6月9日の放送「大相場が来る前に買っておきたい8銘柄」のフォローアップを公開しました。
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大相場が来る前に買っておきたい8銘柄
4月はじめにかけての急落では、それこそ“ミソクソ一緒”に売られました。
でも、安値にとどまる期間は、極めて短期間でした。
急落=自分の出番と位置づけている人にとっては、おいしい場面だったと思います。
そんな特殊な狙いを準備していなかったマーケット参加者は、どうだったでしょうか。
「急落した」「なにか買おう!」と即座に行動した人、つまり、思いつきで動いて頻繁にヤラレてしまう投資家は今回、勝ったでしょう。
一方で、そんな思いつきでヤラレてしまうことのない人、一定の慎重姿勢をもった人は、丁寧に考えているうちに買い場を逃したのではないでしょうか。
さて、戻る場面でも、多くの銘柄が同じように動きました。
もちろん例外はありますが、かなりの数の銘柄が急落、そして一気に戻すという展開だったのです。
4月後半からは落ち着きはじめました。
そして、決算発表もからんで、個別銘柄の動きに差が生まれました。
急落なんて存在しなかったかのように以前の上昇トレンドを継続して上伸する銘柄あり、急落した分を戻しただけで保合になる銘柄あり、あらためて下がっていく銘柄あり……。
急落の余韻があったのか、ふだんとは異なるガタガタとした値運びが目立ちましたが、とにかく個別銘柄の値動きはバラバラになったのです。
株価指数、特に日経平均を見て、「今後の方向は?」とか「買っていいのか?」と議論する向きは多いのですが、個別銘柄のトレンドとは結びつきません。
長期でも、中期でも、あるいは短期でも、上がるものあり下がるものあり、動かないものあり──マーケットにおいて、とても自然な状況なのです。
情報は常に、ある方向に偏ります。
もっぱら、発信者の意図によって傾くのです。
他人をだます意図、ウソをつく姿勢もあるでしょうが、そもそも必ず偏るものなのです。
例えば、結婚相手を探すうえで自分のプロフィールを書くとき、わざわざ「足がくさい」なんてことは言いません。「くさくない」とも書かず、あえて触れません。
消費者に向けて自社の商品を紹介するときも、全く同じです。
表裏一体のマイナス面だってあるはずですが、プラスの面を強調して魅力として示します。
当然です。
相場の情報は、どうでしょうか。
一般投資家に関心をもってもらいたかったら、「明日の株価なんて、わかるものか」といった本心は言いません。
市況解説においては、約4千ある上場銘柄を幅広く分析、解説するなんて、難しいことはしません。平均という、実に雑だけど、非常に便利な数字を掲げて、「上か下か」という観点を前面に出します。1週間の流れ、1カ月の流れ……実践的に深掘りしたら難しいので、「その日の動き」だけを示します。
個人投資家が相場・トレードで勝つために役立つ情報は、個人投資家の手がラクに届く範囲には、ころがっていないのです。
番組では毎回、新しい銘柄を紹介しています。
でも、そんな情報をきっかけに目を向けてもらうこと、そして、銘柄情報は“ひとつの観点”であることを理解してもらうこと、そうした根底の部分について一緒に考える姿勢をもってもらうことが狙いです。
銘柄情報を発信して、投資家を中毒にしようとは思っていません。
上記のような自立した姿勢を促す、そんな狙いを実現するために、銘柄情報をうまく利用しているつもりです。
相場・トレードで勝つために、なにを考えるべきか──。
「戦う相手」を考えてみましょう。
ほかのマーケット参加者が全員、ライバルです。
おカネの取り合いをしています。
でも、そういったライバルが攻撃してくることはありません。
そうしたら、戦う相手は「株価変動」でしょうか?
