・円安はどこまで進む? | 矢口新

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☆円安はどこまで進む?

ドル円が140円台後半にまで上昇、1998年8月に付けた147円台後半まで高値の目途がなくなった。そこで気になるのが、円安ドル高はどこまで行くのかだが、結論を言えば、円安はまだまだ続く見通しだ。

私は、ドル円レートを決める3大要因は、1、日本の貿易収支(円の実需の売買を示す)、2、日米金利差(資本実需の動向を示唆する)、3、投機的売買(取引金額的には圧倒的だが、保有期間に制限がある)だと、著書やコメントでも言い続けている。

長期トレンドに与える影響は1、2、3の順番で、短期的な動向では、全く逆の3、2、1の順番となる。これは短期的な動向は取引金額に左右されるが、長期トレンドは保有期間に左右されることを意味している。

その見方が正しいとすれば、(32年前の著書で指摘した市場価格変動の本質、構造的要因が間違っていないとすれば)、現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している。

これらは長年にわたって繰り返し、繰り返し述べているので、まずは今年8月1日付けのコメントから部分引用する。(引用部分は「内」)


「7月29日のニューヨーク市場で円相場は3日続伸、前日比1円05銭円高・ドル安の1ドル133円20銭近辺で取引を終えた。2週間ほど前の139円台からは4%以上の上昇で、6月中旬以来の円高水準となる。

こうしたことで、今後は円安に進んでもそれはオーバーシュートで、円安は定着しないという見方が出てきた。ロイターの記事を引用する。」

引用記事:円安続かず、日銀の為替介入必要なし=「ミスター円」榊原氏


「(上記の記事にある)その意味では、『円安は(主に)日米間の金融政策の違いによって引き起こされた』と言っても間違いではない。

とはいえ、ここで(主に)を()で括ったのは、他にも金利差に負けない大きな要因が円安に繋がっているからだ。」


「この10年間で、このような勢いでドル円が上昇したのは2回目だ。2012年の後半から、2015年の終わりにかけてで、日米金利差は動かなかったが、ドル円は76円から124円に上昇した。この時の主な要因は、日本の貿易赤字だと私は見ている。

貿易赤字とは、輸入金額が輸出金額を上回ることで、日本の場合では主にエネルギーを買うための外貨需要が、輸出で得た外貨供給を上回ることを意味する。貿易赤字とは、端的に言えばドル不足で、そうしたドル買い需要がドル円レートを押し上げるのだ。

今回の円安ではどうか?

上図01の下の部分に書いているように、過去最大の貿易赤字になる見通しだ。日本は世界でも有数のエネルギー海外依存国なので、今後の世界情勢を鑑みれば、貿易赤字が定着してしまう可能性が高い。ウォールストリート・ジャーナルなどは、『米国産ガスが世界で争奪戦』としているので、高い天然ガスを買わねばならなくなる可能性が高い。

岸田政権はそうした今後の世界情勢を鑑みて、国防費を倍増させる計画だが、武器購入などで、ここでも大量のドルが必要となるはずだ。

また、日本は食糧の自給率を下げ続けている。ここでも外貨需要が減る見通しが立たない。エネルギーのほぼ全て、食糧の大半を海外依存していて、岸田政権はどのようにして日本を『自衛』するつもりなのだろか?」


「私が知る限り、世界的な利上げは進行中で、米国もまた道半ばだ。つまり、円相場トレンドの2大要因とも言える、日本の貿易収支と、円と海外金利差のどちらもが長期的な円安トレンドを示唆している。

こうした円安トレンドが止まる見通しは今のところない。どこまで行くのかさえ分からない。日本産業の空洞化により円安が輸出拡大に繋がる割合が下がっており、生活必需品の輸入依存を進めたために、円安がさらに貿易赤字を拡大させる可能性が高いからだ。

ここ2,30年間の日本の政策は、海外へのバラマキを続けながら、海外への依存を深めると言う奇妙なもので、日本を土台から弱めることに繋がってきた。

その結果ともいえる貿易実需と資本実需が置かれた現況を鑑みると、ここ2週間ほどの円高は投機資金の反対売買によるものである可能性が高い。そうした自律反発によるものでは6~7円幅の反転は十分な値幅なので、経験則から円安に戻る日も近いと見ている。」

参照:ここからは円高か、円安か?


上記コラムには図表も挙げているので、ぜひ参照して頂きたい。ちなみに、7月中旬以降の投機的なドル円ロングは、下図01右端の矢印で示したように、急激に巻き戻された(円ショートが減り、円ロングが増えた)結果、ドル円の高値から安値までの変動幅は約9円に達した。

100円近辺の7円幅は7%で、130円近辺の9円幅に相当するが、これは後付けの言い訳で、このところの変動幅は経験則を超えて大きい。

参照図01:シカゴの円先物ポジション(出所:IMM)



また、5月16日のコメントでは以下のように述べた。

「日銀は4月28日の金融政策決定会合において、以下の声明文にあるような超緩和的金融政策の維持を決めた。」

参照:当面の金融政策運営について(注1、2は賛否委員の内訳)

参照:連続指値オペの運用等について


「ドル円は、3月初めからの2カ月間で13%以上上昇しているが、日銀は頑として超緩和的金融政策の維持を決めたことになる。一方で、大半の国の中央銀行は利上げを行っているので、円と諸外国通貨の金利差は広がり続けることになる。この辺りの理由は、黒田総裁の答弁を参照して頂きたい。」

参照:総裁記者会見要旨:2022年4月28日(木)午後3時半から約60分


「国債とは、国(財務省)の借金証書のようなものだ。その金利が0%だということは、国は金利を全く支払わずに借金できることを意味する。これは年金や生保、銀行、債券投信といった資金運用者にとっては、日本国債で運用しても全く金利が得られないことを意味している。

