銘柄選定の王道とは
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
方向感のない相場で、静かに買われる8銘柄
日柄十分、買い場か
番組でも触れた市況の分析、マーケット全体が現状どのような感じなのかについて、あらためて私の意見を述べておきます。
トランプ大統領の返り咲きが下支え材料なのか、米国の株式市場は堅調な様子です。
一方、日本の株式市場は、株価指数はそれなりの水準にあるものの、個別銘柄の動きは煮えきらない状況といえます。
とはいえ、夏の急落から3カ月が経過し、日本、米国の政治イベントも一巡しているので、政治と株価変動を結びつける“雑音”的な解説、投機筋が仕掛けるスキも減っていくでしょう。それに、「秋の底→年末高」なんてパターンも多いので、ここからの上げに期待したいところです。
ただし、たとえ強気の見通しでも、決め打ちはキケンです。
中源線そのものもそうなのですが、「ユルユルと相場についていく」姿勢が常に正解です。
見ている範囲を決めていたら、その範囲で強い銘柄、弱い銘柄、動意づいてきたかもしれない銘柄と、直近の動きで分類すると「混在」の状況でしょう。そうしたら、強気の見通しでも、少し買ってみて値動きを観察し、そのあと「もう少し買い進んでOKか?」と確認する場面が何度もあるべきです。
株価指数と個別銘柄の動き
さて、株式市場の状況を分析するうえで、個別銘柄のバラツキという観点は欠かせません。株価指数の騰落や水準だけで語る切り口は、大衆向けの子どもだましです。
番組でも紹介したように、株価指数が堅調なわりに、さえない動きの個別銘柄が多い状況です。ここ最近は、「株価指数の騰落と真逆だよ」なんて感じる日もかなりあります。
なんとなく煮えきらない、強いとはいえない、これから底固めかも、もしかしたら一段安か……こんな銘柄も少なくないと思います。
半面、番組でも示したような強い銘柄があります。
そんな元気な銘柄の存在が、ジワッとながら増えてきているようです。
ただ、こうした好転の流れが継続するとは限りません。
期待どおり継続するのではなく、急に悪化する、微妙にしぼむ、といった残念な展開もあり得ます。でも、期待以上に好転してマーケット全体が明るくなる、という可能性もあります。
どんな流れになるかを見極めながら、ポジションを取っていくしかありません。
だから、前項で述べた「ユルユルと相場についていく」姿勢が求められるのです。
「こんな展開だろうな」と確信ある予測(自分なりのシナリオ)を立て、それに合うポジションを取りながらも、決め打ちすることなく、その後の対応を用意しておきます。対応をシンプルにまとめると、以下の3とおりです。
- 攻める方向に傾ける(ポジションを増やす)
- 相場と手が合わずに引く(ポジションを減らす)
- 維持する(おおよそ予測どおりと判断)
ちなみに、中源線は、こういった臨機応変な対応がわかりやすいルールとして定められていて、実践者の生身の感覚と通じやすい点が魅力なのです。
プロが好む銘柄固定
最初の項で、「見ている範囲を決めている」という姿勢を示しました。
上手な人、プロは、観察する範囲、実際に手がける範囲を限定しています。
範囲が決まっていると、次のようなプラス面が生まれます。
- 個別銘柄の観察が客観的
(完全ではないが、少なくとも子どもだましの情報に左右されない) - 計画的なポジションの取り方が可能
(結果を冷静に判断できる)
見ている範囲に動きがない場合、利益のチャンスもないということです。
それではダメだと一蹴する向きもありますが、私たち個人投資家は、いわば“組織力のない個人商店”です。個人商店なりの戦い方をしなければなりません。
ラーメンもあるし、フレンチもあるし、焼き鳥もある……そんな店、うまくいきますかね?
朝は出勤客向けのコーヒーとドーナツ、昼は定食、夜は居酒屋……ムリがあります。
多少のアレンジはあっても、やはり範囲を絞ることで強みが生まれ、それが利益につながると考えるべきです。株の取引は素早く方向転換できますが、物理的に可能というだけで、好結果が期待できるということではありません。むしろ逆でしょう。
だからプロこそ、扱う銘柄の範囲を決めています。
それに対して、相場と向き合う時間に制約のある個人が、プロよりも幅広い範囲を対象にしたら、混乱しかありません。
昔のプロは、極端な場合、たった1銘柄を長年にわたって観察しながら、年に数回程度のチャンスを見つけてサクッと利益を取る、なんてことをしていました。
臨機応変か、つまみ食いか
銘柄の範囲を決めておく、1銘柄だけあればいい……ちょっと納得しても、実行に移すのは難しいかもしれません。あまりにもストイック、あまりにも特殊、なんだか楽しくなさそう、というところでしょう。
たしかに、「勝つためになにをするか」とまじめに考えた場合でも、楽しみの要素は必要だと思います。苦しいこと、つらいこと、ガマンが必要なことなんて、ゼッタイにつづきません。
では、目についた銘柄を気軽に手がければいいのか──前述したように、結果は出ないでしょう。
範囲は決めているものの、その範囲がそれなりに広く、端から見ると「常に新しい銘柄を手がけている」ような人もいます。そして、好結果を出している。こういう人であっても、本当に“なんでもあり”ではないはずです。少し器用なだけで、やはり自分の守備範囲とか、自分のやり方とか、「これは外せない」という線引きがあるはずです。
楽しみの要素も必要と述べましたが、あるときは値動きを見て飛びつき、別のときはファンダメンタルで銘柄を選び、いろいろな人の意見に耳を傾けて……これでは、思想も哲学もないつまみ食い、口座に残るのは一貫性のないダメポジションのコレクションでしょう。
確固たる軸というか「芯」のようなものがあるから、その路線を崩さないように少し寄り道する“臨機応変”が価値をもつのです。
番組ではいろいろな銘柄を紹介していますが、コーフンして飛びついてくれ、ということではありません。少なくとも「やり方」、すわなち、「どんな売買をして利益を取るか」を決めておけば、手がける銘柄もおのずと決まってきます。楽しさを求めてユルくしようとしても一定の範囲を逸脱することなく、適正な臨機応変が実現するはずです。
相場観だけでなく、私が示す値動きの捉え方、例として示す売買戦略などについて、常に「自分は賛同できるか否か」と考えてください。そんな思考を楽しんでみてください。長続きする楽しみ方を維持しながら、勝ち組への道を進むことができるでしょう。