これも、勝つために役立つ発想ではないと思います。
予測不能な株価の動向を見事に当てる、みたいなムチャな話に発展していくでしょうし、相手と対立しつづけるなんて、しんどいものです。
未来を当てなくても、常に一歩遅れでいいのです。
現実には、二歩か三歩ほど遅れることもありますが、それ以上は遅れないようにすれば十分で、理想として「一歩遅れで素早く対応」と考える感じです。
このように考えていくと、戦う相手は「自分自身」です。
誰も攻撃してこないなか、自らの意思でポジションをつくる、あるいは手仕舞いするのです。
体力や筋力、経験値に関係なく、予測が当たれば含み益は勝手に伸びます。
でも、売り手仕舞いのタイミングを自分で決めて実行しないと、含み益はふところに入ってきません。
しかし、好循環が生まれることは、なかなかありません。
「悪循環に陥らないようにする」のが精一杯、そんな感覚が正解でしょう。
「相場は自滅のゲーム」と呼ばれるゆえんです。
さて、「相場は自分との戦い」と述べましたが、本当は、自分とも戦わないほうがいいのです。
絵に描いたような予測の的中を捨てても、現実的な範囲で理想を手に入れようとするでしょう。
やっぱり、「当てる」という発想に縛られる、いや、自分で自分を縛りつけるのです。
とにもかくにも、「一歩遅れの対応」です。
上がると思って買ったら弱含み……「ああ、そうですか」と損切り撤退、現金(ニュートラル)の状態に戻ります。
上がると思って買ったのに、時間が経過しても動意づく気配なし……「ああ、そうですか」と見切り売りして、別のチャンスをさがします。
利食い売りしてよろこんでいたら、翌日にストップ高……「死んだ子の年を数えるな」なんて格言もありますが、利食いして悲しむなんて、自分で自分を攻撃するようなものなので、サクッと次に目を向けるべきです。「もう少しねばることは可能だったか」と振り返りますが、考えすぎてタラレバ地獄に近づかないことが第一です。
番組でも触れましたが、私は急落時、裁量によるポジションは全く動かしませんでした。でも、急落時、そのあとの戻りという過程でポジションを抱えたままだったので、「脳内に余分な情報があったらイヤだな」と考えました。だから、相場が落ち着いたあとは余裕資金で買い増ししたいところ、あえて手仕舞い売りから“通常の売買モード”に回帰しようとしました。
この行動には、予測の要素はありません。
自分の心理を自己評価してギリギリを攻める、そんな発想もありません。
ほかのマーケット参加者とも、株価変動とも対立せず、自分自身とも対立しない姿勢です。
やってみると、とてもラクなのです。
中源線のルールも、まさにこれです。
ピクッと上昇して「上がりそう」と判断したら、そこから買いはじめます。陽転です。
でも、分割で買っていきます。決め打ちしません。
ところが、上げると見せかけて下がる……陽転がダマシという展開もあります。
すぐに下向きになって「再陰転」したら、「ああ、そうですか」と分割で買った1単位を投げ、同時に2単位を売り建てします。
対立せず、ひたすら順応するのです。
中源線のロジックに議論はあっても、中源線の売買に選ぶ銘柄についてさまざまな意見はあっても、こうした基本姿勢、いわば「相場との距離感」については、誰もが認めるところでしょう。
今回は、勝つためには「戦わないこと」というアイデアを、私なりに解説しました。
好みに合わせて、上手に利用してほしいと思います。
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これから買うのが正しい、上昇トレンド回帰8銘柄
まずは、4月の急落を振り返ってみましょう。
といっても、観点はいくらでもあります。
多くの人が思いつく、「突っ込みの安値を狙った買い」を考えます。
ショック安があるたびに、「落ちてくるナイフをつかむか否か」という議論が起こります。
でも、そんな思いつきの“火事場泥棒”は望ましくありません。
最安値を買ったつもりが一段安……あるあるです。
狙った銘柄を、わるくない値段で拾えたが戻らない……あるあるです。
あるいは、うまく買えて期待どおりに戻ったけど、「どこで手仕舞いしていいのか、わからない」なんてこともあるでしょう。
いやいや、うまく買えて、戻って、うまく利食いした、という結果もありますが、思いつきで出動したため、そんな成功体験が先々の売買を狂わすかもしれません。
