循環物色が到来?
株価指数が高値を追い、「悪材料で海外安が発生し、日本も全体に下げるのか」と思わせて下げない……今までにない不思議な強さに、戸惑う投資家が多い状況かもしれません。
そのためか、下げ警戒論が支持されて「買いたい弱気」が台頭する──常に強気と弱気がぶつかり合うマーケットに対して断定的なことを論じるのもどうか、というところですが、個別銘柄の値動きを見ていると、「食い散らかした」感がありません。今のところ、まだ買い目線でいいと私は考えています。
毎月第1週は定点観測。2月1日の放送では、上記のような強気の姿勢を紹介しながら、いつもの8銘柄を解説しました。
映像は、「YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」」でご覧ください。
3万円は通過点!? ~日経平均急騰の影で、面白い動き見せる個別銘柄~
買い飽きるってなに?
チャートを見ると、この銘柄は上がりたがっている──。
株価そのものを事象として観察しているのに、擬人化したような、とても情緒的な、味のある表現が使われることがあります。株式市場の「文化」と呼んでいいでしょう。
こうした情緒的な表現は市況解説でも使われますが、使い方に疑問を感じることがあります。
例えば、上げが鈍くなった状況を示すために「買い飽きた」とか……。
マーケット参加者はみな、儲かるのなら、とことん儲けようとします。
買い飽きるなんて、ないでしょ!
商業的に“万人ウケ”を狙った情報は、たいてい次の2つのどちらかです。
- 読者(投資家)の不安をグサッとつく
- 現実離れした期待を読者(投資家)に与える
私たち人間は感情の生き物です。
株式投資・トレードにおいても、情緒的な言葉を使って考えることが自然です。とはいえ、感情をかき回すような表現には警戒すべきです。
次項、冷静さを維持するうえで、株価が動くメカニズムを考えてみます。
株価が下がるメカニズム
株価が上昇するのは、買いが集まるからです。
では、弱気筋のカラ売りが下げ相場を引き起こすのでしょうか?
アメリカの株式市場で1月、ゲームストップという銘柄が大暴騰しました。
「ロビンフッダー」と呼ばれる個人投資家の集団(株売買の人気アプリ「ロビンフッド」のユーザー)が、機関投資家のカラ売りに真っ向から対立して買い上げたと報道されていますが、実は個人投資家の買いを扇動する存在があったとか、なかったとか……。
いずれにしても、こういった仕手戦(してせん)、買い方と売り方が“勝負”する構図は特殊なケースです。
通常は、「買い人気」で上昇し、その買い人気が膨らんでいく動きが止まることで、自然に下落トレンドに移るのです。上昇した時点から、下げを狙うカラ売りも増えるのですが、彼らは決して主役ではないのです。
「買い飽きる」ことなんてありませんが、上昇を疑問視していた投資家までもが強材料に納得した段階で、すでに新規の参入者は激減しています。ここが、天井を打って下落に向かうタイミングです。
ということは、個別の銘柄でも、マーケット全体でも、参加者の買い余力がなくなってきた、つまり、すでに多くの参加者が買いついて「上がってくれ」と強い期待を抱いている状態で黄色信号、赤信号が点灯するということです。
個別銘柄を見ると「まだ食い散らかした感がない」──これが、現在の株式市場に対して私が強気でいる根拠です。
2020年11月後半あたりから、物色の対象が移り変わる動き、いわゆる「循環物色」の色彩が感じられます。でも、まだクッキリした循環物色ではなく、過熱感もなく、参加者が乗れていない、買い余力が十分にある状況だと感じているので、2月1日の放送でもそれを紹介しました。
強気と弱気
「上がる」という予測を立てる強気筋と「下がる」と考える弱気筋がいるから、売りと買いが出合って値段がついています。上にいくか下にいくかは常に50%と考えるのが、理論的には正しいのです。
でも、私たちは実践家です。
株価を観察して理屈を言うだけの傍観者ではありません。
「わからない」という答えしか出ずに手を出さないケースはありますが、ポジションを取るうえでは「上がる」「下がる」のどちらかに態度を傾けなければなりません。
- 株価は買い人気の増減で変動する
- 全員が「正解」にたどり着くことはゼッタイにない
- ちまたの情報には注意が必要だ
こうした根底の理論をシンプルに受け止め、「自分の行動をどう偏らせるか」を考えるのが、株式投資・トレードという行為です。オトナとして、コントロール可能な範囲に抑える工夫は欠かせませんが、買うのか買わないのか、売るのか売らないのか、自分自身の方向性については、堂々と、思いきった決断をすればいいのです。
少なくとも、外部の情報に目を向けた“正解さがし”は通用しません。いや、オソロシイほどマイナスの影響しかありません。
実用性のない基準は捨てろ
さて、前項までで述べたことから、番組で紹介している中源線だって、相当に偏った価値判断を示すものだといえます。その意見は否定しません。
でも、きわめてシンプルな基準で強弱(上げ下げ)を判定し、利用者が判断する余地をたっぷり残しているところが非常に平易(プレーン)なのです。文字通り、プレーンオムレツのように、「好きなように味をつけて召し上がってください」ということです。
また、予測をムリに当てようとせず、3分割の売買でゆらりと株価の波を泳ごうとします。
ときどき使う表現ですが、「当てることを放棄している」といっていいほどプレーンなのです。
だから、番組を通じて多くの人に紹介し、中源線を積極的に使ったり、根底にある考え方を取り入れたりしてほしいと考えているのです。
世の中には「脅威の的中率、○○%!」なんて投資家を惑わすような宣伝も多いのですが、今回述べたような基本の理屈をサラッと再考するだけで、ホンモノとニセモノを区別することができるでしょう。
また、外部から受け入れて大切にしていたのに、よく考えたら実用性がなかった……自分のなかにある、排除すべき考え方に気づくこともあるでしょう。
オトナとして落ち着いて考えることができれば、少なくとも、「上がる」「下がる」と意見をぶつけ合う強弱論争には、興味がなくなるはずです。逆の意見を聞いたら「なるほど、そんな観点から弱気なんだね」と受け止め、「オレは、この部分に注目して強気なんだよ」と自らの意見を披露するだけです。
そして、淡々と自分の考えをポジションに反映させます。
予測が当たっても当然ですが、曲がっても当然……当たったら静かに利食い手仕舞い、曲がったら粛々と敗戦処理を行います。
こういった実践論を集約したのが中源線なのですが、どんな方法を用いる場合でも、プレーヤーとして堂々と、かつ落ち着いた姿勢を維持したいものです。
来週は、テーマ別の番組をお届けします。
私の強気論が当たれば、ここからも循環物色が継続し、それこそ「食い散らかした感」が強まるでしょう。その過程を傍観するか積極的に参加するかは人それぞれですが、急落へのそなえが求められるようになります。
2月8日の放送は、「日経平均はどこまで上がる? 株価急落前に打つべき最善手」というテーマでお送りします。
お楽しみに!
2020年12月新刊