10月6日放送のフォローアップ(4)
林 知之

事が起きてから「どうしよう」ではちょっと遅い

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(4)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

前回のフォローアップ(3)で、「自分自身の予測」という表現を使いました。「予測は当たらない」という前提が大切なのですが、自分の戦略における自分の見通し、自分の想定というものがなければ、行動を取ることはできません。だから、とても大切なことです。

自分自身の予測があり、多少の意地がなければ、ただ流されるだけです。
ちょっと上がったら「上なのか!」と買いつき、下がったら「あらら、下なのかな?」と買い玉を切る……そんな後追いばかりになります。

ですから、見込み違いのミスは当然と考えながら、上がる前に買う、下がる前に売る、という行動を取ることになるのです。実際には値動きの一部分しか取れませんが、一部分でも取って勝ち逃げれば勝者です。

多くの人は、せっかく経験が豊富だったり、時間をかけて理論を勉強しているのに、なかなか自分自身の戦略を持てずにいます。
あるいは、頭の中には自分の戦略があるのに、それを実行することなく周囲の情報ばかりを気にして“正解探し”をしてしまいます。

だから、行動はすべて後追いになります。

予期せず暴落したあと、「このあと、どうしよう」と新聞やTVニュースで情報を探します。残念ながら、誰も正解を持っていないのに……。
急に上がった場合は、「今からでも買っていいのか?」と他人に質問します。未来が見えている人など、どこにもいないのに……。

しかし自分の想定があれば、迷いながらも自分の答えを出すことができます。そのためには、たとえ現物投資であっても「買って持つ」という発想を捨て、「売るために買う」という当たり前のことを日頃から意識することが大切でしょう。

「売る」という行為、「売り」という概念を、積極的に考えてみてください。

10月6日放送のフォローアップ(3)
林 知之

個人投資家がヘッジするときのテクニック

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(3)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

利益を求めてポジションを取りたい、しかしリスクは抑えたい──。金融取引ですから、リターン(期待収益)が大きいほどリスク(損失の可能性)は高くなるのに、私たち投資家は、できる限り高リターンで低リスクという矛盾する状態を求めるのです。

矛盾するとはいえ、2つのことが両立する状態に近づこうとするのが、資産運用という行為です。

ただし完全にリスクを抑えることなど不可能で、理論上、リスクをゼロにすればリターンもゼロになるのです。どこまでできるか、の勝負です。

例えば、株式を一定の金額で保有していたとすると、マーケット全体の一時的なブレによるマイナスを避けたい、と考えるのは当然でしょう。

しかしポジションを持ちっぱなしで希望通りになる、つまり「上がっても下がっても大丈夫」なんてことが簡単に実現するのなら、誰も苦労はしません。

動きの一部をうまく取るためには、ポジションを動かしていくしかありません。予測は常に当たるものではありませんが、自分自身の予測を基準に、なんとか動きについていけないのかと、必死になるのです。

保有している現物のヘッジ(値下がり回避)のために先物売りや株価指数連動ETFを利用する方法もありますが、考え方も売買も複雑になるだけで大きな効果は期待できません。

なので、単純に一部を売って持ち高を減らすことが基本です。
個人の資金量ならば、よほど流動性の低い銘柄を対象としていない限り、たとえ全玉であっても、極めて短時間で処分することが可能なはずです。

買い戦略における「売り」を単なる「終わり」ととらえるのではなく、臨機応変にポジションを動かしながら上げ下げについていくための手段だと考えればいいのです。

10月6日放送のフォローアップ(2)
林 知之

カラ売りなんてこわくない

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(2)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

「カラ売りは危険」という認識の人が多いと思います。
果たしてそうでしょうか?
こういう感覚こそ投資家の最大の誤解だ、と私は考えています。

「カラ売りは危険」の反対として、「現物投資ならば安全」という考え方をチェックしてみます。
根底には「思惑とは逆に下がっても、持っていられる」「売らなければ損にはならない」といった発想があるのですが、それは「失敗したから対処が必要だ」という問題を先送りしているだけといえます。

例えば1,000円で買った株が、半値の500円に下がっていたとします。
明日から大きく戻し始める可能性だってあるのですが、たいていは気持ちが続かなくなりますから、投げたところを境に上げ始めるという悲喜劇が展開されるわけです。そんなに大きく下げる前に対処して現金化し、その現金を効率良く別の銘柄に充てるべきでしょう。

こんなふうに考えていくと、躍起になってしまいがちな日々のトレードと少し距離を置くことができます。
「現物買いでもカラ売りでも、手元の現金を殖やすためにポジションを取るだけなんだ」ということです。前回のフォローアップ(1)でも示した観点ですね。

ここで、テーマである「カラ売りは危険」という考え方を、あらためて検証してみます。現物買いでもカラ売りでも、実は以下のように全く同じではないか、という視点を紹介します。

  1. 手元の現金を殖やすため、株を利用してポジションを取る行為
  2. 株価の動向によって評価損益が生じる
  3. 自分自身の決断で、いつでも手仕舞い可能
  4. 評価損でも損は損

「カラ売りは危険」というのは、強い銘柄とケンカしてポジションを取り、評価損を放置した結果、大きな損につながるケースがあるからです。
多くの人は、動意づいた銘柄に注目して買い方として参入しますが、カラ売りのときにも不思議と“動いて話題になっている”銘柄を対象として検討するのです。

強いと感じる銘柄は買いを検討する、カラ売りを検討するのは弱い銘柄、つまり下げトレンドに移行したと判断できるものにするべきです。
そして、こう考えれば、「カラ売りは危険」という考え方は少しゆがんでいるみたいだ、と思えてくるのではないでしょうか。

マーケットには日々、値動きがある、ポジションは自分の手でつくって自分の判断で手仕舞いする、という原則を思う浮かべれば、カラ売りだって特別なものではないということなのです。

状況によってはカラ売り戦略も有効だし、自分はそれを実行できる──こういう発想があれば、より広い視野でマーケットの動向を観察できるようになるでしょう。

10月6日放送のフォローアップ(1)
林 知之

株は買って持つもの?

