相場は逃げない
シリコンバレー銀行の破綻などから金融不安がささやかれて急落があった3月を経て、再び明るさを取り戻してきた株式市場。
今後の展開はどうなのか──。
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
金融不安解消!? 不測の乱高下を乗り切る投資術(前編)

金融不安があったの?
番組でコメントしたことを繰り返しますが、世間が騒ぐほどの金融不安があったのでしょうか?
シリコンバレー銀行の破綻……「えっ」と思いましたが、直後に開催した「FAIクラブ」(林投資研究所が主宰する低位株投資研究・実践の会)の例会でも話題にしませんでした。
コロナ禍でサプライチェーンに狂いが生じたのですが、世界各国、特にアメリカでは、経済基盤を下支えするために政府が積極的な姿勢を示しました。その結果、経済全体の不安が払拭される半面、人為的なゆがみも生じました。そこにロシアとウクライナの戦争が重なってインフレが発生し、それを抑えるために機敏に金利を上げたわけです。
その金利上昇で、少し特殊な構造を抱えていたシリコンバレー銀行の経営が限界に達しました。金融不安を想像する前に、「高金利政策の終焉」を思い浮かべた向きも多かったはずです。
「なにがあっても大丈夫」などと言うつもりはありませんが、リーマンショック以降、政治は金融マーケットを大切に扱ってきました。今後も同じ姿勢でしょう。価格の乱高下はあっても、金融システムそのものが停滞しなければ、金融機関の破綻も不良債権の発生も、金融システムが持ち合わせている機能で消化していくと考えるのが当然です。
ネタを見つけて大騒ぎするメディアの、かっこうのエサだった──ちょっと極端かもしれませんが、そんなフシもあったわけです。

情報は自分でつくる
「情報」というと、まっ先に「ラクして儲かるネタ」を考える向きも少なくありませんが、そんな姿勢では“情報難民”“相場難民”の側に近づいていくだけです。
株価や業績推移、あるいはマクロな経済指標などを基に、具体的な売買戦略の部分について「自分で情報をつくり上げる」姿勢が重要です。
誰にも明日の株価すらわからないので、「オレは、○○と考えて多めに買いポジションを取る。銘柄は……」といった具合に“独自の見通しによる独自の指針”を打ち出すのです。
これが、その後の変化を見て“次の一手”を打つうえで不可欠な基準なのです。
いつも説教じみた表現で述べていますが、他人の情報に頼ってポジションを取り、その始末に困って再び他人の情報を求める……こんな負のスパイラルに陥っている個人投資家が多いのが現実です。でも、ある意味、自然な傾きです。
これに同調しないことが、成功への第一歩です。

ポジショントーク
さて、エラそうなことを述べたり、他人の意見について「偏っている」と批判したりもしますが、翻って自分のことを考えると、ある意味、めちゃくちゃに偏っているかもしれません。
相場を実践する者として、前述したように独自の見解や行動指針を固めたら、それだけで相当に偏っているのです。
そもそもマーケットでは、常に売りと買いが均衡して価格がついているのです。それに対して、「買いだ!」とか「売りだ!」と決めつけるのですからね。
私は、株式市場全体について強気です。
ここから数年間は、順調な上げ歩調がつづくと大いに期待しています。
だから、金融不安といった話についても、「またメディアがバカ騒ぎしているだけだろう」と決めつける傾向があります。
でも、短期的には弱気も言います。
また、そういったコメントは、自分のポジションによっても味つけが大きく変化します。
番組でも触れましたが、個人的な都合で、裁量のポジションを大幅に落とすことにしました。
そんな方針を決めたとたん、「株は強いよね」という発言が「まあ、しっかりしているけど難しい。やや食い散らかされた感もある」みたいに変化するのです。
実に勝手で、気分に左右される……えげつなく偏っているのが、実践者の実態かもしれません。
さて、単純に買っている間は「どんどん上がれ」と考えていたくせに、ポジション(買い)を大幅に落とすと決めた瞬間、「少しの間もたもたして、買い場を提供してくれないかなあ」などと身勝手なシナリオを思い浮かべます。
でも、これが今後の値動きを見るうえでの重要な基準です。
そのとおりに動いても、「本当に見込みどおりになるのか?」と慎重に考えながら行動を決めます。期待外れの動きなら、「そうか、ちがうか……では、どうするか」と、やはり慎重に思考を重ねます。
ポジショントーク、朝令暮改、自分勝手、わがまま──株式投資・トレードという個人的な作業において「軸」を保つため、ひたすら肯定すべき事柄です。

相場は逃げない
いったん戦線離脱した私にとって都合のいい展開は、前述した通り、「少しの間、株価がもたもたしてくれる」ことです。下げ具合を見ながら、「ダメになった」のか「さらなる上げに向かう準備として押した」のかを見極めて、手がける銘柄や出動のタイミングを計る──ワクワクしますよね。
でも、私がポジションを持っていない間に株価がグイグイと強張って、「うわぁ、取り損なった~」と騒ぐかもしれません。それはそれで仕方がありません。そんな状況になっても、無理やりに方向転換して手を出したりしません。
相場は逃げない──この言葉を思い出し、いかにも儲かりそうな相場つきを、指をくわえて眺めながら、「落ち着け」と自分に言い聞かせつつ、その先にある“自分の出動チャンス”をさがすべく脳を回転させます。
姿勢や手順にムリがあると、往々にしてトホホな結果が待っています。
私生活でも、慣れている仕事でもそうです。
ましてや相場は、もろにダメな結果を覚悟しなければなりません。

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毎月の2本目、テーマ別の番組は本日、4月6日18時(午後6時)に公開します。
タイトルは「金融不安解消!? 不測の乱高下を乗り切る投資術(後編)」、お楽しみに!

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