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☆ロシアの苦戦と、戦争の壊滅的な拡大懸念

ウクライナ戦争でロシアが苦戦している。ウクライナ東部で5月8日行われたドネツ川(シヴェルスキードネツ川)渡河作戦では、ロシア軍の70台以上の戦車・装甲車が破壊され、最大1000人とも言われる部隊が全滅させられたという。英タイムズ紙によれば、舟橋を渡河中の部隊が狙われた。

参照:Russian battalion wiped out trying to cross river of death 


一方、米ニューヨークタイムズ紙はおそらく同日の戦闘で、ロシア軍はセベロドネツク市の近郊でドネツ川とウクライナ軍に挟まれて、少なくとも400人の兵士が砲撃を受けて死亡したと報道した。

参照:A Doomed River Crossing Shows the Perils of Entrapment in the War’s East 



ロシア軍苦戦の第1の理由は、ウクライナ軍がロシア軍の動向をかなり正確に把握していることだ。それは米国などの情報機関が人工衛星などによる戦況の把握を逐一ウクライナ軍に提供していることと、日本を含む西側諸国がウクライナに提供したドローンによる偵察が大きい。

第2の理由は、ウクライナ軍の装備が、事実上、ロシア軍を上回っているためだ。これは、米国など西側諸国の提供によるものだ。

令和3年版防衛白書よれば、ロシア軍の総兵力は約90万人で、米国1国と比べてもはるかに少ない。また、経済規模は比較にならないくらい小さい。
参照図01:ロシア軍の兵力(出所:令和3年版防衛白書)
 

 

一方、ウクライナ軍の兵力は12.5万人とされているが、女性を含む民間人の多くが戦闘に参加している。60歳以下の男性には出国を認めず、国防に従事させるという話もあり、その話が事実だとすれば、4000万人を超える人口の相当数が兵力として見込めることになる。これがロシア軍苦戦の第3の理由だ。
参照図02:ウクライナの兵力(出所:narudora media)
 

つまり、ロシアは1国(ベラルーシを加えれば2国)だけで、米国などNATO29カ国、及び日本やオーストラリアなどの西側支援国と戦争している。加えて、親せきや知人も多く住んでいる兄弟国を蹂躙しているロシア軍と、祖国で家族や街を守っているウクライナ軍の士気の違いを鑑みれば、ロシアが勝てるはずがないのだ。


では、ロシアは攻め込みながらむざむざと負けるのか? あるいは、プーチン大統領が当初から言っているように、追い詰められれば「核兵器」の使用も考えられるのか?

核兵器は1発でも破壊的だが、ロシアは世界一多くの核弾頭を保有しており、西側諸国全部を合わせても、世界の半分に満たないのだ。
参照図03:世界の核保有国(出所:長崎大学)
 

つまり、ロシアを経済力や通常兵力などといった弱みをついて追い詰めることは、ロシアの核兵器という強みを引き出すことにもなりかねないのだ。

そこで、核戦争を恐れる世界は、ロシア・ウクライナ戦争の出口戦略を提供する必要が出てきている。バイデン大統領が失言したように、プーチン政権転覆までロシアを叩くというのでは、核戦争を覚悟せねばならず、話にならない。


キッシンジャー元米国務長官は、スイス、ダボスで開かれている世界経済フォーラムにオンラインで参加し、ロシアとウクライナの国境を「2月のロシアの侵攻前の状況」とすることが望ましいと提言した。これはロシアのクリミア半島領有を認めるものだ。西側諸国にも戦争が長期化すれば「ロシアに対する新たな戦争になる」とロシアへの配慮を呼びかけた。

これに対してウクライナのゼレンスキー大統領は、譲歩は考えられないと強く反論。「領土分割論を唱える者は、その地域に住んでいるウクライナ人を考えていない人だ」と訴えた。「キッシンジャー氏のカレンダーは2022年でなく1938年になっている」とも指摘した。英仏が台頭するナチス・ドイツに融和姿勢を示し、第2次世界大戦の惨禍を招いたとされる歴史の経緯を引き合いにした非難だ。

とはいえ、クリミア半島をウクライナが領有していたのは、1954年に当時のソ連フルシチョフ書記長がロシアから譲渡してから、2014年にウクライナのクーデターで反ロシア政権が成立しためにロシアが取り戻すまでの60年間だけだ。現在も「その地域に住んでいる」住民の7割はロシア人だとされている。残りがコサック人とウクライナ人だ。

クリミア半島のセヴァストポリには、1783年からロシア黒海艦隊の海軍基地がある。それをロシアが「敵国」に明け渡すことは、敗戦以外に考えられないと言える。少なくとも、クリミア半島に関してはゼレンスキー大統領の主張にこそ無理があるのだ。これでは、停戦すら望めない。
参照図04:ロシア軍の配備(出所:令和3年版防衛白書)
 


また、米国がウクライナによる戦争拡大を懸念し始めているというスクープ記事がロイターに出た。

「米国とウクライナ、新兵器で射程伸び、戦争が拡大する危険を議論。

米国とその同盟国らがウクライナにますます洗練された武器を提供していることで、米政府はウクライナ政府と、ロシア領内深くを攻撃した場合の戦争拡大の危険について議論を持ったと、外交当局者たちがロイターに語っている。

この水面下の話し合いは機密性が高く、これまで報道されたことはないものだが、ウクライナ軍に供給されている武器には明確な地理的制限がない。しかし、この会話は戦争拡大のリスクについて共通の理解に達することを狙っていると、3人の米当局者と外交筋が述べた。

ジョー・バイデン大統領政権と米国の同盟国らは、ウクライナにM777榴弾砲を含む長距離兵器を与えることにますます前向きになっている。ロシア侵攻軍に対するウクライナ政府の戦闘が米国の情報当局者たちが予測していたよりも成功しているからだ。米国防省の発表によれば、デンマークはハープーン対艦船ミサイルを提供する予定で、ウクライナ政府の射程距離が更に伸びることになる。

残る問題は、もし戦争が悪化した場合に、ウクライナが戦略を変更し、米国が提供した兵器を当初に想定した方法とは異なった使い方をする可能性があるかどうかだ。
参照:U.S. and Ukraine discuss danger of escalation as new arms extend Kyiv's reach 


ロシアが事実上NATOと戦っているために苦戦を強いられる中、ウクライナがロシア本土への攻勢に転じるのではないかとの懸念だ。

ウクライナの立場に立てば、やられるばかりではたまらない。「復讐」したい気持ちは理解できる。

とはいえ、米国から見ればNATOの支援があってこそのウクライナの善戦だ。勝手に戦況を拡大し、核戦争のリスクを高めて、西側諸国に火の粉がかかってはたまらないのだ。

NATOをロシア国境線にまで拡大し、ウクライナもクーデターで反ロシア政権にして、マッチ1本の火でも燃え上がるようにしたのは米国だ。そして、2014年にクリミア半島を奪還し、2022年にはウクライナ本土にも攻め込むことで、実際に火をつけたロシアを世界中で追い詰めようとしている。

その最前線で、命を掛けて戦っているのはウクライナ人たちだ。ゼレンスキー大統領は「ロシア憎し」で、復讐の炎に包まれているように見える。

米国がゼレンスキー大統領を止められなければどうなるか? モスクワを攻撃されたプーチン大統領が核兵器を使えばどうなるか?

命がけのゼレンスキー大統領も、やはり命がけのプーチン大統領も、覚悟を決めているように見える。これまでのような脅しや制裁だけでは止められないかもしれない。

日本人も、あらゆる事態を想定し、何が起きても慌てることがないよう覚悟を決める必要があると思う。

 

 

 

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