プロに学ぶトレード姿勢
裁量トレードがいいか、厳密なルールに従う機械的トレード(システム)がいいか──まさに、トレードにおける“永遠の課題”ですが、好みによる使い分け、哲学に応じた融合など、自分なりの答えを出すことは可能です。
9月11日の放送では、その場の気分で考えたり、短期的な結果論に陥らずに進むためのヒントを示し、いくつかの観点から掘り下げてみました。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第116回 うねり取りの機械的判断を深く考える ~中源線と裁量、どっちがいいの?~)

おしりの穴がムズムズする
9月放送の事前打ち合わせで、大橋ひろこさんが面白い話をしてくれました。
ある高名な実践家にインタビューした際に「どんな状況のとき、ポジションを切ってしまうのですか?」と質問したところ、「これはよくないというとき、おしりの穴がムズムズするんだよ」との返答だったそうです。
一瞬、笑ってしまうのですが、すごくよくわかります!
正しい裁量トレードは、ほぼ数式化できるくらいカチッとした基準で進めていくものです。ただ、実際に数式化しようとすると、強みである感性がどこかに飛んでいってしまうので、「これはオーケー」「これはダメ」といった感覚を残したまま行動するのです。
決して、あいまいな想像と思いつきではありません。
結果として、自分にとって「切るべき」場面で──その行動が結果的に当たるかどうかは別として──「よし、切ろう」と決断できるのです。
なんだか違和感を覚える、経験から“よくない状況”だと感じる、そう悪くないかもしれないが続けていても上手に対応できそうもない……こういったプレーヤーとしての“感じ方”を判断につなげ、迷わずに行動するということです。

着陸をやり直す基準
おしりの穴がムズムズ……同じようなことが、ほかの分野にも必ずあります。
私は飛行機の操縦資格を持っていますが(自家用)、学んできたオペレーションの中には、理屈にならない理屈のような教えもありました。「なんとなくイヤな感じがしたら、着陸をやり直せ」と、インストラクターから言われたことがあります。これについては反論もあるのかもしれませんが、「おしりの穴がムズムズ」で思い出し、トレードも同じだなあ、万が一を考えて危険を避ける判断は必要ではないか、と感じました。
なんとなくイヤだ……そんな場面で決断を先送りすると、あまりいいことはありません。利が伸びる方向に動いたとしても、その後の行動がギクシャクしがちです。逆行した場合は、意地になってしまう傾向があります。能力が足りないのではなく、それが人間の自然な心理なのです。
中源線のように、弱くなったら「陰転。ドテン売り」、強張ったら「陽転、ドテン買い」と素早く判断して行動を取ることは、とても重要です。今までのポジションを切るだけ、つまりドテンせずにポジションなしのまま「待つ」ことも相場ですが、すでにあるポジションに違和感が芽生えたのに維持して「待つ」のは、明らかに間違いなのです。

裁量のシステム化
「裁量のトレードも、ほぼ数式化できる」と述べました。
では、システム化することで何が起きるか──。強みである感性がどこかに飛んでいく可能性、感覚と経験によって少しずつ修正していく機能が弱くなる、といったマイナス面が発生し得るのですが、システム化の利点もあるので十分に成立します。
いや、そもそも大部分のシステムは、生身の人間が考えたロジック(判断基準のアイデア)を数式化したものです。既存のシステムを検討する際、「これは儲かるかも!」などとコーフンせずに、数式に落とし込むプロセスで大失敗がなかったか、大元の発想にあった強みが消えてしまっていないか、といった観点でチェックするべきなのでしょう。販売されているシステムについて、そういった大切な情報が開示されていれば、の話ですが……。
中源線も、実践者の素直な感覚を数式に落とし込んだものです。
素晴らしいと感じるのは、「精度を上げようと躍起になった形跡がゼロ」だという部分です。この部分の評価は人によって異なるでしょうが、ロジックを完全に公開しているので、じっくりと考えてもらえる環境があります。
中源線のルールを理解して深く考えると、矛盾があるような、穴があるような……そんな気持ちになります。それだけ、ムリな数式化を避けてきたプロセスを確信できる出来栄えだと私は評価しています。
システムか裁量か……“白か黒か”で考えがちですが、根っこは全く同じ、細分化したときに「ここに、こんな効き目がある」「この部分に、こんな特性がある」などと丁寧に分析していくことが大切なのだと思います。
「これ、儲かりますか?」
「勝率は何%ですか?」
勝手にカネ儲けしてくれる“打ち出の小槌”など存在しません!
お任せ状態で利益だけほしいなんて気持ちが少しでもあると、悪い輩にだまされるのがオチです。