マーケット・スクランブル、10月6日の放送は「売り」をテーマにお送りしました。
そのフォローアップ(1)です。
映像は、「過去の放送」でご覧ください。
(第46回 トレードの「売り」を考える~投資家の最大の誤解に迫る~)

「少し難しい」というご意見も届いていますが、とても大切なことだと私は思うので、一緒に考えてください。

多くの人に、「株は買って持つもの」という感覚があります。
これは“YES”だけど、同時に“NO”なのです。

株は「株式会社」の持ち分です。
株式会社とは、継続的に利潤を追求する組織です。
だから、株式を保有して利潤の一部を配当として受け取り、その企業が成長することで株価も上がる、というのが当然の狙いだといえます。
ごく自然な発想ですね。だから、「株は買って持つもの」は“YES”です。

一方で、“NO”というべき部分もあります。
「適正な価格」の形成を目的に上場され、多くの人が自由に売り買いできるようにしている結果、実は「人気」による変動が非常に大きいのです。

会社の内容がそれほど変わらないのに、株価が10分の1になったり、逆に短期間で数倍に跳ね上がったりします。
200円の株はストップ幅が80円、つまり1日で4割も動く可能性があるのです。
たった1日で4割も評価が変わるなんて、マーケットの「人気」としか説明できません。

だから、非常に内容の良い企業を見つけて「投資」する場合でも、投機筋と同様にマーケットの価格動向に合わせてポジションを調整することが必要だといえます。

よほど素晴らしいビジネスモデルがあって将来の成長性がガツンと期待される企業、つまりホンモノの「お宝銘柄」であっても、マーケットでの「人気」量を含んだ価格で売買するしかないというのが実情なのです。

一般的には、長期でも短期でも、マーケットの価格動向をにらみながらトレードします。つまり「買い」「保有」で終わらせず、「売り」も考える必要があるということです。手法にかかわらず、手元の「現金を殖やす」ために株を利用して「ポジションを取る」のですから、常に「売りと買い」がセットになるわけです。

こういう発想が弱い場合に、「期待通りに暴騰したが、どこで売るの?」とか、「期待と裏腹に下げた……どうするの?」といった事態に陥るのです。

人気が先行する株式市場では臨機応変な対応が不可欠ですが、買う前に「売り」を考えておく、カラ売りを仕掛ける前に買い戻しを考えておく、ビジネスの世界でよくいわれる「出口戦略」を事前に用意することが絶対に必要なのです。

強気だが、ゆがんだ官製相場を懸念(9/29)
林 知之

日経平均の上昇が話題になっていますが、今の相場は指数先行のイメージが強いようです。私が買いポジションを取っている小型低位の銘柄は総じてジリ高で、期待ほど値を飛ばすものはありません。

“肌感覚”による分析ですが、5月以降の上昇に乗れず、8月以降の動きにもついていけない人が多いのではないでしょうか。循環物色にもかかわらず大きく上伸するものが少ないのは、疑心暗鬼な向きが多いことを示している、という論拠です。

ややジレる気持ちがあるものの、「ジワジワとした上昇は買いポジション放置」という原則でジッとガマン、もうしばらく継続しながら状況を見守ろうというのが現時点での戦略です。

さて、こんな個人的な相場観やポジショントークはさておき、政府主導の株高政策に危うさを感じています。とにかく株や土地の価格を上げる、富裕層優遇でスタートして経済全体を活性化させる、というシナリオなのでしょうが、株式市場の構造に注目すると、すでにかなりの“ゆがみ”が生じていると感じてしまいます。

ETF(上場投信)を含めた日銀の株式保有が約7兆円に達し、年内にも日本生命保険を上回る可能性があると報じられています。多くの人が言及している通り、この異例の措置にどんな出口を想定しているのか──。NISA(少額投資非課税制度)は狙いとは異なる反応に空転し、若い世代の市場参入につながっていません。

また年間100万円という小さな非課税枠では、株高を支える要(かなめ)である富裕層を刺激する効果もないのは明白です。そして、指数先物の上場から25年も経過しているのに、指数先物の損益は、現市場である現物株の損益と通算することができないというお粗末な税制……。

私が直に見てきたのは1984年からの株式市場で、大きな出来事としてはNTTの民営化とそれ以降、ちょうど30年の推移です。その中で現在の市場は、規模が大きくなり制度が整っている半面、なんだか個性のない、いまひとつ人を引きつける魅力に欠ける感じがします。時価総額の増加や日経平均の上昇よりも、幅広い個人投資家が集まる活気ある場を切に望みます。