株式市場全体は過熱していない
日経平均がバブル期の高値に迫っています。
でも、「過熱している」とは全く感じないのです。
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
バブル高値更新を占う! 先行株・出遅れ株 8銘柄

株価指数が高値を更新する
日経平均が、バブル期の高値38,915円に近づいてきました。
ふだんから、「日経平均なんかで相場はわからない」と述べています。でも、昨年からの指数上昇は、少なくとも、「株式市場が好転しつづけている」ことの証だと感じます。
ちまたには、株価指数の上昇について、「バブルだ」「キケンだ」といった否定論もあります。すぐにネガティブなことを言う……日本人の特性かもしれませんが、バブルの高値当時とは、企業の業績や財務のレベルが全くちがいます。これだけ上がっても、「まだまだ割安」といえる状況です。
私は、いつもコメントしているとおり、ひたすら個別銘柄の動きを見ています。あとで述べますが、「まだまだ動きがない」銘柄が驚くほど数多くあるのです。だから、市場全体が過熱しているという感触はありません。
日経平均のバブル期高値更新──水準に注目する向きも多いようですが、“平均”という単なる数字は、どこかで高値を更新するでしょう。でも、更新しないうちはどうとか、更新したらどうとか……そんなものはないと思います。少なくとも、「売買で利益を上げよう」とするプレーヤーが気にかけるような観点ではありません。
ちなみに、日経平均が1月末から約2,000円幅も上昇しているなか、個別銘柄の買い線数はどんどん減少しています(中源線による旧東証一部銘柄の分析)。
全体に強い状況なのだと思いますが、「株価指数だけが高い」「半導体関連だけが高い」「小型株は買われていない」などと、いろいろな声があります。なかなかに、ゆがんだ相場です。

新NISAってどうよ
1月には、「新NISAで日経平均が上がっている」との報道がありましたが、個人投資家と投信は日本株を売り越していたというデータがあります。
新NISAで、「よし、今から」と考える個人投資家、あるいは個人投資家予備軍だった人たちが行動を起こしたのはまちがいなさそうです。でも、資金の大半は米国を中心とした海外に流れているようなのです。
経済紙の記事なんて、いいかげんなものです。
株を買っていない首相が外遊先で「日本の株を買ってくれ」などと言っているのに、海外市場の金融商品が非課税制度の対象になっている理由が不明です。
それでもNISAは、今後も若い層の市場参加を促す、大きな下支え材料だと思っています。
ただ、本格的に売買する向きには、「あまり考えるな」とメッセージを送りたいのです。
いや、上手に使えば節税になる、確実に有利になる、といえるのでしょうが、もともと利益の約20%しか取られません。
オフィスも、従業員も、大きな設備投資もなく実践できるのが株の売買です。個人のレベルなら、大きくても数億円でしょう。株式市場の規模を考えたら、全ポジションをサッと閉じることが可能です。つまり、一瞬で活動をゼロにできるのです。
それだけ効率がよくて小回りも効く、そのかわり、厳しい競争のなかで利益を獲得しなければならないゲームなのです。
NISAは、そんな積極的かつリスクのある経済活動に対して、損失を補填してくれる制度ではありません。あくまでも、利益が出たときに、その一部を非課税にしてくれるだけです。
だから、最も大切なのは「勝つか負けるか」です。
勝てば、どんなに利益が大きくても、約20%を払えばおわりです。
でも、負けてしまったら……なにをどう工夫しても、損失額を取り戻す術はありません。
私もそうですが、周囲の実践者たちは「めんどくさいから、見ていない」のひと言で片づけています。

小型株は下げている……
直近の相場について、「小型株は買われていない」という意見を紹介しました。
実際は、買われていないどころか、けっこう売られているのです。
2月8日以降、日経平均が上昇しても下がる、日経平均が下落したら一緒に下がる……「なんなの、これ?」とイライラするような値動きです。
NISAも、東証がPBR1.0未満の割安な企業にハッパをかけていることも、長くゆるく効く強材料だと考えています。でも直近、もしかしたら、NISAにからんだ日銀の出口戦略なんて思惑が働いて、小型銘柄が売られているのかもしれません。
私の個別銘柄観測は、月足を使います。
短い期間に目を向けたときも、自然に数年間のトレンドをチェックします。常に、5年、10年といった“本当の意味の株価トレンド”を気にかけています。
そうした観察や、今までの経験から、出遅れ銘柄や、直近で弱い小型銘柄について、動くまで時間がかかるケースも少なくないが、買われる時期が訪れると考えています。日経平均を見て「過熱している。売り場だ」ではなく、「これからが仕込み時期」くらいの感覚です。
相場観を押しつけても意味はありませんが、少なくとも、日経平均だけですべてを語ろうとするような情報には、注意してほしいと思います。
競争で勝つためには、安易な情報集めをしないことです。
株価、業績、といった“素の情報”を自分の目で見て、「自分自身が情報の発信者になる」ことです。

2020年12月新刊






























