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☆円安阻止、為替介入の可能性と効果

私は先週のコメントで、「現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している」と述べた。

その後、145円近辺まで円安が進んだが、政府と日銀が「介入の可能性」を話し合ったのではないかとの観測が流れ、141円台後半まで円が買い戻された。

一方、サマーズ元米財務長官は一連のファンダメンタルズを考慮すればドルには一段の上昇余地があると述べ、「日本当局が為替介入に踏み切ったとしても、その効果は疑わしい」との見方を示した。

そこで、「為替介入の可能性と効果」とを考えてみたい。結論を先に述べると、「可能性は常にある。一定の効果もある」となる。


ドル円レートを決める3大要因を繰り返しておく。1、日本の貿易収支(円の実需の売買を示す)、2、日米金利差(資本実需の動向を示唆する)、3、投機的売買(取引金額的には圧倒的だが、保有期間に制限がある)だ。

長期トレンドに与える影響は1、2、3の順番で、短期的な動向では、全く逆の3、2、1の順番となる。これは短期的な動向は取引金額に左右されるが、長期トレンドは保有期間に左右されることを意味している。

これらを分析すれば、「現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している」というのが結論だ。

参照:円安はどこまで進む?

ここで、為替の市場介入は1の円の実需にも匹敵する。特に日本の当局による外貨売り円買いは、そのまま円貨を消却してしまい、もう二度と外貨に戻すことがないかも知れないからだ。


先週、財務省が発表した8月末の外貨準備高は1兆2921億ドルだった。7月の1兆3230億ドルから減少、2019年3月以来の低水準となった。減少は、米国金利が上昇し、保有する米国債の時価評価額が下がったためだ。

一方、7月末のドル円レートは約133円20銭で、8月末には約138円90銭となった。このことで、外貨準備高の円換算は、約176兆円から、約179兆円に増えた。現時点では、外貨準備高の1兆2921億ドルが市場介入の原資となる。


同じく先週、財務省が発表した7月の貿易収支は1兆2122億円の赤字だった。これを単純に12倍すれば14兆円を超えることになる。過去最大の貿易赤字額は11兆円余りなので、今年が過去最大を更新するのは確実だと言っていい。

また、2020年の国内投資家による外債投資は20.4兆円と3年連続で増加、1996年以降で4番目の高水準だった。もっとも、世界のほとんどの中央銀行が利上げに動いているため、債券価格の値下がりが続いている。これまで、国内投資家は外債を大きく積み増してきただけに、投資の手控えも考えられるようになってきた。

もっとも、外債投資も外株投資も為替ヘッジがかけられることが多いので、額面ほどには為替市場への影響はない。

これらのことが示唆するのは、実需の外貨需要に対して、当局の外貨準備は十分に応えることができるということだ。


では、市場介入の弊害はないのか? 円安阻止の円買いのために、外貨準備(外債)を売ることは、市場から円を吸収することになる。

ちなみに、これも先週発表された8月のマネーストックM3の平均残高は前年比3.0%増の1565兆4000億円だった。伸び率は前月と変わらなかったが、残高は6カ月連続で過去最高となった。

預金が前年比5.9%増の914兆5000億円。現金は2.9%増の114兆7000億円、CDは4.2%増の38兆2000億円だった。

M3からゆうちょ銀行を除くM2は3.4%増の1209兆1000億円、広義流動性は4.0%増の2078兆7000億円で、残高はいずれも過去最高。広義流動性のうち、投資信託は6.2%増の91兆4000億円。企業などの利回り追求の動きから2016年1月以来の高い伸びとなった。外債は14.9%増の34兆7000億円。円安で15年2月以来の伸び率となった。

ここで、預金だけに注目すると、前年から約53兆円超増えたことになる。つまり、市場介入の外貨売りで、貿易赤字分の外貨を供給し、その分の円貨を吸収しても、例えば、預金の伸び率が5.9%から3%台後半の伸び率に下がるだけだ。大勢に影響があるとは思えない。


一方で、外貨準備高が減少すると、それでなくてもGDP比で世界最大の政府債務、世界最大級の政府純債務を抱える日本政府のクレジットリスクが高まり、信用格付け引き下げも考えられるようになる。

ところが、これも大きな問題にはならないようだ。日本の信用格付けは現時点でも先進国では最低だが、それでも日本政府は世界一低利で国債を発行できている。買い手がほぼ日本国内に限られているからだ。

これは政府というタコが、国民、民間というタコの足を食っているようなもので、そのために日本の民間は徐々に体力、能力、気力を奪われてきている。とはいえ、ここからさらに信用格付けが下がるくらいで、今更、事態が急激に悪化するとは思えない。

一方、ここからの円安は、物価高、貿易赤字の拡大、さらなる円安と、負のスパイラルに繋がる可能性がある。どちらが恐いかと言えば、格下げよりも、こうした負のスパイラルの方だ。


現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している。その一方で、為替の市場介入の可能性は常にあり、一定の効果もあると言える。

日本には個人も企業も国も、悪いところがいっぱいある。しかし、それらが他の国よりも特に悪いとは思えない。私は、今の税制が日本の良い所を殺し、悪い所を引き出しているのではないかと疑っている。

外貨売りの市場介入を行えば、言うまでもなく、外貨準備高は減る。続ければ、日本政府の虎の子とも言えるクレジットが失われる。しかし、破滅までの時間を買うことができる。

その限られた時間を有効に活かして、例えば、1989年度以前の税制に戻すような改革を行えばいい。

 

 

 

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