情報にだまされないために
私たちマーケット参加者は、「情報」に敏感です。
日々、状況が変化し、ときにはスピーディーに対応することが求められるのですから、敏感になって当然です。
ところが、敏感なために錯覚に陥ったり、望ましくない反応をしてしまうことも……。
最近の値動きを眺めながら、「情報の受け止め方」を考えてみます。
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
押し目待ちに押し目なし? スピード調整後の日本株のゆくえ
「過熱」という言葉に注意
一般的なメディアの表現は、多くの場合、平均的な読者の心理に寄ろうとしています。
「平均的」は、正確ではないかもしれません。
結果的に平均かもしれませんが、「最も層の厚い読者」です。
情報を買ってもらうために当然、厚い層を狙います。
しかし、読者の「不安」や「恐怖心」を上手に利用します。
素直に読者に迎合するのではなく、テクニックを駆使するのです。
相場は過熱しているのか──。
こんな表現を使うのは、それほど過熱していないのに、「もしかしたら過熱?(目先の天井をつけて下げるの?)」と読者が不安に思っている状況です。
私は、「過熱しているかもしれない」という論調があったら、「買いポジションは、ねばっても大丈夫なのかな」と考えます。
記事を書く人もいろいろとオトナの事情を背負い、計算しながら記事を書くので、ブレが生じます。そういった機微まではわからないので、大手メディアが不特定多数に向けて発信する情報は、全く見ないか、見ても気にしないのがベストです。
ちなみに、本当に過熱したときは、記者も雰囲気に飲まれて「大相場がはじまったかも!」なんて思うのでしょうから、それこそ「過熱」という言葉を使わなくなる、という推察ができそうですけどね。
「過熱」を気にする人は平時でも過熱
過熱しているのか──こんな言葉を気にする人は、その人の心が常に過熱ぎみなのかもしれません。相場が動かなくても熱く、動いたときはゲキ熱……必然的に大ヤラレする人の心理傾向です。
前項から、他人を見下しているような表現ばかりだと感じるかもしれませんが、マーケット参加者の心理や自己コントロール能力に大きな差はない、と私は考えます。
優秀な人、常に冷静な人も、わずかながらいますが、それ以外の多数はどんぐりの背比べだと思うのです。だから、私自身も当然、そのうちの1人です。
ただ、落ち着いて全体を見渡し、「そんなもんだよ」と自分のことを自虐的に笑い飛ばす発想があると、“望ましくない思考が悪手に直結する”ことを、どうにか避けることができると思うのです。
こんなところから生まれる知恵が、相場における重要なテクニックです。
難しい場面を経験値と技術で乗り切るなんてカッコいいことは、レアケースでしょう。
カッコわるく大損の可能性から逃げ回り、なんとかマーケットに踏みとどまっていると、ラクに取れるチャンスに巡り会うときもある──これが現実です。
マーケットは好転中
さて、直近の株式市場を考えてみましょう。
日経平均が1カ月で約2,000円幅、上昇しています。
読者を脅かす「過熱」という言葉を目にしなくても、その手の市況解説に慣れた多くの人が、頭に思い浮かべます。
前述した論理で「だから過熱していない」という結論の出し方もありますが、純粋に値動きを見ていて、「やっと株らしさが戻ってきた程度」と私は考えています。
そんな相場観を支持するひとつが、個別銘柄を中源線で判断した結果、「東証一部 陽線(買い線)銘柄数」の推移です。
長い期間、大きく買いに傾いた時期がありません。
だからこそ、「売り買い半々の線を上抜いた現在、しばらく買えない状況だ」と弱気の見通しを立てることも可能ですが、増減を繰り返しながらジリジリと買い線銘柄の数が増えているので、少なくとも、警戒するほど過熱しているとは思えません。
ちなみに、ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が反発し、米中関係が悪化している、アジアの地政学的リスクが高まっているとの意見が出ていますが、米中ともに戦争する余裕などないと思います。それぞれ、国内の不満をかわすための政治パフォーマンスをしていると感じます。
それこそ、読者の不安を突くメディアの常套手段、と捉えても、ひねくれではないと思うのです。
【期間限定】セミナー動画を公開
番組内でも紹介しましたが、7月に開講した本格的な学習コース「FAI投資法マスタープログラム」の初回を7月16日に実施し、その最初の1コマを、期間限定ですが、ノーカットで公開中です。
公開した映像では、実践する私たちが実際に「買い選定」した銘柄を挙げながら、値動き観察のポイントを紹介しています。実践的な内容だということを見てもらいたいと考えています。
次回放送は本日(8月4日)の夕刻、テーマ別の番組をお届けします。
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長く出番のない低位株、割安株に変化の兆しがみえます。そんな部分に焦点を当て、これからの物色対象を考えてました。番組をお楽しみに!
2020年12月新刊