急落への対処
とにかく、極端な下げをみせた株式市場。
なにが起きたか、どう捉えるべきか──観点は多岐にわたりますが、個人投資家が最優先で目を向けるべきポイントをさぐってみようと思います。
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
暴走&迷走する日本株~狙う株・見切る株8銘柄

好環境に変化なし
今回の急落は、いくつもの要因が重なったと考えられます。
でも、そもそも相場の変動について、よほど明確なファンダメンタル要因でも存在しないかぎり、「なぜ下がったか」を考えることに意味はないでしょう。
「急落を事前に読むことができる」というなら、戻ることのできない過去に目を向けることも有効ですが、私は興味をもたないよう努めています。
想定外のことがあり得る、いや、想定外のことばかり起きるマーケットで、どうやったら、なんとか上手に立ち回って好結果を出すことができるか──この一点だけが、実践者の課題だと確信しているからです。
さて、そんな私が今回の下げについて「覚えておこう」と思うのは、以下の事柄です。
- 投機筋の動きが激しい
- 株価指数の上げ下げが、実態(個別銘柄の実需)とかい離している
- 今後も価格の変動は大きそうだ
- 難しいが、利益のチャンスもバッチリある
ちなみに、極端な下げでしたが、リーマンショックのように金融システムに亀裂が入ったわけではありません。世界的に株価が上昇していく基本的な環境に、変化はないと思われます。
そのなかで、日本株の割安感は変わりません。
いや、今回の下げで、割安感が増したのです。
日本企業は、長いデフレのなかで踏ん張り、資本を積み上げてきました。
ただ、一部に富が蓄積されただけで、それが動かないことが経済の問題でした。
ところが、蓄積された資本が使われる(投資に回る)段階に、差しかかっている状況だと思うのです。
驚くような変動があったのですが、自らの判断と行動で利益を上げようとするプレーヤーとしては、驚いているだけではいけません。驚いた次の瞬間、近未来にある儲けのチャンスを想像するのがシゴトです。

売ったのは「人」じゃない
1秒前に戻れないのが相場──だから、過去をほじくり返しても意味がないのですが、今回の売られ方がいかにも極端だったことは間違いありません。
地味な値位置にいる割安感たっぷりの銘柄、配当利回りが相当に高い銘柄なども、グシャッと一緒に売られました。こんな売り方は、生身の人間にはできません。
俗にいう「機械」、コンピュータプログラムによるファンドの売買が、下げを加速させたのだと考えられます。
「なんで、そんなものがあるのか」と思いますし、「各国の取引所や金融当局に規制を求めるべき」といった意見も出るでしょう。でも、それはそれとして、私たちプレーヤーが第一に考えるべきは、「そんなマーケットで、どう行動するか」です。
そもそも、解説できない動きをみせるのが金融マーケットという場です。
説明できない水準まで売られる場面もあれば、買っている銘柄が、みんなが首をかしげる水準まで上昇することだってあるのです。

「守備範囲」という発想
突発的な下落に対して、当然のように、「今回の下げ止まりはどこか」と考えます。
個々の銘柄であったり、株価指数であったりするのですが、同じように予測を立てるプレーヤーが全員、同じ状況ではありません。
ムチャな売買をしていた結果、今回の下げでボロ負けが確定した人たちもいるでしょう。負けが確定しているなか、少しでも損が少ないよう祈りながら、「もしかしたら短期で全値戻し」なんて気持ちかもしれません。厳しいでしょうね。そうならないために、ゆとりを残しておくべきなのです。
さて、ゆとりがあり、「あれっ、これは異変かな」と少ないポジションをサッと切ってしまった人は、想定内のヤラレでしょう。このタイミングで損切りは意外な結果としても、損の金額は、相場という行為のなかで想定する範囲にとどまったはずです。
そんな人も、目先について予測します。
「どこで下げ止まるか」「一気に値を戻す銘柄があるか」等々。
でも、落ち着いていて賢明ならば、そんなカジュアルな予測をしながらも、手は出しません。
「自分の守備範囲」を守っているからです。
「守備範囲」という発想がない人ほど、厳しいヤラれ方をして、さらには、それを一気に取り戻そうとしてポジションを増やしたりします。悪循環しか待っていないでしょう。
こういった荒れ場では、とにかく手を引くのが基本です。
ポジションがゼロでも、思いつきで仕掛けるべきではありません。
ただ、こうした急落を待っていたのなら、積極的に出動が正解です。
それが、その人にとっての守備範囲だからです。
でも、急落待ちの戦略を実現するなら、ふだんはほとんど出番がありません。

中源線で被害ゼロ
今回の下げ局面で、中源線はどう働いたのか──。
6月下旬から7月中旬まで、旧東証一部銘柄を個別に分析した結果の買い線銘柄数は、1,200を超えていました。それが、8月2日には334、翌5日にはわずか105銘柄になってしまったのです(「中源線シグナル配信」の設定)。
見たこともない売られ方でした。
中源線が個々の銘柄を判断した結果、それなりの数の銘柄が事前に陰転していたのですが、急落を想定していたわけではありません。こんな急落は、誰にも予見できません。中源線も、動きについていくことを主としているだけです。
でも、中源線どおりの売買ならば、今回の急落による損失は見事に回避できていました。優秀さが証明されたと思います。
8月5日は歴史に残るような下落をみせましたが、ユニバース88銘柄(林投資研究所が選定した、パフォーマンス良好な銘柄群)のうち、半分の44銘柄に買い手仕舞いの法示が出たのです。
それこそ、こんな荒れ場を、中源線は想定していません。
だから、この先ドタバタと動いたら、全く手が合わない可能性もあります。
でも、ジワジワと弱含みになる場面で陰転する銘柄が多数あり、急落を見事に回避したのは事実です。
それに、適切な値動き観察で“変化についていく”姿勢が核なので、ヤラレがどんどん膨らんでいくことがないのです。今回のような急落では、多くの個人投資家が「ボロ負け確定」です。大幅に資金が減ったあと、原点に戻すだけでも気の遠くなるような道のりです。
守備範囲を守る、あれこれやろうとせずに狭い範囲に徹することの重要性を、今回の急落でも再認識できました。
中源線は、数式で判断します。
この部分に対する“好き嫌い”はあるでしょうが、「ひとつの観点に徹する」「守備範囲を守る」という、ほとんどの個人投資家が実行できない土台の部分を体験、体感するには、最高のツールかもしれません。いちどお試しあれ。

2020年12月新刊

































