円分あるといっても、それは自分のおカネではありません。ただの借金ですから。それなのに毎日トレードをしていると、自分のおカネのような気がすることもあるわけです。単なる錯覚なんですけど、勝っているときにはそういう方向に傾いちゃう──。
 ヘンだと思われるかもしれませんが、まとまった現金を銀行から引き出して眺めてみることがあります。そして、「先月○○で損して、この半分が消えたんだよな」なんて物思いにふけるんです(笑)。

現金と愛犬

現金と愛犬

損金が出たら現金で決済しますが、その現金だって口座の中にありますから実感が薄いわけですよね。もちろん「カネカネ」って考えていたらトレードなんてできませんが、自分が完全にデジタルの世界に行ってしまうと、これはもうどうしようもありません。トレードの世界と現実を、どこかでつなげておかないと大失敗すると思うんです。破産するケースでは、常識的な人なのに100万円も1,000万円も同じに思えてくるようなことが起こるのではないでしょうか。

 最も気をつけているのは、取れるときだけ取りにいくということです。トレードの幅を広げても、いつでも取りにいくような姿勢だと近視眼的になってしまいますから、「一生懸命にならない」「必死にならない」というのがキーワードで、やらないときは徹底的にやらないで見ているだけですね。

 ふだんの会話で村田氏は、儲けたことよりも失敗した話を持ち出し、「今朝、これを3万株買ったら爆(ばく)下げして……」といった具合に自虐的な話し方をする傾向がある。彼女なりに自己開示することで、周囲の人からのストレートな意見を取り入れようとしているようだが、私から見れば非常に誤解を招きやすい部分だ。そもそも一貫性のないことをしていたのなら、10年以上もトレードだけで生活できるはずがない。適切なポジション管理や自己管理を行っていることは、じっくりと話を聞いてみないとわかりにくいのだろうと思う。
 インタビューにおいては、以上のような点に気を配りながら行ったことをつけ加えておきたい。
 さてそんな彼女の特徴を差し引いてもなお、トレードに対する特別なエネルギーを感じさせるものが残る。その疑問を解くために、なぜトレードするのかという根幹の部分についても詳しく聞いた。

第5回へつづく─ 


村田美夏(むらた みか)
東京大学経済学部を卒業後、銀行に勤務。その後は独立トレーダーとして活躍。トレードの利益は、エンジェル投資などを通じて社会貢献に充てている。現在は(株)サクセスワイズ代表取締役社長として、社会貢献事業を本格的に進めている。

【村田美夏 関連リンク】

12月8日放送のフォローアップ(1)
林 知之

“基準を持つ”と迷わない

マーケット・スクランブル、12月8日の放送は「トレンドにつくために」というテーマでお送りしました。
そのフォローアップ(1)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第50回 トレンドにつくために~個別銘柄の動きを分析する基準1~

多くの人が、トレードの基準について迷っていると思います。勉強や経験から“自分自身のワザ”を思いつきながらも日々、予想外の動きをみせるマーケットに対して完ぺきを求めたくなります。いつしか、多くのニュースを気にしながら、予測不可能な部分まで「当てよう」とします。

つまり、自らの基準で考えるのではなく、外から入ってくる膨大な情報に振り回されることになりやすいのです。

このように受け身の姿勢だと、「上がるか下がるか」「買いか売りか」といった短絡的な思考に陥ります。トレードで重要な「時間の経過」を無視した考え方になってしまうわけです。

誰もが気にする「買い値」と「売り値」に「時間の経過」を加えると、チャートが出来上がります。タテ軸の「価格」とヨコ軸の「時間」(日柄)、この2つがそろわないとチャートにはなりません。

チャートは、トレンドを示してくれます。そして私たちトレーダーが注目するのは、「トレンドの転換」です。

転換する瞬間を常に正確に捉えるのはムリですが、「この上げトレンドが続くのか」「トレンドが変わったのか」と観察し、自分なりの想定を基にポジションを取るのがトレードです。

でも実際は、冒頭で述べたような理由で、自分なりの想定を安定させることが難しいものです。それでも、なんとか考え方を整理し、きちんと実行できるようにするために狭い範囲に絞った自分自身の“方式”を持つことが、勝つための絶対的な条件なのです。

方式によって特徴はありますが、優劣はないはずです。もし劣っているものがあるとすれば、なにかが欠落していたり、整合性がなかったり、つまり方式として成立していないものでしょう。

さて、林投資研究所で提唱している方式のひとつが、番組でご紹介した「中源線建玉法」です。「建玉法」の名前の通り、予測法にとどまる非実用的なものではなく、ポジション操作と資金管理の考え方を併せ持つ、完成された手法です。

