12月1日放送のフォローアップ
林 知之 | 週報


売買戦略のつくり方

映像は、YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」でご覧ください。
保ち合いブレイク・続伸期待の8銘柄

強いものは強い

日経平均が5万円に達する上昇をみせるなか、個別銘柄の多くが同じように上がっていたかというと、全くそうではありません。

私は中源線でも売買していますが、固定している8銘柄はむしろ静かな値運びでした。
裁量で売買している低位株(小型銘柄が多い)も、しっかりと上昇した銘柄は少数でした。
それなりのパフォーマンスを出せていますが、日経平均の高騰を取り上げて世間が騒ぐほど、ウハウハな状況ではありません。

まず、この部分に注意が必要です。
ほとんどの人は、なんとなく感じる“世間のムード”というか、解説の“論調”よりも、自分のパフォーマンスが大きく見劣りするという不快感を抱えていると思うのです。

相場あるあるかもしれませんが、「自分が追っている範囲」「自分の手法」を手放したり否定的に考えたりすることなく、マーケットの現状を観察しなければなりません。

今日は、その「自分の手法」を軸とした「売買戦略」がテーマです。

さて、個別銘柄全体は完全に好調とはいえない、物色対象が偏っている、とはいえ、指数を押し上げている銘柄を中心に“強いものは強い”のです。後半で紹介した銘柄は、そうした流れがつづく、一定水準まで上昇しても下げない銘柄は再び上がる、という前提で選んだものです。

出遅れ狙い

後半の銘柄は、「強いものにつけ」という相場の原則に素直な銘柄選定です。
でも、自分の手法を曲げてまで手を出すのはどうなのか……ここがポイントです。

私は、ジッと保有していた低位株を春以降、少しずつ利食いしました。
結果として、手の内に残っているのは出遅れ銘柄が多い状態です。
出遅れだから、今の相場では「なかなか動かない」のです。

利食いした銘柄の中段保合を買い直そうともしていますが、夏以降に仕込んだものの多くは出遅れです。出遅れ狙いが、私の低位株投資の基本だからです。

今年はまずまずの利益を取りましたし、今は資金に余裕がある状態で、持ち株にも適当な含み益が生じています。株価指数の水準をもとに無責任に語る解説に耳を傾けなければ、不満は生まれません。それでも、なんとなくスッキリしない……人間は欲深なのです。

それでも、基本路線は変えません。
中源線はシグナルに従ってポジションを変化させていきますが、裁量の売買については、目の前の動きを見て微調整はするものの、安易な路線変更はしたくないのです。

出遅れ狙いの戦略にも、大きな強みがあります。
のろい、つまらない、地味だ……こう否定せず、それが心地よいのなら、周囲の声に惑わされることなく貫くべきです。

さて、出遅れ狙いだからといって、「ずっと持っている」ことが前提ではありません。
後半の銘柄を選んだ観点と同じで、「早そうなもの」を手がけるのが正解です。
効率を考えて、「できれば長く持たない」ことを重視するのは、相場の大原則です。

最重要は時間軸

前項で、「長く持たない」というイメージの重要性を示しました。
動いていて話題になっている銘柄に飛びつけばいい、というようなことではなく、地味な安値圏で買うのにしても、なるべく早く動意づいて、なるべく短い保有期間で利食いできるにこしたことはありません。

売買の戦略を考えるうえで、どんな狙いであろうと、この“時間の経過”は大きなポイントです。

ただ、相手が相場なので、思うとおりにはいきません。
それでも、「自分が狙う値動きの期間」というものを、しっかりと意識しているかどうかが問題です。

なんとなく「上がりそうだ」という程度でポジションを取っているケースが、非常に多いと思うのです。あくまでも自分の理想ですが、今後の値動きについて「時間と値幅」で考えているかどうかがカギです。

チャートを観察するときに重視する「トレンド」は、チャートのタテ軸の値段と、ヨコ軸の時間(日柄)の2つがそろうことで認識できます。どちらか1つが欠ければ、トレンドを認識することはできないのです。

損益というシュールな結果は、売り値と買い値の差で計算されます。
そのため、私たちは自然に、チャートのタテ軸(値段)だけに目を向けるのです。
だから、「徹底的に時間を意識する」ことが、バランスの取れた思考、結果につながる状況判断につながるのです。

時間の意識を捨てなければ、落ち着いて戦略を立てることができます。
上っ面の銘柄情報に振り回されることもなければ、自らの思考で落とし穴にはまる可能性もグッと低くなるでしょう。

“ねばり”の大切さ

さて、「時間を意識する」ことを強調しましたが、「時間をかけない」というイメージにも触れました。これは、相場の基本です。

でも、なんでもさっさと手仕舞いするのが正解、ということではありません。

基本は時間をかけない。
特に、見込み違いだった場合に時間をかけるのは誤りです。
ダメ玉に時間をかけ、多大なエネルギーを使う理由はゼロです。

避けようのない見込み違いを素直に受け入れ、相場の経費と割り切ってサッと切るのです。
いちど飲みに行ってイヤなやつだと感じた相手と、ダラダラつき合うなんてバカげています。
心地よいつき合いを期待した自分を認めたくないので、なんとなく継続したくなるかもしれませんが、そんな人とのつながりはサッと損切りするのです。

中源線でも、例えば陽転直後にガクンと動きが変わったら、朝令暮改よろしく「はい陰転、ドテン売りです」という答えが出ます。「せっかく買ったのに……」なんて発想は、相場には不要なのです。

でも、よいポジションには時間をかけてOKです。
当たった予測は、少し時間をかけて「育てる」のが正解です。
いわゆる“ねばり”ですね。

相場は生き物です。
いくつものパターンを想定していても、全く想定外の展開になることばかり……。
途方に暮れたりするようでは、実践家とはいえません。
その場に応じた判断で、自分が進む道を決めるのです。

ただ、軸がないと、その場の気分だけで決定してしまいます。
軸になるのが、自分なりの戦略です。
その戦略を支える要素を考えましたが、今回のフォローアップで強調したのは、「時間の経過」です。

値動きとはちがって、時間の経過は安定しています。
それを軸に、バタつく株価変動への対応を、可能な限り冷静に考えるのが相場です。

中源線の判断に裁量を加える場合でも、やはり時間の経過を意識するべきだと思います。


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