いろいろとケチをつけましたが、「急落したら○○する」という確固たる戦略が用意されているのなら、結果はわからないものの“想定どおり”に出動するのが大正解です。でも、急落に遭遇してから考えたのなら、手を出すのはご法度。前述したように、突っ込み買いで利益を上げたとしても、長い目で見てプラスにならない可能性だってあるのです。
「落ちてくるナイフをつかむか否か」と議論する、いや、そんな疑問符まじりの言葉が浮かぶ時点で、手を出してはいけない立ち位置だと認識すべきです。
出動した結果はなんともいえませんが、急落を受けて出動できる投資家、「出動するのが正解」という立場の人は、「落ちてくるナイフ……」なんて言葉で考えることなく体が動くはずです。急落があり得ることは多くの人が知っていますが、具体的に想定し、いざというときにアクションを起こす準備をしている投資家だけが、出動して問題ないのです。
実際に、今回の急落は、なかなかキツい下げ方でしたが、けっこう短期間で収束し、一直線に戻りました。それゆえに「買っておけば……」とか「狙っていたのに買えなかった」と嘆く声もあります。事前の準備がなかった人たちです。
そういった投資家、準備が足りない人たちが素直に買えるようなときは戻りがわるい、期待どおりの利益が生まれないものです。
私の売買は、裁量による売買(低位株の分散買い)と、中源線の2本立てです。
裁量の売買は、なにもしていません。
急落前に極めて楽観的だったので、「えっ、マジ?」という感じでしたが、ゆとりがあったので投げることもありませんでした。ジッとしていたら、元に戻りました。
買い増しするという選択肢もあったのですが、すでに一定量を買っていたので、ムリに手を出したくないと考えました。理由は、前項で挙げたとおりです。
もちろん、手がスカスカだったら買っていたでしょうが、買い増しの一環で、数量も限定的だったと思います。
急落時のアクションは想定せず、急落の衝撃は資金管理とポジション管理で吸収するのが基本の戦略です。
今回も私は、急落時の安値圏で買って得することはありませんでした。でも、余分なエネルギーを使ったり、イレギュラーな記憶を強く残すこともなかったのです。
中源線の売買については、後述します。
私は、トランプ政権に期待しています。
一貫して、トランプ大統領の政策は株式市場にプラスと考えてきました。
だから、下げの原因が過激なファンドの売り仕掛けだったとしても、今回の急落には少なからず驚きました。いや、マーケットなので、こうした急落はいつでもあり得るのですが、これほど下げる条件がない状況だと考えていたのです。
そんなことから、資金管理のあり方を考え直す必要もあると思っていますが、株式市場に対しての強気の見通しは変わりません。
会員向けに発行する『研究部会報』や『林投資研究所レポート』では少し詳しく述べていますが、日本の株式市場の環境は好転していくと期待しています。
そんな私の予測どおりになるとしても、株価の自律的な動きはあります。
説明できない、短期的な上げ下げです。
急落のあとの流れにも、こうした個別のバラツキがあります。
今回の放送でテーマに掲げたことで、このフォローアップのタイトルでは「ミソとクソ」と表現したのですが、“短期狙いをするときの銘柄選び”の観点です。
急落に遭遇してから思いつきで出動するのは、最初の項で述べたとおり、望ましくありません。
それに、そうした難しい売買を提案しようとは思いません。
でも、値動きというものを捉える知識として有益だと思うので紹介します。
多くの人が、大きく下落した銘柄に目を向けます。
「大きく下がったのだから、リバウンドも大きいしスピーディー」という論理です。
そんなケースもありますが、「下がったあと戻りがわるい」ということもありますし、相場全体の反転が遅れたら「さらに下落する」というオチもあります。買い増しのタイミングで、たまらずに投げてしまうかもしれません。
逆に、「市場全体の急落でも下げ渋っている銘柄のほうが手堅い」というのが、実践者の正しい認識ではないでしょうか。大きく下がって「真空地帯をグッと戻る」と期待させる銘柄は、実はミソではない──常識的なオトナが素直に発想することは、マーケットでは逆であることが多いので、経験豊富な人もあらためて考えてみるべき部分でしょう。
