「なにもしない」をする極意
映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
今は何もするな! 仕切り直しで買いたい厳選8銘柄
トランプ関税の評価
トランプ大統領が発動した関税強化は、おおむね不評です。
たしかに、アメリカだからこそ言えるような極端な内容です。
「○○に刃物」という言葉がありますが、そんな感じですよね。
でも、落ち着いて考えてみる必要があります。
とにもかくにも「今後どうなるか」という話ですが、2つの観点を挙げることができます。
1つは、トランプ関税の真の狙いです。
2つめは、マーケットの反応です。
まず、トランプ関税の真の狙いを考えてみます。
世界経済の流れは複雑だし、政治の駆け引きもあるので難しいわけですが、トランプ大統領の発言は過激で利己的ながら、素直に考えれば、「公平な貿易をしようよ」という提案です。
今回は、関税強化をちらつかせてから交渉という順序ではなく、とりあえず関税強化を発動してから交渉の要請があれば話を聞くという、強烈な先制パンチを繰り出しているだけ、との見方も成立するのではないでしょうか。
好き嫌いはありますし、トランプ大統領のやり方は品がないかもしれませんが、あっという間に世界中の政治家を突き動かしたのですから、たいした政治家ではありませんか。消費大国として先手を打ったのですが、アメリカ国民の富もアメリカ経済の繁栄も、投資と貿易を抜きには成り立ちません。少なくとも、一部報道にある「鎖国」は筋ちがいでしょう。
ちなみに日本は、関税強化騒ぎの前からアメリカに振り回されていますが、アメリカ経済が強化されれば、属国的な立場として恩恵にあずかる面もあるでしょう。
さて、2つめはマーケットの反応です。
交渉の先制パンチを表面的に捉え、「世界経済が混乱する」と過度に反応したと考えられます。
どの国にとっても、自国の安全保障は重要な課題です。
安全保障の土台にあるのは、自国経済の発展です。
資本主義において、株式市場の安定や規模の拡大も、経済にとって欠かせない要素です。
リーマンショック以降、政治が積極的に、株式市場や金融システム全般を重視しています。トランプ大統領は金融市場の混乱を想定していたと発言していますが、株価がどんどん下がってもかまわないと考えているはずはありません。もしも、金融システムが停滞するような事態になれば、いや、そうなる前に、政治が収拾に動くのは当然です。
今回は、世界の政治が動いて、双方にとって利益となる答えを出し、アメリカを軸にした新しい構造へ方向性が定まり、資本主義の拡大再生産、右肩上がりの株価、という自然な流れに戻るのだと思います。
株価こそが真実
前項で述べたように、私は楽観的に捉えています。
しかし、直近で株価が大きく下落したのは、紛れもない事実です。
もともと楽観的だった私にとって、今回の下落は想定を超えていました。
2024年8月はじめにかけての急落以降、過熱とはほど遠い状況にある割安銘柄まで、急速な換金売りを浴びて下げたのです。
プログラム売買の存在なども要因として浮かび上がりますが、とにもかくにも株価が下がった現実を受け止め、株価変動に対する認識を少し改めなければならないと考えています。
今回の急落は別として、根本的な問題として、内容が素晴らしい企業なのに割安な株価が放置されるケースは多々あります。
逆に、内容を伴わずに大きく上昇することだってあります。
理屈だけで説明しきれない「マーケット価格」で売り買いして利益を出そうとしているのですから、前項で述べた「過度な反応」にも、必ず対応することが求められます。
立場・戦略による対応のちがい
株価が急落すると当然、「これからどうなる?」という議論が起き、さまざまな情報が飛び交います。
それらの共通点は、「なにが正解か」という一点ではないでしょうか。
誰も未来を見ていないのでナンセンスなのですが、それでも大衆は正解さがしをします。
この議論に、巻き込まれてはいけません。
立場によって、正解は異なるのです。
真の意味の「投資」を行うウォーレン・バフェット氏なら、急落を受けて、狙っている銘柄の買い増しを考えるだけでしょう。第1項で挙げた「資本主義の拡大再生産、右肩上がりの株価」という論理のもと、チャンス到来と捉えるだけです。
一方、私たち個人投資家は、ウォーレン・バフェット氏とは全く異なるスタンスで株の売買を行っています。いわば「投機」です。
急落した状況を見て、長期トレンドを見据えた仕込みを行うチャンス、短期的な反発狙いの買いチャンス、と考える参加者もいるでしょう。
でも、下げたことで、いわゆる買い場かもしれないと思いつつ投げざるを得ない参加者もいます。あるいは、超短期の売買専門で、株価水準とかトランプ大統領の政策とか関係なく、変動が大きい荒れた状況をチャンスと捉える向きもあるでしょう。
番組タイトルに掲げた「今は何もするな!」は、最も一般的な個人投資家を意識して、「荒れ場でうまくやろうとするな」「火事場泥棒なんてやめておけ」と抑えるための言葉です。
少なくとも、思いつきで行動したらいけません。
今回うまくいくかもしれませんが、次はわかりません。
それに、成功しても失敗しても、自分なりの売買スタイルというものを乱してしまいます。
「なにもしない」をする──いろいろな分野で重視されていますが、ちょっと精神論的、というかイメージ先行の表現です。カッコつけています。“かましている”感じです。でも、ある意味、とても重たい言葉でもあると思うのです。
やることは決まっています。相場・トレードならば、儲けるべくポジションを取ること、上がりそうな銘柄を買うことです。決まっているから、自然に体が動くものです。だから、意識して動かす必要はないし、そういった“やってる感”を求めるとダメなのでしょう。
ズレを消すのがトレーダーのシゴト
前項で、立場・戦略による対応のちがい、いわゆる正解が異なると説明しました。
これは、とても大きなポイントなのです。
値動きを見て短期の狙いで買ったところが、上がらない……ポジションを切るのが正解と思いながらも、感情的に切りたくない……突然に「この会社は素晴らしい製品を手がけている」なんて理屈でポジションのホールドを正当化する──翌日から人気化して利食いになるかもしれませんが、「狙い」と「ポジション」が完全にズレている点が大問題です。アウトです!
自分のやり方を決め、自分の見通しをもとに目先の戦略を定め、そのとおりのポジションをつくったとしても、時間が経過すれば状況は変化します。必然的に、「狙い」と「ポジション」にズレが生じます。ピタリ想定どおり、なんて、超レアなケースでしょう。
どんな場合でも、どんな立場でも、ズレを生じさせないのがトレーダーのシゴトです。
「買いだ」と思って買わなければ、ポジションがないままズレが生じます。
状況が変わったら当然、予測も新しいものに上書きされるので、つくったポジションとのズレを消すためにポジション操作を行います。
短期売買でも、中長期でも、このズレを素早く修正していく作業を求められるので、なかなか厳しいのです。
番組で紹介している中源線は、値動きをパターン分析して、数式で答えを出します。
絶対にブレません。そして、「狙い」と「ポジション」のズレを生むこともありません。
ところが、こうした機械的判断を行うシステムには、数式を重ねて“ブラックボックス”化したものが多いのです。
出てきた答えはわかるけど、「なぜ、そうなのか」がわからない……この点、中源線は、シンプルな数式しかないので、自動的に出てきた答えを感覚的に納得できるのです。
なんとなく眺めているだけの人も、いちど少しだけ近づいてみませんか?
中源線研究会は登録無料です。