個人投資家が勝つための条件
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大相場が来る前に買っておきたい8銘柄

自然な値動きとは
4月はじめにかけての急落では、それこそ“ミソクソ一緒”に売られました。
でも、安値にとどまる期間は、極めて短期間でした。
急落=自分の出番と位置づけている人にとっては、おいしい場面だったと思います。
そんな特殊な狙いを準備していなかったマーケット参加者は、どうだったでしょうか。
「急落した」「なにか買おう!」と即座に行動した人、つまり、思いつきで動いて頻繁にヤラレてしまう投資家は今回、勝ったでしょう。
一方で、そんな思いつきでヤラレてしまうことのない人、一定の慎重姿勢をもった人は、丁寧に考えているうちに買い場を逃したのではないでしょうか。
さて、戻る場面でも、多くの銘柄が同じように動きました。
もちろん例外はありますが、かなりの数の銘柄が急落、そして一気に戻すという展開だったのです。
4月後半からは落ち着きはじめました。
そして、決算発表もからんで、個別銘柄の動きに差が生まれました。
急落なんて存在しなかったかのように以前の上昇トレンドを継続して上伸する銘柄あり、急落した分を戻しただけで保合になる銘柄あり、あらためて下がっていく銘柄あり……。
急落の余韻があったのか、ふだんとは異なるガタガタとした値運びが目立ちましたが、とにかく個別銘柄の値動きはバラバラになったのです。
株価指数、特に日経平均を見て、「今後の方向は?」とか「買っていいのか?」と議論する向きは多いのですが、個別銘柄のトレンドとは結びつきません。
長期でも、中期でも、あるいは短期でも、上がるものあり下がるものあり、動かないものあり──マーケットにおいて、とても自然な状況なのです。

情報のデフォルメ
情報は常に、ある方向に偏ります。
もっぱら、発信者の意図によって傾くのです。
他人をだます意図、ウソをつく姿勢もあるでしょうが、そもそも必ず偏るものなのです。
例えば、結婚相手を探すうえで自分のプロフィールを書くとき、わざわざ「足がくさい」なんてことは言いません。「くさくない」とも書かず、あえて触れません。
消費者に向けて自社の商品を紹介するときも、全く同じです。
表裏一体のマイナス面だってあるはずですが、プラスの面を強調して魅力として示します。
当然です。
相場の情報は、どうでしょうか。
一般投資家に関心をもってもらいたかったら、「明日の株価なんて、わかるものか」といった本心は言いません。
市況解説においては、約4千ある上場銘柄を幅広く分析、解説するなんて、難しいことはしません。平均という、実に雑だけど、非常に便利な数字を掲げて、「上か下か」という観点を前面に出します。1週間の流れ、1カ月の流れ……実践的に深掘りしたら難しいので、「その日の動き」だけを示します。
個人投資家が相場・トレードで勝つために役立つ情報は、個人投資家の手がラクに届く範囲には、ころがっていないのです。
番組では毎回、新しい銘柄を紹介しています。
でも、そんな情報をきっかけに目を向けてもらうこと、そして、銘柄情報は“ひとつの観点”であることを理解してもらうこと、そうした根底の部分について一緒に考える姿勢をもってもらうことが狙いです。
銘柄情報を発信して、投資家を中毒にしようとは思っていません。
上記のような自立した姿勢を促す、そんな狙いを実現するために、銘柄情報をうまく利用しているつもりです。

戦う相手は誰?
相場・トレードで勝つために、なにを考えるべきか──。
「戦う相手」を考えてみましょう。
ほかのマーケット参加者が全員、ライバルです。
おカネの取り合いをしています。
でも、そういったライバルが攻撃してくることはありません。
そうしたら、戦う相手は「株価変動」でしょうか?
これも、勝つために役立つ発想ではないと思います。
予測不能な株価の動向を見事に当てる、みたいなムチャな話に発展していくでしょうし、相手と対立しつづけるなんて、しんどいものです。
未来を当てなくても、常に一歩遅れでいいのです。
現実には、二歩か三歩ほど遅れることもありますが、それ以上は遅れないようにすれば十分で、理想として「一歩遅れで素早く対応」と考える感じです。
このように考えていくと、戦う相手は「自分自身」です。
誰も攻撃してこないなか、自らの意思でポジションをつくる、あるいは手仕舞いするのです。
体力や筋力、経験値に関係なく、予測が当たれば含み益は勝手に伸びます。
でも、売り手仕舞いのタイミングを自分で決めて実行しないと、含み益はふところに入ってきません。
しかし、好循環が生まれることは、なかなかありません。
「悪循環に陥らないようにする」のが精一杯、そんな感覚が正解でしょう。
「相場は自滅のゲーム」と呼ばれるゆえんです。

個人投資家が勝つための条件
さて、「相場は自分との戦い」と述べましたが、本当は、自分とも戦わないほうがいいのです。
絵に描いたような予測の的中を捨てても、現実的な範囲で理想を手に入れようとするでしょう。
やっぱり、「当てる」という発想に縛られる、いや、自分で自分を縛りつけるのです。
とにもかくにも、「一歩遅れの対応」です。
上がると思って買ったら弱含み……「ああ、そうですか」と損切り撤退、現金(ニュートラル)の状態に戻ります。
上がると思って買ったのに、時間が経過しても動意づく気配なし……「ああ、そうですか」と見切り売りして、別のチャンスをさがします。
利食い売りしてよろこんでいたら、翌日にストップ高……「死んだ子の年を数えるな」なんて格言もありますが、利食いして悲しむなんて、自分で自分を攻撃するようなものなので、サクッと次に目を向けるべきです。「もう少しねばることは可能だったか」と振り返りますが、考えすぎてタラレバ地獄に近づかないことが第一です。
番組でも触れましたが、私は急落時、裁量によるポジションは全く動かしませんでした。でも、急落時、そのあとの戻りという過程でポジションを抱えたままだったので、「脳内に余分な情報があったらイヤだな」と考えました。だから、相場が落ち着いたあとは余裕資金で買い増ししたいところ、あえて手仕舞い売りから“通常の売買モード”に回帰しようとしました。
この行動には、予測の要素はありません。
自分の心理を自己評価してギリギリを攻める、そんな発想もありません。
ほかのマーケット参加者とも、株価変動とも対立せず、自分自身とも対立しない姿勢です。
やってみると、とてもラクなのです。
中源線のルールも、まさにこれです。
ピクッと上昇して「上がりそう」と判断したら、そこから買いはじめます。陽転です。
でも、分割で買っていきます。決め打ちしません。
ところが、上げると見せかけて下がる……陽転がダマシという展開もあります。
すぐに下向きになって「再陰転」したら、「ああ、そうですか」と分割で買った1単位を投げ、同時に2単位を売り建てします。
対立せず、ひたすら順応するのです。
中源線のロジックに議論はあっても、中源線の売買に選ぶ銘柄についてさまざまな意見はあっても、こうした基本姿勢、いわば「相場との距離感」については、誰もが認めるところでしょう。
今回は、勝つためには「戦わないこと」というアイデアを、私なりに解説しました。
好みに合わせて、上手に利用してほしいと思います。































