株価急落の背景
今回は、ふだん触れない観点で直近の市況を解説します。
でも、よくある「解説のための解説」ではありません。
情報を整理しながら、実践者の結論を考える内容です。
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
夜明け前が一番暗い……陰の極シグナルか、大暴落の踊り場か

9月下旬からはミソクソ一緒
今月も、いつもの8銘柄をご覧に入れました。強くはありませんが、こうした個別株の値動きからは、日経平均が直近の1カ月ちょっとで約3,500円も下げたと実感できません。
「いったい、なにが売られたの?」
株が全体的に売られたということですが、その内容が問題です。そして今回のテーマですが、その前に、市況解説などで挙げられる弱材料に触れておきましょう。
昨今で最も不安視されているのは、米国の金利上昇です。
でも、おそらくは、コロナ禍から正常化する過程で生じたインフレへの、極めて機動的な金利政策の発動です。株式市場を収縮させるような政策は考えられません。
リーマンショック以降、政治は金融マーケットに積極的に関与しています。
コロナショックでも、政策によって十分な流動性が供給され、金融システムの不安は生じませんでした。
つまり、世界経済のファンダメンタル状況は低下していないのです。
そのなかで日本株は、さらに割安感が高まっています。
でも実際、9月末にかけてズルズルと下げました。
9月のおわりは、安値圏にあって「もう売られないだろう」と思える銘柄を含めて完全に“ミソクソ一緒”に売られてしまいました。
番組でもコメントしましたが、私自身が裁量で売買している口座は、気持ちよく利食いした銘柄もあるとはいえ、残っているポジションの含み益が消えてしまいました。
でも、放送の翌日には再び含み益の状態に戻りました。
見通しも売買戦略も変わらず、「慎重な姿勢でポジションを維持して強気」です。

いわゆる売り仕手
8月後半からの下げについて、業界で指摘されているのは、ヘッジファンドによる売り攻勢です。
コロナショック後に株価が大きく戻りましたが、そのあとのテーマが乏しいなか、上げ相場をけん引したグロース株が伸び悩んだのだと思います。
それだけでなく、コロナ禍が正常化する過程で生じた一時的なゆがみに対応する利上げが、いい感じの悪材料として顕在化していました。
直近の下げは、世界経済のファンダメンタルに不安がないなか、ヘッジファンドが売りを仕掛けて成功したのだと認識しています。
ファンダメンタルを冷静に観察しながら、じっくりと「投資」しているマーケット参加者は、ニコニコしながら安値を拾っていたことでしょう。

相場様には逆らえない
前項で述べたように、株式市場の大局に変化はなく、大きな下げを想定する状況ではないと考えられます。
しかし、私たちの多くは、決してキケンな取引をしていないまでも、ウォーレン・バフェット氏のような「投資」ではなく、長くても数カ月、せいぜい数年単位の値動きを追う戦略です。
正確に表現すれば、私たちは全員「投機家」なのです。
その数カ月単位で株価が下げたら、極端な理由だろうが、不合理だろうが、対応を求められます。
2割も3割も逆行したポジションを抱えたら、いけないのです。
「これはおかしい」「下がる理由などない」と確信していても、短期的な値動きに合わせていくしかありません。
「相場が間違っている!」と怒りながら、淡々とポジション操作して“相場様”の動きに合わせていくのがシゴトです。
こんな“切り分け”の姿勢こそが、相場の技術、テクニックです。

主体性のある投機をしよう!
さて、「相場様に合わせるのがシゴト」と述べましたが、このさじ加減が課題です。
ただ目先の動きを追いかけるだけでは、高値を買い、安値をたたき……値動きで儲けようとしているのに、「他人を儲けさせるために売買する」存在に成り下がってしまいます。
未来の株価が見えない以上、常に“一歩遅れ”で対応せざるを得ないのですが、計画的に行動することが大切です。一歩遅れの対応を好結果につなげるのが戦略、売買の手法です。
情報を探しながらわさわさと動くだけでは、「イナゴ投資家」と呼ばれるだけです。マーケットに大きな変化が生じたときも、その背景を考えるのではなく、大衆に迎合するように発信された安っぽい解説をうのみにするだけです。
適切な姿勢をつくる第一歩は、ムリをしないこと、いつでも資金に余裕をもって売買することです。
独自の思考による自分なりの価値判断──どんなにカッコよく表現しても、客観的には単なる妄想かもしれません。
でも、適切な余裕を維持してポジション操作につなげれば、主体性のある投機が実現します。
林投資研究所が提唱する「確信ある自分流」です。

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