私は、裁量の売買について「なにもしなかった」のですが、中源線は、今回のような急落に敏感に反応します。だから当然、シグナルに従ってポジションを動かしました。
でも、急落のあとは、「売り増しシグナルを見送る」「状況を見て裁量で買い返済する」ことを最初から考えていました。シグナルどおりに「カラ売り」に傾けないようにする、ということです。
中源線のルールは、急落にもちゃんと反応します。
でも、丁寧な3分割の売買は、スピーディーな変化を想定したものではありません。
スピーディーな変化に合う設定だと、平時にうまく機能しません。
動きによって「ここは基準を変えて……」なんてことは不可能です。
だから、「平時ではない」と判断したら、「儲けるよりも損をしないように」と売買を控える方向に傾けるのが正解です。
でも、もしルールがハッキリしていなかったら、ブラックボックスの部分があったら、こうした対応をするか否かの判断基準をもてません。その点、中源線は、ルールをすべて公開しているので、どんな場合でも「勝った理由」「負けた理由」がわかります。
そして、極端な動きをしたときにも、それほど迷わずに“イレギュラーな対応”を決めて行動に移すことができるのです。
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今は何もするな! 仕切り直しで買いたい厳選8銘柄
トランプ大統領が発動した関税強化は、おおむね不評です。
たしかに、アメリカだからこそ言えるような極端な内容です。
「○○に刃物」という言葉がありますが、そんな感じですよね。
でも、落ち着いて考えてみる必要があります。
とにもかくにも「今後どうなるか」という話ですが、2つの観点を挙げることができます。
1つは、トランプ関税の真の狙いです。
2つめは、マーケットの反応です。
まず、トランプ関税の真の狙いを考えてみます。
世界経済の流れは複雑だし、政治の駆け引きもあるので難しいわけですが、トランプ大統領の発言は過激で利己的ながら、素直に考えれば、「公平な貿易をしようよ」という提案です。
今回は、関税強化をちらつかせてから交渉という順序ではなく、とりあえず関税強化を発動してから交渉の要請があれば話を聞くという、強烈な先制パンチを繰り出しているだけ、との見方も成立するのではないでしょうか。
好き嫌いはありますし、トランプ大統領のやり方は品がないかもしれませんが、あっという間に世界中の政治家を突き動かしたのですから、たいした政治家ではありませんか。消費大国として先手を打ったのですが、アメリカ国民の富もアメリカ経済の繁栄も、投資と貿易を抜きには成り立ちません。少なくとも、一部報道にある「鎖国」は筋ちがいでしょう。
ちなみに日本は、関税強化騒ぎの前からアメリカに振り回されていますが、アメリカ経済が強化されれば、属国的な立場として恩恵にあずかる面もあるでしょう。
さて、2つめはマーケットの反応です。
交渉の先制パンチを表面的に捉え、「世界経済が混乱する」と過度に反応したと考えられます。
どの国にとっても、自国の安全保障は重要な課題です。
安全保障の土台にあるのは、自国経済の発展です。
資本主義において、株式市場の安定や規模の拡大も、経済にとって欠かせない要素です。
リーマンショック以降、政治が積極的に、株式市場や金融システム全般を重視しています。トランプ大統領は金融市場の混乱を想定していたと発言していますが、株価がどんどん下がってもかまわないと考えているはずはありません。もしも、金融システムが停滞するような事態になれば、いや、そうなる前に、政治が収拾に動くのは当然です。
今回は、世界の政治が動いて、双方にとって利益となる答えを出し、アメリカを軸にした新しい構造へ方向性が定まり、資本主義の拡大再生産、右肩上がりの株価、という自然な流れに戻るのだと思います。
前項で述べたように、私は楽観的に捉えています。
しかし、直近で株価が大きく下落したのは、紛れもない事実です。
もともと楽観的だった私にとって、今回の下落は想定を超えていました。
2024年8月はじめにかけての急落以降、過熱とはほど遠い状況にある割安銘柄まで、急速な換金売りを浴びて下げたのです。
プログラム売買の存在なども要因として浮かび上がりますが、とにもかくにも株価が下がった現実を受け止め、株価変動に対する認識を少し改めなければならないと考えています。