ここで外国通貨の金利が上昇していくと、外国債券で運用(外国人に貸し出し)するとより多くの金利が得られることになるので、円売り外貨買いの需要が高まることになる。

一方で、高金利は信用力が低いことを意味することが多いので、当該通貨の下落で反対に損失を被ることも少なくない。

とはいえ、図01に見られる国々は、いずれも日本よりはるかに信用力が高い(借金返済能力が高い)国々だ。それらの国々の金利が、右端に見られるように上昇し始めている。これは間違いなく円安要因となる。つまり、日銀は円安を放置したと言えるのだ。」


「金利差拡大は間違いのない円安要因なのにも関わらず、図01の左側を見れば分かるが、必ずしも実際の円安を意味していない。この図では青色で0%近辺に張り付いているのが円金利だ。サブプライムショック、リーマンショックまでの各国の金利が最低のスイスフランでも3%近くまで上昇したのに対して、円金利は1997年4月以降0.50%を超えたことがないのだ。つまり、この時期には金利差が拡大したのに、円高が進んだことを示している。」


「とはいえ、国内にまともな運用先がない日本の年金や生保、銀行、債券投信に、日本政府よりも低い信用リスクでこれだけの金利が提供されていることは、円安要因であることには間違いがない。しかし、実際には円高が進行した。これは円安を示唆していた金利差よりも大きな円高要因があったことを暗示している。

それを示したのが、下図02だ。2010年までの貿易黒字の間は円高トレンドが続き、2011年に貿易赤字になってから、ドル円は大底を打った。赤字の最大要因は大震災による天然ガス輸入の急増だ。」


「エネルギーと食料を海外に依存している日本は、それらの価格が上昇しても買い続けるしかない。ここに金利差も開いて行き、円を買ってくれる海外旅行者も受け入れないとなると、円安が止まる見通しが立たなくなる。

そして、円安の進行は同じドル金額の輸入により多くの円貨が必要となることを意味し、更なる貿易赤字の拡大、更なる輸入物価の上昇に繋がることになる。貿易赤字、円安、インフレの負のスパイラルだ。

一方、日銀が利上げを渋る理由の1つには、国債費の上昇がある。日本国債の残高は増え続けてきたが、超低金利を継続してきたおかげで、利払い費は減り続けてきた。それが、2020年度にはマイナス金利政策を続けているのに、遂に19年ぶりの水準に急増したのだ。つまり、超緩和的政策を止めることは、利払い費急増に拍車をかけることを意味しているのだ。」


「とはいえ、円金利を上げて国内の需要を減らそうにも、エネルギーや食料の需要が減るわけではない。海外発のインフレが止まるのも、海外頼みとなっているのだ。」

参照:ドル円130円超えなのに、日銀はマイナス金利政策を継続


この上記コラムにも図表を挙げているので、ぜひ参照して頂きたい。

ちなみに、岸田政権は「円を買ってくれる海外旅行者」の受け入れを決めた。下図02は2012年からの月間海外旅行者数の推移で、最も多い月には299万人が日本を訪れた。これが再び上向けば確かに円買い需要は増える。とはいえ、新型コロナ自宅療養者数が140万人もいる状態で、仮に多くの海外旅行者が日本国内で病気になればどう対処するのだろうか?

参照図02:日本への月間旅行者数の推移(出所:ウォールストリート・ジャーナル)


一方で、旅行収支の黒字が最も大きかった2019年度は約2.6兆円の黒字だが、旅行収支を含むサービス収支が黒字となったことは、かつて一度もない(2019年度は約1.7兆円の赤字)。この点では、海外頼みをしても円安もインフレも止まらない。


円安はどこまで進むか?

ドル円レートを決める3大要因を繰り返すと、1、日本の貿易収支(円の実需の売買を示す)、2、日米金利差(資本実需の動向を示唆する)、3、投機的売買(取引金額的には圧倒的だが、保有期間に制限がある)だ。これらの今後の展開を予測してみる。

1、今年度の貿易収支は過去最大の赤字となる見込みだ。貿易赤字は今後も拡大する可能性がある。なぜなら、日本の輸出金額の大きなものは工業製品が主体だが、その多くは海外現地生産の比重の方が大きいために、円安で輸出急増とはなり難い。一方、輸入はエネルギー、原材料、通信・半導体・電子計算機、医薬品など、日本に代替品がないか、あっても競争力を失ったものがほとんどだ。軍需も同様だ。



2、主要諸国は利上げを「正常化」と呼んでいる。つまり、政策金利をほぼゼロやマイナス金利とし、中央銀行の資産を短期間に10倍以上にもして、GDPの規模を超えさせた政策の方を「異常だった」と、インフレに苦しむ今ようやく認めたのだ。

一方、日銀の異次元は「Past the point of no return」、引き返せない所を超えてしまった。引き締めに転じられないだけでなく、転じても弊害だけがあって、効果がないのだ。アベノミクスは日本の金融政策を破壊した。このことと、私が考える日本経済の救済法は近著に詳しい。

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3、上図01に見られるように、ドル円のロングは相当に巻き戻された。ドルと円の金利差の拡大は、ドルを持てばより多くのスプレッドが得られることを意味する。そのことを目的に材料の如何に関わらずドルを持ち続けている投機筋の存在を鑑みれば、現状のドル円ポジションはほぼゼロに落としたところから、今また積み上げ始めた段階だ。


長期トレンドに与える影響は1、2、3の順番で、短期的な動向では、全く逆の3、2、1の順番となる。これは短期的な動向は取引金額に左右されるが、長期トレンドは保有期間に左右されることを意味している。

この見方が正しいとすれば、現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している。

 

 

 

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