森を見ずに木を見よ
日経平均は横ばいで推移しています。
それを見て「動きがない」「様子見気分」……もっと実践(現実の売買)につながる思考を展開するべきです。
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
波乱含みの日本株市場~中長期目線で買う8銘柄
今こそ脱“平均”
日経平均は直近、保合(横ばい)をつづけています。
でも、個別銘柄は上がるものあり下がるものあり、いわゆる“跛行”(はこう)相場です。
「チグハグ」と表現したり、例外と捉える向きもありますが、本来そういうものだと私は理解しています。
最近でも、日経平均が1%超の上昇をみせたのに私の持ち株がマイナスだったり、逆に日経平均がマイナスなのに持ち株のうち2銘柄が新高値を取っていたり……特に驚くことではありません。ただ、日経平均と個別銘柄の動きが極端に異なると感じたとき、「日経平均だけが高い」とか「日経平均が安いだけ」と感想をもらすことはあります。
でも、それ以上は考えず、個別銘柄全体(見ている範囲すべて)の流れ、手がけている銘柄の値運びを見て、自分の戦略に思考を集中させます。
それ以上、日経平均の数字を考えるのは、日経平均を売買対象としている場合だけです。
日経平均にはじまって日経平均でしめる──こういう色彩の解説は、子どもだましです。個別銘柄の売買にはつながりにくいだけでなく、儲けをジャマする盲点を生みます。
実際に5月は、しっかりと上昇した銘柄がある半面、それなりの値幅で売られた銘柄がありました。横ばいではなく、含み益が増えたり減ったりの変化が、くっきりとあったのです。事件は起きているのです。
後半で紹介した東陽テクニカ(8151)も、日経平均とは異なる動きで上値を取っています。
語ると負ける
相場についての思考は、おかしな方向にゆがみやすいのです。
前項で否定した「日経平均の視点」は、カンタンに語ることのできない相場全体を、安直に語ろうとして生まれるものです。
相場というのは、無限の選択肢が継続する複雑な行為です。
言語化しにくいものなのです。
だから、安易に言語化しようとしたときに誤りが生じて当然です。
持ち株が総じて上昇し、満足いくレベルの含み益が出たとします。
でも、利食いしていないから、あくまでも「含み」です。
ところが、気持ちのなかでは「勝った!」という感覚です。
他人に話してドヤ顔をしたくなるのです。
そして、含み益が出ている様子を誰かに話してしまいます。
えてして目先の天井、そのあとガッカリするのです。
「含み益が出た」という過去を切り取って語るから、そのあと期待外れの変化があると受け入れられないのです。
未来を考えると、どうなるでしょう。
今すぐ利食いすれば、含み益が実現益になります。その利益は消えません。
でも、さらに上昇したら、「儲け損なった」と悔しがるはずです。
日経平均を軸に語るのと、含み益で舞い上がって語るのは、全く別の事柄ですが、「安易な言語化のために切り取る」という点で共通です。
定点観測銘柄に、ソフトバンクG(9984)があります。
大橋さんが、ソフトバンクGの上昇と、日経平均が下がらないことを結びつけてコメントしました。そのとおりなのですが、この2つの情報から「だから」と語ろうとすると、実践から離れた迷走の世界に踏み込んでしまいます。
ダークサイドは常に、すぐ近くに存在しているのです。
正しい分類
番組では、個別の8銘柄を取り上げ、「切り返しを待つ」「トレンドに乗る」「手仕舞って様子見」の3つに分類しました。
この分類がパーフェクト、というつもりはありません。
数が少ないし、分類の観点はほかに多数あるでしょう。
でも、予測不能の株価を相手に、利益を求めてポジションを取るうえで、値動き傾向で分類するのは実践的です。ポジションを取ったあとの近未来に行うのは、つくったポジションの対応(維持、減らす、増やす)です。それを考える、重要な基準をつくることが可能です。
既存の情報を、やみくもに否定するのが正解ではありませんが、安易な情報の扱いが多いのはたしかです。自分自身の大切な資産を動かすために“どんな情報が的確か”を考えるように努めてください。
日柄を見る姿勢
番組のなかでチャートを示し、値動き傾向や今後の見通しを話しています。
極めて個人的な見解で、当たるかどうかわかりません。
誰が予測しても、当たったり曲がったり……実践では、そのズレを確認して“次の一手”を決めます。
だから、前項で述べたように、私たちプレーヤーに求められる「対応」、すなわちポジション操作を軸に、いや、“ポジション操作がすべて”と考えて情報を整理するべきです。
その対応を考えるときに欠かせないのが、「日柄」という要素です。
番組でも、「あと少し日柄が経過しないと判断が難しい」といったコメントをすることがあります。下がって、値ごろ的に買いたいが日柄が足りないから手を出さないとか、それなりに上がっているけど日柄が短いから「相場が若い」と判断、もう少しねばってもいいのではないか、といった感覚です。
それらがあっさりと裏切られるのも相場の現実ですが、少なくとも対応、自分なりの確固たる戦略を決定することには直結します。
「最終的な答え=ズバリ未来を当てること」なんてイメージが少しでもあると、売買全体が大きく狂います。「外部の情報は、自分で考えるためのヒント、考える方法を考えるための材料」と認識していれば、無責任な情報に振り回されることはありませんし、私たちの番組から拾う断片的な情報も、有効に活用できるはずです。
2020年12月新刊