今回の急落は別として、根本的な問題として、内容が素晴らしい企業なのに割安な株価が放置されるケースは多々あります。
逆に、内容を伴わずに大きく上昇することだってあります。
理屈だけで説明しきれない「マーケット価格」で売り買いして利益を出そうとしているのですから、前項で述べた「過度な反応」にも、必ず対応することが求められます。
株価が急落すると当然、「これからどうなる?」という議論が起き、さまざまな情報が飛び交います。
それらの共通点は、「なにが正解か」という一点ではないでしょうか。
誰も未来を見ていないのでナンセンスなのですが、それでも大衆は正解さがしをします。
この議論に、巻き込まれてはいけません。
立場によって、正解は異なるのです。
真の意味の「投資」を行うウォーレン・バフェット氏なら、急落を受けて、狙っている銘柄の買い増しを考えるだけでしょう。第1項で挙げた「資本主義の拡大再生産、右肩上がりの株価」という論理のもと、チャンス到来と捉えるだけです。
一方、私たち個人投資家は、ウォーレン・バフェット氏とは全く異なるスタンスで株の売買を行っています。いわば「投機」です。
急落した状況を見て、長期トレンドを見据えた仕込みを行うチャンス、短期的な反発狙いの買いチャンス、と考える参加者もいるでしょう。
でも、下げたことで、いわゆる買い場かもしれないと思いつつ投げざるを得ない参加者もいます。あるいは、超短期の売買専門で、株価水準とかトランプ大統領の政策とか関係なく、変動が大きい荒れた状況をチャンスと捉える向きもあるでしょう。
番組タイトルに掲げた「今は何もするな!」は、最も一般的な個人投資家を意識して、「荒れ場でうまくやろうとするな」「火事場泥棒なんてやめておけ」と抑えるための言葉です。
少なくとも、思いつきで行動したらいけません。
今回うまくいくかもしれませんが、次はわかりません。
それに、成功しても失敗しても、自分なりの売買スタイルというものを乱してしまいます。
「なにもしない」をする──いろいろな分野で重視されていますが、ちょっと精神論的、というかイメージ先行の表現です。カッコつけています。“かましている”感じです。でも、ある意味、とても重たい言葉でもあると思うのです。
やることは決まっています。相場・トレードならば、儲けるべくポジションを取ること、上がりそうな銘柄を買うことです。決まっているから、自然に体が動くものです。だから、意識して動かす必要はないし、そういった“やってる感”を求めるとダメなのでしょう。
前項で、立場・戦略による対応のちがい、いわゆる正解が異なると説明しました。
これは、とても大きなポイントなのです。
値動きを見て短期の狙いで買ったところが、上がらない……ポジションを切るのが正解と思いながらも、感情的に切りたくない……突然に「この会社は素晴らしい製品を手がけている」なんて理屈でポジションのホールドを正当化する──翌日から人気化して利食いになるかもしれませんが、「狙い」と「ポジション」が完全にズレている点が大問題です。アウトです!
自分のやり方を決め、自分の見通しをもとに目先の戦略を定め、そのとおりのポジションをつくったとしても、時間が経過すれば状況は変化します。必然的に、「狙い」と「ポジション」にズレが生じます。ピタリ想定どおり、なんて、超レアなケースでしょう。
どんな場合でも、どんな立場でも、ズレを生じさせないのがトレーダーのシゴトです。
「買いだ」と思って買わなければ、ポジションがないままズレが生じます。
状況が変わったら当然、予測も新しいものに上書きされるので、つくったポジションとのズレを消すためにポジション操作を行います。
短期売買でも、中長期でも、このズレを素早く修正していく作業を求められるので、なかなか厳しいのです。
番組で紹介している中源線は、値動きをパターン分析して、数式で答えを出します。
絶対にブレません。そして、「狙い」と「ポジション」のズレを生むこともありません。
ところが、こうした機械的判断を行うシステムには、数式を重ねて“ブラックボックス”化したものが多いのです。
出てきた答えはわかるけど、「なぜ、そうなのか」がわからない……この点、中源線は、シンプルな数式しかないので、自動的に出てきた答えを感覚的に納得できるのです。
なんとなく眺めているだけの人も、いちど少しだけ近づいてみませんか?