システムを裁量でコントロール
システムも裁量も同じ、と説明しましたが、便宜的に分けておかないと混乱するケースが多いと思います。
事前に決めた通りに売買するのがシステムです。
それに対して裁量は、事前にいろいろなことを決めておくとはいえ、判断基準に若干の幅をもたせたり、状況に応じて少しだけ変更の余地を残しておきます。
実際には、システムを動かしながら「ルール変更を検討する」こともありますね。「よし、この部分をこう変えてみよう」と確信したら、ポジションがないときに手を加え、変更を施したシステムを再び稼働させます。100%完全なものがない以上、こういった改良を加えるのが、ある意味、当然です。
では、ルール変更を検討している部分について、ポジションがある状態でルール無視の対応をしたら? 例えば、システムが「売り」と指示しているのに買いポジションを維持した場合、上がればいいのですが、どんどん下がったときに“次の一手”がないまま迷走してしまいます。
でも、「買いポジションを維持するが、〇〇円まで下げたら切る」と決めておいたら、どうでしょうか? システムではなくド裁量ですが、トレードの決断としては成立しています。
難しい話にしてしまいましたが、“白か黒か”だけで判断できない部分が多々あるということです。しかし、原則は以下に示す通りです。
- 必ず事前に決めた通りに売買する(システムでも裁量でも)
- 思いつきの行動は避ける
- 新しいアイデアは、ポジションなしの状態で仕上げて次のトレードから実行する
軽率な行動は、その1回で大損する可能性が生まれるだけでなく、長く続けるトレード活動で試行錯誤するプロセスが、わからなくなってしまう危険性をはらんでいます。
人間の創造性こそが、勝つための要素です。
しかし、人間だからこその弱さも十分に認識しておくべきです。
ちょいと一杯のつもりだったのに、いつの間にやらハシゴ酒……その次もやらかします(笑)。

ステキな「自分流」構築法
実際の中源線チャートを見ながら、“裁量によるアレンジ”を考えてみましょう。
下に示す牧野フライスは、林投資研究所の中源線シグナル配信において、「ユニバース」(パフォーマンスが良好かつ安定している研究対象銘柄)に選定している銘柄の1つです。
2016年10月後半に陽転したのですが、翌11月はじめに陰転しました。
しかし、米大統領選のあとの上昇で素早く陽転し、大きな上げを取ることができました。
2017年3月、天井から少し下げた時点で陰転、このあと現在までのダラダラ下げをうまく捉えていますが、下げの途中で2回、ダマシの陽転が起こっています。
このダマシを避けることはできないか──。
実践者として、当然の発想ですね。
でも、「売ったまま」というのは、ルールに反する行動です。
陽転して「買いなさい」と言われているのに売りポジションを維持する……結果的には当たっていますが、その時点では知りようのない未来です。売りポジションを放置したまま大きく上伸したら、フリーズした状態で評価損が膨らんでいくことになります。おそろしい・・・
ひとつの例ですが、この陽転で「売りポジションは手仕舞う。しかし買わない」という対応はアリです。ポジションゼロの状態で、「再び陰転したら売り出動」と決めて状況を見守るという決断ですね。もちろん、陽転が正解で上伸した場合は、利益を取り損ないます。そういう「機会損失」を覚悟した裁量です。
これならば、「次の一手をなくして迷走する」ことはありません。
ただし、「ダマシかもしれない」と判断する基準は、明確にしておく必要があります。
とことん明確にすることができるなら、それもルールに加えるべきで……こうして、深い思考にのめり込むのが、トレードというシゴトなのです。
これで、9月11日放送のフォローアップは終了です。
次回放送は10月16日、ちまたにある投資関連情報を見極めようということで、次のようなタイトルを考えています。
「投資情報のウソ・ホント」
まだ決定ではありませんが……お楽しみに!
うねり取り株式投資法 基本と実践
古典の価値、これからのマーケットでの利用法を現代風かつ実践的に解説。しっかり儲ける、うねり取りのバイブル!
発行 マイルストーンズ/発売 丸善出版
2017年8月新刊
入門の入門 中源線投資法
中源線の基本ルールを公開しているほか、すべてのトレードに通じるプロの視点を惜しみなく紹介。
林投資研究所オリジナル
新版 中源線建玉法
中源線の原典の書。ルール解説から現実の応用まで、詳しく解説。
林投資研究所オリジナル
中源線第一部(無料)
書籍『中源線建玉法』の「第一部 解説」には、無料配布版があります。印刷版(無料郵送)のほか、PDF版またはeBook版(ダウンロード)もあります。
ブレない投資手法 曲げない投資哲学
~相場に立ち向かうための「起承転結」~
林投資研究所が発信する“渾身のメッセージ”
目次などの詳しい情報はこちら(内容のチラ読みもできます)
【詳説】うねり取り実践
~株式売買記録と解説~
たいへん貴重な売買の実記録と、林輝太郎による実践的な解説。
林投資研究所オリジナル(旧書名「株式売買記録と解説」)
FAIクラブの株式投資法
長年続く普遍的ノウハウ、低位株投資「FAI投資法」の原典。
林投資研究所オリジナル
※「研究部会報」および「中源線シグナル配信」は、林投資研究所が行っている投資助言サービスです。契約にあたっては、林投資研究所が交付する「契約締結前の書面」をよくお読みください。