予測法の部分に関しては、終値だけでシンプルな折れ線チャートを引き、直近の上げ下げからトレンドを見定めようということです。

コンピュータがなかった時代に考えられたものなので、システムトレードをかじったことのある人にはもの足りなく感じられるかもしれません。しかし、常に感覚的につかみやすいという特徴があります。わかりやすいということは、自分のカネを動かすうえで安心感があるということです。

難しいトレードシステムや、判断基準が不明でブラックボックスとなっているようなシステムを使う前に、中源線で“人間の感覚に近い”機械的な売買を経験してほしいと思っています。

次回のフォローアップ(2)では、番組でご覧に入れた個別銘柄の実例について、少し詳しい解説をしたいと思います。

中源線建玉法
 最古のトレードシステムといわれる中源線は、シンプルなルールなので感覚的に捉えることが可能です。

中源線研究会
 登録(無料)だけで、中源線シグナル配信(近日サービス開始)で一定の情報を閲覧できます。

ウルフ村田こと村田美夏
特別インタビュー 3/5

「トレードすることで人とつながりたい」

村田美夏行動派の独立トレーダー
村田美夏

文: 林 知之
林投資研究所『研究部会報』2014年1月号掲載


第2回からのつづき……

2.トレーダーとしてデビュー(つづき)

──素晴らしいですね。では、現在の基本的なトレード戦略を説明してください。

 基本的には「買い」です。さまざまな観点と理論があると思いますが、長銀の時代から「企業を支援する」という発想があるので、値ざやを求めるトレードであっても、買いから入るほうが心地いいと感じます。
 カラ売りも手法としては使いますが、割と限定的です。むしろ、十分に下がるまで待ってから買うというイメージのほうが強いですね。
 ちなみに長銀は破綻が決定する過程で、外資によるカラ売りでいじめられました。カラ売りは制度として認められている売買方法ですし、マーケットの厚みが増して価格形成や流通を向上させる効果があるわけですが、金融が肥大化してからは極端な使われ方もみられます。大いに疑問ですよね。

──買い戦略における銘柄の選定は?

 そこは企業秘密ですし、手法をブログや本に書いているわけではありませんから説明の言葉を探すのが難しいという問題もあります。でも、概略を話すことはできます。
 いくつかの観点からきちんと調べ、成長性のある企業を選びます。もちろん目先の業績推移でもなければ業界紙が取り上げるようなテーマでもなく、ちゃんと経済の時流に乗り、かつ、目利きのヘッジファンドなどが選定するような優良銘柄ですね。
 そういった銘柄を10銘柄、多くても20銘柄という範囲で注視していきます。

──バイ・アンド・ホールド、ではありませんよね?

 バイ・アンド・ホールドではありません。日本のマーケットでは長期保有で結果を出すのが難しいですし、どうしても人気による値動きがありますから、成長性をベースに絞り込んだあとは人気に乗ってトレードする、という考え方です。だから値動きに応じてポジションを動かしていますよ。だから買いだけでなくカラ売りも、そのポジション操作の中で限定的に行っています。
 「成長性」というのも机上の空論では意味がないので、マーケットで評価される成長性、買いを集める成長性であることが不可欠だと考えています。だからその延長として、例えば成長する過程で新興市場から一部市場に上場する際の人気に乗るというような、イベント投資的なことも行います。
 かたくなに手法を絞るというスタイルではなく、少し幅を持ってチャンスを拾っていくイメージはあると思います。

──成長性のある銘柄をじっくりと手がける一方で、デイトレードも積極的に行っているようですが。

 長銀を辞めて専業トレーダーになった時点で、自分自身の状況が全く変わっています。プロとして、より安定した結果を出すことが必要になりました。そのかわり、自由に時間を使えるようになったわけです。まずは過去の経験を基に、トレードの頻度を少し高めました。これは当然として、ネット取引の環境が整う過程でデイトレードを並行していく方法を思いつきました。割と自然に、「ここにも十分なチャンスがある」というだけの理由でしたね。

──2つの方式を同時に行って、混乱しませんか?

 その懸念はありますし、管理には気をつかっています。取引口座を分けてそれぞれに資金を配分し、頭の切り替えに努めています。長期トレンドを見ている銘柄には、ポジション操作によって増減はありますが、約1億円を充てています。その別に米国株なども持っていますが、デイトレード用に信用取引の枠を約2億円維持し、余裕資金としての現金も確保しています。
 このような感じで今のところ混乱はないのですが、全体の管理は重要なので常に確認するようにしていますよ。

──デイトレードの銘柄は、また別な基準で選ぶわけですよね?