中源線研究会は登録無料です。
3月3日の放送「日経平均を見るな! いよいよ動き始めた期待の8銘柄」のフォローアップを公開しました。
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日経平均を見るな! いよいよ動き始めた期待の8銘柄
毎月、番組の前半は、いつもの6銘柄の動きをチェックする「定点観測」です。
見ている人がワクワクする解説は難しい……どんな情報でも、見る人に刺さる部分を切り取っていますが、相場の話でそれをやったら、役に立たないどころか「害になる」と強く考えているからです。
「この1カ月で、こんな動きがあった」
「先週、こんな銘柄が大きく買われた」
こういった話をすれば多くの視聴者を魅了できますが、日替わり判断、飛びつき買い、お遊び売買、その場の気分……ダメトレーダー養成所になってしまうはずです。
番組では紹介していませんが、ほかにも定点観測をしています。
決められた個別銘柄を観察するだけでなく、条件をつけて値動きの統計を取ったりもしているのです。
そのなかで、2月の値動きに興味深い変化を見つけました。
値の安い低位株の観察なのですが、しばらく上げ下げの振幅が小さい「小動き」の銘柄が増えたと同時に、直近の上げ下げを上抜いたと認められる「長大陽線」の銘柄も増えていたのです。
低位株に絞って観察していると、「小動き」と「長大陽線」の数は通常、反比例します。理屈で考えても当然、そうだと思いますよね。ところが2月は、両者ともに増加していたのです。
原因のひとつは、少し前から私が指摘しているように、市場全体で「銘柄の選別が厳しい」ことです。市場から資金が流出している状況ではなさそうなのに、まるで存在を否定されるようにダラダラと売り込まれている銘柄が、けっこう多いのです。
一方、2024年8月初旬にかけての急落以降、長く動きがなかった安値圏の銘柄のうち、それなりの数が直近で、立ち上がってきているわけです。
日経平均の水準と推移を見ていると感じませんが、新しい流れが生まれているのです。
平均は平均、単なる中間値です。
よく例に出しますが、テストで英語と数学の2教科、どちらも50点だったとします。平均は当然、50点です。では、次のテストで英語が100点満点、でも数学は0点だったら? 「なにが起きたんだ?」という状況ですが、平均は1回目と同じく50点です。
日経平均とは、こういう数字です。
上がる銘柄があり、下がる銘柄もあれば、平均は変化しません。
テストの例では、英語がわずか50点から100点満点に上がったことは、ポジティブな事件です。「すごいじゃないか!」と賞賛を集める結果です。でも、数学の0点は、「おい、どうしたんだ?」と周囲が心配する事件です。
「平均は同じです」ではなく、「暴騰して倍化」(英語)、「驚異的な急落」(数学)というのが、運用資金の増減につながる変化、私たち売買実践者が気にかけるべき“事件”なのです。
対面営業の証券会社で新人営業マンが電話番をするとき、不安になって先輩に質問します。「相場を聞かれても答えられません」と。すると先輩は、「大丈夫、あそこを見て日経平均と前日比を言えばいい」と教えます。実際、電話してきた常連客は「おおっ、新人か。頑張れよ」なんて、日経平均しか聞かずに満足げに電話を切るのです。
「頑張れよ」なんて、優しい人なのですが、日経平均を重視する人=最も厚い個人投資家層=売買技術が高くない人=はっきり言ったら負け組──あらゆる分野に通用しそうな理屈です。
日経平均は日本の経済力を示す数字──。
そうでしょうか?