 デイトレードですから、比較的コンスタントに動きのある銘柄を選ぶようになります。自分の基準を言葉にするとどうなるのかが、それほど明確ではありませんけど、一定の価格帯を往来するような銘柄を選んでいると思います。
 でも長期で手がける銘柄もデイトレードの銘柄も、「下値不安がないものを基本的に買いから入る」という点で共通しています。2つの軸で何もかもが違っていると、独りでは管理しきれないように感じます。それに、たとえ目先を追うデイトレードであっても、実際の株価のサイクルは長いので、長期戦略の銘柄と同じように過去20年間の上げ下げまでチェックすることは習慣にしています。
 また、反対売買のことを考えれば一定の流動性がないといけないので、動きがあればいいということにはなりません。だから、何でも手がけた結果として散らかってしまう、なんてことにはならないのだと自分では考えています。

──完全なデイトレード、つまり日計りが多いのですか?

 いえ、状況によってはその日のうちに手仕舞いしますが、翌日や翌々日に持ち越すことも私の標準的な方法です。スイングトレードではありませんが、ザラ場で小幅の利益を取っていく、いわゆるスキャルピングの手法でもありません。

──デイトレードで注意していることは何ですか?

 デイトレードにはネット取引を使うので手数料は非常に安いのですが、その安い手数料に頼っているとうまくいかないと思います。手数料自由化前の対面取引の環境、つまり往復で約2%を支払っても気にならないくらいの変動を狙うほうが、良い結果につながると私は考えています。
 周囲の人のミスや自分のミスを総合的に分析してみると、手数料が安いという理由から「いつエントリーしてもいい」みたいな発想が生まれたときは、やはり売り買いが雑になります。エントリーや損切りが遅れますし、集中力が不十分だったりもするはずです。

第4回へつづく─ 


村田美夏(むらた みか)
東京大学経済学部を卒業後、銀行に勤務。その後は独立トレーダーとして活躍。トレードの利益は、エンジェル投資などを通じて社会貢献に充てている。現在は(株)サクセスワイズ代表取締役社長として、社会貢献事業を本格的に進めている。

【村田美夏 関連リンク】

11月10日放送のフォローアップ(4)
林 知之

“痛い目”に遭いにくい低位株投資「FAI投資法」

マーケット・スクランブル、11月10日の放送は「リスク管理」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(4)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第48回 相場で“痛い目”に遭わないための工夫

低位株とはどういうものか──その定義は、分類の方法によって大きく異なるでしょう。
万人に共通するものはありませんが、林投資研究所のFAIクラブでは「400円未満」と決めています。

でも、例えば株価が5円とか10円というように、極端に悪い評価を受けている企業が劇的に良くなる場面を狙うのではありません。企業内容は問題ないのにマーケットの人気の外にある銘柄、一時的な業況悪化で下げている銘柄を対象に、安全な売買を進めていこうというのが根本的な発想です。

選定した銘柄のすべてが、番組で紹介した日清オイリオ(2602)ほど見事に手堅い動きをしているわけではありませんが、非常にストレスが少なく、多くの個人投資家にお勧めできる方法であることは間違いありません。

ただし、対象銘柄が幅広いことや、どちらかというと“日陰”の銘柄なので、選定するために膨大な資料が必要となります。実際にFAIクラブでは、メンバー各自が最低でも300銘柄の月足を手描きしていますし、会社発表の業績値(実績と予想)について過去の推移がすべてわかるような特殊な資料を作成して観察しています。

そして毎月の例会にメンバーが集まり、じっくりと討論して銘柄を選定しているのです。この例会は、FAIクラブが発足した1984年以降、東日本大震災の翌日を除いて欠かさずに続けています。

FAI例会風景

そんな作業を経て選定したのは現在、66銘柄ですが、その約3分の1にあたる21銘柄は選定した時点から倍化またはそれ以上に上昇しています。しかし、まだまだ低位に甘んじている銘柄はあり、これから先が楽しみな状況といえます。

FAIクラブの選定銘柄は『研究部会報』に掲載していますし、関連する読み物や選定銘柄の月足解説などもあります。

多くの人が「ラクだ」「余裕をもって売買に臨める」と評価してくれるFAI投資法は、わかりやすく29項目のルールによって構成されています。トレードで迷いがある人は、地味ながら堅実なFAI投資法を学んでみてはいかがでしょうか。

研究部会報
 林投資研究所で40年以上続いている、プレーヤーのための定期刊行物。

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