私には、単なる数字にしか見えません。
5年間で日経平均が50%上昇していたら、その5年間は「株が買われた」「市場が発展した」と解釈していいでしょう。でも、やはり平均は平均ですし、単なる数字だと思うのです。
一時期、株式併合が流行しました。
東証が売買数量の単位を100株に統一すると決めたあと、おそらく少額の株主が増えることを避ける目的で、株式併合を実施する上場企業が多数、出現したのです。
投資家の評価が低くて株価が100円……売買数量が100株になったら、わずか1万円で株主になることができます。名簿を管理して各種の郵便物を送ることを考えたら、コストを計算して「1万円の株主かぁ」と考えても当然です。
しかし、発行株数を10分の1に減らす、つまり10株を1株に併合すれば、既存の株主は持ち株数が10分の1になり、市場の価格は無条件で10倍、最低の100株だけ買う場合の最低投資金額は10万円に上がります。
ただ、内容がよろしくない企業が株式併合をすると、そのあと売られる傾向があるのです。
内容がいまいちで100円に低迷していた、でも、それ以上下がる気配はなかった
↓
株式併合で株価が1,000円になった。見た目はカッコよくなった
↓
割高な感じがするのか、絶対値が上がって下値不安を感じるのか、なぜか下落する
↓
500円(以前の50円)まで下落する
実際に、こういった銘柄が、いくつもあったのです。
私たちは「併合崩れ」と呼んでいました。
数字のマジックで100円を1,000円にすることが可能、つまり株価は単なる数字だといえるのですが、単なる数字にしては不合理な評価が行われている現実も浮かび上がります。
私たちは生身の人間です。いくら計算しても、「売買マシン」になることはできません。
そんな不安定な部分を認め、それでも好結果を出す、ちゃんと利益を上げる方法を考える必要があります。
人間ならではの錯覚に陥らないようにする土台は、なんといっても「ゆとり」です。
余裕がない状態、例えばムリな金額を運用して「損したらタイヘンだ」「なにがなんでも勝たなくては」と考える状態では、必然的にミスが増えるでしょう。
でも、ゆとりがあるだけでは結果が出ません。
確固たる考え方が必要です。
考え方とは、「予測の当て方」ではありません。
予測は当たったり当たらなかったり……どちらの結果もあり得ます。
だから、「予測どおりに動いたら、どうするか」と「ダメだと判断する基準はなにか、そのタイミングはいつか」など、自分なりのプランを用意して売買に臨むのです。
中源線は、計算で売り買いを決めます。
「売りだ」「買いだ」と言いきります。
でも、その当初の予測に固執しません。値動き傾向が変われば、「買いだ」と言いきったくせに「やっぱり売りだ」と覆します。
でも、それでは乱暴、不測の損失が蓄積することもあるので、全体の資金管理をしたうえで、さらに売買数量も3分割で管理します。
このように実践的かつ実用的なので、番組で取り上げているのです。
少なくとも、「日経平均信奉者」や「銘柄情報ハンター」の世界から離れて、オトナとして、「株式市場でなにが起きているか」「どうすれば勝てるか」をまっとうに考える少数の人だけが生き残るのが、相場という特殊な世界です。
2月3日の放送「本格上昇はまだ? 静かにコツコツ買う底練り・底固め8銘柄」のフォローアップを公開しました。
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本格上昇はまだ? 静かにコツコツ買う底練り・底固め8銘柄
2月3日に紹介したのは、出遅れ狙いの銘柄です。
毎回、テーマを立てて銘柄を紹介しますが、単なる銘柄情報番組を作っているつもりはありません。テーマや銘柄をきっかけに、“実践のあり方”を考えてほしいと思っています。
今回のフォローアップでは、「出遅れ狙いという戦略を、どう認識するのが正解か」という問題を考えます。
出遅れ、つまり「まだ動きがない」銘柄です。
でも、「当分は動かないだろう」ではありません。
もし動きそうもないのなら、買う理由はありませんから。
「出遅れ」という呼び方のとおり、「あと少しで動くだろう」という観測があるから、買いを決断するのです。この部分は、当たり前のようですが、とても重要です。
うっかりすると、単に安いというだけで買ってしまいます。
実は、買うときに高くても安くても、どちらでもいいのです。
なによりも買ったあと上がることで、理想は時間をかけずに上がること、これだけです。
「安いものを買った」と満足できるのは、日常の買い物(消費行動)です。
誰も未来のことはわからないので、常に予測で行動するのですが、下がってきたものを買おうが、動きのないものを買おうが、あるいは上昇の勢いを感じて買おうが、どんな場合でも、見据えるのは「近未来の値上がり」です。
上げトレンドで買いポジションを持っていると儲かる──。
こう考えるのが実践家です。
買い物とはちがうので、「上げの波に乗る」という意識が非常に重要なのです。
中源線では、常に「逆行」に注目します。
「今は上げトレンド」と判断していたら、逆行の「下げ」をチェックします。
下げ方のパターンを見て、「上昇から下落に移った」と判断する必要があるからです。
現在が下げトレンドと判断している場合、逆行は「上げ」です。
上げ方を見て「おっ、上昇に移ったか」と判断します。
そんな変化を捉える実践者の感覚をシンプルな数式に落とし込んだルールが、中源線の核です。
ちなみに、大きく下げても、下げ止まっても、日柄が経過しても、買いとは判断しません。
感覚的に表現すると、ピクンという上げがあり、それを抜くクイッとした上げがあったとき、「上昇スタート」と判断するのです。
いわゆる順張りといえますが、「見据えるのが近未来の値上がり」なのですから、実に素直な基準ではないでしょうか。この中源線の着眼点を、裁量の売買に持ち込んで考えてみましょう。
「下がってきた」「下げ止まったか」「買っていいか」と目をつけることがあるでしょうが、うっかりすると、買い物と混同して「安い」だけで買ってしまいます。
あるいは、「逃したら悔しい」という気持ちが前面に出て、慌てて買ってしまうなんてこともあります。
ここに、中源線の発想を持ち込むと、「待て待て、買ったあと期待どおりに上がるのか?」と、今後の値動きの可能性を冷静にチェックする時間が生まれます。
そうか、出遅れている銘柄を買っても「上がらない」という結果があるのか……こう気づきます。手堅いつもりが、時流に乗らない銘柄を集めてお腹いっぱいになったら、大切な資金はリスクにさらされているだけの状態です。
「出遅れ出ずじまい」という言葉があるように、出なかったときのことも考えて、出遅れ銘柄の仕込みを検討する必要があるのです。
下がってきたところで買うのが逆張り──この説明には、大切な実践的視点が欠けています。
前述したように、買うときの狙いは「近未来の値上がり」です。
「下がった」だけでなく、まずは「下げ止まった感じ」が条件で、もうひとつ「上がりそうだ」という判断も必要です。
中源線のルールのように、実際にピクついてから買うのではなく、もう少し早く、動きがないうちに買うのが逆張りです。でも、ただ下がっているというだけで手を出すのではなく、「下げ止まっているうえに、上がりそうだ」という判断があり、「でも、わずかでも動き出す前に有利な値段で買っておこう」と苦労するのが、逆張りのテクニックです。
ちなみに、グイグイと下げている最中に「エイヤ~」と買い向かうのは、目先の突っ込みの安値を買える可能性もありますが現実の確率は極めて低く、多くの場合は「下げ過程で買いポジションを持つ」ことになるでしょう。
“上げトレンドで買いポジションを持っていると儲かる”のです。
逆張りのつもりが、逆行するポジションを持っただけ……相場“あるある”ですが、根底には、逆張りの誤った認識があるのです。
相場は、1秒前に戻ることができません。
そして、1秒先のこともわかりません。
中源線の陽転も、「上がるだろう」と勝手に判断しているだけです。
だから、「まずは3分の1買うだけ」なのです。
出遅れ銘柄は、「出遅れているだろう」と考えているだけです。
実際には出ないこともあるし、一段安するケースだってあるのです。
安値圏でモタモタしているので、「崩れた(一段安した)」と判断するのもラクです。
崩れたら、さっさと切るつもりで買うのです。
「出ずじまい」の結果も想定しておき、時間が経過したら切って現金化、次のチャンスをさぐると最初から決めておくべきです。
緻密に考えても、しょせんは「だろう」なのです。
確率は五分と五分、「一手目で当ててラクラク儲けよう」という発想が誤りで、二手目、三手目でどうにかするのが、相場の実践です。
中源線の陰陽転換、増し玉に進むかどうかの二度目の判断、そして3分割のポジション操作は、「だろう」という現実を手放さないための安全帯なのです。
「上がるに決まっている」という強い確信があるからポジションを取ることができるのですが、「それは『上がるだろう』ってだけだよね」と行動を見張る“第二の自分”がいなければなりません。
トレードは「売りと買いしかない単純作業」などといわれますが、心理面を考えると実に複雑なことを私たちはこなしているのです。